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アートが人の心にもたらす抽象的な感情を説明するAI:月刊エンタメAIニュース vol.14

2021.2.19先端技術

アートが人の心にもたらす抽象的な感情を説明するAI:月刊エンタメAIニュース vol.14

エンタメにおいてもAIは日進月歩で進歩しており、新しい研究成果や試みが次々と発表されています。こちらの連載では、過去1か月間、主に海外で公開された注目すべきゲームAIやエンタメAIに関連したニュース、論文などを紹介していきます。

ゲームコンセプトの着想をサポートするAI「Ludo」リリース

ビジネスメディアVenture Beatは1月25日、ゲームのコンセプトを着想するのをサポートするAI「Ludo」のオープンベータ版がリリースされたことを報じました。ラテン語で「I Play(私はプレイする)」を意味する同AIは、「ベルトスクロールアクション」「ファンタジー」といったゲームコンセプトを説明するキーワードを入力値として渡すと、キーワードに関連したゲームやコンセプトアートを出力する、というものです。ゲームコンセプト検索に続いて、キーワードに関連したゲームの生成まで実行します。

Ludoを開発したJetPlay社のCEOであるTom Pigott氏によると、同AIを開発したきっかけは同氏のモバイルゲームスタジオでの経験にあります。今日のモバイルゲームスタジオは短期間で新作ゲームを開発することを要求され、毎月新しいゲームコンセプトを考えるものの、そのほとんどが採用されない状況を改善する手段として同AIの開発を思いついたのでした。

Ludoの自然言語処理にはGPT-3にも使われている言語AIのTransformerが活用され、100万タイトル近くのゲームを学習データに使って訓練しました。さらには200万枚近くの画像データベースが組み込まれており、そうした画像にはファンタジー系の世界観のゲームに欠かせないゾンビや戦斧に関するコンセプトアートがふくまれています。フィジカルな世界を撮影した実写画像とコンセプトアートが混在する画像データベースをAIに認識させるのは、今日のAI技術をもってしても困難ですが、こうしたハイブリッドな画像検索機能は日々改善されています。

以上のようなLudoは、Waitlistに必要事項を記入して送信すれば試用できます。正式利用する場合には、月額399ドルの「Indie」、1199ドルの「Pro」、そして商談のうえ月額を決める「Publisher」の3つのプランから選べます。

公式サイト:Ludo

絵画が喚起する感情を説明するAI「ArtEmis」

昨今の画像認識AIのなかには、画像に写ったオブジェクトをキャプションで説明するものがあります。キャプション生成AIはフィジカルな世界にあるオブジェクトを撮影した画像を認識する場合には非常に有益ですが、絵画を鑑賞する場合には力不足と言わざるを得ません。というのも、絵画を鑑賞する際には、描かれているオブジェクトよりもそれが喚起する感情が重要になるからです。こうしたなか、テック系メディアSyncedは1月25日、絵画が喚起する感情を説明できるAI「ArtEmis」を紹介する記事を公開しました。

アメリカ・スタンフォード大学をはじめとする国際的研究チームは、ArtEmisを開発するにあたり認知的な仕事を委託するサービスAmazon Mechanical Turkを使って6,377名の人間を集め、彼らに提示された絵画にコメントをつける作業をしてもらいました。具体的には、任意の絵画を見て感じた感情を8つの選択肢と「その他」から選び、さらに感じた感情を簡単な言葉で説明してもらいました。こうして集めた絵画とそのコメントの組を学習データにして、絵画が喚起する感情をAIに学習させたのです。

以上のようにして開発されたArtEmisに、渦巻くような夜空が印象的なゴッホの代表作「星月夜」を入力として渡すと「この絵画の青と白の色合いは、夢を見ているかのような気分にさせる」というコメントを返します。ArtEmisを発表した論文の結論では、同AIは「人間とコンピュータのコミュニケーションとインタラクションに関する新しく刺激的な方向性を示す」と述べられています。

公式サイト:ArtEmis

論文:ArtEmis: Affective Language for Visual Art

ソースコード:https://github.com/optas/artemis

音声をパーソナライズするAIを開発するスタートアップが資金調達に成功

TechCrunchは2月4日、音声生成AIを開発・提供するスタートアップAflorithmicが130万ドル(約1億3,700万円)の資金調達に成功したことを報じました。創業から2年の同社は、音声をAI技術によってパーソナライズするサービスで注目されるようになりました。

Aflorithmicのサービスを利用するには、まず基本となる音声を選択します。この音声にはユーザの声が使えるのはもちろんのこと、30以上の人工音声からも選べます。次に基本となる音声を、音声を聴かせたいリスナーが住む都市や職業といったさまざまな属性に合ったものにパーソナライズします。パーソナライズを人間だけで実行しようとすると、複数の声優と音声収録が必要となりますが、同社のサービスを使えば、こうしたコストを大幅に削減できるのです。

以上のような音声のパーソナライズは、音声アプリとユーザのエンゲージメントを高める効果が期待できます。例えば、オンラインショッピングにおけるアシスタントAIの音声をユーザが好きな声優に似た声に設定できれば、ユーザはその声を聴きたくてショッピングするかもしれません。

Clubhouseのような音声SNSが注目されている現状を鑑みると、Aflorithmicが提供するような音声生成サービスはますます市場価値が高まるでしょう。

公式サイト:Aflorithmic

文章の作者が人間なのかAIなのかを識別する実験の結果は?

近年、文章を生成したり、翻訳したりする言語AIはめざましい進化を遂げています。言語AIの進化は多くの分野でAIの活用を促進する一方、フェイクニュースやSNSアカウントのなりすましのような問題を引き起こしかねません。そんななか、アメリカ・ペンシルバニア州立大学の公式ニュースメディアPenn State NEWSは2月5日、同大学の研究チームが言語AIの識別に関する実験を行ったことを報じました。

以上の実験に際しては、まずGPT-2をはじめとする8つの最先端言語AIのそれぞれに、1,000本以上の政治記事のタイトルと本文を学習させました。次いで、言語AIに政治記事を生成させました。この言語AIが生成した記事と人間が書いたそれから構成される以下のような3つの問題を設けたうえで、その問題を解くAIを開発しました。

  1. 任意の2つの記事は、同一のAIが生成したものか(生成AIの特定)
  2. 任意の記事は人間が書いたものか、それともAIが書いたものか識別する(AIと人間の区別)
  3. 任意の記事を生成したのは、どのAIか(文体の特定)

以上の問題を解決するAIの正答率から、8つの言語AIのすべてが人間の言語能力に匹敵しているわけではないことが明らかになりました。ただし、実験対象となったGPT-2、GROVER、FAIRといった3つの言語AIに関しては、人間の言語能力に匹敵することもわかりました。こうした研究結果をうけて、研究チームのひとりAdaku Uchendu氏は、今回の研究の最終目標は、言語AIが生成した文章を公開する場合には生成したAIを明記することを義務づけるように働きかけることだと語りました。

文章をはじめとしたAIが生成するコンテンツに関連した法的扱いに関しては、さらなる研究成果にもとづいて世界各国で整備されていくことでしょう。

論文:Authorship Attribution for Neural Text Generation

Writer:吉本幸記、Image by ❤️ Remains Healthy ❤️ from Pixabay

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