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AIにも泣けるストーリーは書ける?:藤澤仁氏×森川幸人氏対談(前編)

2019.10.08ゲーム

AIにも泣けるストーリーは書ける?:藤澤仁氏×森川幸人氏対談(前編)

『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』(2000年、スクウェア・エニックス)で、堀井雄二氏のシナリオ・アシスタントとしてゲーム業界に入り、以降も同タイトルシリーズのシナリオを手掛け、『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』(2009年、スクウェア・エニックス)『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』(2012年、スクウェア・エニックス)ではディレクターも務めた藤澤仁氏。現在は、シナリオライティングを請け負う株式会社ストーリーノートを経営しつつ、2019年6月には初の単行本小説『夏の呼吸』(徳間書店)も発表しました。

藤澤氏がゲーム業界に入る前の本業は、コードを書くプログラマー。同時期に書いていた小説が、中央公論新人賞の最終候補に残るほど、本気で小説を書いていたと言います。今回は、AIは感情に訴える物語を書くことができるのか、AIと人間の協働のあり方といったテーマで、モリカトロンAIラボの所長、森川幸人が藤澤氏にお話を伺いました。

「小説家 兼 本業プログラマー」という無二の存在

森川:藤澤さんはプログラマー出身ですね。ご自分では理科系だと思ってらっしゃるんですか?

藤澤:理系文系ということを、あまり分けて考えたことがないんです。僕の文章は、一見エモーショナルに見えると思うんですけど、分かりやすい文章を書くためには、論理的でなければならないと考えています。なので、僕のなかでは小説を書くのもプログラムコードを書くのも、同じことなんです。「こういうことを伝えたいから、こういう順番で言おう」ということを、自分なりに突き詰めて書いているつもりなので。

僕はかつて『ドラゴンクエストX』のディレクターをやっていた時代があって、プレイヤーさんに対して「こういうことをやりました」というお知らせを出す機会が頻繁にありました。その手の文章は無味乾燥にも書けるんですけど、何とか想いを伝えようと一生懸命書いていたところ、「文章が上手い」と評価をいただきました。そのお知らせも、ある意味では論理的にエモーションを込めていた。感覚としては、コードを書いているのととても近い作業でした。

森川:面白いですね。そういう人と初めてお会いしたような気がします。ゲーム業界に入られたきっかけはどのようなものだったのでしょう?

藤澤:27歳のとき、堀井雄二さんのシナリオ・アシスタントとしてスクウェア・エニックスの『ドラゴンクエストVII』制作チームに入りました。95年に発売されたプレイステーションがブームだった頃に『バイオハザード』(1996年、カプコン)をやって、「ゲームでこれだけの物語の表現ができるのなら、ゲーム業界に自分の仕事があるのかもしれない」と思い、堀井さんのシナリオ・アシスタントに応募したところ、使っていただけることになりました。本気で小説を書いているプログラマーであるという点を「そんな人間はたぶん、ふたりといない」と堀井さんに評価していただけたので、やってきたことが無駄にならなくて良かったと思いました。

森川:小説を書いてきた藤澤さんにとって、ドラクエのシナリオを書くことに違和感はありませんでしたか?

藤澤:最初は、ありましたね。慣れるまで、一年くらいはかかったと思います。ただ、問題なのはテキストよりもストーリーの方で、『ドラゴンクエストVII』の時代は、すぐ葛藤を描きたがる傾向がありました。二者択一で「どちらも選べない」という状況を描いてしまう。あんまりドラクエにそういうものを多用すべきではなかったと、振り返って反省したりしましたけど。

森川:『ドラゴンクエスト』(1986年、エニックス)も、一本道と言えば一本道か……。

藤澤:竜王に「世界の半分をやろう」と言われて、そこで悩む人はいないだろうっていう。

森川:僕は他の人とは逆の選択肢を選んじゃったんだよねえ…。

藤澤:選んじゃいましたか(笑)

森川:また小説を書く予定は?

藤澤:はい。執筆の依頼をいただいています。何冊か書き続けていかないと、本当の意味でのその作家の存在意義みたいなものは出てこないと思うので、書かなきゃいけないんですけど…なかなか時間がとれずにいます。

AIは感情に差し込んでくる小説を描けるか?

森川:藤澤さんは、どういう小説の作り方をしているんでしょう? 

藤澤:今回発表させてもらった書籍『夏の呼吸』には、「夏の呼吸」と「雨傘」という2本の小説が収録されています。「夏の呼吸」は20歳のときに15歳の男の子を主人公とし、「雨傘」は25歳のときに23歳の男性を主人公としました。

主人公の気持ちをリアルに実感できる状態でありたいので、僕の書く小説の主人公は、自分のちょっと前の年齢になるのかなと思います。「3年くらい前、こんなことで苦しんでたなあ」みたいなことを、物語の体裁を借りて描いているイメージです。

森川:こういった物語をAIが書けるかというと、身も蓋もない話ですが、相当難しいと思います。AIはコンピュータのプログラムなので、生死が関わる問題を扱おうとしても、AIには「死」の概念がないので実感を持ちにくい。自分が生きている実感もないし、死ぬ恐怖もない。そうした概念をどう教えたらいいんだろうと、色々な人に聞いてみたんですが、なかなか難しいところなんですよね。

藤澤:森川さんに自論を展開するのは僭越なんですが、僕は「AIは物語を書けるようになる」と思っています。というのは、物語というのは突き詰めると「人間の感情をいかに動かすか」ということの集積で、そのための手法は、結構な部分が明文化されています。

例えば、人間は人が仲良くしている姿を見ると、幸福感を得るものです。ならば、それを強調するために、物語の序盤は仲が悪い状態から始める。仲が悪いふたりがトラブルを乗り越えて仲良くなれば、それだけで人間は多幸感に包まれる。「バディもの」と呼ばれる映画は、そういう手法で作られています。

最終的には人間の手によるトリートメントが必要になるとは思いますが、AIで感動する話の「ベース」を作るところまでは、必ずできるようになるだろうと思っています。

森川:なるほど。エンジニアっぽいですね。AIを生業にしている人って、まっぷたつに分かれていて、ひとつは「ルールベース」のAIで、代表的なモデルがIBMのワトソンです。知識データベースを用意しておいて、AIがそれを利用して推測や判断を行うという仕組みです。もうひとつは「コネクショニズム」と言われている生き物の脳の仕組みをモデルにしたAIで、代表的なモデルがディープラーニングです。藤澤さんの語られているAIは、まさに前者のAIですね。

これが不思議なことに、ふたつのAIは1970年くらいからあって、ずっと切磋琢磨してきています。大きく時代を変化させるのはコネクショニズムなんだけど、いつも実用に近寄りながら、実際に現実を解決していくのはルールベースの方のAIです。先程の、物語の構造を作るというのは、実際に小説を書く人が持っているノウハウですよね。それが、AIの世界の設計者にうまく還流されていないと思います。小説家のテクニックなり知識が、AIに欲しいと思っています。

藤澤:どういう順番で小説を作るのかというと、読者にどういう感情で読み終えてほしいか、ということが思考の出発点になると思うんです。読者の感情をそこに持っていくには、どういうストーリーにすればいいのか、というのが2番目。そこに、この時代に書く物語としてのテーマを乗せる、これが3番目。僕はそういうふうに咀嚼してきました。

森川:実際そうやって小説を作られたんですか?

藤澤:今回発表した小説は28年前に書いたものなので、そんなに論理立てて考えられていたわけではなく、もっと本能的に、最終的にどこに行っちゃうんだろうと思いながら書いていたと思います。

森川:そこでAIと交流できるといいんですけどね。構造をどんどん還元していく仕組みができ、色んなパターンが揃えるのが、ひとつの解決の道のような気がします。

藤澤:イメージとしては、先ほど話した、どういう感情で終わらせたいか、というラジオボタンがあって、決定ボタンを押すと、「使える技法はこれだけあります。どれを使いますか?」と出てきて、じゃあ、今回はこの技法で行こうかなと選ぶ。「では、こういう物語はいかがでしょう。キャラクターを合わせると、こうなります」というふうに、物語の基本構造を作ることは、極めて機械的にできるはずだと僕は思っています。

AIと人間との協働の可能性

藤澤:僕はシナリオライターを指導する立場の仕事もしていて、「面白い物語を描けないキャラクターは存在しない」と言っています。どんなキャラクターでも必ず面白い物語に仕上げていく作業の工程は、非常にAI的な仕事だと思っています。特に最近のスマホゲームのように、キャラが50体、100体という群像劇になってくると、なかなか1体1体の制作に時間を費やすことは困難です。そうなると、AIに一部の作業を助けてもらえる環境があってもいいんじゃないかと思います。

森川:藤澤さんの中に、ラジオボタンのついたエディターがあるようなイメージです。

藤澤:そうかもしれないです。まったく何のヒントもないところからキャラクターを創造していくことは困難だと思うんですよね。決してステレオタイプでいいということではなく、何千何万という人生のライブラリが自分のなかにあって、「これとこれを組み合わせて生命を与えよう」とする発想自体が、非常にコード的というか。

森川:コード的と言うか、藤澤さん的ですよね。プログラムの知識と小説家の感性、両方を持ち合わせていないと、なかなかひとつのイメージができないと思うので。

藤澤:ブレイン・ストーミングの手法で、キャラクター、性格、口癖をぐちゃぐちゃに混ぜてキャラクターを作っていく手法は昔からあるし、落語の三題噺のような、キーワードを3つ使って小話を作る芸もあります。思わぬものを掛け合わせることで新たな発想が生まれ、それが結果的に良いものになったりする。

これって、本当にコンピュータがやっていることと一緒だなと。自分の頭の中でいくら考えてもアイディアが出てこないなら、そういう部分は手伝ってもらう。AIに「このキャラクターはこういう人生を歩んできて、今はこういう性格です」とセットアップしてもらって、それを下敷きに自分なりのアレンジを加えていく。これも、AIがキャラクターを作っているということに違いないですよね。

森川:俳句だとAI俳句「一茶くん」というプロジェクトがあります。使う言葉とか組み合わせの妙で、人間だと組み合わせない言葉を組み合わせたりする。人間がやることは、取捨選択ですね。「これは面白い、面白くない」という。

藤澤:俳句だと何万句もコンピュータに入力して、人間がどの俳句が良かったと採点して、ずっとAIにディープラーニングさせていくと、AIが自発的にいい俳句を書けるようになる気がするんですが。

森川:この間やったテストだと、連歌なので独立した俳句ではないんですが、10句をブラインドでテストしたら、一般客によって、ほぼ半分AIの句が選ばれました。そういう意味では、もうチューリング・テストに受かっているといえます。このへんの応用は、ゲームのキャラクターの作り方に入っていて、不思議ではないでしょうか?

藤澤:そうですね。ステレオタイプでいいというわけでは断じてないんですが、発想の出発点、一歩目をAIに助けてもらうことは、できてもいいと思います。

森川:藤澤さんの直感としては、キャラクター設定だけじゃなく、もっと物語の方まで拡張できると?

藤澤:できると思います。焼き直しが主体の時代が長く続くと思うんですが、その先に、まだ誰も感じたことのないような感情に差し込んでくる展開・物語をAIが作れるようになっても、僕は何ら不思議ではないと思っています。

森川:歩留まりの問題ですかね。小説もふくめて自然言語処理っていうんですけど、意外と難しくて、AIのなかでも遅れている分野なんです。

藤澤:完全な完成形、仕上げまですべて書くとなると、難しいと思います。ただ、お話のプロットって、そもそも完全ではない状態じゃないですか。プロットさえ貰えれば、あとはそれをヒントにして人間が仕上げをやるという、役割分担ができると思います。

森川:自分たちもやりがちなのが、全部AIにやらせる、全部オートにすることです。そしてディテールの部分をAIが追いきれなくて「やっぱりダメじゃん」となる。そうじゃないですよね? 「協力せい!」というスタンスでAIが得意なところはAIがやる、と。

藤澤:ディテールにこだわることは、実効的ではないと思いますね。それよりも、ストーリー展開の方がはるかに大事だなと。AIが文章を最終形に仕上げることは、非常に難易度の高いことだと思います。例えば、人間が読んでいて気持ちのいい文章って、わざと型から外してあるものです。わざと読みづらいところを作って視線移動の速度を遅らせたりとか、さまざまなテクニックが駆使されて、はじめて美文だと思うので。そういう美文を作るのは、心を持っていないとできないのかなと感じますけど。

森川:そういったところは、人間が請け負ったほうがいい。逆に言うと、プロの技なんですかね。

藤澤:そうですね。少し一本調子になってきているので、論点を大きくずらそうとか、そういった采配や、わざと曖昧な文章をポンと挟んでみたりとか。僕はシナリオライターに「読者を飽きさせないように、わざと視線を左右に揺さぶらないとダメだよ」とよく言うのですが、こういう技法を抜かりなく使いこなすことは、AIだとなかなか大変なのかな、と。

森川:その辺の役割分担を、そろそろ真剣に考えてもいい時代なのかもしれないですね。

藤澤:そう思います。

森川:うちは、まったくできていないんですけど、AIにプロットを書かせてほしいというリクエストは多いんです。運営型のゲームだとアイテムもキャラクターも消費する速度がすごく速いので、それに対応できるように新規のアイテムやキャラクター、それに伴うメッセージを大量に作らなくてはいけない。そろそろ人がセリフをいちいち考えていたら、手に負えない状況になっています。そこを「AIでどうにかならない?」ってリクエストをもらうのですが、現状では「すいません。できません」ってお答えするしかなくて。

藤澤:そこの難易度が高いから、僕たちのようなシナリオライターは、まだお仕事があるということですね。

森川:シンギュラリティが狭義な意味で使われて、人間の仕事をAIがごそっと奪ってしまうぞと人を不安にしたり怖がらせたりしていますが、そうじゃないですよね、協働ですよね。

藤澤:そうですね。ロボットの基本的な考え方もそうだと思うんですけど、人間がやるのがしんどいところを機械に負担してもらうというのが本質だと思います。森川さんも文章を書かれているので分かると思いますが、文章を書くのは本当に根気のいる仕事で「何とかなんないのかな、これ」と思うところは、機械化されてもいいとは思うんですけど。

森川:ある意味、電卓の延長ですね。

藤澤:まさにそうです。ある程度簡単な挨拶はコンピュータにやってもらって、肝心なことだけ人間が言えばいいのであって、道具として上手に使えればいいのかなと思いますけど。

森川:僕個人は、もうちょっとロマンを感じているところがあるんです。AIはずっと、コンピュータの中だけに存在していました。要するに、体がなかった。昨今はロボットの脳としてAIが組み込まれています。ボディを持つことで「腕が取れたらまずいぞ」とか「動けなくなることは良くないぞ」というように、体も大事なんだと、思うようになります。つまり、生き物としての感覚に近い、死を恐れ、生存したい欲求をAIが意識できるようになるので、そこでパラダイムシフトが起きてくれないかな、と考えています。

人間の脳細胞の数は1千億個くらいで、一方AIの脳細胞に該当するノードの数は、おそらくせいぜい数万、数十万程度なので、まだ遠く及びませんが、量子コンピュータが実用化されると、人間のそれに並ぶ、あるいは追い越せる数になる可能性があります。量が質を凌駕するような時代というのが前提で、パラダイムシフトが起こる可能性があると、まったく違った方向から感性の領域にAIが入ってくれるんじゃないかと。

藤澤:何が人間の心に訴えかけてくるかということは、まったく法則のない世界ではないと思うんです。そういうものをAIが読み取り始めたら、実装して物を作り始めることになるかもしれないですね。

森川:それは「生きているうちに実現するといいなあ」というオーダーになっちゃうと思うんですけどね。

藤澤:ただ、絵とか小説もそうなんですけど、単純に面白ければいいだけじゃなくて、どんな人が書いたのかというところもふくめて物語だったりするじゃないですか。そこで「AIが書きました」って言われたら、急に冷めてしまうかもしれないですし。

森川:実は音楽の世界ではそれが起きてまして。ブラインドで聴かせると高評価なのに、「実はAIが作りました」っていうと、急に評価が下がると。

藤澤:そういうことですよね。受け取る側は、常にバックボーンもふくめて見ている、作り手の姿まで想像して見ているというところがあると思うんです。

森川: 藤澤さんにはいつか、AIと共作をしてほしいです。

後編につづく)

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