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AIとゲームエンジンの産業利用の最前線であるデジタルツインを解説
近年、メタバースと似た概念であるデジタルツインが注目を集めています。エンタメのコンテクストで語られることが多いメタバースに対して、産業利用の意味合いが強いデジタルツインを開発するにあたっては、実のところ、AIとゲームエンジンが重要となります。本稿では、デジタルツインをAIとゲームエンジンの産業利用の最新事例と捉えたうえで解説します。
デジタルツインの歴史と市場予測
デジタルツインという概念は最近考案されたわけではなく、その起源は前世紀に遡ります。国内テック系メディアSELECKの2021年12月公開の記事によると、デジタルツインという言葉が最初に登場したのは1991年、当時アメリカ・イェール大学所属のデビッド・ゲレルンター氏が発表した著作『Mirror Worlds』においてです。同著は今日で言うところのVRで暮らす人々の生活を描いているのですが、そうした人々が仮想世界から物理世界を操作する姿も描写していました。
「物理世界によく似た仮想世界を構築して、その仮想世界を操作して物理世界のタスクを解決する」という現在の意味でデジタルツインを活用した最初の事例は、NASAが開発した「ペアリングテクノロジー」だと言われています。宇宙船アポロ13号で爆発事故が生じた時、NASAは帰還シミュレーションを実施するために地球上に同船のデジタルツインを構築しました。
以上のような揺籃期を経て近年誕生したデジタルツイン市場は、今後大きな成長が予想されています。調査会社Grand View Researchが2022年3月に発表したレポートによると、2021年における世界のデジタルツイン市場の規模は74億8,000万USドル(約9,520億円)だったのですが、2022年から2030年までに年平均成長率39.1%で成長すると予測されています。
デジタルツイン市場が成長する背景には、コロナ禍からの復旧が指摘できます。コロナ禍によりサプライチェーンや製造ラインは停止を余儀なくされましたが、コロナ禍が収束して本格的に再稼働する際には何かしらのトラブルが発生する可能性があります。こうしたリスクは、デジタルツインを構築して事前に再稼働をシミュレーションすれば予測可能となります。
デジタルツイン市場を地域別に見ると、日本を含むアジアパシフィック地域がもっとも成長すると予想されています。具体的には、同地域の2030年までの年平均成長率は43%以上となると見られています。
AIはデジタルツインの構成技術
デジタルツインに関しては、2021年2月にその技術的特徴と事例を詳細にまとめた論文が発表されています。その論文では、デジタルツインがIoT、ビッグデータ、そしてAIと円環的関係を構築することが解説されています。
例えば製造ラインに関するデジタルツインを構築するためには、製造ラインが稼働している時のデジタル情報が必要になります。こうしたデジタル情報は、製造ラインに各種測定センサーを設置する「製造ラインのIoT化」を実施することで収集できます。収集したデジタル情報を蓄積すれば、製造ラインに関するビッグデータが得られます。
製造ラインに関するビッグデータを学習データとして活用すれば、製造ラインを制御するAIを構築できます。このAIをデジタルツインに実装すれば、デジタルツインを操作することで製造ラインにおける故障を予測したり、稼働を最適化できるようになったりします。そして、デジタルツインを介して製造ラインを稼働し続ければ、その稼働からさらにビッグデータが充実し、学習データも更新されてAIがよりスマートになる、というサイクルが成立します。
デジタルツインをめぐるサイクルは、物理世界と対応関係のないデータも生成できます。例えば、製造ラインにおける極めて稀な事故に関するデータが必要な場合、そもそもそのようなデータが存在する可能性は極めて低く、実際に事故を起こしてデータを収集するわけにもいきません。しかし、製造ラインのデジタルツインをシミュレーターとして活用すれば、実際に事故を起こすことなく事故のデータを入手できます。
デジタルツインによるデータ生成の事例には、メタバースを構築するツールとして注目されているNVIDIA Omniverseの派生製品Omniverse Replicatorが挙げられます。同製品によってデータを生成すれば、デジタルツインに実装するAIの精度を上げられます。
ゲームエンジンが普及に貢献
ところで、デジタルツインはどのように開発できるのでしょうか。デジタルツインの開発ツールとして注目されているのが、ゲームエンジンです。ゲームでプレイする仮想世界を構築するために誕生したゲームエンジンを物理世界を再現するツールとして流用するのは、極めて自然な発想だと言えます。
ゲームエンジンによるデジタルツイン開発事例は、例えばEpic GamesがUnreal Engineによって構築したものを2021年1月に公開した記事でまとめています。その記事では、中国・上海を再現した事例が紹介されています。上海のデジタルツインは、洪水をシミュレーションして防災計画を立案するのに役立っています。
ゲームエンジンUnityを開発するUnityも、同エンジンの産業利用を想定したサービス「Unity for Industry」を展開しています。同サービスの公式サイトには、Unityをデジタルツイン構築のために活用したITソリューション企業SAPの事例が紹介されています。同社は製造ラインのデジタルツインを構築するためにUnityを利用し、そのデジタルツインをタブレットによる拡張現実を介して操作できるようにもしました。
アメリカ大手メディアCBSが2022年3月に公開した記事も、デジタルツイン開発競争を特集しています。その記事では前述のNVIDIA Omniverseを活用してデジタルツインを構築したことで、生産時間とコストを最適化したドイツ自動車メーカーBMWの事例が紹介されています。
以上のように企業の競争力を増強するデジタルツインの需要は、今後高まることが予想されます。デジタルツインの需要増大に伴い注目されるのが、ゲームエンジンを活用できるゲームスタジオやゲーム開発エンジニアです。こうしたゲームエンジンに精通した企業や人材に対して、非エンタメ企業がデジタルツイン開発に関する案件を発注するようになると考えられます。それゆえ、デジタルツインの普及は、ゲーム業界に好影響を与えることでしょう。
Writer:吉本幸記、Image by Shutterstock