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CGへの扉 Vol.11:動き、ダンスに新しい要素を加えるAIの役目
動きとデータの関係性
人の動きをCG/VFXで表現する場合、現在は大きく分けて2つのアプローチがあります。ひとつは、モーションキャプチャーと呼ばれる手法で、特殊なセンサーが搭載されたスーツを着用したり、体中に赤外線を反射する小さな球体をつけたりして、実際の人間の動きをデジタルデータ化します。そこで取得されたデータを活用してCGキャラクターのアニメーション制作を行う方法です。もうひとつは「手づけ」と呼ばれる手作業による方法で、ツールや動きの表現に習熟したアニメーターがコンピュータ上で動きを細かく調整して制作する方法です。
どちらの手法も長所と短所があり、モーションキャプチャーは非常にリアルな動きが取得できる一方、収録に専用の機材やスタジオが必要で、比較的コストがかかる上に動きを演じる俳優の表現やスキルに影響を受けます。一般的な舞台俳優、ドラマなどに出演する俳優以外にも、モーションキャプチャーを得意とする専門の俳優がおり、収録後の微修正が少なくて済むなめらかな動きをしたり、手足が交差してデータが混乱しないように動くのに長けています。「手づけ」の動きの場合、伝えたい動きが強調されたり、予備動作や勢い感といった表現に長けており、演出も自由で非常に表現力はありますが、あくまで作られたキャラクターであり、そこに人が実在するかのようなリアルさはありません。
最近広がりつつアプローチは、モーションキャプチャーで取得したリアルな動きのデータを機械学習させ、人が扱うツールで素早く柔軟な表現ができるよう、経験や習熟に依存せずに動きの表現を補助するハイブリッドなツールの利用です。Cascadeur(カスカドゥール:フランス語でスタントマン、曲芸師のこと)のAutoPosing機能では、人の骨格の特徴的な6箇所(手首、足首、骨盤、首の付け根)を指定するとその他の37箇所の体の位置を自動的に設定し、適切なポーズを作成するためのツールを提供しています。元となった機械学習データはゲーム用に大量に作られた動きのデータが使われました。
例えば、誰かに後ろから声をかけられて振り返るポーズを考えてみてください。最小限の動作としては目だけ動かす場合もあるかもしれませんが、頭ごと後ろを向くのが一般的です。それも頭だけではなく肩や上半身も一緒に、場合によっては足も動かしながら後ろを向くはずです。こういった人体ではごくごく一般的に協調して行われている動作でも、CG/VFXのデジタルキャラクタデータではそう簡単にはいきません。Cascadeur では習熟者が時間をかけて作成、調整していたCGキャラクタのポーズを少ない設定、少ない操作で品質の高いポーズのデータを作り上げることができます。
Everybody Dance Now 登場の衝撃
『Everybody Dance Now』は C+Cミュージック・ファクトリーによる1990年代にヒットしたダンスミュージックです。今回はその音楽を紹介したいわけではなく、「Everybody Dance Now」がタイトルとなっている人工知能の可能性を広く知らしめたひとつの論文を取り上げます。
「Everybody Dance Now」はカリフォルニア大学バークレー校のCaroline Chan氏らが 2018年に発表した研究です。ディープラーニングの技術を活用し、素人の動きを収録した動画データから、プロのダンサーが踊ったかのようなキレのある動きの動画を再構成するという方法です。
手法としてはプロのダンサーの上手な動きを収録したダンス動画から、動きを骨格化した平易な情報として取り出します。そしてダンス素人の人物にさまざまな動きやポーズをしてもらい、ダンス動作の再構成に必要なポーズを動画収録します。その後、GAN(敵対的生成ネットワーク)で、プロのダンサーに近いポーズを繰り返し学習させ、ダンス動画を再構成します。さらに単に素材を継ぎ合わせただけでは、なめらかな動きにならないためジッター(不必要なブレ)を除去するためにTemporal Smoothingという手法も使われています。
動画像から骨格を抽出するにはOpenPoseが使われています。OpenPoseが革新的なのは、特殊なスーツや機材を必要とせず、動画像、ときには静止画の素材さえあえば、そこに写っている人物の骨格抽出ができることです。OpenPoseは非商用では無料で使え、商用目的用にはflintbox社が提供しています。高解像度の画像の生成にはpix2pixHDが使われています。
この「Everybody Dance Now」の発表に前後して人の動きに人工知能を活用するアプローチが広がっていきます。NVIDIAとカリフォルニア大学との共同研究ではダンスと音楽を合わせて表現するためのDancing2Musicが公開されています。
GoogleのAI研究チームによる成果のデモサイト AI Experiments では「Move Mirror」が公開されています。人間のポーズを骨格データとして抽出する実装PoseNetのWeb版TensorFlow.jsによるデモで、パソコンとWebカメラさえあれば、手軽に自分と同じ格好をした写真を連続して表示することができます。PoseNetでは顔の中から目鼻や、肘、膝などの人体の主だった17カ所を動画や静止画から抽出することができます。
Web:https://experiments.withgoogle.com/move-mirror
Move Mirror: An AI Experiment with Pose Estimation in the Browser using TensorFlow.js
デモ:https://experiments.withgoogle.com/collection/ai/move-mirror/view
Googleが後押しするAIとダンスの可能性
2019年のはじめ、著名な振付師である Bill T. Jones氏とGoogleによる共同プロジェクトがおこなわれました。「AI Sketches With Bill T. Jones」では、動きとコンピュータとの切り口でさまざまな事柄が試されました。何かを作り上げるためのプロジェクトではなく、人の動きとコンピュータの関係性から何かを見出そうという試みです。先に紹介したPoseNetとTensorflow.js、音声変換には Google Web Speech API が使われています。通常の舞台では、広い空間を縦横無尽に動き回り、見る人が視点を動かしますが、このプロジェクトでは、画面の画角の中でいかに表現するかがポイントになったそうです。
もうひとつは「Living Archive」という世界的な振付師Wayne McGregor氏とGoogleによるプロジェクトです。Wayne McGregor氏の数千時間にも及ぶパフォーマンスから得られた50万種類のポーズを学習データとして利用し、特定のポーズやフレーズの次にどういう振り付けが続くのかを予想し、提案するとどうなるのか? という試みです。
携帯電話の文字入力では、予測変換が一般的に使われています。入力の際、必ずしも予測変換が正しいとは言えず、予測変換とはまったく関係ない文字を入力することもあります。予測変換を使うと入力するフレーズが制限されてしまう、自由な文章表現が広がらないとの指摘もありますが、素早く的確な文章を書くには予測変換は欠かせません。この「Living Archive」は、動きに関する予測変換とも言える試みで、新しい発見や想定していなかった表現も見つかったそうです。
「動き」に関するこれからの課題と目指す事柄
人の動きを適切にデータ化、骨格情報として扱うこと、それらを機械学習させることでさまざまな応用が期待されます。例えばスポーツ選手のフォームや、リハビリの際の変化やアドバイス、人の動きをロボットで再現したり、ダンスの上手い下手、評価なども可能になってくるでしょう。
ダンスや、人の動きといった情報は、簡単にデータ化しづらく、コンピュータや機械学習で扱いにくい種類のデータであるにもかかわらず、人間にとってとても原始的で、日々常に接している情報です。そのため、ちょっとした違和感や違いもすぐに気づき、その違和感を言語化できなくとも、多くの人が気づいてしまうのです。人型ロボットの動きも単にプログラミングで最短距離、最小の動作を生み出すのではなく、演劇の演出家やダンスの振付師によって、タメや間、ちょっとした余計な動きを加えることによって、とてもリアルな動作になると言われています。
これが例えば音声データであれば、データとしての扱いやすく、発話の文言の記録、正答の導きやすさなどから、コンピュータで比較的扱いやすい種類の情報になります。それでも駅などで聞く人工的な声のアナウンスで少し不自然な言い回しや流暢さにかける発話に出会うと、人はすぐ違和感に気づきます。短い発話であれば気づかないこともありますが、長い会話、長い朗読になると、人の発話と人工的な発話には誰もが気づきます。
人工音声も、従来であれば、発話の数理モデルを構築し、言葉のかけら(チャンク)を組み合わせて発話させていた技術から、
Wavenet と呼ばれるディープラーニングを活用したニューラルネットワークによる音声合成アルゴリズムによって、なめらかな発話、自然な発話の技術が飛躍的に進化してきています。
人間が普段接する人と人のコミュニケーションに関する感受性は鋭く、CG/VFXで動きを人工的に生み出す場合も、何気ない動作や、何もしていない時の少しの揺らぎなど、個人的な癖や独特の動きなどが一番難しい表現です。動きには効率だけでなく「余白」「余分」とも言えるような要素が重要になってきています。これからは演劇のようにすべての動きを演出しつつ偶然性に左右されるのでもなく、ロボットのように全ての動きがプログラミングされているのでもなく、良質のリアルなデータを元に、適切な人間の演出が加わった上で、理想的な「動き」の表現ができるようになるのかもしれません。
本連載の今後の予定:「CGへの扉」では、単なるAIの話題とは少し異なり、CG/VFX, アートの文脈から話題を切り取り紹介していきます。映像制作の現場におけるAI活用や、AIで価値が高まった先進的なツール、これからの可能性を感じさせるような話題、テクノロジーの話題にご期待ください。何か取り上げて欲しいテーマやご希望などがございましたら、ぜひ編集部までお知らせください。
CGへの扉:
Vol.1:CG/VFXにおける人工知能の可能性と、その限界
Vol.2:なめらかなキャラクタアニメーションと、ディープラーニングの役目
Vol.3:CGとAIの蜜月が今まで不可能だった映像を生みだす
Vol.4:CG/VFX制作に欠かせなくなったマシーンラーニングの勘所
Vol.5:SIGGRAPH 2019に見るCG研究と機械学習
Vol.6:Facebookが取り組むVRとAIのアプローチ
Vol.7:AIによる差別やバイアスを避ける取り組み“PAIR”
Vol.8:一流オークションハウスも注目するアートとAIの関係性
Contributor:安藤幸央