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CGへの扉 Vol.8:一流オークションハウスも注目するアートとAIの関係性
アートと人工知能は無縁ではいられなくなった
従来、人々に認められたアーティストが精魂込めて描くアート作品と人工知能(AI)が描く機械的な絵柄は正反対に位置するものだと考えられていました。ところが近年、アート業界も人工知能や機械学習など最新テクノロジーの恩恵を受け、テクノロジーが描くアートについて無縁ではいられなくなってきているのです。
イギリス、ロンドンを拠点とする1766年に設立されたオークションハウス(競売会社)のクリスティーズは2018年からArt+Tech Summit というアートとテクノロジーの交差する領域に着目したカンファレンスを開催しています。昨年2018年のテーマはブロックチェーン、ニューヨークで開催された2019年6月のテーマはAIで、これから2019年11月に香港で開催されるカンファレンスのテーマは拡張現実の予定です。
AIをテーマとした Art+Tech Summit のスポンサーは韓国の自動車メーカー、ヒュンダイ。カンファレンスをサポートするのはイタリアのファッションブランドのグッチと検索エンジン大手グーグルによる世界中の文化遺産のデジタルアーカイブ化を進めるGoogle Art&Culture部門という、そうそうたるメンバーが集まり開催されました。
・アーティスト YUGEN による予告編「DISCOVERING INFINITY(無限の発見)」というタイトル
・Art + Tech Summit: The A.I. Revolution | Christie’s 約6時間にも及ぶセッション全編の収録映像
・Art + Tech Summit 2019 当日の発表プログラム一覧
人工知能が描いた絵画がオークションで高値に

アート業界がAIに注目したひとつのきっかけは、2018年にクリスティーズのオークションに出品されたフランス、パリを拠点とするアーティスト集団 Obviousの作品です。ObviousがAIを活用して描いた肖像画がなんと432,500ドルで落札され、大きな話題となりました。その作品のタイトルは「Edmond de Belamy, from La Famille de Belamy」。当初100万円前後の価格と予想されていたものが、オークションの蓋を開けてみると日本円にして約5,000万円もの高値で落札されたのです。肖像画の右下にはアーティストの署名の代わりに、数式が記入されており、特定のアーティストが描いたものではなく、AIによって生成された絵画であることを表現しています。
この作品を作成したのはHugo Caselles-Dupré氏、Pierre Fautrel氏、Gauthier Vernier氏、3名による芸術とAIとをとりもつ関係を探求・研究しているグループ「Obvious(明らかな・明白な、という意味)」によるもの。彼らが作品として描いたのは多数の肖像画を機械学習にかけて導き出した架空のベラミー家一族の肖像画です。
制作にはGAN(敵対的生成ネットワーク:Generative Adversarial Network))が活用され、WikiArtで一般的に公開されている14世紀から現代までの約1万5000点の肖像画を学習データとして用いました。
さらにAIによって自動生成された肖像画を人間が描いたものなのかAIが描いたものなのかを見分ける、これまた別のAIを用い、人間が描いたのかAIが描いたのか見分けられなくなるまで、肖像画を生成しては判別するという作業を続けたとのこと。完成した肖像画は、絵画として美しいのか、肖像画として役目をなしているかといった点は議論を呼ぶかもしれませんが、人間のアーティストが描いたのかAIが描いたのかを、確証を持って見分けろと言われると、専門の鑑定家でも確信をもった判定を躊躇する要因があるのではないかと考えられます。
Obviousは作品制作におけるマニュフェストをかかげており、制作過程を明らかにしている
https://drive.google.com/file/d/1esAOv8MsVzYH9njGmHnqUdgPh4aFDVvK/view

真贋を見分ける
Art + Tech Summitでは、AIで美術品の真贋を見分ける研究を進めている Artendex社の創業者 Ahmed Elgammal氏の発表もありました。Ahmed Elgammal氏はArtendex起業前、米国ラトガース大学在籍時からAIによる真贋研究を進めており、TEDでの20分ほどの講演からも「機械は創造的になりうるのか?」というアートとAIとの対比に課題を投げかけています。
Artendexではマティスやピカソ、エゴン・シーレなど、特定の画家の筆致を機械学習させ、真贋判定を行います。事例では約300の絵画から、約80,000の筆致の太さや力の入れ方が画家ごとにどのような特徴があるのかを機械学習したそうです。いまだ完璧とは言えませんが、約80%の精度で真贋を見分けられるようになってきているそうです。驚くのは、たった一本の線の筆致だけでもその線を画家本人が描いたものなのか、贋作作家が描いたものなのか見分けることができるとのこと、こういった真贋判定ができるということは人間の鑑定家とは違った鑑識眼があるともいえます。
真贋判定において放射性炭素年代測定やその他の化学的手法も万能とは言えませんし、専門家による判定は環境や条件によって何らかのバイアスがかかった判定をしてしまう可能性もあります。そう考えると、AIによる真贋判定は安価で素早く利用できる費用対効果が高い、初の真贋判定においてその効果を発揮することが考えられます。
真贋判定の手法を紹介した論文:
Picasso, Matisse, or a Fake? Automated Analysis of Drawings at the Stroke Level for Attribution and Authentication
アートを分析する
クリスティーズは、2016年に “The Mei Moses Art Indices” という繰り返しオークションにかけられているアート作品をデータベース化する企業を買収しています。また、2018年には撮影した写真を画像解析し模様や形が似ている類似の商品を見つけてくれる”Thread Genius” というサービスを買収しています。さらにクリスティーズには、レコメンデーションが特徴の音楽ストリーミングサービスSpotifyから機械学習エンジニアが何人か引き抜かれています。こういった背景から読み取れるのは、欲しい人に欲しいアートを届ける、購入してもらうというアート作品のオークションの根本的な欲求を、デジタル技術、AI技術を活用してより促進しようという意図が見え隠れしてくるのではないでしょうか?
Art + Tech Summit ではメトロポリタン美術館がマイクロソフトらと協力して進めているAIプロジェクトの紹介もありました。メトロポリタン美術館は2017年に保有する画像37万5000点を、「いかなる権利も保有しない」というクリエイティブ・コモンズCC0ライセンスで公開しました。そのデータをもとに分析を進め、架空のアートを生み出せる「Gen Studio」が公開されました。Gen Studio では絵画に限らず、壺や装飾品といったさまざまな作品を網羅しています。従来、作品の時代考証や関連性といった観点は人間の鑑定家が経験や知見によって見出すものでしたが、機械学習、画像解析によって新たな時代考証、作品どうし関係性や作家どうしのつながりといった発見があるかもしれません。
Gen Studio のソースコード
Gen Studio サービス ※Gen Studio は残念ながら(執筆時)ダウン中
AIで描いた作品の権利は誰のもの?
先に紹介したObviousの一連の肖像画を生成したブログラムは、Obviousの3名が開発したものではありません。
ロビー・バラッド氏が、彼が高校生の頃ソースコード共有サイト github に一般公開した AIのプログラムが活用されました。
ロビー・バラッド氏の github サイト:各種AIプロジェクトが公開されている
果たして他人が作ったプログラムで生成したアート作品の権利は誰にあるのでしょうか? 素晴らしい絵画が描かれた際、キャンバスや絵の具を製造している企業がその絵画の権利を主張することはありません。そう考えるとAIは単なる道具なのか、それとも創造の元となる重要な要素なのでしょうか。
Obviousがオークションに出品した際にはロビー・バラッド氏への言及はありませんでしたが、Obviousもこんなに高額で落札され、こんなに大騒ぎになるとは思っていなかったそうで、のちにバラッド氏に謝罪しているそうです。ロビー・バラッド氏が高校生の頃機械学習に興味を持ったのはラッパー風の歌詞を自動生成することから始まりました。ロビー・バラッド氏は現在もAIの研究を続けておりファッションショーの写真を解析し、さらに斬新なデザインを生成するAIの開発を進めているとのこと。

人工知能とアートとのこれからの関係性
AIとアートの関わりはなにも作品の生成だけに限りません。美術館での体験をより良いものにするための動線解析や解説の体験向上、いままで見いだされなかった新たな作家や作品の発見、Cuseum (https://cuseum.com/) のような美術館におけるさまざまな体験を便利なスマートフォンアプリとして提供するサービスも広がってきています。アート作品として見たいもの、見るべきもの、作品の解説をAIがサポートしたり、アート作品のオークションにAIの手を借りたりする時代も近いかもしれません。
本連載の今後の予定:「CGへの扉」では、単なるAIの話題とは少し異なり、CG/VFX, アートの文脈から話題を切り取り紹介していきます。映像制作の現場におけるAI活用や、AIで価値が高まった先進的なツール、これからの可能性を感じさせるような話題、テクノロジーの話題にご期待ください。なにか取り上げて欲しいテーマやご希望などがございましたら、ぜひ編集部までお知らせください。
CGへの扉:
Vol.1:CG/VFXにおける人工知能の可能性と、その限界
Vol.2:なめらかなキャラクタアニメーションと、ディープラーニングの役目
Vol.3:CGとAIの蜜月が今まで不可能だった映像を生みだす
Vol.4:CG/VFX制作に欠かせなくなったマシーンラーニングの勘所
Vol.5:SIGGRAPH 2019に見るCG研究と機械学習
Contributor:安藤幸央