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人工知能に作家性を宿らせる方法:栗原聡氏×山野辺一記氏インタビュー(前編)

2020.4.17アート

人工知能に作家性を宿らせる方法:栗原聡氏×山野辺一記氏インタビュー(前編)

人工知能技術を使って昭和の歌姫美空ひばりをよみがえらせるプロジェクトが世間を湧かせた2019年末。マンガの神様と呼ばれた手塚治虫の作家性をAIに学習させ、31年ぶりに新作を生み出すという前代未聞のプロジェクト「TEZUKA2020」が着々と進められていました。

講談社の「モーニング」13号(2020年2月27日発売)と20号(同年4月16日発売)に掲載された新作『ぱいどん』では、慶應義塾大学理工学部の栗原研究室と株式会社エッジワークスが共同開発したAIによるプロット自動生成技術「Automatic Scenario Building System」(以下、ASBS)が活用されています。

今回は「TEZUKA2020」でAI技術を監修した慶應義塾大学理工学部の栗原聡教授と、現役のシナリオライターでエッジワークス代表の山野辺一記氏をゲストに迎え、ASBSの構想が立ち上がった経緯から、「TEZUKA2020」をとおしてAIに追求した作家性の再現、そして人とAIの共生に向けた新たな可能性と今後の展望について話します。聞き手はモリカトロンでプロジェクトマネージャを務める大里飛鳥です。

小説の登場人物をAIで置き換えられたら

ASBSに採用した物語の展開構造「13フェイズ構造」の図説

大里飛鳥(以下、大里):エッジワークスの山野辺さんとASBSを共同開発するに至った経緯をお聞かせください。

栗原聡(以下、栗原):最初のきっかけは、人工知能を活用して好きなマンガの続きを読みたいという、私の研究室にいた学生の願いでした。それは昨今話題に上がっているディープラーニングを使ってAIに小説を執筆させるような試みではなく、小説の登場人物をAIで置き換えてみたいという考え方です。

ロールプレイングゲームのような世界でキャラクターが勝手に動き回れば、世界観が自動的に展開していきますよね。それをストーリーとしてまとめることができれば面白いのではないかと。私の専門はAIの研究ですが、シナリオ制作に関しては何の知識もないので、スクウェア・エニックスの三宅陽一郎さんのご紹介もあって、エッジワークスの山野辺さんと知り合ったのがそもそもの始まりです。

このように学生のちょっとした願望から始まったプロジェクトも、蓋を開けてみると思いのほか困難な道のりが待っていました。山野辺さんの助言を得て分かったのは、シナリオライターにとってもっとも重要なのはプロットであるということでした。たとえAIが小説を生み出せて、星新一賞のような評価を得たとしても、それ自体には大した価値はないんだと。

というのも、シナリオライターという人材不足の現状もあって、そうした目新しい技術よりも、安定して作品を生み出せる仕組みこそが現場に求められている要素なのだというのです。シナリオライターは物語の肉付けは得意とするところですが、人の想像力で生み出せるプロットのバリエーションには限界があります。そこをAI技術で補完することにこそ意義があるという話から、プロットに焦点を当てた研究が始まったというわけです。

いろいろ勉強していくうちに、重要なのはAIに大量の小説を学習させることではなく、起承転結に則した方法論にこそ意味があるということが分かってきました。最終的にたどり着いたのが、シナリオライターの金子満さんが三幕構成を拡張した「13フェイズ構造」という概念です。

エッジワークス代表 山野辺一記氏

山野辺一記(以下、山野辺):まさにシナリオとは、ストーリーとは何なのかという所からのスタートでしたね。もともと異なる業界の人間同士の共同作業でしたので、共通の言語として定義し直したことを覚えています。

シナリオが映画やドラマといった作品になっていく制作手順や、どんなシナリオが業界の中で評価されているか、何をもって作家性を定義するか、そうした基礎部分を業界用語もふくめて研究室の方々に説明させていただきました。

しかし、起承転結に則したプロセスを作るといっても、起承転結とは何かを正確に説明できる人間が、当時は私の周りにいませんでした。そこでもっとも理論的に説明できる金子満先生の「13フェイズ構造」を提案した次第です。

栗原:ちなみに「13フェイズ構造」も万能ではなくて、ジャンルによっては当てはまらない作品もあります。ユーザーが作りたい作品によって最適な構造は異なってくるので、今後はその部分も体系化していかなければならないと考えています。

現時点で、具体的に13である必要性は、実は私たちにも説明できません。ただ金子先生いわく、2時間ドラマの8割は「13フェイズ構造」に当てはまるとのことでした。また、起承転結の4つだと大まかすぎて味付けし辛い印象があるので、13くらいに拡張した方が仕組みを作りやすいだろうという目論見もありました。

AIに作家性という価値を理解させるには

慶應義塾大学理工学部の栗原聡教授

栗原:そもそも人類が好んで生み出してきたシナリオの構造をAIに学習させるというプロセスもあるのですが、私たちが小説を読んでも構造がはっきりとしたデータとして見えてこないように、AIにとっても曖昧なものであり続けるという課題が出てきます。それならば、人間が何千年も培ってきた知識を最初から使った方が手っ取り早く、かつ確実だと考えました。

囲碁や将棋で人間を負かしたAIは最善の手を探し出すという点においては確かに優秀ですが、人間にとっては勝敗とは関係のないところで評価される美しい一手のような、性能以外の価値が確実に存在するわけですよ。それはAIには理解できない部分です。物語の良し悪しとは、そうした性能的な価値ではなく、人間の感性によって決められるものですよね。そういうわけで、近年流行りのディープラーニングを使わずに、人間の方法論に頼っているという事情があります。

大里:もっとも苦労されたのは、その知識のデータ化だとうかがいました。

栗原:その部分はディープラーニングのプロセスと同じで、インプットデータは用意してあげるしかありません。画像の場合はそれぞれのデータに名前をつければ済みますが、シナリオを作るとなるとそういうわけにはいかないので、それはもう過酷ですよ。それも一番手を出してはいけないものに、私たちは手を出してしまいました。マンガです。

小説は読み手が文字から情景を想像するメディアです。現代のコンピュータは文字をインプットとして受け取るので、データの対象が小説ならまだよかった。しかし、マンガの場合は、文字だけを並べても内容の真意は伝わりません。私たちは絵から登場人物が置かれている状況や抱いている感情を想像しているからです。人間には脳内でマンガを小説に変換しているプロセスがあるということです。それができないAIはマンガを読めないということです。

「TEZUKA2020」では、160話分のマンガを人間の手で小説のような文字データに起こしました。さらにキャラクターの設定を作らないといけないので、主人公がどのような属性かというデータも表にしました。つまり、シナリオを作る作業はざっくり98パーセントが人の手によるもので、残りの2パーセントがAIの仕事みたいなものですよ。人にとっては地獄のような作業だったと思います。

大里:プロットや登場人物を特徴づける各項目は先生方が設定されたのでしょうか。

栗原:そうですね。ここで課題になるのが、作家性とは何かです。私たちが最初に着目したのは、「13フェイズ構造」の使い方によって生じる個人差です。たとえば、作家によっては13項目の特定の部分をあえて使わないとか。必ずしも13のフェイズが使われるとは限らないわけですよ。ちなみに芥川龍之介の「蜘蛛の糸」なんて、純文学なので何もないんですよ。

かといって「13フェイズ構造」はあくまで構造に過ぎないので、個性と呼べる要素はほかにもあるだろうと。そこでシナリオ関連の論文をいろいろと読んでいくうちに、どうやら主人公をどう設定するかという部分の方が作家の個性は出やすいということが分かりました。

そのデータはどうやって集めればいいのか。私たちは過去に作家をインタビューした記事をネット上から探してきて、その発言内容から作家の個性をパラメータとして設定しました。

論文:物語生成のためのシナリオライター個性抽出に関する試み

今回のプロジェクトは手塚治虫の個性をAIで再現することが目的ですから、私たちがあらかじめ設定した属性に加えて、手塚プロダクションの手塚眞さんの意見も聞きながら手塚治虫的な属性を特定していきました。

AIはクリエイターの背中を押してくれる存在

大里:『ぱいどん』の舞台である日比谷が地名であるというような、各キーワードの概念をAIはどのように認識しているのでしょうか。

栗原:概念辞書から候補となるキーワードをランダムに選んでいます。ある程度の制約は設けていますが、基本的には完全にランダムです。そうはいっても最低限の一貫性を維持したり、表面的な矛盾点を修正したりと、人の手間もかかるので無尽蔵に生成するわけにはいきません。「ぱいどん」の制作に際しては、最初に20通りだけサンプルを生成して会議に出してみたところ、意外にも好意的な反応が得られたんです。

これは無作為に選ばれた限定的な情報による不完全な状態だからこそ、好評だったのだと思います。例えるなら、俳句のようなものです。俳句は少ない文字だからこそ、私たちに世界観を想像させてくれますよね。

ちなみに20通りのサンプルの中には設定がとても自然で、ランダムに生成されたとは思えないほど圧倒的にきれいなプロットもあったんです。しかし、そういうものに限って手塚眞さんは面白くないと仰っしゃるんですよ。

20通りのサンプルの中から選ばれた『ばいどん』の設定

最終的に選ばれた『ぱいどん』の設定については、舞台が日比谷で主人公が哲学者でテーマがギリシャなんて、正直なところ私たちは最初ちんぷんかんぷんな駄作だと感じていました。それに手塚眞さんは二重丸を付けたんです。

手塚眞さんによると、手塚治虫は落語の三題噺のような発想をする人間なのだと。三題噺とは、特に関連性がない3つの題目を折り込んで即興で話を作る落語の一形態です。今回の場合は、「日比谷」「哲学者」「ギリシャ」という題目を使って物語が生成されていることが、見事に手塚治虫的なんだと仰っていました。

余談ですけど、20通りのサンプルの中には主人公が人間だけど属性が「鳥」というプロットもあったんです。実はこの鳥のプロットも最後まで候補に残っていました。この鳥を手塚眞さんが気に入られて、最終的な「ぱいどん」の設定に鳥のキャラクターも登場させたという経緯があります。

クリエイターにとって、何もないところから価値を生み出す作業は決して容易なことではありませんよね。そういう意味でも、今回のAIが生成したプロットのサンプルがクリエイターの背中を押してくれる存在になれたことは、とても意義深い結果だったと思います。

大里:発想のきっかけとしての存在感は大きそうですね。

後編につづく

Writer:河合律子

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