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AIと人間の感性が協力して生み出す新しい価値:理研よこはまシンポジウムレポート

2019.12.10サイエンス

AIと人間の感性が協力して生み出す新しい価値:理研よこはまシンポジウムレポート

2019年11月25日に、「人工知能と人間の感性の融合による新しい価値の創出」をテーマとして、横浜・みなとみらいのランドマークホールにて開催された「理研よこはまシンポジウム」。三部構成で知性と感性からみた社会的な調和=健康を考えるアプローチとなっており、第一部では、以前モリカトロンAIラボで所長・森川幸人との対談企画でお話を聞かせてくださったウエディングドレスブランド「EMarie」のデザイナー、エマ理永氏による、AIとの共創によるファッションショーが開催されました。

AIと生み出したドレスのファッションショー

今回のシンポジウムを主催しているのは理研こと、理化学研究所。日本で唯一の自然科学の総合研究所として、物理学、工学、化学、計算科学、生物学、医科学などに及ぶ広い分野で先導的な研究を推進する国立研究開発法人です。

理化学研究所によるシンポジウムと聞くと、なかなかハードルが高い印象を持ってしまいそうですが、今回は「人工知能と人間の感性の融合による新しい価値の創出」をテーマに、ファッションショーから幕を開ける他に類を見ない、まさに人工知能と感性という表題にふさわしいシンポジウムとなりました。

ファッションショーを作り上げたメンバーは、ファッションデザイナーであるエマ理永氏と理化学研究所・医科学イノベーションハブ推進プログラム(MIH)の清田純チームリーダー、そしてエマ氏の世界観とデザインパターンを学習した人工知能(AI)です。

関連記事:AIと「楽しく」作るドレスコレクション:エマ理永氏×森川幸人氏 対談(前編)

ショーの後半には、自然による美しい曲線を持つ貝殻、そして横浜市の花であるバラをモチーフに、AIと共創した華やかなドレスが会場を沸かせました。

横浜市の花であるバラとエマさんの過去の作品(右)をAIが学習して生み出されたウェディングドレス

ショーの後、東京大学生産技術研究所教授の合原一幸氏(理化学研究所革新知能統合研究センター[AIP]特別顧問)も交えて、今後のAIと社会について三者によるトークが展開されました。

美に対して、AIはどうアプローチできるのか?

左から清田純氏、合原一幸氏、エマ理永氏

ドレスの学習には深層学習技術のひとつであるGAN(敵対的生成ネットワーク)を使い、先生役と生徒役になるAIを2つ用意しました。まずは先生役のAIにだけ学ばせたい概念を学習させ、先生と生徒間で教えながら同時に成長していくと、生徒役のAIが概念を獲得することで色々と新しい創造ができるようになる仕組みを採用しています。

今回のショーで発表したドレスの数々は、エマ理永氏の過去の作品を学習し世界観という概念を学習したAIがエマ理永氏にプレゼンテーションし、それにインスピレーションを受けたエマ理永氏が実際のドレスをデザインする流れとなっています。

何百回も学習していくと、どんどんと世界観を掴み精度が上がっていきますが、今回の数百体でもスパコンで丸二日かかる計算量だったそう。また、ひとりの人間には生み出せる数に限りがあるので、AIにとって学習データが少ないため、過去のドレスだけでなく、イメージの元になるものを足すことになりました。

私のクリエイティブの源泉は自然界にあります。化学も数学も、自然界を私たちの脳にわかるようにしてくれるもの。自然界の美しい創造物である貝を、AIが学習してみたらどうかと提案したところ、AIは素敵な画像を出してきてくれました。的確に指示をすればバリエーションが出てきますし、AIはまるで優秀な美大生のよう。協業していくイメージが湧きましたね。(エマ理永氏)

バラの画像を学習(横浜市環境創造局から提供されたバラもふくむ)
バラとドレスを区別なく学習し、さまざまなパターンを生み出す

正直な話、かなり頑張ったんですがAIが出してくるデータはそのままドレスにするにはまだまだ難しくて……。パターンとして立体化し、女性が着て歩いて美しいという部分のほとんどはエマさんのクリエイションに依存している状態です。ですから、コラボレーションするのが当たり前というか、せざるをえない。だからこそ対立するのではなく、一緒にするスタンスが大事だと感じました。(清田純氏)

今はAIがデザイナーをアシストするという立場ですが、ここから将来どこまでいくのか。AI独自でドレスまで作れるようになった時に、その時の知財はどこにいくのかなどの問題は、すでに法学者も議論していることでもありますが、これから考えていくべきことですね。(合原一幸氏)

ファッションにまつわるすべてのテクノロジーが、女の子を幸せにするものであってほしいですね。これからより個の時代となっていく中で、一人ひとりが美しくなるためにAIが力を貸してくれるのではと思います。(エマ理永氏)

AIと共創する“今”

座談会の話はまだまだ尽きない様子でしたが、時間も差し迫り第二部へ。ANAホールディングス株式会社 アバター準備室ディレクターの深堀昴氏による、アバター技術開発の現状と未来の可能性についての講演へと続きます。

航空会社としてのイメージが強いANAですが、飛行機に限らない次世代の移動手段として分身ロボット「avatar-in」のアバター開発に取り組んでいます。

壇上には実際にアバターが登場し、東京都中央区と横浜市の会場をリアルタイムでつなぐ実演も行い、アバター技術によって今後どのような可能性が生まれるのかの事例を織り交ぜつつ、より自由な未来の可能性を体験することができました。

最後に第三部では「心とは何かから考える知性としての『健康』」と題し、MIH桜田一洋副プログラムディレクターと、中部大学創発学術院の津田一郎教授、幻冬舎専務取締役・編集本部本部長の石原正康氏、同社の編集者である森村繭子氏の四者によるパネルディスカッションが行われ、シンポジウムは幕を閉じました。

AIという単語を日常的に耳にするようになり、さまざまなサービスが生まれ生活が便利になる一方、AIに仕事が奪われるなどという話もよくあがりますが、AIと敵対するのではなく協業していくことでよりよい関係を築けるのではないでしょうか。私たちの生活にどんどん浸透していくAIやロボットと上手に付き合い、共創していく時代は遠い未来の話ではなく、今もう既に始まっています。AIと共に生み出すこれからの生活について、皆さんも一度考えてみませんか?

Writer:八木あゆみ

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