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CGへの扉 Vol.37:NVIDIA GTC 2022 レポート/アートとAIの視点で

2022.4.15アート

CGへの扉 Vol.37:NVIDIA GTC 2022 レポート/アートとAIの視点で

NVIDIA GTC 2022 開催

2022年3月23日に NVIDIA最大のオンラインイベント GPU Technology Conference 2022(GTC 2022)がオンラインで開催されました。数年前まではゲームやCG向けのグラフィックスチップのメーカーというイメージが強かったNVIDIAですが、昨今GPU(Graphics Processing Unit)のAI活用の広がりを受け、AIのみならず、車載コンピュータや、クラウドコンピューティングなど様々な分野での存在感を増してきました。

今回の GTC 2022 ではグレース・ホッパーさんにちなんだ H100(コードネーム Hopper ホッパー)という新しいGPUが発表されました。ホッパーさんは、銀行などの勘定系システムで現在も広く使われているプログラミング言語COBOLの生みの親です。H100は既存のNVIDIA A100 GPUの流れをくむもので、グラフィックス用途ではなく、完全にAI向けのものとして構成されています。NVIDIAは「エンタープライズAI」と呼んでおり、より大規模なディープラーニングなどでの活用が見込まれています。

H100を8基搭載した機械学習等AI利用のための「DGX H100」、32台のDGX H100を相互接続し、合計256基のH100を利用できるスーパーコンピュータ「DGX SuperPOD」が発表されました。さらに大規模な構成も可能だそう。用途としては医療分野、エネルギー分野、セキュリティ分野、言語モデル、宇宙産業、自動車産業、農業などが想定されています。現在販売されている A100搭載のコンピュータは最小構成でも300万円から500万円ほどとなりますが、各種クラウドコンピューティング環境で短時間利用や、サーバーの空き時間に安価に利用するといったことで活用の幅が広がると考えています。

NVIDIA DGX H100
https://www.nvidia.com/ja-jp/data-center/dgx-h100/

NVIDIA DGX SuperPOD
https://www.nvidia.com/ja-jp/data-center/dgx-superpod/

GTC 2022 カンファレンス公式サイト(日本語)
https://www.nvidia.com/ja-jp/gtc/

これらのコンピューティングパワーは、NVIDIA DRIVE Simによる仮想空間での自動運転シミュレーション、NVIDIA Isaac による仮想空間内での工業用ロボットのシミュレーションなどにも活用されていくとのこと。

Instant NeRF(2Dの写真から瞬時に三次元シーンを生成)

instant-ngpによるトレーニングとレンダリング

NVIDIAの解説によると、現在から75年前、ポラロイドのインタスタントカメラの登場で、3次元の空間を瞬時に2次元の空間に記録できることが驚きをもって受け入れられたのと同様、その反対の2次元画像である写真、それも数十枚の写真をもとに瞬時に3次元データを再構成するのがこのInstant NeRF(Neural Radiance Fields)で、 NVIDIA Researchによる研究中のテクノロジーです。従来も複数の写真から3D形状や3D空間を再構成する研究はありましたが、この Instant NeRF は従来に比べ1,000倍以上のスピードで解析・再構成が完了します。多少の事前準備は必要ですが、数十ミリ秒で3Dデータが再構成できるとのこと。

Instant NeRFによって、実在の人物を仮想空間のアバターに変換したり、ビデオ会議のたびに会議室や参加者を3D化したり、地図情報の3D化など「速く処理できる」というメリットによって、今まで難しかった使い方が可能になります。Instant NeRFの紹介ビデオは、セルフポートレイトの撮影などにポラロイドカメラを好んで利用しインスタント写真をアート作品にまで昇華させた Andy Warhol にちなんだものになっています。

セッション:GTC 2022 でのオンデマンド配信動画(要登録)
Instant Neural Graphics Primitives
https://www.nvidia.com/en-us/on-demand/session/gtcspring22-s41441/

NVIDIAによる公式の解説(日本語)
NVIDIA Research が、AI により 2D の写真を瞬時に 3D シーンに変換
https://blogs.nvidia.co.jp/2022/04/07/instant-nerf-research-3d-ai/

ソースコード:Instant Neural Graphics Primitives
https://github.com/NVlabs/instant-ngp

物語性と気まぐれさでAIアートを身近な存在に

bitGANs 学習データ

ピクセルアートとAIとの組み合わせたbitGANsの制作者 Pindar Van Arman さんによる講演。「CGへの扉 Vol.26:アートを加速させるAIの役割 #GTC2021 レポート」でも紹介した、絵画ロボットartonomous の制作者でもあります。Pindar Van Arman さんは、AIアート鑑賞者が自分が理解できないものを拒絶し、興味を失ってしまうことから、AIで作成するアートにストーリー性と気まぐれさを付与することでコンピュータやネットワークから抜け出して鑑賞者とのつながりを感じられるようにしたとのこと。ここで生まれた数々の bitGANsアートは、NFT(Non-Fungible Token)プラットフォームであるOpenSeaで販売されています。

How to get a GAN to train on bitGAN Training Data
https://www.youtube.com/watch?v=q8HwFbOz9eI

セッション:GTC 2022 でのオンデマンド配信動画(要登録)
Making AI Art More Accessible with Narrative and Whimsy
https://www.nvidia.com/en-us/on-demand/session/gtcspring22-s41036/

OpenSea の bitGANs アート各種(価格は bitGANs 1作品数千ドルから)
https://opensea.io/collection/bitgans

芸術的なワークフローにおける機械学習の活用

本来の目的とは異なる学習データを用いる事例

Jane Adams さんによるセッションは、AIを活用したアート用、例えばStyleGANを活用した作品では、既成概念にとらわれず、必ずしもきれいに整形された学習データが必要ではないことから学習データのキュレーションという考えを提唱しています。

キュレーションというのは、美術館等の展示で、あるテーマに基づいた適切な作家や作品群を選び、展示の配置や構成、鑑賞者が作品を見る順番を設計する、編集者のような役目を示します。つまり一般的にはバイアスのかかっていない、必要十分な量の学習データを集めることが重要視されますが、AIを活用したアートのために学習データを用いた場合、そのデータに偏りがあったり、恣意的であったりしてもそれは演出のひとつであると提言しているのです。

さらにプログラミングで解決することばかりが解決策ではなく、適切な学習データを用意することが解決策につながること、機械学習の価値は実用性ばかりではなく、美的感覚、物語性、表現力、好奇心を刺激するものであると持論を展開しています。

セッション:GTC 2022 でのオンデマンド配信動画(要登録)
Leveraging Machine Learning in Artistic Workflows
https://www.nvidia.com/en-us/on-demand/session/gtcspring22-s41450/

Data Art: An Emerging Complement to Data Science | Jane Adams | TEDxSpringfield
https://www.youtube.com/watch?v=RBkYGKPH6a4

機械の心の中にあるアート

Refik Anadol Studio の作品 Machine Hallucinations より

Refik Anadol さんは、AIを活用した映像作品で空間をデザインするメディアアーティストです。建築物へのプロジェクションマッピング作品や、体験型のシアターなどを手がけています。「CGへの扉 Vol.26:アートを加速させるAIの役割 #GTC2021 レポート」でも紹介しました。GTCのセッションでは、数々のインスタレーション作品を紹介するとともに、作品の背景、舞台裏、どういったものからインスピレーションを得ているのかを解説しています。自然や建築、人工的な大量のデータなどさまざまなデータが作品のヒントになっていることがわかります。

セッション:GTC 2022 でのオンデマンド配信動画(要登録)
Art in the Mind of a Machine
https://www.nvidia.com/en-us/on-demand/session/gtcspring22-s41954/

Art in the age of machine intelligence | Refik Anadol
https://www.youtube.com/watch?v=UxQDG6WQT5s

Machine Hallucinations : NYC
https://vimeo.com/450313024

その他、注目のAI関連セッション

昨年の GTC 2021 では、Artに着目した作品紹介コーナーがありましたが、今年の GTC 2022 は全体的に堅実な「エンタープライズAI」に力が入っていたことが900以上のセッションタイトルから読み取れます。主要なトピックは、上記で紹介しましたが、紹介しきれなかったAI関連のセッションを列挙しておきます。

  1. From Natural Movement to a Real Sculpture: 3D Motion Capture and Modeling using Deep Learning
  2. Expressing Character AI Emotion through Style Transfer Paintings and Neural Music Composition
  3. AI-powered Video Editing for Creators at All Levels

「半導体回路の集積密度は1年半~2年で2倍となる」というムーアの法則は崩れてきたと言われてはいますが、テクノロジーの進歩は指数関数的であり、少し前であれば、数億円した巨大なコンピュータでしか実現できなかったことが、数万円の手元のスマートフォンで実現している事例も多く見られます。現在は膨大なコンピューティングパワーが必要なAI活用も、時期に安価に手頃に利用できることは容易に予想できます。あとは、そういった世界がすぐにやってくるのか、少し時間がかかるかだけの違いなのかもしれません。

本連載の今後の予定:「CGへの扉」では、単なるAIの話題とは少し異なり、CG/VFX, アートの文脈から話題を切り取り紹介していきます。映像制作の現場におけるAI活用や、AIで価値が高まった先進的なツール、これからの可能性を感じさせるような話題、テクノロジーの話題にご期待ください。何か取り上げて欲しいテーマやご希望などがございましたら、ぜひ編集部までお知らせください。

CGへの扉

Vol.36:創るためのAI〜AIと人間の創造性の未来:徳井直生氏講演レポート

Vol.35:マーベル・シネマティック・ユニバースを支える機械学習

Vol.34:注目論文よりCGの祭典 #SIGGRAPHAsia2021 を振り返る

Vol.33:AIの必然性 #SIGGRAPHAsia2021 レポート

Vol.32:Adobe Sneaks より進化の方向性を知る

Vol.31:人工知能が考える「顔」と、人が考える「顔」

Vol.30:SIGGRAPH2021レポート「ディープフェイクとの戦い」

Vol.29:AIの恩恵を受けるCG研究の世界。#SIGGRAPH2021 論文より

Vol.28:定番手法の他分野応用、自然言語処理AI由来の画像処理AI

Vol.27:眼に追いつけ追い越せ? カメラは機械学習により進化

Vol.26:アートを加速させるAIの役割 #GTC2021 レポート

Vol.25:変幻自在の顔も実は人工知能

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Contributor:安藤幸央

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