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ロバート・ダウニーJr.によるドキュメンタリー『The Age of A.I.』が伝えるAIの本質

2019.12.27先端技術

ロバート・ダウニーJr.によるドキュメンタリー『The Age of A.I.』が伝えるAIの本質

スマートデバイスが広く普及したことによって人口知能を活用した技術が人々の日常に溶け込んだ現代にあっても、AIという言葉からレプリカントやターミネーターといった想像上の脅威を連想する価値観は根強いのではないでしょうか。電子レンジの仕組みと同様に、その使い方は知っていても本質を理解できなければツールは得体の知れない存在のままです。

YouTube Originalsは12月18日、人工知能のさまざまな応用例を紹介するドキュメンタリー番組「The Age of A.I.」のシーズン1を配信しました。

映画『アイアンマン』や『アベンジャーズ』シリーズのトニー・スターク役で知られるロバート・ダウニー・Jr.がホストを務め、機械学習やニューラルネットワークをはじめとしたAI技術が、いかに人類の生活や価値観、果ては世界そのものを変化させていくかという新たな歴史の分岐点を、8つのエピソードを通して見つめる内容です。

AIによってデジタル意識を創造する試み

エピソード1では、ニュージーランドのオークランド大学でLaboratory for Animate Technologiesのディレクターを務めるCGアーティスト、Mark Sagar博士のAIプロジェクト「Baby X」が紹介されています。

Sagar博士は医学研究者としての経歴を持ち、数学と生理学の観点から人間の生体構造を、コンピュータグラフィックで再構築する研究分野の第一人者です。過去に制作に携わった映画『キングコング』や『アバター』、『スパイダーマン2』では、CG技術によるキャラクターの顔面生成が高く評価され、2010年と2011年のアカデミー賞でSci-tech賞を獲得しました。

「Baby X」とは、文字通り赤ちゃんを模したCGによる人工生命を人間と同じように教育するというプロジェクトです。Sagar博士が自分の娘をモデルに再現したという「Baby X」は、ニューラルネットワークを用いたアルゴリズムによって思考し、本物の赤ちゃんのように豊かな表情の変化を見せます。

AIの代表的な研究分野である音声認識や物体認識を駆使することで、彼女はマイクを通して話しかけられた言葉や、カメラに映った人間の表情、見せられたオブジェクトの形状を認識して、機械学習によって知識として蓄積していきます。また、神経化学的な反応をシミュレートした仮想頭脳によって行動を決定しています。

たとえば、カメラに向かって「いないいないばあ」とあやしてあげるとドーパミンが仮想的に分泌され、赤ちゃんは笑顔になったり、笑い声を発したりと、喜びという感情を表現します。反対に赤ちゃんを無視したり怖がらせたりすると、コルチゾールの仮想分泌によりストレスレベルが増加。その結果、赤ちゃんは泣き出してしまいます。

Sagar博士がおもちゃを使って動物の名前を覚えさせる様子は、人間の子育てそのものです。「Baby X」の最終的な目標は、アバターの学習と反応のプロセスを限りなく人間に近づけることで、究極的には”大人のAI”へと成長させることだといいます。人間と同様の知能を有するアバターが実現すれば、人間の遊び相手になってくれるほか、仕事や私生活をアシストしてくれるかもしれません。その可能性は無限大です。

AIは人間をより人間らしく強化するもの

一方、機械学習の可能性は、人間を模倣することだけに留まりません。「The Age of A.I.」第1話の後半では、AIによって人間の機能がいかにエンハンス(強化)されていくかという近未来を垣間見ることができます。

その活用方法が、脳から伝達される電気信号を機械学習によって処理することで、人体と同様に自在に動かせる義手の開発です。番組の中では、腕を失ったミュージシャンの苦悩を映すと共に、楽器を演奏できる義手の開発を目指してAI技術を活用する研究者の挑戦が描かれています。

エピソード2では、難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患った元NFL選手のTim Shaw氏の肉声を取り戻すために、Googleの技術者が音声認識をフル活用する事例や、医師が不足するインドにおいて糖尿病が原因で失明する患者を減らすべく、AIによる医療診断の普及を目指す事例を紹介しています。なお、医療分野におけるAI技術の応用に関しては、患者の個人情報の取り扱いをめぐって論争が起きていますが、その点には触れられていません。

「The Age of A.I.」はYouTube Originalsにて、記事執筆現在でエピソード1とエピソード2が無料で視聴できます。エピソード3以降は、プレミアム会員に登録することでいつでも視聴できるほか、順次期間限定で無料公開されていく予定です。

SF映画やSFドラマの影響からか、AIは人間に取って代わる危険な存在のように誤解されることも少なくありませんが、AIとは決してそれ自体が思考する生命体のような存在ではありません。むしろ、AIは人間の機能を拡張する新時代のツールにほかなりません。「The Age of A.I.」は、まさに人類にとってのAIの認識を改めてくれる番組と言えるでしょう。

Writer:Ritsuko Kawai / 河合律子

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