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CGへの扉 Vol.20:Adobeと人工知能の将来を見極める #AdobeMAX2020

2020.11.13アート

CGへの扉 Vol.20:Adobeと人工知能の将来を見極める #AdobeMAX2020

Adobe MAX 2020 オンラインで開催

デジタルクリエイター向けに欠かせない各種ツールを提供するAdobe社の一大イベント、Adobe MAX 2020が2020年10月20日から22日の3日間、今年はすべてオンラインで開催されました。幸いなことに、350を超えるほぼすべてのセッションがオンラインで視聴できるようになっており、海外講演者のセッションは日本語字幕つきで観ることができます。

Adobe MAX クリエイティブカンファレンス オンデマンドで視聴:https://www.adobe.com/jp/max.html
※動画視聴の際、右下に表示される[CC]のアイコンを押して、日本語字幕を選択することができます。

セッションは3DとAR、ビジネスの生産性、ビジネスにおけるクリエイティビティとデザイン、教育、グラフィックデザイン、イラストとデジタルペインティング、写真、ソーシャルメディア、UI/UXデザイン、動画といった各分野にカテゴリ分類されています。

単なる製品の機能を紹介するだけの内容とはなっておらず、デジタルツールで何かを作りたい人たちのため、またデジタルツールを最大限に活用し現在仕事をしている人たち、デジタルツールを学んでいる学生たちへ向かって、世界の第一線で活躍中のアーティストたちがノウハウを惜しげもなく披露してくれているセッションばかりです。

Adobeは2016年に「Adobe Sensei」という人工知能プラットフォームを発表しました。Adobe Senseiという固有のツールが存在するわけではなく、既存の画像処理ソフトなどに人工知能を活用した数々の新しい機能をもたらす横断的な人工知能環境がAdobe Senseiです。Senseiは日本語の「先生」に由来しています。日本語で先生というと、学校の先生のような「先生」をイメージしますが、英単語として使われる「sensei」は同じ「先生」の意味をもつ「teacher」とは異なり何か習い事をする際の先生、武道などを習う際の「達人として教えを請う相手」というようなニュアンスがあります。

Adobe Sensei の紹介ページ:https://www.adobe.com/jp/sensei.html

Adobe MAXで発表された数々の新機能より、人工知能の恩恵を存分に受けている機能をいくつか紹介しましょう。

画像編集ツールの定番 Photosnopニューラルフィルターの驚き

撮影後の写真の照明を変更したり、顔の向き、視線、表情までも修正することができます。それも難しい操作ではなく「笑顔」のパラメータをスライダーで変更するだけといった操作で顔の表情が変化します。実写撮影した人の顔の歪みやバランスを修正したり、若返ったり、歳を取らせたり、頭のハゲ具合を調整したりが可能。肌のシミやくすみなどの質感も一発で修正されていく様は誰もが驚くでしょう。

ライティング済みで撮影された実写写真の照明効果を後から修正

さらに白黒写真のカラー化、極端に拡大した写真画像を高精細にしつつノイズを除去することた可能。背景や空の色合いだけを修正、晴れの空を曇り空に、夕焼けを朝焼けにするなど朝飯前です。さらに画像全体を温かみのある色合い、クールな色合い、特定の絵画風に自動変換することもできます。

※引用元:Adobeの公式サイトより引用

さらに人工知能活用としては、映像からテキストを自動文字起こししてくれる機能、映像から画像を切り抜く際、動画の全フレームに対して切り抜く対象を追いかけながら切り取ってくれる機能、髪の毛など切り抜きが難しい被写体に応じた画像切り抜き機能、大量に撮影された写真の中からベストショットを選ぶ機能など、列挙にいとまがありません。

一つひとつの機能だけ抜き出して考えれば、今までも手作業もしくは人工知能を活用して実現できたことばかりかもしれません。けれどもそれが、世界中で広く使われる一般的なツールで誰でも簡単に使えるようになると考えると、とてもインパクトがある事柄だと考えられます。

Sneaks Preview の驚き

Adobe MAX の醍醐味のひとつは、Sneaks(コソコソ動く)と呼ばれる未来的なセッションです。SneaksはAdobeの研究所で研究中のテーマや製品開発チームで最先端技術の実装を試しているような、製品一歩手前の機能を知ることができるセッションです。現在のAdobeのツール群を使っている利用者から見ると、未来の特別な機能を先どりして観ているような感覚のセッションでもあります。

Adobe MAX 2020 / MAX Sneaks 日本語字幕付き:https://www.adobe.com/jp/max/2020/sessions/sneaks-od5106.html
発表者:作家、コメディアンのチェルシー・ハンドラー氏、Adobeエバンジェリストのポール・トラニ氏ほか

 SharpShotSneak (Adobe Sensei)

深層学習を活用した動画のブレ除去技術。夕方や夜、暗い室内で撮影された動画で、従来手法よりも手軽で安定した結果が得られます。

 MaterialWorld (Adobe Sensei)

1枚の実写画像から手軽に質感豊かな3D用のテクスチャの素材を作成します。

 OnTheBeatSneak (Adobe Sensei)

音楽のリズムと映像のタイミングを合わせるツールで、リズムから外れた動きを検知し、自動的に修正することができます。撮影された人の骨格を自動認識して動きのポイントを的確に調整します。

 ComicBlast(Adobe Sensei)

漫画のコマ割りや、素材作りを半自動化し制作を支援するツールです。コミックブックを作るのが従来型の作業の100倍速でできるとのうたい文句です。

台本を読み込むと自動でコマ割りやセリフの吹き出しを用意。もちろん後から修正も可能(引用元:上記Adobe公式動画からのキャプチャ)
手描き原稿をトレースし、コミック調やカラー化するのも容易(引用元:上記Adobe公式動画からのキャプチャ)
写真撮影した顔をコミック風の加工をして掲載(引用元:上記Adobe公式動画からのキャプチャ)
ストーリーを分岐させ、展開を検討したり、別バージョンを作成したりできる(引用元:上記Adobe公式動画からのキャプチャ)

Sneaksでは、他にも以下の研究開発中の機能が紹介されました。

  1. 2DPlus(2D表現を自動的に2.5D表現に変換する)
  2. Scantastic(ARのための3Dモデルキャプチャ)
  3. InSyncSneak(プロトタイプを本番でも使えるブリッジプロトタイプを作る)
  4. TypographicBrushes(描いたストローク、ブラシの組み合わせからフォントを作れる)
  5. PhysicsWhiz(現実世界の物理現象に合わせたレイアウトツール)
  6. ARTogether(複数ユーザーで体験できるARオーサリング環境)

Adobeの新機能の予見はSIGGRAPH論文から

Sneaksで数々の新しい技術を垣間見ることができ、驚きとともに早く使いたい! という期待も盛り上がってくるでしょう。AdobeがSneaksで発表するテクノロジーは必ずしも次バージョンの新製品に組み込まれるわけではありません。利用者からの反応が大きかったもの、ユーザーからの要望が多かったものから優先的に実装されていくと言われています。また、クオリティや安定性の面で満足がいかなかったり、既存の一般的なハードウェアでは実行速度が遅すぎて使い物にならなかったりすると、残念ながらお蔵入りになるテクノロジーもあります。

そうは言いつつもSneaksの数々の先端テクノロジーは、それ相応な品質、安定性になってから一般にお披露目されていると考えられます。つまり製品としてそろそろ使えそうな期待レベルのものばかりが発表されるのです。もちろんその背景には長年の研究や、テクノロジー企業の買収、優秀な人材による新機能の開発、大学との共同研究などがあるでしょう。

そこで注目すべきなのは、コンピュータグラフィックスの学会であるSIGGRAPHでAdobeの研究機関であるAdobe Researchが発表した数々の論文です。ここ数年Adobe Researchは、SIGGRAPHに毎年10本前後の論文を通しています。トップカンファレンスと呼ばれる採択数が2〜3割の学会へ、いち企業が出す論文数としては驚くべき数でもあります。もちろんAdobe Researchの論文は、単独の論文だけでなく、大学との共同研究のものもあります。なかにはSneaksで発表済みのものが論文として発表されたものもあります。

他の業界と比べてSIGGRAPHのようなコンピュータテクノロジー業界や人工知能活用分野の大きな特徴は、アカデミックな学術研究の世界と一般向けのツールやサービスを提供している企業との共同研究、ノウハウ共有、人材の行き来が激しいことです。例えばSIGGRAPHで気の利いた画像処理の論文を発表していた大学院生がいたとすると、次の年にはAdobeの研究所に勤めていて、さらにその次の年に、Photoshopの最新機能として、SIGGRAPHで発表された先端的な機能が製品に組み込まれていたりするのです。

  1. コンピュータビジョンの学会 CVPR 2020 でAdobe Researchが発表した論文一覧
  2. 欧州で開催された機械学習の学会 ECCV 2020 でAdobe Researchが発表した論文一覧
  3. コンピュータグラフィックスの学会 SIGGRAPH 2020 でAdobe Researchが発表した論文一覧

論文発表から製品への機能実装のスピードがとても早い状況を考えると、ここ数年のSIGGRAPHや各種学会で発表された論文は、近い将来実際の製品の新機能として使える日も近いということが予想されます。

過去記事参照:

  1. CGへの扉 Vol.5:SIGGRAPH 2019に見るCG研究と機械学習
  2. CGへの扉 Vol.9:現実の課題を解決するCGとAIの相互作用 #SIGGRAPHAsia2019
  3. CGへの扉 Vol.16:バーチャル開催SIGGRAPH論文を先取り

人工知能とデジタルツールのこれから

数々のデジタルツールを提供しているAdobeが人工知能技術を最大限利用しているのは、何も人間の仕事を奪おうとしているからではありません。今までクリエーター、アーティストが繰り返し繰り返し行う単純作業に使っていた時間を
人工知能を活用したテクノロジーで代替し、人間にはよりクリエイティブな作業に時間を使って欲しいという「時短」の考え方に基づいています。

すべてオンラインで開催されたAdobe MAX 2020ではオンラインならではの企画として自宅でできるデジタルアートのお題が8つ出されました。モザイクアートの作成、粘土彫刻、迷惑メールのコラージュ、Josef Albersの色マジック、
紙建築、庭にある自然の素材で人工の虫を作る、輪郭彫刻、塗り絵など。家にあるもの、手軽に入手できるものだけで作れる、ちょっとしたクリエイティブなお題です。

Adobe Max 2020 / 企画 / お楽しみコンテンツ / 自宅で挑戦:https://www.adobe.com/jp/max/2020/engage-fun-stuff.html

今回紹介した Photoshop の新機能ニューラルフィルターは、開発中のフィルター機能をベータ版でいち早く使えるようになっており、さらに今後の実装に力を入れてほしいフィルターに投票できるようになっています。

こういったAdobeの姿勢から読み取れるのは、最新のデジタルツールや人工知能さえも「道具」でしかないという考え方です。そして最大のクリエイティブ要素は「人間」であり、そのクリエイティブな能力をデジタルツールや人工知能技術で拡張していこう、手助けしていこうというとてもポジティブなメッセージが感じられることです。Adobe Senseiという人工知能からメッセージを受け取っているわけではないですが、Adobe MAX 2020は、人工知能を活用した最新機能を作っている人たちの気持ちや心意気が伝わってくるオンラインカンファレンスでもありました。

本連載の今後の予定:「CGへの扉」では、単なるAIの話題とは少し異なり、CG/VFX, アートの文脈から話題を切り取り紹介していきます。映像制作の現場におけるAI活用や、AIで価値が高まった先進的なツール、これからの可能性を感じさせるような話題、テクノロジーの話題にご期待ください。何か取り上げて欲しいテーマやご希望などがございましたら、ぜひ編集部までお知らせください。

CGへの扉:

Vol.1:CG/VFXにおける人工知能の可能性と、その限界

Vol.2:なめらかなキャラクタアニメーションと、ディープラーニングの役目

Vol.3:CGとAIの蜜月が今まで不可能だった映像を生みだす

Vol.4:CG/VFX制作に欠かせなくなったマシーンラーニングの勘所

Vol.5:SIGGRAPH 2019に見るCG研究と機械学習

Vol.6:Facebookが取り組むVRとAIのアプローチ

Vol.7:AIによる差別やバイアスを避ける取り組み“PAIR”

Vol.8:一流オークションハウスも注目するアートとAIの関係性

Vol.9:現実の課題を解決するCGとAIの相互作用 #SIGGRAPHAsia2019

Vol.10:老齢とは無縁、De-Aging技術の台頭

Vol.11:動き、ダンスに新しい要素を加えるAIの役目

Vol.12:AIのおかげで映像の拡大やノイズ除去が高品質に

Vol.13:AIのクリエイティブとクリエイティビティ再考

Vol.14:AIが生み出す顔と人間の表情

Vol.15:撮影に革新をもたらすAIによる照明

Vol.16:バーチャル開催SIGGRAPH論文を先取り

Vol.17:描画を進化させるTensorFlow Graphicsの真価

Vol.18:SIGGRAPH2020レポート 映像制作の現場で活躍する人工知能

Vol.19:コミュニケーションツールの新境地「NVIDIA MAXINE」

Contributor:安藤幸央

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