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アーティストが失業を危惧する画像生成AI：月刊エンタメAIニュース vol.32
2022.8.23ゲーム
エンタメにおいても人工知能は日進月歩で発展しており、新しい研究成果や試みが次々と発表されています。こちらの連載では、過去1か月間、主に海外で公開された注目すべきゲームAIやエンタメAIに関連したニュース、論文などを紹介していきます。
画像生成AIが描くコンセプトデザインの未来
この8月は、入力テキストから画像を自動生成するAIモデル「Midjourney」が、SNSを中心に大きな話題となりました。Midjourneyは、ジェスチャーによるコンピュータ入力機器で知られるLeap Motionの共同設立者で、NASAの技術者も務めたDavid Holzが率いるAI研究チームによって開発されました。これまでに紹介したOpenAIの「DALL-E」と同様、入力した文章の情報を正確に反映した画像を生成できます。
すでにクローズドベータ版として運用されてはいましたが、7月13日からオープンベータ版として公開されたことをきっかけに、多くのユーザーがTwitterをはじめとしたソーシャルメディアに作品を投稿したことで、日本国内でも話題に火がつきました。それ以前にも、イギリスの週刊誌エコノミストの2022年6月号の表紙を飾ったことでも脚光を浴びました。オープンベータ版は無料で25回まで試用でき、月額10ドルを支払えば無制限に画像を生成できます。
近年、こうした画像生成AIはコンセプトデザインの分野で新時代におけるクリエイターの強力なツールとして期待が寄せられています。一方、絵が描けない人でも手軽にアイデアを絵画として可視化でき、かつ大量のイメージを高速で生成できることから、近い将来にはイラストレーターやコンセプトデザイナーのような商業アーティストが廃業に追い込まれるのではないかと危惧する声もあります。
自社のAIにこき下ろされたマーク・ザッカーバーグ
Meta AIは8月5日、会話の文脈を理解して多様な話題に対応できるチャットボット「BlenderBot 3」を、米国内における使用に限定して公開しました。
BlenderBot 3はインターネットを通じて収集した情報を学習することで、人間との会話が成立するように設計されています。人間に違和感を抱かせない自然な言葉選びを得意とする一方で、試作段階ゆえに不正確な情報を発言したり、場合によっては攻撃的な言葉を返したりする可能性もあると、Meta AIは認めています。
事実、BBCが公開したBlenderBot 3との会話の中で、Meta（旧Facebook）の創業者であるマーク・ザッカーバーグについてどう考えているか質問された際、「国の未来が不安になる」や「人々から不当に搾取している」といった強い表現で生みの親同然の人物をこき下ろしています。その内容が正確かどうかはさておき、インターネット上にあふれる同社やザッカーバーグに対する批判的な意見を学習した結果であると考えられます。
また、MetaはBlenderBot 3が時として自分は人間であると主張した事実も公表しています。同社によると、BlenderBot 3はテキサス州の出身であり、母親もいるとのこと。これらの発言内容を、MetaはAIモデルによる妄想であると認めています。
自然言語を扱うAIモデルの自意識に関する議論については、6月にもGoogleのAI研究者が同社の大規模言語モデル「LaMDA」に自我が芽生えたと主張した一連の出来事が大きく取り沙汰されました。Googleをふくめて多くのAI倫理の専門家は、その可能性を完全に否定しています。擬人化願望を刺激された人間に幻想を抱かせられる程度には、言語モデルやチャットボットが発展を遂げた事実を証明する出来事でした。
Webサイトが集客につながるかをAIが自動判定
AIを活用したデータ分析ツールでマーケティングDXの自動化を目指すWACULは8月3日、Webサイトのトップページが成果を出すポイントを押さえているかどうかを判定できる「B2BトップページAI診断」というサービスの無料提供を開始しました。トップページのURLを入力をするだけで、「合格」か「要改善」をAIが1分で判定してくれます。また、Webサイトの改善点も提案してくれるということです。
この診断ツールは、ページ内のパーツ（DOM要素）について、<img> や <h1> 等のHTMLタグ情報、位置やサイズ等のスタイル情報、テキスト情報、指定されたリンク先のURL文字列といった情報を収集し、WebサイトのデザインをAIが抽象化することで勝ちパターンに適合しているかをチェックしているとのこと。
具体的には、ファーストビューにCVポイントへの誘導導線が設置されているか（もしくは入力フォームが大きく露出されているか）、その誘導がユーザーに目立つUIで設置されているか、CVへの誘導文言とCV誘導導線（ボタンの文言等）の文脈がそろっているかが判定基準であると、同社は説明しています。
今後は自動判定に加えて、理想的なページUIまで自動で提案できるようなシステムの開発を検討していくとのこと。なお、今回のサービスを利用する際、ECサイトのようなBtoBサイト以外のWebサイトや、トップページ以外を入力すると正しい判定結果が出力されない可能性があるということです。
日本のマンガをより多くの国へ届けるために
マンガに特化したAI翻訳技術を開発するMantraは7月28日、集英社や東京大学協創プラットフォーム開発株式会社、ディープコア、コンコードエグゼクティブグループ、ツクリエを引受先とする第三者割当増資により、総額約1.5億円の資金調達を実施したことを明らかにしました。
Mantraは日本のマンガを世界中のファンに届けるためのサービスを展開する企業。2020年に公開したマンガ用のクラウド翻訳ツール「Mantra Engine」は、出版社、翻訳会社、マンガ配信事業者を含む10社以上のパートナーによって導入されてきました。
マンガは絵とテキストの配置が不規則な性質に加えて、作品ごとのストーリーに込められた複雑な文脈や、登場人物ごとに異なる独特な話し言葉のために翻訳が難しいジャンルとされています。
この課題を解決するために、Mantraはマンガに特化した画像認識と機械翻訳を統合して高精度なマンガ機械翻訳技術を確立したということです。また、こうしたマンガAI技術は、言語教育における教材の難易度調整に転用されるなど、翻訳以外の領域にも応用されているということです。
Writer：Ritsuko Kawai / 河合律子
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