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AIが著作物を学習する流れは止められない:月刊エンタメAIニュース vol.32

2022.9.22先端技術

AIが著作物を学習する流れは止められない:月刊エンタメAIニュース vol.32

エンタメにおいても人工知能は日進月歩で発展しており、新しい研究成果や試みが次々と発表されています。こちらの連載では、過去1か月間に公開された注目すべきゲームAIやエンタメAIに関連したニュース、論文などを紹介していきます。

画像生成AIの悪用を危惧して国産サービスが炎上

この9月は、イラスト生成AIサービス「mimic」をめぐる一連の騒動をきっかけに、近年の急速な発展で取り沙汰される画像生成AIと著作権に関する議論が大きな話題でした。

SNSをとおして日本国内でも広く知られるようになった画像生成AIは、単語や文章といったテキスト情報を基に絵画やイラストを短時間で生成できるように構築された機械学習アルゴリズム全般を指します。これまでにも「DALL-E」や「Midjourney」など、コンセプトデザインにおいてクリエイターの強力なツールとして期待が寄せられるAIモデルを紹介してきました。

関連記事:アーティストが失業を危惧する画像生成AI:月刊エンタメAIニュース vol.31

なかでも、8月22日にStability AIがオープンソースとして無料公開した「Stable Diffusion」は、他社の競合モデルよりも低スペックな環境で実行可能な一般消費者向けのAIモデルとして大いに脚光を浴びました。すでに複数の企業や開発者がStable Diffusionを組み込んだ画像生成サービスを展開しています。

そんななか、ラディウス・ファイブが8月29日にベータ版として公開したイラスト生成AIサービス「mimic」は、あらかじめ膨大な量の画像を学習させてあるAIモデルの「Midjourney」や「Stable Diffusion」と異なり、ユーザーが自分で描いた絵をアップロードして画風を学習させることで、自分専用のイラストメーカーを構築できるというもの。誰もが気軽に画像を生成できるAIモデルというよりは、イラスト制作者をターゲットにした支援ツールという主旨のサービスでした。

mimicの仕組み 出典:mimic

しかし、ユーザーがアップロードした絵が本人の作品かどうかを判別するための基準やプロセスが不明瞭だとして、SNS上で一部のイラスト制作者からの批判的な意見が相次ぎ、挙句の果てにはサービス開発に協力した特定のイラスト制作者に対する誹謗中傷にまで発展しました。この事態を重く受け止めたラディウス・ファイブは、ベータ版の発表からわずか1日で「mimic」のサービスを停止するにいたりました。

その後、同社は9月14日に不正利用を防ぐための具体的な対策を発表。サービスと連携させたユーザーのTwitterアカウントを事前に審査し、ユーザーがSNSで公開しているイラストが本人の作品であると判断できた場合に限り、「mimic」の利用を許可するという規約を設けました。また、学習プロセスでアップロードされたイラストは著作権者が分かるような透かし入りの状態で一般公開され、第三者が確認できるような透明性を確保するとのこと。これら施策の実行を含めたサービスの再開は10月中を予定しています。

学習データとしての著作物の利用は禁止できない

「mimic」の運営元が打ち出した不正利用防止対策案がどこまで有効かの議論はさておき、そもそも今回の騒動が個人に対する誹謗中傷や、一部ではAI技術そのものに対する否定にまで発展した背景には、近年AIや法律の専門家のあいだでも議論が活発化しているAIモデルによる創作活動と著作権に対する認知不足はもちろん、AI技術と共存していくための法整備が追いついていない現状があると考えられます。

2018年に改正された日本の著作権法30条の4では、技術開発の試験を目的とした利用、情報解析を目的とした利用、知覚認識を伴わない電子計算機による情報処理の過程における利用においては、著作物に表現された思想または感情の享受を目的としないことを条件に、著作権者の利益を不当に害さない限度において、著作権による保護が制限されています。

つまり、インターネット上に一般公開されている文章やイラストをAIモデルを構築するための学習データとして著作権者の許諾なしに利用すること自体は、原則として法律で認められているということです。くわえて、著作権法は作品そのものを保護する仕組みであり、作風や画風といった概念には適用されません。今回の騒動をきっかけに、自分の作品をAIモデルの学習データとして利用することを禁止すると宣言し始めたイラスト制作者もいますが、残念ながら現状では法的な強制力は一切ありません。

「mimic」については運営元が著作権者以外による学習データのアップロードを利用規約で制限していますが、すでに国内外で運用されている画像生成AIの多くは機械学習のプロセスを公開しておらず、その権利が認められる範囲内で著作権者の許諾なしに学習データを収集していると考えるのが自然です。

「mimic」と同様にアニメ風のイラスト生成に特化したAIモデルに限定しても、すでに中国のIT大手Baiduが開発した「ERNIE-ViLG」というサービスが存在します。同サービスについては、イラストや漫画を共有できるSNS「pixiv」のデータから膨大なイラストを学習しているのではないかとの指摘も少なからずあります。

Stable Diffusionで生成されたアニメ風イラストの一例
出典:Lexica(Stable Diffusionの生成画像とプロンプトを共有できるサイト)

こうした現状からも、イラスト制作者がインターネット上に作品を公開する以上、学習データとしての利用制限が極めて困難であることは明白です。「Stable Diffusion」が誰でも無償で利用できるオープンソースとして公開されたことからも、AI技術の発展によって全人類に解放され、再定義を余儀なくされたクリエイティビティの変革が、今後ますます加速していくことが予想されます。

スマホ片手に古文書を気軽に解読できるAIアプリ

凸版印刷は9月13日、スマートフォンで撮影したくずし字資料をその場で手軽に解読できるアプリケーションを発表しました。現在、三井文庫や京都市歴史資料館、和洋女子大学の協力のもと実証実験中で、2023年1月にベータ版の公開を予定。同年3月から正式版の一般販売を開始するとのことです。

AIで古文書解読!スマホアプリ開発中

日本国内には、循環型社会といわれる江戸時代の生活様式や災害記録が記された古文書が、数十億点以上も残存すると推測されています。こうした情報は、現代社会におけるさまざまな課題に直結するほか、地域特有の祭事や料理など、観光資源の創出や地域の活性化にもつながると考えられています。

しかし、そのほとんどはくずし字で書かれているために現代人にとって判読が困難で、当時の記録や文献を活用する際の大きな障壁となっています。そうした理由から破棄される個人所有の古文書も多く、また日本各地に眠る古文書のほとんどは長きにわたって災害による損傷や紛失のリスクに晒されたままだといいます。

このアプリケーションには、手書きと木版印刷物それぞれのくずし字資料に対応した2種類のAI-OCR(Optical Character Recognition、光学文字認識)エンジンが搭載されており、幅広い資料の解読が可能とのこと。画像中の文字領域を自動で検出して、つなげて書かれた文字の区切り位置も含めてAIがくずし字を解読してくれる「フルオートモード」と、AIが提示する候補から文脈に合った文字を選択しながら解読できる「1文字モード」を切り替えながら作業できるのが特徴です。

専門家はもちろん、専門知識がない人の利用も想定しており、研究機関や資料館における資料整理の効率化や、個人所有の古文書解読の支援、くずし字が読めるようになりたい人の学習補助など、幅広いシーンでの活用が期待されています。

学習データのラベル付けを自動化する技術

NECソリューションイノベータは8月30日、作業現場で撮影した動画や静止画をリアルタイムで解析することで品質や進捗を可視化できる「NEC AI・画像活用見える化サービス」の新機能として、AI判定画像出力機能の提供を開始しました。

AIモデルを活用した画像判定技術には、精度を向上させるための学習データの収集と、それらをラベル付けするアノテーション作業が欠かせません。たとえば、生産工程における外観検査にAIの画像判定を導入している食品製造業の現場では、生産ラインの食品を撮影した数百枚におよぶ画像を学習データとして利用するために、これまでは従業員が手作業で良品か不良品かをラベル付けする必要がありました。

NECソリューションイノベータが提供するAI判定画像出力機能を使えば、対象物のカメラ撮影から、対象物のAI判定、AI判定結果をもとにした画像へのラベル付け、アノテーション済みの教師データの出力までを、メニュー画面のボタンをクリックするだけで実行できるとのことです。これにより、膨大な教師データの準備に要する時間を劇的に削減できます。

Writer:Ritsuko Kawai / 河合律子

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