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若手ゲームAI開発者が考える、AIでゲームを面白くするために必要なことと将来の展望
モリカトロンAIラボ主催で技術者の交流の場を作るために、スクウェア・エニックス AI部とモリカトロンに所属する入社1〜2年の若手エンジニア4人によるゲームAI座談会を開催しました。数あるAI開発の仕事の中でゲーム業界を選んだのはなぜか、ゲームAI開発者の視点から考える面白いゲームはどのようなものか、そして今後のゲームAIの可能性をどう見ているのかということについてディスカッションしました。司会進行は三宅陽一郎氏と森川幸人氏です。
ゲームのキャラクターと自然な会話をしたい
森川幸人(以下、森川):モリカトロンの森川幸人です。今回はスクウェア・エニックス AI部とモリカトロンの2社で、若手エンジニアを呼んでゲームAIについて語ってもらう若手エンジニアの座談会ということで開催しました。実は3年くらい前にも一度似た主旨の座談会をやっています。
森川:企画意図としては、そもそもひとつの企業の中に知識を閉じ込めてしまうというのがもったいないなというのがあります。特にAIは色々な会社が開発チームを持っているのに、企業間の技術交流がほとんどありません。ゲーム業界的に言えば、雰囲気としてUnityやUnreal Engineが登場する前の、各社が同じようなことを秘密裏に進めて、結果、同じようなことをやっているという非合理的な時期があったのですが、そういう時代と同じような匂いがしています。
ですからゲームAIや、それぞれが進めていることを可能な限り情報共有していけると、ゲーム業界全体として開発のスピードを上げることにつながるのではないかと考えています。そういう志の一環として技術交流ができればいいなということでお願いしました。将来的にはより多くのゲーム会社のAIエンジニアと技術交流していけたらいいなと思っています。今日はよろしくお願いいたします。
三宅陽一郎(以下、三宅):スクウェア・エニックス AI部のジェネラル・マネージャーの三宅陽一郎です。最近は機械学習系の新しい波が来ていますが、今日集まっていただいた4人はちょうどその技術の境目に位置する世代だと思います。これから新しい展望が開けていこうというタイミングですから、横の連携は特に重要になります。機械学習は実験をするのにリソースも時間もかかります。技術的な探索を各社だけでやるのはほぼ不可能に近いわけですね。結局、いまだに機械学習系の技術がゲームの中身になかなかうまく応用できていないのは、そういう探索ができていないからだと思います。将来への展望などもふくめて、ざっくばらんに議論をしていただければと思います。

遠藤輝人(以下、遠藤):スクウェア・エニックス AI部の遠藤輝人と申します。大学院時代は輻輳制御アルゴリズムとネットワークシミュレーション環境の共進化を研究していました。現在は、機械学習のプロジェクトを担当していまして、キャラクターアニメーションの生成を機械学習でサポートする研究プロジェクトを担当しています。好きなゲームは、アクションゲーム、RPG全般です。仕事以外の関心事としてはキャラクターとのインタラクションとかコミュニケーションに関心があります。
宋亜成(以下、宗):スクウェア・エニックス AI部の宋亜成と申します。大学のときからメタAIにおけるFPSゲームの動的難易度調整の研究をしていました。いま会社で担当しているプロジェクトもメタAIに関わるプロジェクトになります。普段はアクションゲームやRPGなどを結構やっていますが、特に好きなゲームはインディー系です。
松田祐紫(以下、松田):モリカトロンの松田祐紫です。現在仕事で行っているのは、ゲームのQA作業を自動化しようということで、ルールベースで自動化して、テスターのコストを減らそうとする試みを行っています。大学院時代は、GANを用いたイラストからのアニメーション生成や、その前処理部分についての研究を行っていました。好きなゲームはパズルゲームと音楽ゲームを中心に、狭く深くという感じです。現在の関心事は、仕事内容以外ではイラストからのアニメーション生成、データサイエンス分野にも興味があります。
早瀬悠真(以下、早瀬):モリカトロンの早瀬悠真です。今年、新卒で入りました。いま業務としては自然言語処理に関するところをやっています。学生時代は、充足可能性判定問題を使って組み合わせ問題を解くという研究をしていました。好きなゲームはノベルゲーム、RPGアクションゲームなどですが、広くやるようにしています。最近の関心事としては、いま業務でやっていることもあり、AIによる文章の自動生成について関心があります。
遠藤:早瀬さんの自己紹介の中で自然言語処理が出てきましたが、いまゲームにおける文章生成としてどれくらいのことができるようになっているのでしょうか? というのは、やはり、仮想世界に出てくるようなキャラクターと会話をしたり、コミュニケーションを取りたいという思いがずっとあるのですよね。
早瀬:モリカトロンとしては人と会話をするAIを開発しています。僕個人としてはゲームの中に実装してNPCとの会話を自動で作ることができるといいなと思っていますが、まだなかなかそういう話にはなっていません。
松田:モリカトロンで作っているのは要は雑談AIです。自然言語処理を使って語尾や口調を近いものに統一したり、話題を制限した中で与えられた発話内容に対応する会話を生成する、という感じのことをしています。これをゲームに応用するとしたら、たとえばユーザーがある程度自由に会話を入力したとしてもそれっぽい会話が返せるとか、そういうことはそれなりのクオリティでできるのではないかと思っています。
遠藤:たとえば『グランド・セフト・オート』のように、現実世界を舞台にしたものであれば、我々の知識をベースにした会話ができると思いますが、完全なファンタジー世界でNPCの会話を生成するとなると、舞台となる世界の常識や知識をベースにすることになると思います。そうしないと、結局、違和感を覚える会話になってしまうので。ただ、いまの文章生成のAIでは、そのあたりの常識を組み込んで文章生成をするのはまだちょっと難しいのかなと思います。
ただ、そこを何とかできればもう少しリアリティのある新しいゲームを作れるのではないかと思っています。お聞きしていて、ルールベースや話題制限などで対応できるのかもしれないと感じました。
松田:おっしゃるとおり、おそらく、やるとしたらやはりルールベースになると思います。現実世界のデータセットを学習済みのモデルでは作品特有の固有名詞との文法的なつながりまでは再現できないので、そこはルールベースでやるということになるでしょう。でも、どこまでできるのかな。早瀬さん、どうでしょう?
早瀬:ファンタジー世界のNPCを作るとしたら、それぞれ言わせたいキーワードを会話の中に自然に入れて、文章を生成できるようにすればいいのかなと思いますがいかがでしょうか。たとえば口調の統一では、いわゆる構文解析を入れて語尾の部分を特定して置き換えることをやっていて、その置き換え先はルールベースで関連付けをします。漠然とですが、そういう形で何とかできないかなとは思いますね。
松田:現実の会話の内容からそれに近い単語や固有名詞を推測して、それと置き換えるという話ですよね。
遠藤:なるほど。現実世界のデータセットで学習させたモデルを使いながらルールベースで置換していくというアイデアですね。
松田:我々の世界の単語辞書とゲーム世界固有の単語辞書で類似度を測れるといいのかもしれません。
森川:うちではGPT-2を使っていますが、どうしてもTwitterとかそういうところをデータソースにせざるを得ない。そうすると、ある架空のファンタジーの世界の情報として、そのままGPT-2がうまく使えるかというと、これがまったく使えないわけです。一般的な現実社会の話としては割と情報が取れるのですが。じゃあどうするかというと、完全に二分割してルールベースなりデータベースを作るという方法で、その世界観に合わせたテンプレートを用意するという形になってしまうのですが、これは何かよい方法がないのですかね?
三宅:たとえば、Meta社の研究プロジェクト「LIGHT」では2000人ぐらいのクラウドワーカーを使って、ひたすらチャットでロールプレイをやってもらうということをやっています。あなたは王様、あなたは従者という感じでペアごとに役割を変えて。このとき、たとえば「猟師なら、こういう単語を使ってください」という設定で30分くらい話してもらう。30分間チャットをすると結構な量になります。これを2,000人が1か月間やると、巨大なコーパスができあがるわけです。コストはかかりますが、その世界の純粋培養のコーパスが完成しますね。
森川:なるほど。面白い試みですね。
三宅:そうですね。Meta AI研究所(旧Facebook AI研究所)では、メタバースを見越してなのか、ゲームの研究をかなりやっています。Microsoft Researchも、昔のテキストベースのアドベンチャーゲームを集めて言語学習をさせるプロジェクトをやっていますね。そこからアドベンチャーゲームを自動生成するという研究もあります。
ユーザーの感情を推測することで何が可能になるのか
遠藤:シナリオとNPCの会話の関係も難しいところで、シナリオに影響を与える重要なNPCは、そもそもプレイヤーの行動や他のキャラクターの行動に影響してくるような会話をすることになってくるので、自動生成でシナリオの軸にぶれないような実装を考える必要があるのかなと思います。
宗:そうですね。ユーザーがどういう感情を持っているかというような、ユーザーの心理を推定することが重要になります。生成するセリフ、シナリオなども前後の起承転結が必要ですし、スタート時点の感情からどうやって最終的に感じてもらいたい感情まで遷移させるか、事前に定義する必要があると思います。
遠藤:ただ文章を生成するだけではなくて、その文章がどう感情に寄与するか、影響するかというのも推測する必要がありますよね。
松田:ちょっと思っていたのが、何かしらのセンサー、最近だと指に装着して脈を測るセンサーなどがありますし、VR関係のデバイスも組み合わせて利用してユーザーの脈拍、表情などの複数の生体データを収集・解析して、そのときのユーザーの感情を推定することはできるのではないかなと思います。
遠藤:生体データから感情を推測するという研究は行われているので、そのあたりを合わせてできると確かに面白いですね。本当にリアルな反応がゲームに反映されるという形で。
宗:確かに心拍数だけを測っても、怒っているのか、ドキドキしているのか分からないので、顔の表情も合わせると、いまユーザーがどんな感情になっているのか、ある程度推定の精度が高まるのかなと思います。こういう手法を応用してバーチャルのキャラクターと対面恋愛シミュレーションみたいなゲームができるかもしれません。結構、面白いかなと思います。
遠藤:視線がトラッキングできたら、たとえばホラーゲームで幽霊を出す場所をうまく変えていくということもできますよね。目の前に出てくるだけでは味気ないので。生体データと併せて、ユーザーの感情を推測し、それに合わせてゲーム側のコンテンツも変えていく。これは、色々できそうですね。ゲーム業界の流れ的に、コントローラーやキーボードからの入力以外に情報を取れるものはあったりするのでしょうか?
森川:実は、みなさんが生まれる前のことですが、任天堂が『ラブテスター』というオモチャを出していました。気になる人と手をつなぐとビビっと電流の針が振れて、針の示した値が二人の愛情度を表していると。おそらく発汗センサーなど通電量を測る仕組みが使われているのかなと思います。この手のセンサー類と任天堂の付き合いは古いですね。でも、この文化の流れは横井軍平さんとともに消滅してしまったので、この辺をもう一度掘り起こすと面白いかもしれませんね。
遠藤:メタAIなども生体データと合わせれば、確度の高い設定ができそうな気がします。『Left 4 Dead』はメタAIを実装して、緊張度を計算していますが。
宗:そうですね。『Left 4 Dead』(Valve Corporation, 2008年)はゲームの中で生成するコンテンツでユーザーに与える緊張度を変えています。確かに生体データを採れると、比較的ユーザーの状態を認識できるようになると思います。プライバシーの問題が解決できれば、よい方法だと思います。
三宅:2015年の公立はこだて未来大学システム情報科学部の谷口雅秀さんの研究で「ホラーゲームの恐怖感を引き出す生体情報の効果的な活用方法」がありますね。一度、実際に体験させて頂いたことがあります。
森川:メタAIに限らず、ユーザーがいまそのときに何を感じているか、どういう気持ちにいるかというのは会話にもつながるし、当然メタAIにもつながるし、デバッグにもつながるし、QAにもつながる。わりと大きなテーマというか、そこがうまく手に入ると応用範囲の広い技術になるかもしれないですね。
宗:おっしゃるとおりです。僕は大学院のときにFPSゲームの自動難易度調整について研究していましたが、プレイヤーの能力だけを測るというよりは「プレイヤーのいまの調子」という要素も関係してきます。これはシューティングゲームだけではないと思いますが、集中していない状態ではユーザーが持っている本来の能力が出せず、差が出てしまうのです。やはり生体データがいろいろ採れると、確度の高い推測ができるし、アプローチも増えると思います。
松田:そうですね。あとは開発時のテストで、テスターさんが生体センサーをつけてプレイしたけど思ったほど盛り上がっていないぞとなれば、いくら「この場面ではこういうことを意図した演出にしているんだ」と言っても、シナリオとか演出改善しないといけないな、と分かりますよね。そういう使い方もできそうですね。
宗:たとえばメタAIやAIディレクターがランダムなイベントを生成して、ユーザーがプレイします。でも、結果、ユーザーのほうは全然感情が揺さぶられなかったとしたら、やはりこのイベントは駄目だね、新たに別のイベントを生成しようという調整もできる気がしますね。
早瀬:いまの話は、完全にプレイヤーに寄せて、プレイヤーのその状況に応じていろいろ変えようということだと思うのですが、プレイヤーごとの専用でなくてもいいので、毎回プレイ感が変わるランダム性があるということでもゲームの面白さは増すと思うのです。何度も何度もプレイしたくなるとか、そういうのでもできたらいいかなと。
宗:僕の結構好きなゲームジャンルのひとつなのですが、「ローグライク」というゲームジャンルがあります。マップ、コンテンツ、ドロップアイテムなど、ある程度ルールに従ってランダムに調整されて、プレイヤーはそれを選んでプレイします。カードゲームに例えるとデッキの組み合わせとか、相性が良いカード、悪いカードがある程度ランダムになっているので、毎回新しい体験が生まれるというものです。そういう自由度が高いゲームは面白い体験ができると思います。
早瀬:ローグライクゲームのランダム性はルールベースで作っているのではないかと思います。学生時代、僕はその組み合わせ問題を研究していたのですが、自由度の高いランダム性ができたらいいなというのはずっと思っています。ある程度ランダムに散ってはいるけど、これぐらいの頻度で重要なアイテムが出てくるというのがなかなか難しいのですよね。そういったことをたくさんの要素をふくめてランダムに作れると面白いかなと。
特にランダムだと、シナリオをつけるのがなかなか難しくなります。プレイヤーがアイテムをどのタイミングで入手するかで重要なフラグがズレてしまうので。やるとすると、そういったものを順番どおり取得できるとか、重要なアイテムが出現するタイミングは保証できるという形で、ランダム性と共存させる。そういったことが技術でできるようになるといいのかなと思っています。
松田:確かに。人間ががんばってルールベースで組むよりも、組み合わせ問題で条件をすべて機械的に羅列できるので、そちらのほうがパターンもたくさん出てきますね。人間が思いつかないようなパターンも列挙できそうですよね。
遠藤:列挙できるというのは結構強いですよね。そもそもゲームの中に組み込むだけではなくて、パターンとして列挙してあげる。そうすると、ゲームプランナーさんが「これ、面白いアイデアじゃん」と持ってくることもできる。そういう支援の仕方もできますよね。
宗:逆に、AIからプランナーにヒントを提示する形ですね。
森川:最近、テキストを入れるとAIがそれに合わせて映像を作ってくれるという「Midjourney」が話題ですが、クリエイションにおけるAIと人間の役割分担を分かりやすく明示しているという印象があります。GANを使っているので無尽蔵に作ろうと思えば作れるわけですが、テキストを与えることで人間側がある指針を与えるという形になっています。そして、実際に作るのはAIだけど、最後に選ぶのも人間という。このあたりの役割分担のところは、いま、みなさんが話していたことと通じる話だと思いますね。AIと人間のクリエイター、ゲームデザイナーとの関わり方が変わっていくみたいなことを何か予感させる話だなと思いました。
これからのゲーム、ゲームAI
三宅:最後に、これから先の技術ロードマップみたいなところをどう考えているかを教えてください。ゲームAIはこうなっていくのではないか、ゲームAIはゲームをもっとこうできるのではないかとか、そういうビジョンみたいなものをお聞きできればと思います。
松田:クリエイティブな職業、創作全般について言えることですが、人間がやるには非効率的で量が膨大すぎる作業がまだまだ多くて、そういう所を極力自動化して、人間がもっとクリエイティブな部分に注力できるようになると、それだけでも面白いゲームが生まれるのではないかと思います。そうあってほしいと思っています。そのためにはいろいろあると思いますが、いま僕がやっているゲームのQAとか、QAの前段階でバグが見つけられるプラグインなどがあると開発のコストが下げられて、クリエイティブな部分に割ける時間が増えていくのではないかなと思います。
遠藤:僕の希望的観測というか思いになってしまうのですが、ゲームはより自由にキャラクターたちの世界とインタラクションが取れるようなものになっていくのかなと思っています。そのときに、ただ人間を模倣するようなAIではなく、シナリオであったり世界観の設定を理解した上でアドリブをする俳優のようなAIが必要だと思います。そういうAIが今後作られて、NPCとして実装されたり、よりリアリティのある世界を構築するゲームAIがどんどん出てくるのかなと思います。
宗:いまゲームAIというと、プロシージャルもありますし、自動化の方がメインの部分があります。そこからAIの進化によって自動化から自律化できるようにする、あるいは、いわゆる下流工程のタスクをAIに移していって、逆にAIからのアウトプットをクリエイターが選ぶことで一緒にゲームを作っていく、共同でゲームを運用していくみたいな感じになるかなと思います。
早瀬:宗さんの話と被るところがあるのですが、いまはどちらかというと自動化のところをなんとかやっていく、ランダムでもいいので色々なパターンを作っていくことをやっていて、そのあと、そのランダムなデータに対し人間がその良し悪しを判定するという形になるのかなと思います。すると、何がよいシステムなのか、何がよい演出なのかというのが漠然と見えてくると思うので、今度はそれを利用してAIが独自に面白いゲームを作るとか、ユーザーごとに、そのときそのときに特化した演出とかができるようなAIができるとよいというふうに思っています。
三宅:みなさん、本当に先が見えていてすばらしいビジョンをお持ちだと思います。非常に頼もしいですね。ありがとうございました。
Writer:大内孝子、Image by Shutterstock