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【春期GTC2023】デジタルツインの現状報告と生成系AIとの接点

2023.4.19先端技術

【春期GTC2023】デジタルツインの現状報告と生成系AIとの接点

2023年3月21日から24日にかけてNVIDIAが主催する春期GTC 2023が開催されました。世界中の研究者と開発者、さらにはビジネスリーダーが一堂に会してAIとメタバースに関して交流する同イベントでは、「私たちはまだそこにいるのか?産業用メタバースの現状確認」と題されたセッションが行われました。本稿は昨年のGTCでも行われたデジタルツインの定点観測的なこのセッションを要約することで、デジタルツインの最新事例と生成系AIとの接点を確認していきます。

参考記事:【GTC 2022】空間的インターネットに進化するメタバースと産業界への進出

【秋期GTC2022】進む各産業のデジタルツイン化と世界のデジタルツイン化における課題

「デジタルツイン」の定義を再確認

デジタルツインの定点観測を目的とするこのセッションでは、昨年に引き続きテック系ビジネスメディアVentureBeatでリードライターを務めるディーン・タカハシ氏がファシリテーターを務めました。はじめに同氏は、改めてデジタルツインの定義について各パネラーに尋ねました。

SiemensデジタルインダストリーソフトウェアのCEOを務めるトニー・へミルガーン氏は、デジタルツインをフォトリアルなビジュアルと物理世界のエンジニアリングやシミュレーションが出会う場所と説明しました。この説明に対してタカハシ氏は、物理世界をシミュレーションしているところが、デジタルツインとゲームにおけるメタバースの相違点と補足しました。

NVIDIAのシミュレーション技術・Omniverseエンジニアリング部門で副社長を務めるレヴ・レバレディアン氏は、デジタルツインを定義するにあたりメタバースの意味を問うところから始めました。同氏によるとメタバースとは、インターネットを3Dインタフェースに拡張したものです。インターネットの黎明期では、やり取りされる情報がテキストだけでした。その後、画像も処理されるようになってインターネットは2次元的インタフェースを実現しました。インターネットが3次元的に拡張されるとさらに没入感を増し、可能なコラボレーションの幅も広くなります。メタバースをこのように捉えたうえで、それを産業用に活用したものがデジタルツインとなる、と同氏は考えています。

BMWの製品システム部門副社長であるミシェル・メルキオッレ氏はレヴ氏の発言に同調して、デジタルツインはゲームをプレイするように使いやすく楽しめるものであるべき、と発言しました。

以上の各パネラーの発言をまとめると、デジタルツインとは3次元的インターネットであるメタバースを産業利用したものであり、物理世界を忠実に再現する点がゲームに活用されるメタバースともっとも異なる点となります。

インフラ建設で活用されるデジタルツイン

次いでタカハシ氏がデジタルツインの最新事例について、Bentley Systemsの副社長であるロリ・ハフォード氏に発言を求めたところ、同氏はCesiumに言及しました。これは3D地球儀プラットフォームと呼べるサービスで、デジタルツインが語られるようになって注目されるようになりました。機能的にはGoogle Earthに似ていますが、Cesiumはオープンソースであるという違いがあります。

ロリ氏は、Bentley Systemsが提供するデジタルツイン構築プラットフォームLumenRT for NVIDIA Omniverseにも言及しました。このプラットフォームで構築された事例には、シンガポールのトゥアス水再生プラント(Tuas Water Reclamation Plant:略称「TWRP」)があります。16社の設計会社が3,500個のBIMモデル(建築物用のモデリングデータ)を作成して調整を行うTWRPプロジェクトでは、情報共有にLumenRT for NVIDIA Omniverseで視覚化したデジタルツインが活用されました。その結果、設計レビューの時間が短縮され、コスト削減が実現しました。

参考記事:Bentley Systems、インフラプロジェクトでのLumenRT for NVIDIA Omniverse, powered by iTwinの重要な活用成果を発表

レヴ氏は、NVIDIA Omniverseと建設業界の関係について発言しました。同氏がOmniverseの開発を始めた約5年前には、同プラットフォームの活用はメディア&エンターテインメントから始まり、次いでAEC(Architecture, Engineering and Constructionの略称、つまり建築建設工学)に広がり、最後に製造業と予想していました。しかし、現実の活用は予想とは逆の順番で進みました。こうした活用の進展は、建設業や製造業ほど厳密なシミュレーションなしではプロジェクトを効率的に完遂できないから、と同氏は推測しています。

以上のようにデジタルツインは、インフラ建設のような膨大な物理世界の情報を収集・管理する必要があるプロジェクトにおいてこそ、その真価を発揮すると言えます。

生成系AIが構築する学習世界としてのデジタルツイン

タカハシ氏は、GTC2023の多数のセッションで取り上げられている生成系AIがデジタルツインに与える影響についてパネラーに質問しました。この質問には、レヴ氏がOmniverseとシミュレーションの関係から答えました。

バーチャル空間におけるコラボレーション環境として提供されているOmniverseは、その開発当初はシミュレーション環境と考えられていました。同プラットフォームが開発されていた2010年代は、ディープラーニングが社会実装され始めた時代でした。そして、このAI技術を開発するには大量の学習データが必要になるという問題が浮上しました。学習データを物理世界から収集するのは非常に手間と費用を要します。こうしたなかで考えられたのが、OmniverseをAIの学習環境として流用できるのではないか、というアイデアです。

以上のアイデアを実現したNVIDIA製品が、自動運転車両向けシミュレーション環境の「NVIDIA DRIVE Sim」とロボット開発環境「NVIDIA Isaac Sim」です。これらの製品はOmniverseによって自動運転車両やロボットの動作をシミュレーションするだけではなく、シミュレーションを使って開発者の意図を反映した学習データを生成できます。

レヴ氏は、AIとシミュレーションの関係に関する未来像も語りました。現在、ChatGPTやGPT-4といった大規模言語モデル(Large Languege Model:略称「LLM」)が社会実装されることで、世界の労働市場が大きく変わろうとしています。LLMは大量のテキストデータによって訓練されていますが、LLMがさらにヒューマンライクになるには画像や音声といったさまざまな感覚的データが必要になると考えられます。

人間と同じ感覚的データを学習できる環境として最もふさわしいのは、物理世界を忠実に再現した仮想世界、つまりはデジタルツインであるとレヴ氏は指摘します。そして、こうしたAI開発環境としてデジタルツインを構築するには、多数の生成系AIを統合したプラットフォームが不可欠となります。

AIを学習世界としてのデジタルツインを使って開発した後、さらにこのAIを学習世界の構築に用いると、AIに関する生成的ループが形成できます。こうして学習世界を介したAIの自己製造のようなサイクルが生まれます。もっとも、このサイクルは人間が含まれるヒューマン・イン・ザ・ループになることでしょう。

参考記事:AIとゲームエンジンの産業利用の最前線であるデジタルツインを解説

以上のようにデジタルツインは、インフラ建設のような物理世界の問題を解決する手段となるだけではなく、ヒューマンライクなAIを開発する環境としても活用可能と考えられます。そして、デジタルツインをAIの学習世界として活用するノウハウは、「別の世界」を表現するゲームにおけるメタバースにも流用できるのではないでしょうか。生成系AIによって構築される学習世界は、設定を変えるだけで物理世界を忠実に再現するものから、重力や大気が異なるSFあるいはファンタジー的なものになります。こうした虚構的な学習世界で開発されたAIは、従来のゲームプレイAIを大きく超えるものになるかも知れません。

Writer:吉本幸記

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