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ディープフェイクの発展と検出のいたちごっこ:月刊エンタメAIニュース vol.29

2022.5.20ゲーム

ディープフェイクの発展と検出のいたちごっこ:月刊エンタメAIニュース vol.29

エンタメにおいても人工知能は日進月歩で発展しており、新しい研究成果や試みが次々と発表されています。こちらの連載では、過去1か月間、国内外で公開された注目すべきゲームAIやエンタメAIに関連したニュース、論文などを紹介していきます。

世界最高性能のディープフェイク検出に成功

近年、ディープフェイク技術が映画業界をはじめとしたクリエイティブな分野で新たな価値を生み出している一方で、スマートフォンやカメラアプリの普及により誰でも容易にフェイク動画を作れるようになったことが社会問題へ発展しています。こうした背景から、多くの機関でより高精度でディープフェイクを検出できる技術の開発が活発化しています。

東京大学大学院情報理工学系研究科の研究チームは4月26日、ディープフェイク動画を世界最高性能で真贋判定できるAI技術を発表しました。与えられた動画像内の人物の顔がディープフェイクかどうかを判定するタスクにおいて、既存研究を大きく上回る性能を達成したとのことで、その悪用の根絶に貢献することが期待されています。

ディープフェイクの検出はディープラーニングにもとづいた手法が高く評価されていますが、この方法は訓練時に学習したタイプのフェイク画像やフェイク映像しか検出できない点に課題が残っています。そのため、ディープフェイクの作成プロセスが訓練時と少し異なるだけで検出性能が著しく低下することが知られています。

この脆弱性に対処するため2020年にマイクロソフトが発表した手法では、ディープフェイク作成時に顔や背景を含む元画像と、生成モデルによる顔領域だけの合成画像をブレンドした際に生じる画像の不整合を再現することで、疑似フェイク画像を使った汎用的な検出AIの訓練が導入されました。しかし、圧縮率が高く潰れているフェイク画像や、高低露光下のフェイク画像に対しては検出精度が低下するという問題が残りました。

今回発表された手法では、疑似フェイク画像を2枚の異なる人物画像から生成するのではなく、1枚の人物画像の色や周波数成分、画像サイズをわずかに変更した2枚の画像をブレンドした「Self-Blended Images」(SBIs)という疑似フェイク画像が用いられています。ほぼ同一の画像をブレンドしているため、既存の疑似フェイク画像に比べて画像内の不整合が非常に少ないことが特徴です。5種類の評価用のデータセットで実施した既存手法との比較評価において、4種類で世界最高性能を達成したということです。

イオン液体を活用したチューナブルなAI学習

現在、一般的なAI技術は端末からクラウドへアクセスして演算を実行しており、通信遅延やセキュリティ、通信コストなど多くの課題を抱えています。そこでウェアラブルデバイスやモバイル端末といったエッジ領域で演算を行うエッジAI技術の開発が求められています。そんなエッジAIに要求される最大の特性は、低消費電力かつ高速データ処理にほかなりません。

東京理科大学と産業技術総合研究所の研究グループは4月28日、入力信号の時間スケールに応じて学習を最適化できる物理リザバーコンピューティングの新技術を発表しました。高い分子デザイン性と安定性を有するイオン液体を物理リザバーに適用することで、高いAI学習精度が得られることを実証したということです。

リザバーコンピューティングとは、知りたい情報をまったく別の情報へと変換することで処理する演算手法を指します。たとえば、貯水池の水面に石を投げ込んで生じた波紋のパターンは、投げ込んだ石のサイズや投げ込む順序を反映することから、石の時系列情報を推測するために役立ちます。このように時系列入力信号を分類が容易な時空間パターンに変換できるのが、貯水池を意味するリザバーコンピューティングの特徴です。

しかし、これまでに提案された物理リザバーのダイナミクスは、生活環境で生じる信号の時間スケールの制御性に乏しいことからリアルタイム処理に大きな課題がありました。そこで同研究グループは、電極とイオン液体の境界における分子のダイナミクスを物理リザバーとして用いることで、イオン液体の分子設計による学習性能の最適化を試みたということです。

その結果、生活環境で生じる信号に近い時間スケールの信号を学習することに成功。イオン液体の粘性を制御することで、入力信号の特徴に応じて容易に識別精度を最適化できるようにしたということです。このイオン液体の誘電緩和を利用した物理リザバーにより、音声や振動等の生活環境で生じる様々な信号をリアルタイムで学習し、信号の周期をはじめとする特徴に応じて学習性能を最適化することが可能なAIデバイスの実現が期待されます。

3Dキャラクターのモーションを自動生成するために

バンダイナムコ研究所は4月28日、機械学習やディープニューラルネットワーク分類技術の研究開発に使用できる3Dモーションデータセットを、GitHubにて無料公開しました。

ゲームや映像に登場するCGキャラクターは、人間のアクターの演技をデータ化して再現するモーションキャプチャ技術によって描写されています。しかし、今後メタバースのようなデジタルツインの普及によりコンテンツの規模が急速に拡大することで、個性的なキャラクターや多彩なモーションが必要不可欠になり、専門のクリエイターの手作業に依存した従来の制作プロセスでは限界を迎えることが予想されています。

そこでAI技術を用いてキャラクターモーションの開発を加速しようという動きが出始めています。こうしたモーションをAIに学習させるには、性別や動作、演技といった様々なパターンのモーションのデータセットが欠かせません。しかし、大規模なデータセットを入手するのは決して容易ではなく、研究開発を遅らせる最大の要因となっています。

バンダイナムコ研究所では、2021年からAI技術を活用して多彩なキャラクターモーションを生成する研究に着手してきたということです。今回、自社で機械学習と深層ニューラルネットワーク分類技術に使用しているデータの一部をAI研究に使用できるセットとして無料で公開することで、AI研究全体の技術の底上げやエンターテインメント業界の発展につなげたいとしています。

AI音声認識と字幕生成で変わるテレビ業界の働き方

ソニーマーケティングは5月17日、テレビ向けAIリアルタイム字幕生成システム「もじぱ」の販売にあたり、同システムへのAI音声認識システムの提供を5月20日から開始すると発表しました。

「もじぱ」は、入力された音声をAIが解析し、リアルタイムで自動的に字幕を生成するシステムです。これにより担当者はディスプレイに表示された字幕の正誤を確認し、微調整を行うだけで字幕を生成できるようになります。

ここにソニーマーケティングが独自に開発したAI音声認識システムを組み込むことで、高い音声認識精度を実現できるということです。なお、システムの有用性を検証するためにTBSが行った実証実験では、95%以上の認識精度が確認できたということです。

Writer:Ritsuko Kawai / 河合律子

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