モリカトロン株式会社運営「エンターテインメント×AI」の最新情報をお届けするサイトです。
- TAG LIST
- CGCGへの扉機械学習安藤幸央ディープラーニング月刊エンタメAIニュースGAN河合律子OpenAINVIDIA音楽吉本幸記ニューラルネットワーク三宅陽一郎強化学習GoogleQAグーグルDeepMindGPT-3Facebook自然言語処理人工知能学会大内孝子森川幸人敵対的生成ネットワークシナリオキャラクターAIスクウェア・エニックスモリカトロンAIラボインタビューマイクロソフトルールベースStable DiffusionAIと倫理アート映画デバッグNFTDALL-E2StyleGAN倫理ゲームプレイAI自動生成SIGGRAPHモリカトロンメタAIテキスト画像生成ロボット深層学習ファッションCEDEC2019プロシージャルVFXデジタルツイン遺伝的アルゴリズムテストプレイNPCDALL-ECLIP画像生成大規模言語モデルChatGPTビヘイビア・ツリーディープフェイクCEDEC2021CEDEC2020ゲームAIメタバース不完全情報ゲームVRナビゲーションAI画像生成AIボードゲーム畳み込みニューラルネットワークGDC 2021JSAI2022生成系AIAdobeGDC 2019マルチエージェントCEDEC2022著作権AIアート懐ゲーから辿るゲームAI技術史toioジェネレーティブAICNNMicrosoftNVIDIA OmniverseUnity小説アニメーション鴫原盛之HTN階層型タスクネットワークマンガ汎用人工知能JSAI2020GTC2023TensorFlowインタビューバーチャルヒューマンBERTMidjourneyイベントレポート対話型エージェントAmazonロボティクスMetaMinecraft水野勇太アバターOmniverse3DCGUbisoftGenvid TechnologiesガイスターStyleGAN2GTC2022教育ソニーJSAI2021スポーツ研究シムピープルMCS-AI動的連携モデルマーケティングGDC SummerLLMブロックチェーン作曲アストロノーカキャリアeスポーツスタンフォード大学サイバーエージェント音声認識eSportsDQNBLUE PROTOCOLシーマンStability AIメタAlphaZeroTransformerGPT-2rinnaAIりんなデジタルヒューマンカメラ環世界中島秀之PaLM哲学ベリサーブPlayable!理化学研究所SIGGRAPH ASIANetflix東京大学DARPAドローンシムシティImagenZorkバイアスモーションキャプチャーTEZUKA2020AI美空ひばり手塚治虫テキスト生成バンダイナムコ研究所スパーシャルAIElectronic Arts3DメタデータLEFT 4 DEAD通しプレイOpenAI Five本間翔太CMAudio2Faceピクサープラチナエッグイーサリアムボエダ・ゴティエビッグデータ中嶋謙互Amadeus Codeデータ分析Microsoft AzureMILE模倣学習ナラティブNVIDIA RivaアーケードゲームOmniverse ReplicatorWCCFレコメンドシステムNVIDIA DRIVE SimWORLD CLUB Champion FootballNVIDIA Isaac Simセガ柏田知大軍事田邊雅彦トレーディングカードトレカメディアアートGPTPyTorch眞鍋和子バンダイナムコスタジオaibo合成音声齊藤陽介マインクラフトお知らせMagic Leap Oneチャットボットサルでもわかる人工知能VAEDreamFusionリップシンキングUbisoft La Forge自動運転車ワークショップ知識表現ウォッチドッグス レギオンIGDA秋期GTC2022市場分析どうぶつしょうぎEpic Gamesジェイ・コウガミ音楽ストリーミングMITAIロボ「迷キュー」に挑戦AWS野々下裕子徳井直生マシンラーニング5GMuZeroRival Peakpixivクラウド対話エンジン斎藤由多加リトル・コンピュータ・ピープルCodexコンピューティショナル・フォトグラフィーゴブレット・ゴブラーズ絵画ARMicrosoft Designerイラストシミュレーション完全情報ゲーム坂本洋典釜屋憲彦ウェイポイントパス検索対談藤澤仁生物学GTC 2022画像認識GPT-3.5SiemensStyleCLIPDeNA長谷洋平masumi toyota宮路洋一OpenSeaGDC 2022Gen-1TextWorldEarth-2BingMagenta音楽生成AISFELYZA Pencil松尾豊GTC2021CycleGANテンセントデータマイニングNetHackはこだて未来大学Bardキャラクターモーションフェイクニュース現代アートエージェントRPGSIGGRAPH 2022レベルデザインAIボイスアクターNVIDIA CanvasGPUALife人工生命オルタナティヴ・マシンサウンドスケープLaMDATRPGAI DungeonプロンプトASBS栗原聡ぱいどんアドベンチャーゲーム不気味の谷ナビゲーションメッシュ松井俊浩ELYZAフルコトELYZA DIGEST建築音声合成NeRF西成活裕Apex LegendsELIZA群衆マネジメントライブポートレイトNinjaコンピュータRPGライブビジネスWonder Studioアップルタウン物語新型コロナ土木KELDIC周済涛BIMメロディ言語清田陽司インフラゲームTENTUPLAYサイバネティックスMARVEL Future FightAstro人工知能史Amazon BedrockタイムラプスEgo4DAI哲学マップイーロン・マスクバスキア星新一X.AI日経イノベーション・ラボStyleGAN-XLX Corp.敵対的強化学習StyleGAN3Twitter階層型強化学習GOSU Data LabGANimatorXホールディングスWANNGOSU Voice AssistantVoLux-GANMagi竹内将SenpAI.GGProjected GANStable Diffusion XLMobalyticsSelf-Distilled StyleGANSDXL馬淵浩希CygamesニューラルレンダリングRTFKT岡島学AWS SagemakerPLATONIKE映像セリア・ホデント形態素解析frame.ioClone XUXAWS LambdaFoodly村上隆誤字検出森山和道認知科学中川友紀子Digital MarkゲームデザインSentencePieceアールティSnapchatLUMINOUS ENGINEクリエイターコミュニティLuminous ProductionsBlenderBot 3バーチャルペットパターン・ランゲージ竹村也哉Meta AINVIDIA NeMo Serviceちょまどマーク・ザッカーバーグヴァネッサ・ローザGOAPWACULVanessa A RosaAdobe MAX 2021陶芸自動翻訳Play.ht音声AIAIライティングLiDAROmniverse AvatarAIのべりすとPolycamFPSQuillBotdeforumマルコフ決定過程NVIDIA MegatronCopysmith動画生成AINVIDIA MerlinJasperハーベストNVIDIA MetropolisForGamesパラメータ設計テニスゲームマーケットバランス調整岡野翔太協調フィルタリング郡山喜彦人狼知能テキサス大学ジェフリー・ヒントンGoogle I/O 2023AlphaDogfight TrialsAI Messenger VoicebotGoogle I/OエージェントシミュレーションOpenAI Codex武蔵野美術大学StarCraft IIHyperStyleMax CooperBingAIFuture of Life InstituteRendering with StyleIntelDisney類家利直FireflyLAIKADisneyリサーチヴィトゲンシュタインPhotoshopRotomationGauGAN論理哲学論考LightroomGauGAN2京都芸術大学Canvaドラゴンクエストライバルズ画像言語表現モデルChatGPT4不確定ゲームSIGGRAPH ASIA 2021PromptBaseBOOTHDota 2モンテカルロ木探索ディズニーリサーチpixivFANBOXMitsuba2バンダイナムコネクサス虎の穴ソーシャルゲームEmbeddingワイツマン科学研究所ユーザーレビューFantiaGTC2020CG衣装mimicとらのあなNVIDIA MAXINEVRファッションBaidu集英社淡路滋ビデオ会議ArtflowERNIE-ViLG少年ジャンプ+グリムノーツEponym古文書ComicCopilotゴティエ・ボエダ音声クローニング凸版印刷コミコパGautier Boeda階層的クラスタリングGopherAI-OCRゲームマスター画像判定Inowrld AIJuliusSIE鑑定ラベル付けMODTPRGOxia Palus大澤博隆Ghostwriterバーチャル・ヒューマン・エージェントtoio SDK for UnityArt RecognitionSFプロトタイピングSkyrimクーガー田中章愛実況パワフルサッカースカイリム石井敦銭起揚NHC 2021桃太郎電鉄RPGツクールMZ茂谷保伯池田利夫桃鉄ChatGPT_APIMZGDMC新刊案内パワサカダンジョンズ&ドラゴンズマーベル・シネマティック・ユニバースコナミデジタルエンタテインメントOracle RPG成沢理恵MITメディアラボMCU岩倉宏介深津貴之アベンジャーズPPOxVASynthマジック・リープDigital DomainMachine Learning Project CanvasLaser-NVMagendaMasquerade2.0国立情報学研究所TencentノンファンジブルトークンDDSPフェイシャルキャプチャー石川冬樹MERFサッカーモリカトロン開発者インタビュースパコンAlibaba里井大輝Kaggle宮本茂則スーパーコンピュータVQRFバスケットボール山田暉松岡 聡nvdiffrecAssassin’s Creed OriginsAI会話ジェネレーターTSUBAME 1.0NeRFMeshingSea of ThievesTSUBAME 2.0LERFGEMS COMPANYmonoAI technologyLSTMABCIマスタリングモリカトロンAIソリューション富岳TikTok初音ミクOculusコード生成AISociety 5.0リアム・ギャラガー転移学習テストAlphaCode夏の電脳甲子園グライムスBaldur's Gate 3Codeforces座談会BoomyCandy Crush Saga自己増強型AItext-to-imageジョン・レジェンドSIGGRAPH ASIA 2020COLMAPtext-to-3Dザ・ウィークエンドADOPNVIDIA GET3DドレイクデバッギングBigGANGANverse3DMaterialGANRNNグランツーリスモSPORTAI絵師ReBeLグランツーリスモ・ソフィーUGCGTソフィーPGCVolvoFIAグランツーリスモチャンピオンシップNovelAIRival PrakDGX A100NovelAI DiffusionVTuberユービーアイソフトWebcam VTuberモーションデータ星新一賞北尾まどかHALOポーズ推定将棋メタルギアソリッドVフォートナイトメッシュ生成FSMメルセデス・ベンツRobloxMagic Leapナップサック問題Live NationEpyllion汎用言語モデルWeb3.0マシュー・ボールAIOpsムーアの法則SpotifyスマートコントラクトReplica StudioamuseChitrakarQosmoAdobe MAX 2022巡回セールスマン問題Adobe MAXジョルダン曲線メディアAdobe Research政治Galacticaクラウドゲーミングがんばれ森川君2号和田洋一リアリティ番組映像解析Stadiaジョンソン裕子セキュリティMILEsNightCafe東芝デジタルソリューションズインタラクティブ・ストリーミングLuis RuizSATLYS 映像解析AIインタラクティブ・メディアポケモン3DスキャンPFN 3D Scanシーマン人工知能研究所東京工業大学Ludo博報堂Preferred NetworksラップPFN 4D ScanSIGGRAPH 2019ArtEmisZ世代DreamUpAIラッパーシステムDeviantArtWaifu DiffusionGROVERプラスリンクス ~キミと繋がる想い~元素法典FAIRSTCNovel AIチート検出Style Transfer ConversationOpen AIオンラインカジノRCPアップルRealFlowRinna Character PlatformiPhoneCALADeep FluidsSoul Machines柿沼太一MeInGameAmeliaELSIAIGraphブレイン・コンピュータ・インタフェースバーチャルキャラクターBCIGateboxアフォーダンスLearning from VideoANIMAKPaLM-SayCan予期知能逢妻ヒカリセコムGitHub Copilotユクスキュルバーチャル警備システムCode as Policiesカント損保ジャパンCaP上原利之ドラゴンクエストエージェントアーキテクチャアッパーグラウンドコリジョンチェックPAIROCTOPATH TRAVELER西木康智OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者山口情報芸術センター[YCAM]アルスエレクトロニカ2019品質保証YCAMStyleRigAutodeskアンラーニング・ランゲージ逆転オセロニアBentley Systemsカイル・マクドナルドワールドシミュレーターローレン・リー・マッカーシー奥村エルネスト純いただきストリートH100鎖国[Walled Garden]プロジェクト齋藤精一大森田不可止COBOLSIGGRAPH ASIA 2022高橋智隆DGX H100VToonifyロボユニザナックDGX SuperPODControlVAE泉幸典仁井谷正充クラウドコンピューティング変分オートエンコーダーロボコレ2019Instant NeRFフォトグラメトリartonomous回帰型ニューラルネットワークbitGANsDeepJoinぎゅわんぶらあ自己中心派Azure Machine LearningAzure OpenAI Service意思決定モデル脱出ゲームDeepLHybrid Reward Architectureコミュニティ管理DeepL WriteウロチョロスSuper PhoenixSNSProject Malmoオンラインゲーム気候変動Project PaidiaシンギュラリティProject Lookoutマックス・プランク気象研究所レイ・カーツワイルWatch Forビョルン・スティーブンスヴァーナー・ヴィンジ気象モデルRunway ResearchLEFT ALIVE気象シミュレーションMake-A-Video長谷川誠ジミ・ヘンドリックス環境問題PhenakiBaby Xカート・コバーンエコロジーDreamixロバート・ダウニー・Jr.エイミー・ワインハウスSDGsText-to-ImageモデルYouTubeダフト・パンクメモリスタ音声生成AIGlenn MarshallScenarioThe Age of A.I.Story2Hallucination音声変換LatitudeレコメンデーションJukeboxAIピカソVeap JapanAI素材.comEAPneoAISIFT福井千春DreamIconDCGAN医療mignMOBADANNCEメンタルケアstudiffuse人事ハーバード大学Edgar HandyAndreessen Horowitz研修デューク大学AIQVE ONEQA Tech Nightmynet.aiローグライクゲーム松木晋祐東京理科大学下田純也人工音声NeurIPS 2021産業技術総合研究所桑野範久リザバーコンピューティングプレイ動画ヒップホップ対話型AIモデル詩ソニーマーケティングControlNetサイレント映画もじぱnoteNBA環境音暗号通貨note AIアシスタントFUZZLEKetchupAlterationAI News粒子群最適化法Art Selfie進化差分法オープンワールドArt Transfer群知能下川大樹AIFAPet Portraitsウィル・ライト高津芳希P2EBlob Opera大石真史クリムトBEiTStyleGAN-NADA世界モデルDETRゲームエンジンDreamerV3SporeUnreal Engineクリティックネットワークデノイズ南カリフォルニア大学Unity for Industryアクターネットワーク画像処理DMLabSentropyGLIDEControl SuiteCPUDiscordAvatarCLIPAtari 100kSynthetic DataAtari 200MCALMYann LeCunプログラミングサム・アルトマン鈴木雅大ソースコード生成コンセプトアートGMAIシチズンデベロッパーSonanticColie WertzGitHubCohereリドリー・スコットウィザードリィMCN-AI連携モデルマジック:ザ・ギャザリング絵コンテUrzas.aiストーリーボード介護大阪大学西川善司並木幸介KikiBlenderサムライスピリッツ森寅嘉Zoetic AIゼビウスSIGGRAPH 2021ペットGPT-4ストリートファイター半導体Digital Dream LabsPaLM APITopaz Video Enhance AICozmoMakerSuiteDLSSタカラトミーSkeb山野辺一記NetEaseLOVOTDreambooth-Stable-Diffusion大里飛鳥DynamixyzMOFLINゲーム背景RomiGoogle EarthU-NetミクシィGEPPETTO AI13フェイズ構造ユニロボットStable Diffusion web UIADVユニボPoint-EXLandGatoアパレルAGIAI model手塚眞DEATH STRANDINGマルチモーダルAI ModelsEric Johnson汎用強化学習AIZMO.AIデザインMOBBY’SOculus Questコジマプロダクションロンドン芸術大学モビーディック生体情報デシマエンジンGoogle BrainダイビングインディーゲームSound Controlアウトドア写真高橋ミレイSYNTH SUPERAIスキャニング照明Maxim PeterKarl Sims自動採寸Joshua RomoffArtnome3DLOOKハイパースケープICONATESizer山崎陽斗深層強化学習ワコール立木創太松原仁スニーカー浜中雅俊UNSTREETミライ小町武田英明Newelseテスラ福井健策CheckGoodsGameGAN二次流通パックマンTesla BotNEDO中古市場Tesla AI DayWikipediaDupe Killerソサエティ5.0Sphere偽ブランドSIGGRAPH 2020バズグラフXaver 1000配信ニュースタンテキ養蜂東芝Beewiseソニー・ピクチャーズ アニメーションDIB-R倉田宜典フィンテック投資Fosters+Partners韻律射影MILIZEZaha Hadid Architects広告韻律転移三菱UFJ信託銀行
仁井谷正充氏に訊く『ザナック』にAIが導入された理由:懐ゲーから辿るゲームAI技術史vol.2
『ザナック』とは、どのようなゲームだったのか?
「多分、世界で初めて『AI』という言葉を使ったゲームだと思います」
この言葉は、元コンパイル、現コンパイル◯(まる)社長の仁井谷正充氏が、筆者も参加した2017年のインタビューにおいて、『ザナック』について質問をした際に語ったものです。
『ザナック』とは、1986年にコンパイルが開発し、ポニーから発売されたMSX、およびファミリーコンピュータ用の縦スクロールシューティングゲーム。カーソル(または十字キー)とボタン2個で自機を操作し、カーソルキーは自機の8方向への移動に、ボタンはメインウェポンとサブウェポンの発射時にそれぞれ使用します。
メインウェポンは、最初は1発ずつしか撃てませんが、パワーチップ(アイテム)を取るとパワーアップして、最高で3発同時に撃てるようになります。サブウェポンは、アイテムを取ることでオールレンジキャノン、プラズマフラッシュなど全8種類が装備可能で、同じ種類のアイテムを続けて取るとさらにパワーアップし、強力かつ見た目にも派手が攻撃を繰り出せる特長を持ちます。
豊富な敵キャラクターの種類と攻撃のバリエーション、軽快なBGM、超高速スクロールする背景(※本稿では触れていませんが、こちらのプログラミング技術・アイデアも、本サイト読者には大いに興味をそそられるハズ)など、あらゆるシステム・演出を盛り込み、当時のプレイヤーに衝撃を与えました。とりわけファミリーコンピュータ版は海外でも人気を博し、全世界で100万本を超えるセールスを記録しました。
そして特筆すべきは、パッケージや雑誌広告にも、セールスポイントのひとつとして「AIを搭載」と明確に打ち出していたことです。本作にプログラミングされたAIは、その名もALC(AUTO LEVEL CONTROLER)。特にMSX版では、ALCをいわゆる内部パラメーター扱いとはせず、わざわざプレイヤーに明示する前代未聞のアイデアを盛り込んでいたのです。
ゲーム中に画面右上に常時表示され、プレイ内容に応じて刻々と数値が変化するACL。では、具体的にどのように計算され、ゲームの展開に変化をもたらしているのでしょうか? 以下の写真に、ALCの変化する条件、およびその影響によってゲーム展開が変わる例をいくつか挙げました。ちなみに、ALCの計算には16進数が使用されているので、数値にはA~Fまでのアルファベットが表示されることもあります。
ALCにより難易度が変化する例




それにしても、今から34年も前に、なぜAIをゲームに取り入れようと思い付いたのでしょうか? そして、その中身はいったいどのようなものだったのでしょうか? 本作の開発者のひとりである、当時のコンパイル社長、現コンパイル◯(まる)社長の仁井谷正充氏に、開発当時のお話を伺いました。
AI専門の会社と知り合ったことでゲームAIの実装を実現
——本日はよろしくお願いいたします。まずは、『ザナック』を作ろうと思ったきっかけから教えてください。
仁井谷正充氏(以下、仁井谷):コンパイルの事業が始まって、最初の頃はセガさんといっしょにゲームを作っていたのですが、「我々もシューティングゲームを作ろう」という話が社内で出始めるようになりました。その後、シューティングゲームを1、2本作っているうちに、ポニーキャニオンさんとのお付き合いが始まりまして、ポニーキャニオンさんから「シューティングゲームが欲しいな」というお話があったので、「じゃあ、作りましょう」ということで『ザナック』の開発が始まりました。
——『ザナック』は何人ぐらいで開発したのでしょうか?
仁井谷:私のほかは、プログラマーの広野(隆行)君、デザインの寺本(耕二)君、サウンドの宮本(昌友)君がいました。
——では、『ザナック』になぜAIを導入しようとお考えになったのでしょうか?
仁井谷:実はですね、コンパイルとポニーキャニオンさんとの間にAII(エーアイアイ)さんという、まさにAIに詳しい方がAIをやるために作った会社があって、そこといっしょにAIをやろうという流れになったんです。そこで、AIIさんからAIとは何かという説明を受けて、『ザナック』のコンセプトをAIにしようということになりました。
——つまり、『ザナック』の開発にあたり、そのAIIの方にプログラムの監修を受けたということですか?
仁井谷:いいえ。その方は、おそらくゲームに関しては全然詳しくなかったので、監修まではしていなかったと思います。当時はコンピューターや数学に詳しい人はAIを知っていても、ゲームを作っている人たちはほとんど知らない時代でした。ですから、AIIさんが我々に橋渡しをしてくださったわけですね。確か、タイトル画面に「PRODUCED BY AII」の表記が入っていたと思います。

——AIIは、具体的にどんな事業をしていたのでしょうか?
仁井谷:詳しいことはわかりませんが、学者肌の方でしたね。
——まだ昭和の時代に、「AIを搭載」というキャッチコピーを入れたのは本当に斬新でしたよね。
仁井谷:まさに、今お話したAIIがAIをプッシュしていましたから、「AI」と全面的に出していました。「AIとは、こういうものですよ。ゲームにAI的な要素を入れましょう。じゃあ、こうしましょう、ああしましょう」と、プログラマーといろいろディスカッションをしながら作っていたと思います。
——ちなみに、仁井谷さんは『ザナック』を開発する以前にAIの存在をご存知だったのでしょうか? 大学時代は理学部だったそうですが、当時から何かAI関連の勉強をされていましたか?
仁井谷:いいえ。学生時代にコンピューターを勉強したわけでもないですし、AIという意識がそもそもなかったです。大学にパンチカードを使った大型コンピューターはありましたが、ほとんど触ったことがなかったですね。AIIさんにお会いしてから、「人工知能、AIというものがあるのか。ふーん……」と初めて知りました。
——では、仁井谷さんが今までに遊ばれたゲームのなかで、AIあるいはAI的なものを感じたタイトルは何かありますか?
仁井谷:やり込んだゲーム自体が少ないのでよく分からないのですが、まず思い付くのは『ロードランナー』(1983年、ブローダーバンド)でしょうか。『ロードランナー』は、敵のロボットがまるで人の動きを感じ取るような、すごく微妙な動きをするんですよ。主人公が近付いたら逃げるとか、あるいはY軸方向にちょっとだけ、5ドットぐらい動いたらこっちに近付くとか、そんな動きをするので、単なるコンピューターが決めた動きではない、何だか人間、AIっぽさが感じられるなあと。
昔のアーケード用の麻雀ゲームとかですと、コンピューターがプレイヤーの手牌を全部わかったうえで対戦しているから、「絶対におかしいだろ、勝てないよ!」とか インチキっぽく感じちゃいますよね? ですから、コンピューターゲームにおいて人間らしさを作るというのは、実はなかなか難しいんですね。
今の3Dになったゲームとかを見ても、難しいしなと感じますね。例えばRPGとかで、毎回同じ説明だけをしゃべるのはやめてほしいなあと。同じメッセージを2回聞いたら、もう違うことを話すようにするとか、あるいは話さないように選択できるとかするといいと思うのですが。もし人間だったら、2回も3回も続けて同じことは言わないでしょ?(笑)
——『ザナック』は、ゲーム中にALCの数値が目まぐるしく変化しますよね。特定の敵を倒すと上がるとか、ミスをすると下がるなど、数値が上下する条件は仁井谷さんがお考えになったのでしょうか?
仁井谷:そこはプログラマーの広野君が作りました。AIIの方も、「何か人工的、人工知能的が欲しい」と思って作った箇所が、まさにそこですよね。こっち(自機)が強くなったら、敵も強くなる。逆に弱くなったら、敵も弱くしようと。当時はゲームデザイナーと呼ばれるような人はまだ存在しない時代でしたから、自分でプログラムをしながらパラメーターも全部調整していたと思います。
——敵キャラクターの動きの制御方法についてお尋ねします。『ザナック』ではプレイヤーの操作の仕方に応じて、各敵キャラの行動パターンが変わるようなプログラムがしてあるのでしょうか?
仁井谷:基本的には、まず敵ごとに動きを1つずつ決めてあります。最初はタテに動いていて、ある距離まで自機に近付いたら自機のほうに向かって来るとか、そういう動きを最初に作っておいて、あとはプレイヤー、自機の直近の動きによって、例えば弾を撃つとか接近するとか逃げるとか、そういうパラメーターを微調整しながら作っています。つまり、ワンパターンにはしていないということですね。
——上手なプレイヤーが遊ぶと、より敵の攻撃が激しくなるプログラムも組み込んでいるのでしょうか?
仁井谷:細かい内容は覚えていないのですが、例えば5発撃つと倒せる敵が10発撃たないと倒せないようになるとか、あるいは敵が弾を出すタイミングを、最初は10サイクルで1回撃つところを2回にするとか、そういうことをAI的にやっていたのではないかと思います。
——『ザナック』以前のゲームでは、例えば『ゼビウス』(1983年、ナムコ)にもAI的な要素があったとされていますが、仁井谷さんも当時から『ゼビウス』の存在を意識していたのでしょうか?
仁井谷:『ゼビウス』の影響は当然受けましたが、我々自身がAIという言葉を初めて聞いたのが『ザナック』のときでしたから、AI的なことで影響を受けたということはなかったですね。先程もお話したように、自機と敵との距離などのパラメーターによって、いろいろ変えながら作ることは以前からやっていましたし、それをAIと言えばAIなのかもしれませんが、ある意味それは普通のことだと思いますね。
敵が自機に近付くようにする距離を、X座標で10にするのかゼロにするのか、それともマイナス10にするのか、そのパラメーターを微妙に変えることでプレイヤーが面白く見えるようにできますので、AI的なことというのは、おそらくこういうことなんだろうなと思います。

——MSX版において、ALCの数値をあえて明示した意図は何だったのですか?
仁井谷:RPGで、レベルを表示するのと同じようなことだと思います。コンパイルで5年、10年とゲームを作る仕事を続けてきたなかで、RPGでもそれに近いことを伝統的にやっていましたので。今、自分のレベルがいくつで、敵のレベルがいくつなのかが見えると、ゲームとして分かりやすくなりますしね。ちょっと記憶が定かではないのですが、まあそんな形だった気がします。それと、プログラマーの広野君は、自分で考えたことは何でもプレイヤーに見せようというタイプでしたからね。
今、改めて見てもカッコイイですよねコレ。AIをコンセプトにするだなんて、10年も20年も早かったんじゃないかなあと(笑)
社外からも注目、評価を受けた『ザナック』のAIプログラム
——『ザナック』でAIのプログラムを作ったことによって、その後のゲーム開発にも大いに役立ったのでしょうか?
仁井谷:AIだけではなくて、基本的なプログラムを作って持っておきたいという考え方がずっとあったんですよ。例えば、キャラクターが16方向に動くとか、あるいは360度に動くプログラムとか、色々なノウハウを集めた上で出来上がった、ベースとなるプログラムをコンパイルではずっと持ち続けていました。つまり、基本のプログラムが伝統として代々つながっていたわけですね。ゲームの基本的な作り方となるプログラムは、まずは藤島(聡)君というプログラマーが作ったものがベースにあって、それをずっとコンパイル社内で培っていきながらゲームを作っていましたね。
例えば、当時のRPGのキャラクターとかって、カクカクしながら4方向しか動かないですよね? でも、『ザナック』には、実際にはただデータを持っているだけなのですが、キャラクターが16方向とか、360度動くプログラムをしてあるんです。もし360度動かそうと思ったら、X方向もY方向も、ナナメにも同じ距離を動かないといけないわけです。もしタテとヨコを1ずつ動かしたとすると、ナナメの距離が1よりも長くなっちゃうじゃないですか? ですから、そうならないように360度で同じ距離を動くようなデータを持つプログラムとかを作っていました。
そうすると、見た目に不自然さがなくなるわけですね。当時のほかのシューティングゲームは、タテ、ヨコ、ナナメに動く長さがよく違っていたりしたのですが、それだと気持ちが悪いんですよ。でも、このゲームは360度同じように動くよう工夫してあるから、遊んでいてとても気持ちがいいんですね。
——『ザナック』の発売後、ユーザーやゲーム業界での評判はいかがでしたか?
仁井谷:ゲーム業界でも、すごく反響がありましたね。特に、アーケードゲームを作っていたメーカーが『ザナック』のAIに注目するようになって、AI以外にもいろいろなプログラムの研究をされたと聞いています。グラフィックはそんなに大したことはなかったのですが、AIなどの斬新さがあったということで、注目されたようですね。『ザナック』以前は、難易度とかは『ゼビウス』のような作り方をするのが普通だったと思うんですよね。『ゼビウス』では、敵の出現テーブルを作ったうえでどの敵を出すのかを決めていたと思いますが、我々のほうでも『ザナック』以外のゲームにもテーブルは作っていました。
もともと、我々は『ゼビウス』をすごくリスペクトしていて、「『ゼビウス』を超えるようなゲームを作りたいな」という気持ちが何となくですがありました。じゃあ、どうすれば超えられるのかということで、AIを作ることと、それからマップをすごく長く作ることを考えました。ゲーム雑誌の攻略記事を見ると、たいていマップを全部載せていますよね? で、実はそれはちょっと悔しいなあと思ったので、長いマップを作ったんです。そうしたら、雑誌社のほうでは写真をすごく小さくして、結局マップを全部載せられちゃったのでガッカリしたこともありました……。そうそう、それと私のアイデアで、MSXでも背景を2重スクロールができるようにしたのも当時は驚かれましたね。
——AIという新たなプログラムを組み込んだことによって、例えばROMの容量を想像以上に使ってしまったとか、何か開発中に問題などは起きませんでしたか?
仁井谷:MSXですと、確かZ80だからマシン語を使いましたし、メモリに関しては頑張れば何とかなりましたね。メモリを小さくするというのは、昔は『ザナック』に限らず、毎回普通にやっていたことなので、AIを入れたからどうこうというのは特になかったですね。
——発売から34年近い年月が過ぎましたが、『ザナック』はどのようなところがユーザーに支持されたとお考えでしょうか? やはり、AIの導入が高評価を得た大きな要因になったと思われますか?
仁井谷:そうですね。評価をされたのは、まさにその部分だったと思います。AIによって敵の動き方が一辺倒ではなく、自分の成長に応じて出現頻度や強さがいろいろ変わったりするところに、新しさを感じてくれたんだろうなと。
実は、我々のなかでは『ザナック』に新しさがあったとは思っていなかったんです。これは『ぷよぷよ』(1991年、コンパイル)など、ほかのゲームを発売したときもそうでしたが、発売した後に遊ぶ側の皆さんからの反響があったことで、改めて考え直すんですよね。『ザナック』のときも、皆さんが「斬新だった」と言ってくださったことによって、「ああ、AIは斬新だったんだな」と思うようになりましたね。
(取材・文/鴫原盛之)
※MSX版『ザナック』1面のプレイ動画およびキャプチャ画像はプロジェクトEGG版を使用して収録しております。
このゲームはプロジェクトEGGで遊べます!
https://www.amusement-center.com/project/egg/
(C)2020 D4Enterprise Co.,Ltd.
(C)2020 MSX Licensing Corporation All Rights Reserved.
‘MSX’ is a trademark of the MSX Licensing Corporation.