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人面魚からAIに進化したシーマン、ロボット搭載の対話エンジンに。その仕組みとは?
7月30日に開催されたイベント「第壱回 先端怪奇人工物 大博覧會」にて、ユカイ工学とシーマン人工知能研究所の協業が発表されました。ユカイ工学は、2015年に発売されたコミュニケーションロボットBOCCOの後継機である、BOCCO emoの発売を2020年に予定しています。
従来のBOCCOはスマホなどから送信したテキストの読み上げ機能などに留まっていましたが、BOCCO emoは双方向のコミュニケーションを取ることでユーザーが共感を覚えられるように、音声認識とシーマン人工知能研究所とユカイ工学の協働開発による「ロボット言語」が実装されます。 ロボット言語は独自のシンプルな文法体系を持つ原始的な言語で人間には理解できませんが、ユーザーはBOCCO emoとの会話を重ねることで、その規則性とともにロボットの意図を理解するプロセスを体験できます。また、シーマン人工知能研究所が2020年にリリース予定の日本語会話生成エンジン「オギルビー」の販売代理業をユカイ工学が担うことも発表されました。
20年の試行錯誤から生まれた、シーマン人工知能研究所の技術
シーマン人工知能研究所は、『シーマン~禁断のペット~』(セガ、1999)の開発者である斎藤由多加氏が立ち上げた日本語の口語ベースの人工会話エンジンを開発する企業です。
1999年7月29日に発売されたドリームキャストのタイトル『シーマン~禁断のペット~』(以下、『シーマン』)は、人面魚シーマンとマイクを通して対話できるのが特徴でした。シーマンの態度はふてぶてしく、プレイヤーを「お前」と呼び、声が聞き取りづらいときは「ああっ?」と聞き返します。時に辛口なコメントをし、時に親しい友人のようにプレイヤーの心に寄り添うシーマンは、あたかも生身の人間とフランクな会話をしているような体験をプレイヤーにもたらし、社会現象にもなりました。
そのような機械との対話は、今まさに対話型エージェントやスマートスピーカーなどを作ろうとしているAI開発者たちが目指そうとしていることです。私たちはいまだスマートスピーカーなどに搭載されたAIアシスタントと雑談をすることはできません。「アレクサ、今何時?」「12時です」と、大抵は一問一答に留まります。とはいえ、20年前に優れた対話エンジンがゲームに実装されていたかといえば、そうではありませんでした。斎藤氏が当時から人工知能に関心を持ってはいたとはいえ、『シーマン』には、いわゆる人工知能は搭載されていませんでした。
斎藤氏が人工知能学会のインタビューで語ったところによると、シーマンの会話は、プレイヤーが言った言葉を覚えて次の会話にも反映させる機能と、分岐型のシナリオの会話の組み合わせで構成されていました。プレイヤーの言っていることを理解しているかのようなセリフ回しはシナリオの工夫によるものです。また、軽妙なスモールトークを実現させるいくつかの工夫も盛り込まれています。例えば「お前、何歳?」という問いかけに対し、プレイヤーの回答が年齢だけではなく「餃子」「銀座」といったジョークであることも想定し、それに対するシーマンの切り返しもシナリオ分岐に入れてあります。
ひとつの文章内の主語が必ず1つでSVOCといった構造がはっきりしている英語のような言語に対し、日本語は文法があってないような言語です。例えば「今日は、僕は、お酒は、ウィスキーがいいな」といった場合、主語がどれかは曖昧です。そうなるとディープラーニングで処理をしようにも数値化や記号化ができません。シーマン人工知能研究所は、そのように特徴的な言語である日本語と、後述する文法とは異なる記述方法とルールを作ることで、向き合ってきました。
日本語は言葉の語尾と”メロディ言語”が大きな意味を持つ
1つ目のデモンストレーションでは、AIがユーザーである斎藤氏に名前を聞きます。「斎藤です」という回答に対し、AIは確認の際に「”サイトウ サン”で、よろしいですか?」と、名前と敬称を切り離して処理して発音しています。また姓と名の別も認識して区分けするなど、細かい機能をたくさん入れているとのことです。
次のデモンストレーションでは、対話エンジンの性格を表現することを試みました。名前に引き続き、今度は性別や年齢を訊ねますが、斎藤氏はわざと「女じゃないよ」「50代半ばくらい」と曖昧な回答します。それに対してAIは「変な答え方しますね」「そうやってぼかした言い方をするのはよくないです」と文句を言います。斎藤氏によれば、人格はアシスタントとしてはあまり優秀とはいえない部分、例えば同じことを何度もお願いした時に、「何回もやらせないでください」「しつこいんですよ」と文句を言う部分に出てくるとのことです。
実はここまでのデモンストレーションは、20年前に『シーマン』に実装しているものと同じ分岐型のシナリオがバックにあるAIとのことでした。今世の中に流通しているほとんどのコミュニケーションロボットが採用していますが、これではエンドレスな会話を人と続けることは難しく、用途にも限界があります。結局一問一答の会話に留まってしまうため文脈が宿りません。その課題を克服し、ユーザーの発言の意味をカテゴリとともに受け取ることができるエンジンのデモンストレーションも披露されました。
「頭が痛い」と話しかけた斎藤氏にAIは「健康の話題ですね」とまず話題のカテゴライズをします。そして「頭痛ですか」と続けます。ここで「頭が痛い」という斎藤氏の言葉を「頭痛」と言い換えることで、より情報の処理をしやすくしているのです。その後、いつから痛みだしたかということに話題は移りますが、ここでも算術用語に変換しています。つまり、この対話エンジンでは相手が言った言葉のエッセンスを抽象化し、変換して言い直すプロセスにより、人間が書いたシナリオ分岐を頼ることなく会話を成り立たせています。
日本語は主語が曖昧だという特徴がありますが、最も大事なのが語尾だと斎藤氏は語ります。例えば「〜するんだよね」「しちゃうんです」は「する」が変化した表現ですが、それぞれ異なる意味やニュアンスが語尾に込められています。それを斎藤氏は「主見(しゅけん)」と呼んでいるとのこと。
例えば、相手にとって自明の話題について断言すると、いかにも訳知り顔なニュアンスとなり失礼にあたることがありますが、同じ内容でも『〜ですよね?』と言えばスムーズに会話が成り立ちます。この場合「〜ですよね?」という表現には「私よりもあなたの方が話題の対象について知っている」という謙遜の意味が込められていることになります。このような日本語表現は、医療相談や人生相談において有効だと斎藤氏は語ります。
そして、まだ開発の途中段階とのことですが、これまでの対話エンジンでは難しいとされてきた、短期記憶と文脈のある会話が実現できるデモンストレーションも披露されました。代名詞が何を指しているのかを絞り込む仕組みを実装することで、一問一答ではなく、その話題に関する会話のキャッチボールが続けることができます。この対話エンジンの特徴は、入ってきた言葉をカテゴリに分けて参照し、同意を求めている、同意を拒否している、質問をしているなどの意味を表す数値に変換していきます。
日本語対話エンジンの開発において、もうひとつ重要なのは、斎藤氏が『シーマン』を開発している時に発見して提唱してきた「メロディ言語」という日本語の特徴を示す概念です。例えば「お前、昨日、ケイコと、キスしたの」というセリフがあったとして、アクセントを「お前」「昨日」「ケイコと」「キス」のどこに置くかによって質問の意味が異なるということです。つまり日本語においては、SVOC構造よりもメロディが果たしている役割が非常に大きいというのが斎藤氏の仮説です。既存の対話エンジンでは、「行く?」「行く」「行くぅ?」「行く!!」いずれも、単にテキストベースの「行く」と同じ意味で処理されてしまうため、より精度の高いエンジンをシーマン人工知能研究所で開発を進めているとのことです。
2020年のBOCCO emoの発売を目指し、シーマン人工知能研究所とユカイ工学の共同研究はまだまだ続いていくとのことです。日本語に特化した対話エージェント開発の20年の蓄積とともに、これからさらにブラッシュアップされることで、来年には私たちがアッと驚くような対話をロボットとできるようになっているのかもしれません。
Source:http://www.bocco.me/emo-sandy/
Editor:高橋ミレイ