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ゲームはAIの知性を測る指標にならない?:月刊エンタメAIニュース vol.1

2020.1.24先端技術

ゲームはAIの知性を測る指標にならない?:月刊エンタメAIニュース vol.1

エンタメにおいてもAIは日進月歩で進歩しており、新しい研究成果や試みが次々と発表されています。こちらの連載では、過去1か月間に主に海外で公開された注目すべきゲームAIやエンタメAIに関連したニュースや関連する論文などを紹介していきます。

テンセント、MOBAで人に99.81%勝利する自社のAIを解説

VentureBeatが2019年12月23日に公開した記事では、テンセントがMOBAをプレイするAIを開発し、人との対戦で勝率99.81%を達成したことが伝えられています。MOBAとはMultiplayer Online Battle Arenaの略称で、ゲームプレイヤーが特定のユニットを操作して対戦するRTSの一種です。開発されたAIは、同社が開発したMOBAタイトル『王者栄耀』や『伝説対決 -Arena of Valor-』をプレイするものです。

テンセントが公開した論文によれば、これまでAIの性能を測るベンチマークとして採用されたチェスや囲碁とMOBAが決定的に異なる特徴は、ふたつあります。ひとつは、対戦者が同時に行動を選択し実行できるリアルタイム制であること、もうひとつは対戦者のユニット情報が一部明らかではない不完全情報ゲームであることです。こうした特徴があることによりMOBAはチェスや囲碁、ATARIのビデオゲームより複雑なゲームと見なされ、新たなベンチマークとして注目を集めています。

テンセントが開発したAIは強化学習学習者、AIサーバー、ディスパッチモジュール、メモリプールの4つのモジュールから構成されています。このうち重要なのが強化学習学習者とAIサーバーです。AIサーバーはゲームエリアの情報を読み込んでユニットに可能な行動を洗い出します。そして、それぞれの行動を実行した場合、ゲームの勝利にどの程度貢献するかを予測する数値である報酬を算出します。この報酬に応じて、行動の優先順位が決まるのです。

強化学習学習者は、選択した行動から得られたフィードバックにもとづいて行動を選択する戦略に相当するポリシーを更新します。このポリシーが更新されることによって、AIは次第に勝利につながる行動を適切に選択できるようになるのです。こうした学習プロセスを人のプレイに換算して500年分実行しました。その結果、人のプレイヤーとの対戦で勝率99.81%を達成したのでした。

論文:Mastering Complex Control in MOBA Games with Deep Reinforcement Learning

ゲームがAIの知性を測るよい指標ではない理由

ゲームをプレイするAIの人に対する勝率を、AIの知性を測る指標とすることに対する懐疑的な見方もあります。

The Vergeが2019年12月19日に公開した記事では、グーグルのエンジニアでAI研究者でもあるFrançois Chollet氏にゲームとAIの関係についてインタビューしています。AIの知性を測る伝統的な指標として採用されてきた「人とゲームで対戦して勝利する」ことは、AIが人のような知性を持っている証明にはならないと同氏は主張します。

特定のゲームで人に勝利するように開発されたAIは、そのゲームのプレイが上達するように大量の学習を積み重ねた「特化型の知性」と言えます。対して人は、特定の知的なスキルを遂行するために生まれたきたわけではなく、学習によってさまざまな知的スキルを習得できる「汎用型の知性」です。それゆえ、AIが特定のゲームプレイで人を凌駕しても、人のような汎用的な学習能力を証明したことにならないのです。

同氏は、AIの知性を測る新しいテストとして知能テストに似た図形の類推問題を提案します(トップ画像参照)。この問題の特徴は、人であれば少ない学習データで正しい図形を類推できるのに対して、AIは人のように少ない学習データから正解を導けないところにあります。こうした類推テストを人と同じ量の学習データで正解できるAIを開発できた場合、初めてAIが人と同じような類推能力を持つようになったといえるでしょう。

インタビューでは人の知性を凌駕するスーパーインテリジェンスにも言及されており、Chollet氏はそのようなAIが実現する可能性は低いと述べています。スーパーインテリジェンスの実現可能性よりも、自律運転する自動車で事故が発生した場合の責任の所在のようなAIにおける倫理的な課題について議論するほうが急務、とも同氏は答えています。

AIの知能を測る指標についてのChollet氏の考えは2019年11月に発表された論文「On the Measure of Intelligence」に詳細が述べられています。

論文:On the Measure of Intelligence

拡大するフェイク画像ビジネスと予想される懸念点

ワシントンポスト紙電子版が2020年1月7日に公開した記事では、フェイク画像のビジネス活用事例とフェイク画像が流通することによる懸念について論じられています。近年、AIが目覚ましく進化した結果、実在の人を被写体にせずに実在するかのようなリアリティをもつ人の画像を生成する技術StyleGANが発明されました。この技術を使って生成されたフェイク画像を活用するビジネスが急速に台頭しています。

例えば、アルゼンチンを本拠地とするデザイン会社Icons8は、年齢や性別、さらには人種を指定してフェイク画像を生成するサービスGenerated.photosを立ち上げました。このサービスのクライアントには、出会い系アプリの開発会社がありました。ほかの事例には、サンフランシスコに本社のあるRosebud.AIがあります。同社は、広告に掲載するファッションフォトに使われるフェイク画像をクライアントに提供しています。フェイク画像を使えば実在のモデルを雇うことなくファッションフォトが完成するので、広告費の削減が期待できます。

フェイク画像を活用したビジネスは大きな可能性がある反面、懸念点もあります。フェイク画像が広告で多用された結果、似たような顔立ちの画像ばかりが流通する可能性が否定できません。諜報部員がフェイク画像を使って、ターゲットとなる人物との接触を計ったという報告もあります。

フェイク画像の流通によって生じる問題は、企業ごとに対処するのではなく、社会全体で使用ルールを制定していく必要があるでしょう。

ゲームAIを構築する開発者を手助けするStadiaのツール

Android製品専門ニュースメディアandroid Headlinesが1月14日に公開した記事では、グーグルが提供するゲームサブスクリプションサービスStadia(日本では未提供)に登場するゲームAIを開発するツールについて報じられています。

今回報じられたツールを活用すると、RPGにおいてプレイヤーと自然に会話できるNPCが素早く作れるようになると言われています。プレイヤーとNPCの会話が自然に感じられるようにするためには、プレイヤーが置かれた状況に応じてNPCの会話内容を変化させる必要があります。新しいツールは、こうしたプレイヤーとNPCの相互作用を設計することを支援してくれるのでしょう。またこのツールは、2018年にグーグルが発表した音声AI「Duplex」によって強化されているとも言われています。

さらに、開発者がゲーム内のクエストを設計するのを支援するツール「Semantic ML」にも言及されています。このツールに関する詳細は不明ですが、上記のNPC開発支援ツールともに今年3月に開催されるGDC 2020で発表される予定です。

Wreiter:吉本幸記

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