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【JSAI2021】AIが自動生成したシナリオは人間にとって本当に面白いのか?

2021.6.24アート

【JSAI2021】AIが自動生成したシナリオは人間にとって本当に面白いのか?

近年、ゲーム開発はもちろん、小説や漫画、作曲といった創作活動に人工知能技術を活用しようとする研究が活発化しています。創作におけるAIの役割というテーマは、6月8日から6月11日まで開催された第35回人工知能学会全国大会においても重大な議題のひとつでした。昨年に続き新型コロナウイルスの影響でオンライン開催となった同大会から「創作者と人工知能が創る創作の未来」というセッションを取材しました。このセッションでは、ゲーム開発やシナリオ執筆、ファッションコーディネート、写真印刷の紙選び、星座画像の認識、手書き文字の再現など、創作活動を含めたクリエイティブな活用方法を想定したさまざまなAI技術の研究成果が発表されました。

RPGのクエストシナリオの自動生成にフォーカスした前回のレポートに引き続き、今回は公立はこだて未来大学による物語創作に関する3つの発表、「少年漫画の登場人物の人数と役割の計量的分析」「物語展開の基本パターンへの分解と再構成に基づく物語構造の自動生成手法の提案」「星新一のショートショートにおけるオチを含むプロットの自動生成」をレポートします。

【論文1】少年漫画の登場人物の人数と役割の計量的分析
【論文2】物語展開の基本パターンへの分解と再構成に基づく物語構造の自動生成手法の提案
【論文3】星新一のショートショートにおけるオチを含むプロットの自動生成

人気バトル漫画に共通した登場人物の役割と人数

長編の小説や漫画は、物語の進行にともなって登場人物が増え続ける傾向にあり、作品によっては読者が混乱するケースもあります。そこで公立はこだて未来大学の研究チームは、各話や章ごとの登場人物の総数には上限やパターンが存在すると仮定し、それらの役割と人数を時系列ごとに分析。適切なタイミングでの登場人物の登場・退場・役割の変化に関する数値的なデータを蓄積したそうです。これにより長編作品における登場人物の適正人数や配置パターンが解明できれば、創作活動の科学的なサポートへつながるのではないかというのです。また、シナリオ自動生成の基礎データとしても活用が期待できます。

この研究で分析対象に選ばれたのは、バトル系ジャンルで完結済みの人気少年漫画から『ドラゴンボール』『NARUTO』『BLEACH』『鬼滅の刃』の4作品。話数と登場人物数をカウントし、それぞれの登場人物を「主人公」「偽主人公」「味方陣営」「味方戦闘要員」「敵陣営」「敵戦闘要員」「所属不明」「師範」「贈与者」「派遣者」「最終目標」「被救助者」という役割に分類したうえで、役割の登場回数や遷移回数について分析したとのこと。その結果、人気バトル漫画1話あたりの登場人物は7人から9人、総登場人物数のおよそ3%から5%にあたり、共通の数値的な傾向があることが判明しました。

役割の登場回数については、味方陣営が1万1,000回以上と圧倒的に多く、偽主人公、所属不明、最終目標は125回以下でした。また、主人公は1人にもかかわらず1500回以上も登場しており、このことから主人公視点で物語が描かれる傾向が多いことが分かりました。役割の遷移では、味方陣営から味方戦闘要員への遷移が最多で、次点で味方陣営から師範。陣営の変化に見られる傾向は、味方から敵に変わった回数が18回だったのに対し、敵から味方へ変化した回数は110回と、約6.1倍の違いがあったということです。

さらに4作品で合計2,122話のデータを因子分析して、役割の組み合わせパターンを抽出した結果、バトル漫画における登場人物は大きく分けて「対立」「戦闘」「別視点」「強敵君臨」という4種類の組み合わせで表現されていることが分かっています。最後に、新たな登場人物が描かれる割合は、平均して序盤に約32%、中盤に約19%、終盤に約14%。新規登場人物は物語の序盤に偏っていたということです。また、新規登場人物の役割は、味方陣営と敵陣営がおよそ65%以上を占め、次に敵戦闘要員の約9%でした。なお、複数の役割を持った新規登場人物はきわめて少数とのこと。こうしたデータを活用して、今後は登場人物を管理できるアルゴリズムの構築を検討しているそうです。

手塚治虫の物語を完全自動生成するための一歩

はこだて未来大学の研究チームは、手塚治虫の漫画『ブラック・ジャック』を対象に物語の基本パターンを分析し、それらを組み合わせることで複雑な物語構造を自動生成できるアルゴリズムの構築も提案しています。この研究の背景には、2020年に手塚プロダクションが発表した「AI手塚治虫」の後継プロジェクトとして、手塚作品の物語における構造上の特徴を抽出・再構成することで、人の手を介さずに手塚風のプロットを自動生成しようという最終的な目標があります。

『ブラック・ジャック』は数ある手塚作品の中でも特に話数が多く、医療系以外の多様なジャンルの物語パターンが複合的に用いられています。また、作品内の描写も登場人物の心理状態から社会問題まで幅広く、複雑な物語構造の計量分析にはうってつけの作品だったそうです。全体のおよそ半分に当たる100話分を分析した結果、「罪の報い」や「立場逆転」といった43種類の基本パターンが抽出できたとのこと。また、プロット自動生成のための基礎データとして、各パターンの共起頻度も算出したということです。

これらの基本パターンは共通の要素をふくんでおり、それらを介して異なる複数の基本パターンを接続することで、新規プロットを生成します。こうしたパターンの合成には連続、入れ子、並列といった複数の型があり、連接頻度や共起出現頻度に応じて複合的な物語構造を作成する狙いがあります。今後は『ブラック・ジャック』以外の作品を対象とした分析にくわえて、自動生成された物語における新規展開の妥当性の評価や、より長いパターンの生成と妥当性の維持についても検討していくとのことです。

自動生成された物語にオチをつけるための研究

こうしたプロット自動生成の研究には、因果関係の齟齬や物語性の欠如といった課題が多く残っています。そこではこだて未来大学の研究チームは、物語を面白くする要因のひとつとして意外性のあるオチに着目し、星新一のショートショートを対象にオチのパターン抽出と、パターンの構成要素に対応する文章データの構築を試みています。これらを活用することで、より多様なオチを含むプロットの自動生成を実現するのが最終的な目標です。

例えば、星新一作品でもっとも多く扱われる「強盗・泥棒・詐欺・囚人」というテーマには、ある犯罪者が別の犯罪者を脅迫していた状況が一転して、今度は前者が脅迫されるといった「脅迫逆転」パターンがあります。また、このパターンには「脅迫」のほかに「盗む」「獲得」「拘束」といった要素がふくまれています。これらに関連する抽象化された文章とその機能、そして特定のパターンへ代入可能かどうかを判別するための文脈依存性を抽出することで、プロットを自動生成するアルゴリズムを構築するという流れです。

アルゴリズムの仕組みは、あらかじめ構造化された文章データに属性を付与し、文脈依存性をビット列で記述。各要素ごとに依存性にマッチする文章を選択することでプロット列を出力し、最後に主語や目的語を置き換えるというものです。現段階では場所や時間といった状況描写や、登場人物の心理状態は省かれていますが、データ構造の属性を増やすことでより自然な物語の記述に近づけることが可能だといいます。また、映画やニュースといった様々な情報源からデータを抽出できれば、星新一作品に似せた新たなプロットの自動生成も期待できるということでした。

Writer:Ritsuko Kawai / 河合律子、Photo by Judeus Samson on Unsplash 

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