モリカトロン株式会社運営「エンターテインメント×AI」の最新情報をお届けするサイトです。
- TAG LIST
- CGCGへの扉機械学習安藤幸央ディープラーニング月刊エンタメAIニュースGAN河合律子OpenAINVIDIA音楽吉本幸記ニューラルネットワーク三宅陽一郎強化学習GoogleQAグーグルDeepMindGPT-3Facebook自然言語処理人工知能学会大内孝子森川幸人敵対的生成ネットワークシナリオキャラクターAIスクウェア・エニックスモリカトロンAIラボインタビューマイクロソフトルールベースStable DiffusionAIと倫理アート映画デバッグNFTDALL-E2StyleGAN倫理ゲームプレイAI自動生成SIGGRAPHモリカトロンメタAIテキスト画像生成ロボット深層学習ファッションCEDEC2019プロシージャルVFXデジタルツイン遺伝的アルゴリズムテストプレイNPCDALL-ECLIP画像生成大規模言語モデルChatGPTビヘイビア・ツリーディープフェイクCEDEC2021CEDEC2020ゲームAIメタバース不完全情報ゲームVRナビゲーションAI画像生成AIボードゲーム畳み込みニューラルネットワークGDC 2021JSAI2022生成系AIAdobeGDC 2019マルチエージェントCEDEC2022著作権AIアート懐ゲーから辿るゲームAI技術史toioジェネレーティブAICNNMicrosoftNVIDIA OmniverseUnity小説アニメーション鴫原盛之HTN階層型タスクネットワークマンガ汎用人工知能JSAI2020GTC2023TensorFlowインタビューバーチャルヒューマンBERTMidjourneyイベントレポート対話型エージェントAmazonロボティクスMetaMinecraft水野勇太アバターOmniverse3DCGUbisoftGenvid TechnologiesガイスターStyleGAN2GTC2022教育ソニーJSAI2021スポーツ研究シムピープルMCS-AI動的連携モデルマーケティングGDC SummerLLMブロックチェーン作曲アストロノーカキャリアeスポーツスタンフォード大学サイバーエージェント音声認識eSportsDQNBLUE PROTOCOLシーマンStability AIメタAlphaZeroTransformerGPT-2rinnaAIりんなデジタルヒューマンカメラ環世界中島秀之PaLM哲学ベリサーブPlayable!理化学研究所SIGGRAPH ASIANetflix東京大学DARPAドローンシムシティImagenZorkバイアスモーションキャプチャーTEZUKA2020AI美空ひばり手塚治虫テキスト生成バンダイナムコ研究所スパーシャルAIElectronic Arts3DメタデータLEFT 4 DEAD通しプレイOpenAI Five本間翔太CMAudio2Faceピクサープラチナエッグイーサリアムボエダ・ゴティエビッグデータ中嶋謙互Amadeus Codeデータ分析Microsoft AzureMILE模倣学習ナラティブNVIDIA RivaアーケードゲームOmniverse ReplicatorWCCFレコメンドシステムNVIDIA DRIVE SimWORLD CLUB Champion FootballNVIDIA Isaac Simセガ柏田知大軍事田邊雅彦トレーディングカードトレカメディアアートGPTPyTorch眞鍋和子バンダイナムコスタジオaibo合成音声齊藤陽介マインクラフトお知らせMagic Leap Oneチャットボットサルでもわかる人工知能VAEDreamFusionリップシンキングUbisoft La Forge自動運転車ワークショップ知識表現ウォッチドッグス レギオンIGDA秋期GTC2022市場分析どうぶつしょうぎEpic Gamesジェイ・コウガミ音楽ストリーミングMITAIロボ「迷キュー」に挑戦AWS野々下裕子徳井直生マシンラーニング5GMuZeroRival Peakpixivクラウド対話エンジン斎藤由多加リトル・コンピュータ・ピープルCodexコンピューティショナル・フォトグラフィーゴブレット・ゴブラーズ絵画ARMicrosoft Designerイラストシミュレーション完全情報ゲーム坂本洋典釜屋憲彦ウェイポイントパス検索対談藤澤仁生物学GTC 2022画像認識GPT-3.5SiemensStyleCLIPDeNA長谷洋平masumi toyota宮路洋一OpenSeaGDC 2022Gen-1TextWorldEarth-2BingMagenta音楽生成AISFELYZA Pencil松尾豊GTC2021CycleGANテンセントデータマイニングNetHackはこだて未来大学Bardキャラクターモーションフェイクニュース現代アートエージェントRPGSIGGRAPH 2022レベルデザインAIボイスアクターNVIDIA CanvasGPUALife人工生命オルタナティヴ・マシンサウンドスケープLaMDATRPGAI DungeonプロンプトASBS栗原聡ぱいどんアドベンチャーゲーム不気味の谷ナビゲーションメッシュ松井俊浩ELYZAフルコトELYZA DIGEST建築音声合成NeRF西成活裕Apex LegendsELIZA群衆マネジメントライブポートレイトNinjaコンピュータRPGライブビジネスWonder Studioアップルタウン物語新型コロナ土木KELDIC周済涛BIMメロディ言語清田陽司インフラゲームTENTUPLAYサイバネティックスMARVEL Future FightAstro人工知能史Amazon BedrockタイムラプスEgo4DAI哲学マップイーロン・マスクバスキア星新一X.AI日経イノベーション・ラボStyleGAN-XLX Corp.敵対的強化学習StyleGAN3Twitter階層型強化学習GOSU Data LabGANimatorXホールディングスWANNGOSU Voice AssistantVoLux-GANMagi竹内将SenpAI.GGProjected GANStable Diffusion XLMobalyticsSelf-Distilled StyleGANSDXL馬淵浩希CygamesニューラルレンダリングRTFKT岡島学AWS SagemakerPLATONIKE映像セリア・ホデント形態素解析frame.ioClone XUXAWS LambdaFoodly村上隆誤字検出森山和道認知科学中川友紀子Digital MarkゲームデザインSentencePieceアールティSnapchatLUMINOUS ENGINEクリエイターコミュニティLuminous ProductionsBlenderBot 3バーチャルペットパターン・ランゲージ竹村也哉Meta AINVIDIA NeMo Serviceちょまどマーク・ザッカーバーグヴァネッサ・ローザGOAPWACULVanessa A RosaAdobe MAX 2021陶芸自動翻訳Play.ht音声AIAIライティングLiDAROmniverse AvatarAIのべりすとPolycamFPSQuillBotdeforumマルコフ決定過程NVIDIA MegatronCopysmith動画生成AINVIDIA MerlinJasperハーベストNVIDIA MetropolisForGamesパラメータ設計テニスゲームマーケットバランス調整岡野翔太協調フィルタリング郡山喜彦人狼知能テキサス大学ジェフリー・ヒントンGoogle I/O 2023AlphaDogfight TrialsAI Messenger VoicebotGoogle I/OエージェントシミュレーションOpenAI Codex武蔵野美術大学StarCraft IIHyperStyleMax CooperBingAIFuture of Life InstituteRendering with StyleIntelDisney類家利直FireflyLAIKADisneyリサーチヴィトゲンシュタインPhotoshopRotomationGauGAN論理哲学論考LightroomGauGAN2京都芸術大学Canvaドラゴンクエストライバルズ画像言語表現モデルChatGPT4不確定ゲームSIGGRAPH ASIA 2021PromptBaseBOOTHDota 2モンテカルロ木探索ディズニーリサーチpixivFANBOXMitsuba2バンダイナムコネクサス虎の穴ソーシャルゲームEmbeddingワイツマン科学研究所ユーザーレビューFantiaGTC2020CG衣装mimicとらのあなNVIDIA MAXINEVRファッションBaidu集英社淡路滋ビデオ会議ArtflowERNIE-ViLG少年ジャンプ+グリムノーツEponym古文書ComicCopilotゴティエ・ボエダ音声クローニング凸版印刷コミコパGautier Boeda階層的クラスタリングGopherAI-OCRゲームマスター画像判定Inowrld AIJuliusSIE鑑定ラベル付けMODTPRGOxia Palus大澤博隆Ghostwriterバーチャル・ヒューマン・エージェントtoio SDK for UnityArt RecognitionSFプロトタイピングSkyrimクーガー田中章愛実況パワフルサッカースカイリム石井敦銭起揚NHC 2021桃太郎電鉄RPGツクールMZ茂谷保伯池田利夫桃鉄ChatGPT_APIMZGDMC新刊案内パワサカダンジョンズ&ドラゴンズマーベル・シネマティック・ユニバースコナミデジタルエンタテインメントOracle RPG成沢理恵MITメディアラボMCU岩倉宏介深津貴之アベンジャーズPPOxVASynthマジック・リープDigital DomainMachine Learning Project CanvasLaser-NVMagendaMasquerade2.0国立情報学研究所TencentノンファンジブルトークンDDSPフェイシャルキャプチャー石川冬樹MERFサッカーモリカトロン開発者インタビュースパコンAlibaba里井大輝Kaggle宮本茂則スーパーコンピュータVQRFバスケットボール山田暉松岡 聡nvdiffrecAssassin’s Creed OriginsAI会話ジェネレーターTSUBAME 1.0NeRFMeshingSea of ThievesTSUBAME 2.0LERFGEMS COMPANYmonoAI technologyLSTMABCIマスタリングモリカトロンAIソリューション富岳TikTok初音ミクOculusコード生成AISociety 5.0リアム・ギャラガー転移学習テストAlphaCode夏の電脳甲子園グライムスBaldur's Gate 3Codeforces座談会BoomyCandy Crush Saga自己増強型AItext-to-imageジョン・レジェンドSIGGRAPH ASIA 2020COLMAPtext-to-3Dザ・ウィークエンドADOPNVIDIA GET3DドレイクデバッギングBigGANGANverse3DMaterialGANRNNグランツーリスモSPORTAI絵師ReBeLグランツーリスモ・ソフィーUGCGTソフィーPGCVolvoFIAグランツーリスモチャンピオンシップNovelAIRival PrakDGX A100NovelAI DiffusionVTuberユービーアイソフトWebcam VTuberモーションデータ星新一賞北尾まどかHALOポーズ推定将棋メタルギアソリッドVフォートナイトメッシュ生成FSMメルセデス・ベンツRobloxMagic Leapナップサック問題Live NationEpyllion汎用言語モデルWeb3.0マシュー・ボールAIOpsムーアの法則SpotifyスマートコントラクトReplica StudioamuseChitrakarQosmoAdobe MAX 2022巡回セールスマン問題Adobe MAXジョルダン曲線メディアAdobe Research政治Galacticaクラウドゲーミングがんばれ森川君2号和田洋一リアリティ番組映像解析Stadiaジョンソン裕子セキュリティMILEsNightCafe東芝デジタルソリューションズインタラクティブ・ストリーミングLuis RuizSATLYS 映像解析AIインタラクティブ・メディアポケモン3DスキャンPFN 3D Scanシーマン人工知能研究所東京工業大学Ludo博報堂Preferred NetworksラップPFN 4D ScanSIGGRAPH 2019ArtEmisZ世代DreamUpAIラッパーシステムDeviantArtWaifu DiffusionGROVERプラスリンクス ~キミと繋がる想い~元素法典FAIRSTCNovel AIチート検出Style Transfer ConversationOpen AIオンラインカジノRCPアップルRealFlowRinna Character PlatformiPhoneCALADeep FluidsSoul Machines柿沼太一MeInGameAmeliaELSIAIGraphブレイン・コンピュータ・インタフェースバーチャルキャラクターBCIGateboxアフォーダンスLearning from VideoANIMAKPaLM-SayCan予期知能逢妻ヒカリセコムGitHub Copilotユクスキュルバーチャル警備システムCode as Policiesカント損保ジャパンCaP上原利之ドラゴンクエストエージェントアーキテクチャアッパーグラウンドコリジョンチェックPAIROCTOPATH TRAVELER西木康智OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者山口情報芸術センター[YCAM]アルスエレクトロニカ2019品質保証YCAMStyleRigAutodeskアンラーニング・ランゲージ逆転オセロニアBentley Systemsカイル・マクドナルドワールドシミュレーターローレン・リー・マッカーシー奥村エルネスト純いただきストリートH100鎖国[Walled Garden]プロジェクト齋藤精一大森田不可止COBOLSIGGRAPH ASIA 2022高橋智隆DGX H100VToonifyロボユニザナックDGX SuperPODControlVAE泉幸典仁井谷正充クラウドコンピューティング変分オートエンコーダーロボコレ2019Instant NeRFフォトグラメトリartonomous回帰型ニューラルネットワークbitGANsDeepJoinぎゅわんぶらあ自己中心派Azure Machine LearningAzure OpenAI Service意思決定モデル脱出ゲームDeepLHybrid Reward Architectureコミュニティ管理DeepL WriteウロチョロスSuper PhoenixSNSProject Malmoオンラインゲーム気候変動Project PaidiaシンギュラリティProject Lookoutマックス・プランク気象研究所レイ・カーツワイルWatch Forビョルン・スティーブンスヴァーナー・ヴィンジ気象モデルRunway ResearchLEFT ALIVE気象シミュレーションMake-A-Video長谷川誠ジミ・ヘンドリックス環境問題PhenakiBaby Xカート・コバーンエコロジーDreamixロバート・ダウニー・Jr.エイミー・ワインハウスSDGsText-to-ImageモデルYouTubeダフト・パンクメモリスタ音声生成AIGlenn MarshallScenarioThe Age of A.I.Story2Hallucination音声変換LatitudeレコメンデーションJukeboxAIピカソVeap JapanAI素材.comEAPneoAISIFT福井千春DreamIconDCGAN医療mignMOBADANNCEメンタルケアstudiffuse人事ハーバード大学Edgar HandyAndreessen Horowitz研修デューク大学AIQVE ONEQA Tech Nightmynet.aiローグライクゲーム松木晋祐東京理科大学下田純也人工音声NeurIPS 2021産業技術総合研究所桑野範久リザバーコンピューティングプレイ動画ヒップホップ対話型AIモデル詩ソニーマーケティングControlNetサイレント映画もじぱnoteNBA環境音暗号通貨note AIアシスタントFUZZLEKetchupAlterationAI News粒子群最適化法Art Selfie進化差分法オープンワールドArt Transfer群知能下川大樹AIFAPet Portraitsウィル・ライト高津芳希P2EBlob Opera大石真史クリムトBEiTStyleGAN-NADA世界モデルDETRゲームエンジンDreamerV3SporeUnreal Engineクリティックネットワークデノイズ南カリフォルニア大学Unity for Industryアクターネットワーク画像処理DMLabSentropyGLIDEControl SuiteCPUDiscordAvatarCLIPAtari 100kSynthetic DataAtari 200MCALMYann LeCunプログラミングサム・アルトマン鈴木雅大ソースコード生成コンセプトアートGMAIシチズンデベロッパーSonanticColie WertzGitHubCohereリドリー・スコットウィザードリィMCN-AI連携モデルマジック:ザ・ギャザリング絵コンテUrzas.aiストーリーボード介護大阪大学西川善司並木幸介KikiBlenderサムライスピリッツ森寅嘉Zoetic AIゼビウスSIGGRAPH 2021ペットGPT-4ストリートファイター半導体Digital Dream LabsPaLM APITopaz Video Enhance AICozmoMakerSuiteDLSSタカラトミーSkeb山野辺一記NetEaseLOVOTDreambooth-Stable-Diffusion大里飛鳥DynamixyzMOFLINゲーム背景RomiGoogle EarthU-NetミクシィGEPPETTO AI13フェイズ構造ユニロボットStable Diffusion web UIADVユニボPoint-EXLandGatoアパレルAGIAI model手塚眞DEATH STRANDINGマルチモーダルAI ModelsEric Johnson汎用強化学習AIZMO.AIデザインMOBBY’SOculus Questコジマプロダクションロンドン芸術大学モビーディック生体情報デシマエンジンGoogle BrainダイビングインディーゲームSound Controlアウトドア写真高橋ミレイSYNTH SUPERAIスキャニング照明Maxim PeterKarl Sims自動採寸Joshua RomoffArtnome3DLOOKハイパースケープICONATESizer山崎陽斗深層強化学習ワコール立木創太松原仁スニーカー浜中雅俊UNSTREETミライ小町武田英明Newelseテスラ福井健策CheckGoodsGameGAN二次流通パックマンTesla BotNEDO中古市場Tesla AI DayWikipediaDupe Killerソサエティ5.0Sphere偽ブランドSIGGRAPH 2020バズグラフXaver 1000配信ニュースタンテキ養蜂東芝Beewiseソニー・ピクチャーズ アニメーションDIB-R倉田宜典フィンテック投資Fosters+Partners韻律射影MILIZEZaha Hadid Architects広告韻律転移三菱UFJ信託銀行
CGへの扉 Vol.23:AIで人の眼に進化するカメラ
カメラの時代、写真の時代、スマートフォンの時代
2000年に携帯電話にカメラが搭載されて以来、現在スマートフォンに搭載されている高性能カメラで写真を撮影することは、ごくごく普通の行為となりました。スマートフォンで撮影された写真はSNSに投稿されたり、さまざまなアプリで写真加工されたり、誰もが気軽に扱うものとなっています。そういったスマートフォンで写真を楽しむことが広がり、リアルで正確に撮影された記録としての写真よりも、人々は見たい写真、撮りたい写真を楽しんでいるとも言えます。
ここ数か月、新型コロナウイルスの影響で旅行や外出の機会が減り、写真を撮る機会や枚数が減っていると実感している人も多いのではないでしょうか? 写真共有サイトFlickrによる少し前の調査によると、スマートフォンでの写真撮影はカメラデバイスの50%を占め、デジタル一眼は33%、コンパクトデジタルカメラは12%、デジタルミラーレスは4%と算出されています。
Top Devices of 2017 on Flickr:https://blog.flickr.net/en/2017/12/07/top-devices-of-2017/
多くのセミプロが気合の入った写真を共有しているFlickrでこの割合なので、一般にはスマートフォンの搭載カメラで写真撮影されている割合がさらに多いことでしょう。次のグラフを見ると分かるようにデジタル一眼レフカメラやミラーレスカメラは横ばいですが、コンパクトカメラの売り上げが急減、そしてスマートフォンの増加が信じられないほどの伸び率になっています。

こういった状況の背景には、スマートフォンの手軽さもさることながら、スマートフォンで撮影する写真の品質、美しさが際立ってきたことの多大なる影響もあります。これらスマートフォンに搭載されている極小カメラで写真撮影できるようになった背景のひとつにコンピューティショナル・フォトグラフィー(コンピュータを利用した写真撮影)の進化があります。
この分野のパイオニアであるMarc Levoy氏によると、コンピューティショナル・フォトグラフィーとは、「デジタル写真の機能を強化したり拡張したりする、コンピュータを活用したさまざまなイメージング技術」のことです。カメラセンサーやレンズだけでできることを超え、コンピューティショナル・フォトグラフィーでは、ソフトウェアの力を借りて写真画像を変更したり加工したりします。
現在のスマートフォンのカメラの素晴らしさを多くの人が手に入れられている背景には、この2010年頃から始まったMarc Levoy氏のスタンフォード大学での研究成果、そして2014年にGoogleに入社してからの活躍があります。Marc Levoy氏のGoogleでの功績は他にもGoogleストリートビュー、書籍スキャンプロジェクトがありますが、なかでもPixelシリーズでのHDR+、ポートレートモード、夜景モードはカメラ業界に驚きを持って迎えられました。
GoogleのスマートフォンPixelシリーズが持つこれらのコンピューティショナル・フォトグラフィーを活用した機能は、
他メーカーのスマートフォンカメラの性能向上にも大きな影響を与えています。現在Marc Levoy氏は、Googleを辞めAdobeの副社長兼フェローに就任しており、特定のメーカー、特定のハードウェアに依存しない、ユニーバーサルなカメラ技術について研究と実装を進めているそうです。
コンピューティショナル・フォトグラフィーのアプローチで実現したカメラ機能には下記のようなものがあります。
- ポートレートモード、人物撮影専用に背景をぼかす機能。
- ボケ、ピントずれ、手ブレ、逆光、光量が少ない撮影での補正
- レンズの持つ機能以上のデジタルズーム
- 極端に明るい所または極端に暗い所、それらが混在した環境でのHDR合成
- 撮影後のピント修正、デジタルリフォーカス
- 奥行き感の再構築
- 視点や構図の調整
- 色、発色の最適化、調整。
- 夜景や星空など光量が極端に少ない所での撮影
これらの機能だけでも従来プロフェッショナルなカメラマンしか使いこなせなかったカメラ技術が平易に実現できており、最新のスマートフォンユーザーも大いに恩恵を受けています。最近ではさらに人工知能、機械学習の手助けを得て写真加工技術や修正技術が進化し、次のような機能が手軽に使えるようになってきています。現在は撮影後の写真画像を加工するツールが台頭していますが、近い将来カメラ本体に組み込まれたり、スマートフォンだけで実現できるようになる日も近いでしょう。
- プロが撮影した理想的な写真から色調や構図を機械学習したものから写真補正
- 青空や曇天の差し替え、背景の差し替え
- 肌の色艶の補正、演出
- 撮影時には無かった照明や光のコントロール、追加や削除
- 撮影対象の物体や人の強調やその逆の効果
- 写真全体のコントラスト調整、メリハリの調整
- 不要な映り込み、不要なオブジェクトの消去(従来写真加工専門ソフトPhotoshop等で編集作業しなければならなかった)
- わずかな光量で撮影された写真の高精細化(Xiaomiのスマートフォンに搭載されたBlink.ai社の技術が注目されている)
人工知能を活用した一歩進んだ写真加工ツールの数々
SKYLUM社 Luminar AI
AI技術を活用したさまざまな写真加工が可能なツールです。撮影直後の写真を解析し、適切なテンプレートを提案して雰囲気やスタイルを合わせた加工ができます。例えば、撮影時にイマイチだった天候のためくすんだ風景写真や明るさが足りなかった写真、視点が外れたポートレート写真などの修正が可能です。
Luminar AI:https://skylum.com/jp/luminar-ai-b
Facet
AIを活用した写真画像のマスク作成技術です。
Facet:https://facet.ai/
ARSENAL 2
カメラに取り付けて用いるAI搭載カメラアシスタント。2021年6月発売予定で先行予約中です。これは適正な露出を割り出し自動設定してくれるものです。影が潰れないように明るい日光にも対応したり、夜空や夜景も最適設定で撮影することなどができます。マルチショットと呼ばれる複数写真を撮影することで、余計な人物が写り込まない合成写真を作成することもできます。
ARSENAL 2:https://witharsenal.com/
ACワークス社 ACbeautify
GAN(Generative Adversarial Network, 敵対的生成ネットワーク)を活用した画像補正ツールです。通常の色補正と、HDR色補正の2種類の結果から気に入ったものを選択できます。逆光で撮影された写真の補正などが手軽に行えるでしょう。サイトにアクセスすれば登録不要で無料で試すことができます。
ACbeautify:https://ac-beautify.com/
photolemur3
平易な操作で撮影写真の加工が可能なツールです。何が撮影されているのかを解析した上でディテールの調整、加工、補正、雰囲気の変更、露出の補正、逆光の補正、枝葉の強調、かすみの除去などができます。
photolemur3:https://photolemur.com/
Topaz Labs社 Gigapixel AI
高精細なレンズとカメラで撮影した写真よりも、ディテールや質感がクッキリとした表現ができる写真加工ツールです。約600%の引き伸ばしが可能です。姉妹製品として DeNoise AI、 Sharpen AI、JPEGtoRAW という製品があります。
Gigapixel AI:https://topazlabs.com/gigapixel-ai/
SELBY社 AIPHOTEC
宝飾品のネット販売向けAI自動画像補正アプリです。
AIPHOTEC:https://www.aiphotec.com/
人工知能、機械学習とカメラ技術の親和性
Amazonから開発者向けにリリースされている AWS DeepLens は、深層学習に対応したビデオカメラです。249ドル、日本でも3万円弱でAmazon.co.jpから購入可能です。DeepLensは、オブジェクトの検出、写真に写っている物体の解析、動物の種別を見分けたり、鳥の分類判別と検知、人間の顔認識、頭の位置や方向の検知、他者が開発したDeepLens用アプリの活用が可能です。カメラというよりも、カメラが搭載された小型コンピュータと言えるかもしれません。
活用サンプルとしては、ゴミの選別をするDeepLensシステムの構築、読書やゲームでの応用などが紹介されています。1台の性能はたいしたことないと考えるかもしれませんが、こういったコンピュータが搭載されたタイプのカメラが複数連携して機能する場合、新しいアプリを入れ替えることで機能や性能も向上したり、さまざまな連携が可能であることを考えると、ひとつのカメラの進化系であると考えられます。他にもカメラ側でAIを活用した画像認識を行うネットワークカメラ、AIエッジカメラとも言える「SORACOM Plus Camera Basic」や、 スマートフォンと連携するコンピューティショナルカメラ「Alice Camera」など、カメラそのものがコンピュータ化したデバイスも増えてきました。
人工知能の力を借りた、未来のカメラとは?
キヤノンの最新デジタル一眼レフカメラ EOS-1D X Mark III では、スポーツシーンの撮影に特化した頭部の追尾やオートフォーカス機能の実装にディープラーニングの技術が活用されています。これらの最新機能は、撮影者はほとんど意識することなしに活用できます。今後カメラ本体に機械学習の技術が活用されたデバイスが増えていくことが考えられます。
EOS-1D X Mark III | AF・AE:https://cweb.canon.jp/eos/lineup/1dxmk3/feature-aeaf.html
その他、自動運転車には長距離短距離で物体が検知できる深度カメラ、周囲の映像を取得できるパノラマカメラ、オブジェクト検知用の車内外カメラなどさまざまな最新カメラ技術、画像解析技術が満載されています。一時停止マークと、あるラーメン店のロゴがよく似ているために一時停止してしまった車が話題になりましたが、まだまだテクノロジーの進化、活用の余地があると考えられます。
どんなにテクノロジーが進化しても、写真を撮る楽しみ、見る楽しみは続きます。貴重な時間を切り取って「写真」として残す行為は永久になくならないと考えられます。そして、データとしての写真、見るための写真と、意味合いや用途も広がってくることでしょう。すでに考え尽くされているかもしれませんが、まだまだ写真撮影、記録としての写真、アートとしての写真に、テクノロジーが関与する余地は多分に存在します。
今後は、まるでドラえもんの秘密道具のようなカメラが登場するかもしれません。撮影しなくてもネットワークからベストな風景写真を取得してくれるカメラ、アリバイカメラ、未来の様子を予測するカメラ、春夏秋冬関係なく、いつの季節の写真も撮影できるカメラ、腕が良くなくても、一流カメラマンと同じ構図、同じ色合いで撮影できるカメラなどが実現するかもしれません。こういった夢のようなカメラもコンピューティショナル・フォトグラフィーと人工知能を活用すれば既存技術の組み合わせで決して実現不可能なことではありません。
今現在のコンピューティショナル・フォトグラフィー活用を率いてきたMarc Levoy氏は”run faster and breathe deeper in order to stay ahead”「一歩先を行くためには、速く走りながら深呼吸しなければいけない」といった無理難題を口にしています。まさに最速で最新技術を研究、実装しながら、さらにありとあらゆる事象に素早く対処しつつ、多くの人に使ってもらえる深い配慮が欠かせないのかもしれません。
本連載の今後の予定:「CGへの扉」では、単なるAIの話題とは少し異なり、CG/VFX、アートの文脈から話題を切り取り紹介していきます。映像制作の現場におけるAI活用や、AIで価値が高まった先進的なツール、これからの可能性を感じさせるような話題、テクノロジーの話題にご期待ください。何か取り上げて欲しいテーマやご希望などがございましたら、ぜひ編集部までお知らせください。
Vol.22:言葉から画像を生成、DALL-Eはクリエイティブなのか?
Vol.21:人工知能+3DCGの最新論文をまとめて紹介 #SIGGRAPHAsia2020
Vol.20:Adobeと人工知能の将来を見極める #AdobeMAX2020
Vol.19:コミュニケーションツールの新境地「NVIDIA MAXINE」
Vol.18:SIGGRAPH2020レポート 映像制作の現場で活躍する人工知能
Vol.17:描画を進化させるTensorFlow Graphicsの真価
Contributor:安藤幸央