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CGへの扉 Vol.45:大規模言語モデルChatGPTは仲間?ライバル?

2022.12.21アート

CGへの扉 Vol.45:大規模言語モデルChatGPTは仲間?ライバル?

ネットの叡智を集め、自然な回答をしてくれる人工知能チャット。それも流暢な日本語で

DALL-EやGPT-3で注目を浴び続けている、人工知能を研究する非営利団体OpenAIが2022年11月、チャット形式で対話ができるChatGPTを発表し、広く試用できるよう無料公開を開始しました。

2022年に機械学習を終えたGPT-3の改良型「GPT-3.5」の成果を体感するためのインタフェースとしてチャット形式で利用できるChatGPTが、GoogleアカウントやMicrosoftアカウントの認証で平易に試用することができます。現在は試用版(プレビュー版)としての公開であり、1回の応答の平均コストが「10セント未満(約14円)」とのこと。

公開直後から100万人以上のユーザーが頻繁に利用しており、膨大なコストがかかり続けており、早々にプレビュー公開は終了し、有料化し、収益を得る流れに変わっていくことが予想されます。

OpenAIではGPT-3から、差別的な言動や暴力的な言葉の扱いに対処し、人間の誤った文章や過激な言葉遣い、幻想のようなヘンテコな創作などを排除したInstructGPTが構築されました。ChatGPTはこのInstructGPTで得られた成果が生かされており、回答の内容もより洗練されたものになっている印象です。洗練された回答の背景にはReinforcement Learning with Human Feedback (RLHF)と呼ばれる人間に回答を評価させる手法による影響もあるでしょう。

ChatGPTの話題のポイントは、なによりも自然な文章、的確な返答、英語はもちろんのこと流暢な日本語での回答です。単発の質問と回答はもとより、対話を繰り返していくことで、さらに詳しい話題の文脈にしたがった回答をしていくのが驚きです。

人工知能の評価方法のひとつとして「チューリングテスト」があります。チューリングテストとは、計算機科学者であるアラン・チューリングが提唱した、ある機械が「人間的」かどうかを判定するためのテストのことです。チューリングの1950年の著作で紹介された手法で、人間がコンピュータと文字だけで対話した際、やりとりする会話の内容、意味などから相手が人間かコンピュータかどちらかなのかを判断するテストです。

史上初めてチューリングテストに合格したのは2014年、チャットボットEugene Goostmanです。今回登場したChatGPTは、このチューリングテストを難なくパスするであろうというよりも、あまりにも回答がスムーズすぎ、多方面に博識すぎるため、逆に人工知能だと疑われてしまうのではと考えています。ChatGPTは、間違った回答を指摘すると、素直に間違いを認めますし、不適切な要求を拒否することもあり、人間っぽいところもあります。

ChatGPTの取り扱いについて注意点としては、次のような事柄が考えられます。ただし長期的には解消する内容もあると考えています。

  1. 現状は正しい文章でもっともらしい回答をしたとしても、嘘や間違いが含まれている場合もあること
  2. プライバシーにまつわる情報や、公衆道徳などに関係する話題は意図的に避けており、回答にバイアスがかかっている可能性もある
  3. 機械学習の元となったデータが2021年までのものなので、現在のところ最近の新しい話題には対応できない
  4. 送信した文章や評価などは、品質向上のため使われることを承知の上で利用する必要がある(アカウントの削除はできるが、後から個別の記録削除依頼ができない)

ChatGPTがクリエイティブに与える影響は?

MidjourneyやStable Diffusionが登場し、人工知能による画像生成が話題になった時も、それほど大きな影響はないと考えていた人や業界も、ChatGPTのスムーズな受け答えを知ると、にわかに「AIに仕事が奪われる」というフレーズが頭をよぎるようになりました。

AIにはできないだろうと考えていた創造的(に思える)分野でも、その可能性の片鱗を見せつけてきたのがChatGPTなのです。例えばChatGPTは、次のような問いにも的確な回答を返してくれます。時間をかけてGoogleキーワード検索で何かを探したり、調査会社などに依頼していた事柄や業界における一般的な手順や手法なども、若干物足りないことはあれど数秒でなんなく回答してくれます。

質問例(話題をゲームに特化しています)

  1. ゲーム音楽のコード進行
  2. ゲームのストーリー構成
  3. ゲームに登場するキャラクター設定
  4. ストーリー冒頭の書き出し
  5. 世界観に関する情報提供
  6. 開発の手順や工程などについて
  7. 制作作業に必要な項目の箇条書き
  8. 制作に必要な各種調査や、一般的な回答
  9. ある特定のアルゴリズムやソースコードを示す
  10. データベースの設計、必要な要素の提示
例:推理小説のネタ
例:RPGゲームのアイデア
例:冒険物語の書き出し
例:未来の洞窟をテーマにしたゲームを考えて
例:RPGゲームのキャラクタDBの設計

業界の第一線で働いている人であれば、これらのChatGPTの回答を読むと「まだまだだな」と思われるかもしれません。けれども今後ものすごい勢いで進化していくであろうことを想像してみてください。そら恐ろしくなってきませんか?

頼りになる同僚として ChatGPT をどう制作に活かせる?

映画『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021) では、砂漠での撮影シーンが多数扱われました。実際に砂漠で撮影したものもあれば、スタジオ撮影したものに砂漠の背景を合成したような映像もあります。CG/VFX映像制作の際「リファレンス」と呼ばれる参考映像や写真を多数用意し、映像の雰囲気や本物らしさを表現する手助けに利用します。そんなリファレンスの補助としてChatGPTが使えるのではないかと考え、少々極端ではありますが「砂漠」についていろいろと質問してみました。

例:砂漠を背景にしたVFXを作るには?
例:砂漠を背景にしたVFXでの光の当たり方の再現方法は?
例:砂漠をCGで表現する際のポイントを箇条書きで。砂漠にはどんな生き物がいるの?

さらに、ChatGPT に画像生成AIである Midjourney や Stable Diffusion に画像を生成させるための文言(プロンプト)を生成させる工夫も浸透してきています。 ChatGPTが出力するプロンプトの例文は、「なるほどこういう風に指示すると良いのか!」と感心することでしょう。人工知能同士、心?が通じ合うのかもしれません。

クリエイティブ活動に与える影響は?

ChatGPTを提供しているOpenAIはイーロン・マスクとスタートアップアクセラレーターであるY Combinatorのサム・アルトマンが2016年に設立したAI研究の非営利組織です。Microsoftも2019年に10億ドル(当時約1080億円)出資しています。理念として「人類全体に、害をもたらすよりは友好的な人工知能を、注意深く発展させることを目的」としており、ChatGPTのような大規模言語モデルは、もともと人間が作成した文章や会話をもとに作成されています。

とくに ChatGPT の場合、先に紹介した RLHF に加え、人工知能が返答するであろう回答も、人間が模範回答を作り、そこから学習しています。今後は、いったん大規模言語モデルができたものから、日々更新される情報を取り入れどう進化させていくか、参考にしない方が良いデータや、人工知能が作ったデータを間違って再学習しないように情報の侵食をどう防ぐか、オリジナリティーや創造性に役立つ情報をどう導き出していくのか?

引用元や機械学習の元となる情報をどう適切に選びとっていくのかなどなど、さまざまな課題が積み上がっていると考えますが、それも一過性のことでしょう。数か月後、数年後には今は気にもしない新たな困難に出会う可能性もあり、今以上に人工知能が活用され尽くしている世界が到来するのかもしれません。

最後に「AIがクリエイティブに与える影響は?」と ChatGPT に問いかけたところ…

  1. 音楽や絵画などを生成することはできるが、人間がもつ創造性や感性が欠けているため、高い品質をもった作品とは言えない
  2. けれどもAIがクリエイティブに与える影響は無視できないほど、さらにAIは発展していく
  3. 今後はAIと人間が協力し人間が作る作品を修正して手助けする、人間がAIの制作を評価していくことで発展が期待できる

といった、納得のいく回答が返ってきました。音楽や絵画、ゲームなど様々なクリエイティブ活動において、完全なる独創性や、今まで誰も見たことなかったようなオリジナリティーを持った作人には滅多に出会いません。またそういった作品はその時代や一般には受け入れられ難い場合もあります。人類の過去を学んだ人工知能の助けを借りて、人間の創造性を加速するのがこれからのクリエイティブ活動なのかもしれないと考えています。そしてそういった考えも、おおいに ChatGPT の影響を受けているような気持ちになり、自分の考えとはなんだろうと自問自答しています。

本連載の今後の予定:「CGへの扉」では、単なるAIの話題とは少し異なり、CG/VFX, アートの文脈から話題を切り取り紹介していきます。映像制作の現場におけるAI活用や、AIで価値が高まった先進的なツール、これからの可能性を感じさせるような話題、テクノロジーの話題にご期待ください。何か取り上げて欲しいテーマやご希望などがございましたら、ぜひ編集部までお知らせください。

CGへの扉

Vol.44:AdobeMAX2022開催。SneaksよりAI活用の方向性を知る

Vol.43:AI絵師は3DCGの領域へ

Vol.42:現代の呪文promptが生み出すAIとの新しい関係性

Vol.41:AIが促進させるCG研究。SIGGRAPH2022論文より

Vol.40:知見の宝庫。MITの機械学習オンラインコース

Vol.39:言葉から生み出されるアートとは?

Vol.38:AIで作りAIで届ける映像作品

Vol.37:NVIDIA GTC 2022 レポート/アートとAIの視点で

Vol.36:創るためのAI〜AIと人間の創造性の未来:徳井直生氏講演レポート

Vol.35:マーベル・シネマティック・ユニバースを支える機械学習

Vol.34:注目論文よりCGの祭典 #SIGGRAPHAsia2021 を振り返る

Vol.33:AIの必然性 #SIGGRAPHAsia2021 レポート

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Contributor:安藤幸央

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