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【JSAI2022】創作が人間の特権でなくなった世界における著作権の行方
ほとんど人間が手を加えることなくAIが小説や脚本を執筆できるようになったら、人間の作品と区別がつかない楽曲を制作できるようになったら、AIツールを使ってビデオゲームのコンテンツを誰でも自由に作れるようになったら、それら成果物の著作権は最終的に誰に帰属すべきでしょうか。また、それらが既存の著作物に酷似していた場合、著作権侵害の責任は誰が負うべきでしょうか。
ディープラーニングをはじめとした機械学習モデルの発展によってAI技術の社会適用の可能性が大きく広がると同時に、AIモデルが生成した創作物や成果物の著作権や利権について明確な法整備が必要な時代に突入しました。
人工知能と著作権というテーマは、6月14日から6月17日まで開催された「第36回人工知能学会全国大会」においても重大な議題のひとつでした。今回、新型コロナウイルスの影響でハイブリッド開催となった同大会から、「AIによるクリエイティビティと著作権」というセッションを取材しました。
セッションの登壇者は、東京大学情報理工学系研究科AIセンターの松原仁教授、理化学研究所革新知能統合研究センター音楽情報知能チームの浜中雅俊氏、慶應義塾大学理工学部の栗原聡教授、株式会社スクウェア・エニックスAI部ジェネラルマネージャーの三宅陽一郎氏、骨董通り法律事務所の福井健策弁護士。国立情報学研究所の武田英明氏による司会で、AI技術を活用した創作物と著作権をめぐる法的かつ倫理的な課題について、パネルディスカッション形式で議論が交わされました。
AIモデルを使った小説や脚本の執筆
松原仁教授の研究室は、AIモデルに小説を生成させる「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」を、2012年から実施。AIモデルに星新一作品のようなショートショートを創作させることを目指して、名古屋大学の研究チームと共同で開発を続けています。2015年の第3回星新一賞では、AIと人間が共同で創作した作品を提出して一次審査を通過しました。また、2021年には、渡辺裕子監督の短編映画「少年、なにかが発芽する」の制作に松原氏の研究室が開発したAI脚本家「フルコト」が活用されたことで、大いに脚光を浴びました。
「フルコト」はインターネット上に公開されている小説や脚本といった文章データをディープラーニングで学習しており、人間が60文字から80文字程度のあらすじを入力するだけで、プロットライングラフ、感情分析、ログラインからなるP-S-L技術により脚本を自動生成できます。クリエイターが感情値やログラインを操作することで、人間とAIの共同作業が成立するということです。
こうしたAIモデルを活用した新たな創作の形は、近年世界中で研究開発が活発化しており、あらゆるジャンルのクリエイターに広く認知されるようになりました。国内でも、マンガやゲームといったインタラクティブなストーリー型コンテンツの創作支援基盤の開発を目指すプロジェクト「NEDO」が、2020年からスタートしました。
AIモデルを使った音楽の新たな可能性
理化学研究所で浜中雅俊氏が所属するチームでは、AIモデルを使って音楽の新たな可能性を探究しています。自動作曲のルーツは、1787年にモーツァルトが考案したサイコロ作曲までさかのぼります。また、世界初のコンピュータによる作曲が実現したのは1957年で、それからおよそ65年の間にコンピュータ作曲の著作権についてはたびたび議論されてきたといいます。
現代の自動作曲は、生成音楽理論(Generative Theory of Tonal Music)に基づいた楽曲の分析やメロディの演算に支えられています。David Copeによる作曲AI「Emily Howell」を筆頭に、AIモデルを使った作曲するケースも増えてきています。浜中氏の目標は、音楽的な個性を模倣したAIの実現だといいます。
ゲーム産業における自動生成コンテンツ
ゲーム業界でも、機械学習モデルを用いた自動生成コンテンツは欠かせない存在となりつつあります。2000年代以降、ハードウェアの進化にともないビデオゲームに要求されるコンテンツのボリュームが増加の一途をたどるなか、プログラムによってゲームコンテンツを自動生成するプロシージャル技術が重宝されてきました。
スクウェア・エニックスの三宅陽一郎氏によると、2020年代以降はここに機械学習が加わり、人間とAIが協力してゲームを作る動きが加速しているということです。一方、今後ディープラーニングのようなAIモデルによる機械学習で生成したコンテンツが増加していくなかで、それらによって生じうる問題の責任を誰が負うのかは、企業側にとって重要な論点だといいます。
第3世代AIと第4世代AIにおける創作
慶應義塾大学の栗原聡教授は、AIモデルの発展における方向性の違いから、人間の創作活動に対する影響を考察しています。
第3世代と呼ばれるAIは、IT技術の延長として合理的な道具という性質を持っています。一方、第4世代と呼ばれるAIには、人間と共生するために高い自律性や汎用性が求められています。そもそも人間は非合理的な生き物なので、その人間と接する上では完全に合理的なAIは信頼されないだろうと、栗原教授は語ります。
もし自律型の第4世代AIが動機や目的を持ってコンテンツを生成した場合、その著作権はAIを開発した人間にあるのか、もしくはAI自体にあるのかが争点になります。また、客観的には道具型であっても自律型にみえるケースも想定されます。AI対AIもしくはAI対人間において類似コンテンツが生成される可能性は十分考えられるということです。
AIによる学習と再現はどこまで自由か
弁護士の福井健策氏によると、本来著作物とは思想や感情の創作的な表現を指すため、「人がコンピュータを道具として使えば著作物たり得るが、その過程で人の創作的な寄与が必要」というのが、主に欧米や日本における従来の通説的な理解だということです。
つまり、現在のところAIコンテンツそのものに著作権はないという解釈ができます。そもそも知的財産権とは、本来自由流通性を持つ情報に与えられた排他独占権であり、創造による成果物を保護することと、その成果物に対する自由なアクセスを守ることで、新たな創造を促すことのバランスが重要であると、福井氏は語ります。
AIが創作の大半を担うようになったら
セッション後半では、松原仁教授、浜中雅俊氏、栗原聡教授、三宅陽一郎氏、福井健策氏によるディスカッションが行われました。
多くのAI研究者たちがこぞって目指しているのが、人間による関与を可能な限り減らしたAI主体の創作活動です。最終的にはAIに創作のすべてを担ってほしいけれど、それでは人間のクリエイターが作品に対する権利を主張できないので、AI技術を活用した創作活動の理想像はAIが9割、人間が1割の形ではないかと、AIモデルによる小説や脚本の自動生成を研究する松原教授は語ります。
AIモデルが生成したコンテンツといっても、人間が関与していれば恐らくその著作権は作品を生み出したクリエイターに帰属します。また、前述した星新一風のショートショートを生成する試みや、手塚治虫の作家性をAIで再現する「TEZUKA2020」のようなプロジェクトの場合は、通常はAIモデルの学習データを提供する著作権者の協力が前提にあります。
著作物をめぐる知的財産権に関して、「偶然の一致」は排他独占権の侵害にはあたりません。しかし、それは人間による創作能力を前提にした法整備にすぎないと、松原教授は警鐘を鳴らします。もしAIモデルが自動生成した文章や音楽のすべてに権利を主張する人間が現れたら、その後に生み出されるあらゆる作品が違法コピーとみなされてしまいかねません。そうなれば、本来クリエイターを守るための著作権が社会におよぼす影響は計り知れません。
この課題を考える際、「似ている」という言葉の定義が、この先AI創作と著作権を考える上で重要な意味を持ってくることが予想されます。
音楽の構造分析を専門とする浜中氏は、音楽業界で音符の類似率を根拠に著作権違反の判例があることに触れ、自動生成された文章や音楽に著作物と認められるに値する構造のような判断基準を設ければいいのではないかと提案します。その一方で、すべてのジャンルで構造分析が可能になれば、そもそも作品として許容されるものだけに権利を主張すればいいだけなので、結局はいたちごっこになるだろうとも予想します。
この先第4世代と呼ばれる高い自律性を備えたAIモデルが台頭した場合、「創造性がある」と人間が思い込むようなコンテンツが生み出される可能性はあるとも、栗原教授は指摘しています。
AIによる創作物の権利は誰にあるか
とりわけ現在の機械学習をめぐる知的財産権に関しては、AIモデルを使った成果物の権利と責任を誰が持つのかが最大の論点です。AIモデルの開発者なのか、学習データの提供者なのか、それを運用するユーザーなのか、はてはAIそのものなのか。
もし創造性がツール提供者によって独占されてしまったら、そんなツールを利用するクリエイターはいなくなります。絵の具や彫刻刀を発明した人間がすべてのアートの権利を握るようなものです。
この点について、創造性は作者が全権を主張できる場合にしか成り立たないと、三宅氏は語ります。そのツールが機械学習モデルであったとしても、名目上の権利自体はユーザーに譲渡せざるを得ないのだといいます。
栗原教授も、彫刻刀とAIツールでは道具の開発者とクリエイターの寄与率が大きく異なる点に触れ、AIモデルを開発した人が報われるべき権利は知財特許の観点で守るしかないとコメントしています。
法律とは本質的に後手に回る仕組みであり、必ずしもすべてのケースに適応できるとも限らないことから、AI時代の知的財産権についてもエコシステムの変化にあわせて多様な側面から議論されるべきだと、福井氏は語ります。その上で、AIツールの開発者とユーザーの間で交わされる契約事項の重要性を訴えました。
Writer:Ritsuko Kawai / 河合律子