モリカトロン株式会社運営「エンターテインメント×AI」の最新情報をお届けするサイトです。
- TAG LIST
- CGCGへの扉機械学習安藤幸央ディープラーニング月刊エンタメAIニュースGAN河合律子OpenAI音楽ニューラルネットワークNVIDIA三宅陽一郎強化学習吉本幸記QAGoogleFacebook人工知能学会GPT-3自然言語処理グーグルDeepMind大内孝子森川幸人敵対的生成ネットワークキャラクターAIスクウェア・エニックスモリカトロンAIラボインタビューマイクロソフトルールベースシナリオAIと倫理映画デバッグアートDALL-E2StyleGAN倫理ゲームプレイAINFT自動生成SIGGRAPHメタAIStable Diffusionテキスト画像生成ロボット深層学習CEDEC2019プロシージャル遺伝的アルゴリズムテストプレイモリカトロンDALL-Eビヘイビア・ツリーディープフェイクCEDEC2021CEDEC2020ゲームAIVFXデジタルツインメタバース不完全情報ゲームVRナビゲーションAI画像生成AINPC畳み込みニューラルネットワークCLIP画像生成GDC 2021JSAI2022GDC 2019マルチエージェントCEDEC2022AIアートボードゲームファッション懐ゲーから辿るゲームAI技術史toioCNNAdobeUnity著作権小説アニメーション鴫原盛之HTN階層型タスクネットワーク汎用人工知能JSAI2020TensorFlowインタビューBERTMicrosoftイベントレポート対話型エージェントロボティクスMetaMinecraft水野勇太Genvid TechnologiesガイスターStyleGAN2GTC2022教育ソニーJSAI2021スポーツ研究シムピープルMCS-AI動的連携モデルマンガマーケティングGDC SummerバーチャルヒューマンブロックチェーンMidjourneyアストロノーカキャリアNVIDIA OmniverseeスポーツAmazoneSportsDQNBLUE PROTOCOLシーマンアバターOmniverse3DCGUbisoftメタAlphaZeroTransformerGPT-2AIりんなカメラ環世界中島秀之哲学ベリサーブPlayable!ChatGPT理化学研究所ジェネレーティブAISIGGRAPH ASIADARPAドローンシムシティImagenZorkバイアスモーションキャプチャーTEZUKA2020AI美空ひばり手塚治虫バンダイナムコ研究所スパーシャルAIElectronic Arts3DメタデータLEFT 4 DEAD通しプレイOpenAI Five本間翔太CMピクサープラチナエッグイーサリアム作曲ボエダ・ゴティエビッグデータ中嶋謙互Amadeus Codeデータ分析Microsoft AzureMILE模倣学習ナラティブスタンフォード大学アーケードゲームOmniverse ReplicatorWCCFレコメンドシステムNVIDIA DRIVE SimWORLD CLUB Champion FootballNVIDIA Isaac Simセガ柏田知大軍事サイバーエージェント田邊雅彦トレーディングカードトレカ音声認識メディアアートPyTorch眞鍋和子バンダイナムコスタジオaibo合成音声齊藤陽介マインクラフトお知らせMagic Leap Oneチャットボットサルでもわかる人工知能VAEDreamFusionリップシンキングUbisoft La Forge自動運転車ワークショップ知識表現ウォッチドッグス レギオンIGDA秋期GTC2022どうぶつしょうぎEpic Gamesジェイ・コウガミ音楽ストリーミングMITAIロボ「迷キュー」に挑戦野々下裕子徳井直生マシンラーニング5GMuZeroRival Peakクラウド対話エンジン斎藤由多加リトル・コンピュータ・ピープルCodexコンピューティショナル・フォトグラフィーゴブレット・ゴブラーズ絵画rinnaイラストシミュレーションデジタルヒューマン完全情報ゲーム坂本洋典PaLM釜屋憲彦ウェイポイントパス検索対談藤澤仁生物学GTC 2022画像認識GPT-3.5SiemensStyleCLIPDeNA長谷洋平masumi toyota宮路洋一OpenSeaGDC 2022TextWorldEarth-2BingMagentaSFELYZA Pencil松尾豊GTC2021CycleGANデータマイニング東京大学NetHackはこだて未来大学キャラクターモーションフェイクニュースエージェントRPGSIGGRAPH 2022レベルデザインAIボイスアクターNVIDIA CanvasGPUALife人工生命オルタナティヴ・マシンサウンドスケープLaMDAAI DungeonASBS栗原聡ぱいどんテキスト生成不気味の谷ナビゲーションメッシュ松井俊浩ELYZAフルコトELYZA DIGEST音声合成西成活裕Apex LegendsELIZA群衆マネジメントNinjaコンピュータRPGライブビジネスアップルタウン物語新型コロナKELDIC周済涛メロディ言語清田陽司ゲームTENTUPLAYサイバネティックスMARVEL Future FightAstro人工知能史タイムラプスEgo4DAI哲学マップバスキア星新一日経イノベーション・ラボStyleGAN-XL敵対的強化学習StyleGAN3階層型強化学習GOSU Data LabGANimatorWANNGOSU Voice AssistantVoLux-GAN竹内将SenpAI.GGProjected GANMobalyticsSelf-Distilled StyleGAN馬淵浩希Cygamesニューラルレンダリング岡島学AWS SagemakerPLATO映像セリア・ホデント形態素解析frame.ioUXAWS LambdaFoodly誤字検出森山和道認知科学中川友紀子ゲームデザインSentencePieceアールティLUMINOUS ENGINELuminous ProductionsBlenderBot 3パターン・ランゲージ竹村也哉Meta AIちょまどマーク・ザッカーバーグGOAPWACULAdobe MAX 2021自動翻訳AIライティングOmniverse AvatarAIのべりすとFPSNVIDIA RivaQuillBotマルコフ決定過程NVIDIA MegatronCopysmithNVIDIA MerlinJasperNVIDIA Metropolisパラメータ設計テニスバランス調整協調フィルタリング人狼知能テキサス大学AlphaDogfight TrialsAI Messenger VoicebotエージェントシミュレーションOpenAI CodexStarCraft IIHyperStyleMax CooperFuture of Life InstituteRendering with StyleIntelDisney類家利直LAIKADisneyリサーチヴィトゲンシュタインRotomationGauGAN論理哲学論考GauGAN2京都芸術大学ドラゴンクエストライバルズ画像言語表現モデル不確定ゲームSIGGRAPH ASIA 2021PromptBaseDota 2モンテカルロ木探索ディズニーリサーチMitsuba2バンダイナムコネクサスソーシャルゲームEmbeddingワイツマン科学研究所ユーザーレビューGTC2020CG衣装mimicNVIDIA MAXINEVRファッションBaidu淡路滋ビデオ会議ArtflowERNIE-ViLGグリムノーツEponym古文書ゴティエ・ボエダ音声クローニング凸版印刷Gautier Boeda階層的クラスタリングGopherAI-OCR画像判定JuliusSIE鑑定ラベル付けTPRGOxia Palus大澤博隆バーチャル・ヒューマン・エージェントtoio SDK for UnityArt RecognitionSFプロトタイピングクーガー田中章愛実況パワフルサッカー石井敦銭起揚NHC 2021桃太郎電鉄茂谷保伯池田利夫桃鉄GDMC新刊案内パワサカマーベル・シネマティック・ユニバースコナミデジタルエンタテインメント成沢理恵MITメディアラボMCU岩倉宏介アベンジャーズPPOマジック・リープDigital DomainMachine Learning Project CanvasMagendaMasquerade2.0国立情報学研究所ノンファンジブルトークンDDSPフェイシャルキャプチャー石川冬樹サッカーモリカトロン開発者インタビュースパコン里井大輝Kaggle宮本茂則スーパーコンピュータバスケットボール山田暉松岡 聡Assassin’s Creed OriginsAI会話ジェネレーターTSUBAME 1.0Sea of ThievesTSUBAME 2.0GEMS COMPANYmonoAI technologyLSTMABCIモリカトロンAIソリューション富岳初音ミクOculusコード生成AISociety 5.0転移学習テストAlphaCode夏の電脳甲子園Baldur's Gate 3Codeforces座談会Candy Crush Saga自己増強型AItext-to-imageSIGGRAPH ASIA 2020COLMAPtext-to-3DADOPNVIDIA GET3DデバッギングBigGANGANverse3DMaterialGANRNNグランツーリスモSPORTAI絵師ReBeLグランツーリスモ・ソフィーUGCGTソフィーPGCVolvoFIAグランツーリスモチャンピオンシップStability AINovelAIRival PrakDGX A100NovelAI DiffusionVTuberユービーアイソフトWebcam VTuberモーションデータ星新一賞北尾まどかHALO市場分析ポーズ推定将棋メタルギアソリッドVフォートナイトメッシュ生成FSMメルセデス・ベンツRobloxMagic Leapナップサック問題Live NationEpyllion汎用言語モデルWeb3.0マシュー・ボールAIOpsムーアの法則SpotifyスマートコントラクトReplica StudioAWSamuseChitrakarQosmoAdobe MAX 2022巡回セールスマン問題Adobe MAXジョルダン曲線メディアAdobe Research政治Galacticaクラウドゲーミングがんばれ森川君2号pixiv和田洋一リアリティ番組映像解析Stadiaジョンソン裕子セキュリティMILEsNightCafe東芝デジタルソリューションズインタラクティブ・ストリーミングLuis RuizSATLYS 映像解析AIインタラクティブ・メディアポケモン3DスキャンPFN 3D Scanシーマン人工知能研究所東京工業大学Ludo博報堂Preferred NetworksラップPFN 4D ScanSIGGRAPH 2019ArtEmisZ世代DreamUpAIラッパーシステムDeviantArtARWaifu DiffusionGROVERプラスリンクス ~キミと繋がる想い~元素法典FAIRSTCNovel AIチート検出Style Transfer ConversationOpen AIオンラインカジノRCPMicrosoft DesignerアップルRealFlowRinna Character PlatformiPhoneCALADeep FluidsSoul Machines柿沼太一MeInGameAmeliaELSIAIGraphブレイン・コンピュータ・インタフェースバーチャルキャラクター大規模言語モデルBCIGateboxアフォーダンスLearning from VideoANIMAKPaLM-SayCan予期知能逢妻ヒカリセコムGitHub Copilotユクスキュルバーチャル警備システムCode as Policiesカント損保ジャパンCaP上原利之ドラゴンクエストエージェントアーキテクチャアッパーグラウンドコリジョンチェックPAIROCTOPATH TRAVELER西木康智OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者山口情報芸術センター[YCAM]アルスエレクトロニカ2019品質保証YCAMStyleRigAutodeskアンラーニング・ランゲージ逆転オセロニアBentley Systemsカイル・マクドナルドワールドシミュレーターローレン・リー・マッカーシー奥村エルネスト純いただきストリートH100鎖国[Walled Garden]プロジェクト齋藤精一大森田不可止COBOLSIGGRAPH ASIA 2022高橋智隆DGX H100VToonifyロボユニザナックDGX SuperPODControlVAE泉幸典仁井谷正充クラウドコンピューティング変分オートエンコーダーロボコレ2019Instant NeRFフォトグラメトリartonomous回帰型ニューラルネットワークbitGANsDeepJoinぎゅわんぶらあ自己中心派Azure Machine LearningAzure OpenAI Service意思決定モデル脱出ゲームDeepLHybrid Reward Architectureコミュニティ管理DeepL WriteウロチョロスSuper PhoenixSNSProject MalmoオンラインゲームGen-1気候変動Project PaidiaシンギュラリティProject Lookoutマックス・プランク気象研究所レイ・カーツワイルWatch Forビョルン・スティーブンスヴァーナー・ヴィンジ気象モデルRunway ResearchLEFT ALIVE気象シミュレーションMake-A-Video長谷川誠ジミ・ヘンドリックス環境問題PhenakiBaby Xカート・コバーンエコロジーDreamixロバート・ダウニー・Jr.エイミー・ワインハウスSDGsText-to-Imageモデル音楽生成AIYouTubeダフト・パンクメモリスタ音声生成AIGlenn MarshallScenarioThe Age of A.I.Story2Hallucination音声変換LatitudeレコメンデーションJukeboxAIピカソVeap JapanAI素材.comEAPneoAIテンセントSIFT福井千春DreamIconDCGAN医療mignMOBADANNCEメンタルケアstudiffuse人事ハーバード大学Edgar HandyAndreessen Horowitz研修デューク大学NetflixAIQVE ONEQA Tech Nightmynet.aiローグライクゲーム松木晋祐東京理科大学下田純也人工音声NeurIPS 2021産業技術総合研究所桑野範久リザバーコンピューティングBardプレイ動画ヒップホップ対話型AIモデル詩ソニーマーケティングControlNetサイレント映画もじぱnoteNBA環境音暗号通貨note AIアシスタント現代アートFUZZLEKetchupAlterationAI News粒子群最適化法Art Selfie進化差分法オープンワールドArt Transfer群知能下川大樹AIFAPet Portraitsウィル・ライト高津芳希P2EBlob Opera大石真史クリムトBEiTStyleGAN-NADA世界モデルDETRゲームエンジンDreamerV3SporeUnreal Engineクリティックネットワークデノイズ南カリフォルニア大学Unity for Industryアクターネットワーク画像処理DMLabSentropyGLIDEControl SuiteCPUDiscordAvatarCLIPAtari 100kSynthetic DataAtari 200MCALMYann LeCunプログラミングサム・アルトマン鈴木雅大ソースコード生成コンセプトアートGMAIシチズンデベロッパーSonanticColie WertzTRPGGitHubCohereリドリー・スコットウィザードリィMCN-AI連携モデルマジック:ザ・ギャザリング絵コンテUrzas.aiストーリーボード介護大阪大学西川善司並木幸介KikiBlenderサムライスピリッツ森寅嘉Zoetic AIプロンプトゼビウスSIGGRAPH 2021ペットGPT-4ストリートファイター半導体Digital Dream LabsPaLM APITopaz Video Enhance AICozmoMakerSuiteDLSSタカラトミーSkeb山野辺一記NetEaseLOVOTDreambooth-Stable-Diffusion大里飛鳥DynamixyzMOFLINゲーム背景RomiGoogle EarthU-NetミクシィGEPPETTO AI13フェイズ構造アドベンチャーゲームユニロボットStable Diffusion web UIADVユニボPoint-EXLandGatoAGI手塚眞DEATH STRANDINGマルチモーダルEric Johnson汎用強化学習AIデザインOculus Questコジマプロダクションロンドン芸術大学生体情報デシマエンジンGoogle BrainインディーゲームSound Control写真高橋ミレイSYNTH SUPER照明Maxim PeterKarl SimsJoshua RomoffArtnomeハイパースケープICONATE山崎陽斗深層強化学習立木創太松原仁浜中雅俊ミライ小町武田英明テスラ福井健策GameGANパックマンTesla BotNEDOTesla AI DayWikipediaソサエティ5.0SphereSIGGRAPH 2020バズグラフXaver 1000ニュースタンテキ養蜂東芝BeewiseDIB-R倉田宜典フィンテック投資韻律射影MILIZE広告韻律転移三菱UFJ信託銀行
学習データなしでMinecraftのダイヤモンド採取に成功。世界モデルを採用したDreamerV3の意義
モリカトロンAIラボでは、2022年8月の記事でMinecraftのダイヤモンドのつるはしを作ったOpenAIのゲームプレイAIを紹介しました。このAIは、人間プレイヤーのプレイ動画から学習することで目標としたタスクを達成しました。そして2023年1月、DeepMindは学習データなしでダイヤモンドの採取に成功したゲームプレイAIを発表しました。本稿ではこのAIを紹介することで、現在AI研究で注目される「世界モデル」の意義を明らかにします。
ゲーム環境の変化を予測する世界モデル
現在成功しているAIアルゴリズムのひとつとして、強化学習があります。強化学習によってAIが世界トップレベルの囲碁棋士に勝利したり自然な会話ができたりしていますが、このアルゴリズムには学習環境から制約を受けるという課題があります。例えばブロック崩しを人間以上にプレイするAIを開発しても、そのAIは『Minecraft』をうまくプレイできません。対して人間は、ブロック崩しもMinecraftもプレイできて上達も可能です。
DeepMindが2023年1月10日に発表した論文「世界モデルを通じてさまざまなドメインをマスターする」は、学習環境に制約されない柔軟な学習が可能なAI「DreamerV3」について論じています。このAIはさまざまな環境を柔軟に学習できるように、以下のような3つの機能をふくむアーキテクチャによって構築されました。
- 世界モデル:任意のゲーム環境を認識して、環境の推移を予測するモデル。
- クリティック(批評者)ネットワーク:世界の推移を観察して、報酬が最大化される状況を予測するモデル。
- アクター(行動者)ネットワーク:最大報酬を実現するための行動を学習するモデル。
以上の機能で注目すべきなのは、世界モデルの役割です。従来の強化学習では報酬を最大化するようにAIが個々の環境に最適化されるのに対して、世界モデルを実装したDreamerV3はさまざまな環境を認識したうえで適応します。つまり、世界モデルによって環境が変わっても学習できるようになったのです。
前出の論文には、世界モデルの環境予測を可視化した図が掲載されています。以下の図の上部2段はFPSゲーム『Quake Ⅲ Arena』をベースにDeepMindが開発したゲーム環境「DMLab」、下部2段はMuJoCo物理エンジンで開発された3D環境「Control Suite」です。それぞれの段は実際のゲーム環境の推移「True」と世界モデルが予測した「Model」から構成され、任意の5フレームが与えられると45フレーム分の推移を予測していることを表しています。図からは、世界モデルの予測が間違っている箇所があることも分かります。
さまざまなゲームでハイスコアを実現
DeepMind研究チームは、DreamerV3の汎用学習性を検証するために性質の異なるさまざまなゲーム環境でプレイスコアを計測しました。計測に用いたゲーム環境には、前述のDMLabやControl Suiteのほかに2Dレトロゲームを多くふくむAtari 100kやAtari 200Mもありました。計測の結果、DreamerV3はプレイしたすべてのゲーム環境において既存のゲームプレイAIを凌駕するスコアを達成しました。また、モデルサイズを大きくするとパフォーマンスが向上することも分かりました。
さらに近年ゲームプレイAIのテスト環境として注目されるMinecraftもプレイしました。プレイの自由度が高い同ゲームは明確なプレイ目標を設定しづらいため、ダイヤモンドの採取を目標としました。この目標を達成するためには工作台や鉄のつるはしの作成が必要とされるので、目標達成要件を満たすと報酬が得られるようにしました。こうしたプレイ条件下で40回のワールド生成によるテストを実施した結果、24回ダイヤモンドの採取に成功しました。ワールドが生成される度に地形やスタート地点が変わるので、このテスト結果からDreamerV3は学習データなしで高度にMinecraftに適応していると言えます。
DeepMind研究チームは、DreamerV3の限界として40回のMinecraftプレイのすべてでダイヤモンドを採取できていない点を挙げています。熟練した人間プレイヤーであれば40回の全プレイにおいてダイヤモンドを採取できると予想されることから、同AIはまだ改善の余地があります。さらに今回のテストではゲーム環境ごとに同AIを訓練しました。学習の汎用性を拡張するには、Atari 100kをプレイしたAIにMinecraftもプレイさせるようなゲーム環境を横断したテストの実施が望ましいと考えられます。
Metaや東大松尾研究室も注目する「世界モデル」
DreamerV3の汎用的学習を可能とした世界モデルの研究開発は、DeepMindだけが取り組んでいるわけではありません。MetaのAI研究部門を率いるYann LeCun氏も世界モデルに注目しており、その関心は2022年2月23日付のMeta AIブログ記事で言及されています。その記事によると近年のAIの進化は目覚ましいものも、学習に膨大なデータが必要になるという課題を解決できていません。この課題を解決するには、AIが世界の変化を推論できる能力が不可欠と同氏は考えています。こうした世界の変化や在り様を推論できる能力の総体が、人間における「常識」に相当するものと見なされます。そして、常識があれば例えば雪上を運転した経験がなくても(雪上運転の学習なしでも)、雪道の自動車は滑りやすいと判断できるのです。
LeCun氏は、常識あるAIを実現するために世界の変化を推論する世界モデルをふくめた6つのモジュールから構成されるアーキテクチャを提案しています。このアーキテクチャにはセンサーによって世界を知覚する「知覚モジュール」もあり、同氏が想定する未来のAIとは人間と同じように物理世界に関する常識があるものとうかがえます。
世界モデルは、日本の第三次AI革命をけん引した松尾豊教授が率いる松尾研究室でも研究されています。2022年11月30日に公開された同研究室のニュース記事では、鈴木雅大特任助教が世界モデルについて語っています。同助教によると、世界モデルとは外界と相互作用して世界がどういうものかを「直感的」に理解する能力を司るものであり、従来の探索や推論を行うAIが「大人の知能」なのに対して、世界モデルは「子供の知能」を実現します。そして、既存のAIは「子供の知能」が欠けているために物理世界でうまく作動しなかったり非常識な推論を行ったりするのです。
以上のニュース記事には世界モデルに関する以下のようなスライド画像が掲載されており、松尾研究室で研究されている世界モデルもLeCun氏が提唱するような「世界の変化や在り様を予測したり推論したりする」技術と位置づけられていることが分かります。
DreamerV3における世界モデルはゲーム環境の変化を推論する非常に限定されたものですが、「世界を認識する能力を実装することでAIを進化させる」というアプローチを試みている点においてLeCun氏や松尾研究室の研究理念と通じるものがあります。こうした現状をふまえると、今後の世界モデル研究は物理世界を認識するAIだけではなく、ゲームプレイAIの研究によっても進展するのではないでしょうか。
Writer:吉本幸記