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RPG内で目的を持って自律的に行動するNPCのAI:月刊エンタメAIニュース vol.11

2020.11.20先端技術

RPG内で目的を持って自律的に行動するNPCのAI:月刊エンタメAIニュース vol.11

エンタメにおいてもAIは日進月歩で進歩しており、新しい研究成果や試みが次々と発表されています。こちらの連載では、過去1か月間、主に海外で公開された注目すべきゲームAIやエンタメAIに関連したニュース、論文などを紹介していきます。

目的に沿って行動するNPCとなるAIの開発

テック系メディアTech Xploreは11月4日、ファンタジーRPGに登場するNPC開発に応用できる新しいAI開発手法を報じました。その新手法とは、米国のジョージア大学とFacebookのAI研究チーム(FAIR)が発表したテキスト生成AIを自然言語処理と強化学習を組み合わせて開発するというものです。

プレイヤーとAIがテキストを介して対話することでRPG体験を再現する試みには自然言語処理が応用されており、事例としてGPT-3を応用して開発されたAI駆動型テキストアドベンチャーゲーム『AI Dungeon』が知られています。こうした既存事例では、AIはプレイヤーが入力したテキストに対するリアクションとしてテキストを返すにとどまり、何らかの目的に沿って一貫した内容のテキストを生成しているわけではありません。

今回発表された論文では、AIが何らかの目的に沿って話し行動する内容のテキストを生成することを目標にしました。この目標のために、まずFAIRが公開しているAI駆動型ファンタジーテキストアドベンチャーゲーム『LIGHT』を多数の人間プレイヤーに何らかの目的をもってプレイしてもらって、学習データとなるクエストに関するテキストを収集しました。次にファンタジーRPGの世界において常識となっている「剣は武器である」といった知識に関する学習データも作成しました。こうしたクエストデータと常識データを使って、AIが何らかのクエストを遂行するようなテキストを生成できるように強化学習を実行しました。

以上のように学習したAIに特定の目的を設定した上で、『LIGHT』を人間の代わりにプレイさせると人間プレイヤーのように目的指向的に話し行動するようになりました。この結果は、目的指向的に行動するファンタジーRPGのNPC開発に応用できるでしょう。

参考論文:How to Motivate Your Dragon: Teaching Goal-Driven Agents to Speak and Act in Fantasy Worlds

1枚の画像からリアルなアバターを生成するAIプラットフォーム

ビジネス系メディアVentureBeatは10月27日、フォトリアルなアバターを簡単に生成するAIプラットフォーム「Alethea AI」を紹介する記事を公開しました。コロナ禍に見舞われたことで、バーチャルコンテンツが脚光を浴びるようになりました。バーチャル空間で活動するために不可欠なのが、ユーザの分身となるアバターです。こうしたアバターを生成するにあたっては、デフォルメされたアニメ調のものであれば簡単かつ安価で実現しますが、フォトリアルなものを作るには膨大な手間と費用がかかっていました。

Alethea AIは、たった1枚の顔が写った画像からユーザのフォトリアルなアバターを生成するというものです。同プラットフォームには、「シングルショット画像合成」という画像生成技術が使われています。この技術は事前に一般的な人間の顔に関して学習したAIを活用して、1枚の画像から人間らしいアバターを生成するというものです。千差万別な顔画像と一般的な顔の学習データを組み合わせているため、違和感のあるアバターが生成される場合もあるものの、将来的には身体全体のフォトリアルなアバターの生成を目指して開発が続けられています。

Alethea AIが画期的なのは、アバターを管理する方法も提供していることです。具体的には、生成したアバターをブロックチェーン技術によって管理するのです。仮想通貨の取引にも用いられる同技術を使えば、Alethea AIのなかで生じる全アバターの行動を追跡することができます。それゆえ、アバターが偽造されてもすぐに発見することができるのです。

Alethea AIの今後の展開としては、フォトリアルなアバターに高性能な言語生成AIであるGPT-3を実装して、見た目だけではなく会話に関しても人間とそっくりなAIキャラクターも開発しようとしています。

AIキャラクターの行動に介入して短編映画を制作できる「Agence」

VR専門メディアVRFocusは10月23日、AIを活用した短編映画制作アプリ「Agence」を解説した記事を公開しました。PC、モバイル、さらにはOculusやViveといったVRデバイスにも対応した同アプリは、一般的な動画編集アプリとはまったく異なります。同アプリはAIキャラクターが棲息する架空の小惑星で生じる出来事を映画にするというユニークなものです。

Agenceをプレイするにあたっては、プレイヤーは小惑星に棲息するAIキャラクターをルールベースで行動するゲームAIか、あるいは強化学習の学習エージェントとして行動する強化学習AIのどちらかから選びます。AIキャラクターの性格を選択したら、それらの行動を観察しながら、行動に影響を与える植物を小惑星に植えたり、もっと直接的にキャラクターの位置を動かしたりして行動に干渉します。こうしたキャラクターとプレイヤーの相互作用の体験過程が映画となるのです。

ルールベースで行動するAIキャラクターは、行動に干渉されても行動が一定のパターンに収束するので、何らかのストーリーを展開しているように見えます。対して強化学習AIは、プレイヤーが干渉することによって生じた環境の変化に適応するように行動を変えていきます。強化学習AIについては学習環境に関するソースコードも公開されており、ソースコード自体を書き換えることで学習過程を大きく変えることができます。

以上のような「高度にインタラクティブな映画制作アプリ」とも「ストーリーテリングに特化したゲーム」とも言えそうなAgenceは、現代アートの国際的美術展覧会であるヴェネツィア・ビエンナーレのVR拡張部門に出品されて注目を集めました。

人間関係がAIへの信頼に影響を及ぼすことが判明

Tech Xploreは10月29日、人間のAIに対する信頼に関する論文も紹介しています。カンザス大学の学際的研究チームは、人間関係がAIへの信頼に影響を及ぼすことを明らかにした論文を発表しました。

発表された論文によると、人間同士の恋愛関係や親子関係の中核を成すとされる、他人への愛着を高いレベルで感じられる状態だと、AIへの信頼も高まることがわかりました。反対に愛着に乏しい状態だと、AIへの信頼も低下するのです。この結果から、人間が他人に抱く愛着の度合いからAIへの信頼の度合いを推測することができると言えます。論文では、愛着とは別のポジティブな感情とAIへの信頼の関係はまだ不明であるとも述べています。

以上の研究結果から、近い将来、職場に高度なAIアシスタントを導入する時には、職場の人間関係がAIアシスタントへの信頼に影響を及ぼすのではないかと言えそうです。今回の研究成果が一般的な認知を得た場合、「職場にAIアシスタントを導入する前に、まずは職場の雰囲気を見直そう」という風潮が当たり前になる日が来るのかも知れません。

Writer:吉本幸記、Image by Stefan KellerPixabay

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