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ゲーム業界はいかにして5Gという衝撃に対峙すべきか?:和田洋一氏インタビュー
2019年3月にグーグルが発表したストリーミング型のゲームサービス「Stadia(ステイディア)」。ゲーム業界が「クラウドゲーミング」の時代へと突入していく動きだと話題を呼んでいますが、日本のゲーム業界にはかつて世界に先駆けてクラウドゲーミングを実現しようとしたシンラ・テクノロジー・ジャパン株式会社という企業がありました。今回はその仕掛け人である元スクウェア・エニックスの代表取締役社長、和田洋一氏をお呼びし、これからゲーム業界に起こる変化について、5G(第5世代通信)から生物までを語り尽くしました。聞き手はモリカトロンAIラボの森川幸人です。
5Gはクラウドゲーミングの「最後の1ピース」だった
森川幸人(以下、森川):今日、和田さんにお越しいただいた以上は、ここは読者の皆さん的にも外せないと思うので、まずはグーグルのStadiaについてお話をお聞きしたいと思います。クラウドゲーミングの先駆けである「シンラ・テクノロジー(以下、シンラ)」のことを知らない人はゲーム業界にはいませんからね。さっそくですが、和田さんはStadiaの発表を聞いて、どう思われましたか?
和田洋一(以下、和田):そうですね、森川さんも同意見だと思うのですが、目新しい言及ってなかったですよね。少なくともE3の発表では。
森川:昔ながらの、いわゆるビッグタイトルだけを並べているやり方で、ビジネスとしてはあまり新しさを感じなかったですね。
和田:クラウドならではのことをやってくれることを楽しみにしていたんですが、前回の発表で何もそれを言及しなかったですよね。とくにグーグルはYouTubeを持っているのだから、新しいジャンプをしてくれると期待していたのですが、GDCで触れておきながらE3でのアップデートがなかったのでがっかりです。
森川:和田さんの言う「クラウドならではのこと」についてお聞きしたいのですが、そもそも現在はシンラを構想されていた頃と比べ、クラウドゲーミングにはどのような状況の変化があるのでしょうか?
和田:インフラ環境が完全に揃ったことでしょうね。シンラを構想していた2014年頃はクラウドといっても、例えばデータセンターでGPUを実装しているサーバがなかったり、CDN自体の機能もそんなによくなかったですね。おまけに5G(第5世代通信)の実現にはまだ手が届いていなかった。とはいえインフラが整うまで待っていると、ゲーム以外のプレイヤーが先行例を作ってしまう。シンラというのは、ゲームというユースケースで先行例を生み出し、将来的な大きな先行者利益を獲得しようとするプロジェクトだったんです。技術的にも進歩し、さらに5Gという最後の1ピースがはまったことで、アマゾンやネットフリックスなど、さまざまなプレイヤーがクラウドゲーミングに参戦してくる土壌が整ったのが今ですね。
クラウドゲーミングは、ゲームの作り方を変革する
森川:シンラが発表されたとき、ゲームを配信する、ゲームの処理だけをクラウド上でやる程度だと思っていました。しかし和田さんの構想は、ひとつの世界をクラウド上に作ることにあった。その新たな環世界や生態系をコントロールするためにAIが必要になるというお話を当時聞いたときには、とても驚きました。
和田:シンラは残念ながら2016年に解散を余儀なくされるわけですが、目指していたのはクラウド上に自然環境に近い、自律的な世界を実装し、ゲームそのものを進化させることにありました。
例えばゲームの中ではありますが、最初に環境とのインタラクションを作ったのは、ファミコンの『ドラゴンクエスト』です。宝箱を開けると薬草などのアイテムが出てきます。歩きまわったり敵をやっつけるだけではなくて、現実とは違う、ゲームの中の世界で環境と、現実のようにインタラクションすることができる。これが未来においてますます進化すれば、物理演算も必要になるだろうし、自ずとAIでなければ処理できなくなる。当然、ハードウェアの性能の上限は障壁になります。2000年に入ってからはほとんどのリソースをグラフィクスの描画に使っていましたからね。クラウドの必要性も自明の進化でした。
森川:グーグルやネットフリックスなど、これまでゲームとは関係のないプレイヤーがゲームをやろうとしてきているのには驚きましたけど、これは必然なのでしょうか?
和田:私自身はゲームはこれから、ひたすら物理世界に侵食していくと感じています。というのもこの数年で、現実世界をデジタルの世界に翻訳する、つまりデータ化する技術が格段に進歩しました。例えばキャプチャーするだけで、3Dの物理的空間がデジタル処理されてしまうなど、以前は開発者がいちいち書いて入力していたものがどんどん自動化されています。そして高解像度のデータをインタラクティブにかつリアルタイムで処理する技術はゲームが得意とするところです。そこに着目して多くのプレイヤーが集まってきているとすると、けっこう手強いですね。
森川:これからはゲームの作り方も大きく変わっていきますよね。その中で大きな役割を担うのがAIだと僕は考えていますが、ローカルのスタンダードで作るゲームと、オープンワールドで多人数で同じ世界を共有するゲームでは、ゲームの遊び方としてまったく違うものということですよね。後者は制作者の意図を越え、ユーザー同士が自律的に世界を動かしていくことが前提になる。
和田:それが魅力ですよね。クラウドベースになると、ゲームの作り方も変わっていくはずなんです。RPGで言うところの、イベントを作ってストーリーを展開していく手法は、パッケージソフトの作り方です。それらは静的な平衡を作りだそうとするゲームデザインとして有効です。しかしユーザー同士が互いに関わって作りだすオンラインゲームの世界では、動的平衡が前提のゲームデザインになる。
例えば「皿回し」のような、棒の先に皿が乗っている世界を想像してみてください。その皿の上に無数のプレイヤーがいて、その世界を安定させるゲームがあるとします。このゲームは、絶えずプレイヤーがバランスを取り合うので、一度スタートすると完全に静的な平衡は働かなくなります。みんなが同じところに固まっちゃうと皿がひっくり返ってしまいますから、ユーザー同士が動的に世界を均衡させるようになるんです。クラウドゲームになると、さらに特色を極端に出せます。その世界ではパッケージソフトのノウハウでは作れない価値というものが必ずあると同時に、AIだからこそ生み出せる価値があるのだと思いますね。
森川:クラウドゲームにおけるダイナミズムを生み出すところにはAIは絡みやすいと思います。AI技術者の間ではそれを必然と考えていますが、残念ながら、ゲームプランナーの方たちの理解を得られているかというとそうでもない。ゲーム内でのAIの利用については、非AI系のエンジニアとぶつかるより、意外とプランナーとぶつかることの方が多いと感じます。
和田:分かりますね。
森川:プランナーとしては、従来の筋書きに基づいて予定どおりに事をこなしていくゲームが良いと考えます。AIが入ってプレイヤー主導になると、何が起きるか分からなくなるので戸惑うわけです。
和田:ますます開発現場では脱・予定調和が重要になってきていますよね。クラウドゲーミングでは、プレイヤーが世界中から参加して、開発者にも予期できなくなる。それが面白さなんですよ。その新しい面白さに体で反応して、先回りしていないといけないのに、今も開発者が「おれの作った素晴らしい料理を食べてくれ」という姿勢では、こうして世界中の企業がクラウドゲーミングに乗り出している現在の状況下で新しい価値を作るのは難しいですよね。
森川:最新のゲームAIは、バランス調整やデッキの最適構成を見つけ出すなどの開発支援に使い、いかに制作コストを抑えていくかに関心が集まっています。でも個人的には、いろんなAIモデルを活用し、ゲームの中のキャラクターに、これまでに作られてこなかった“知性めいた”振る舞いをさせることにこそ興奮を感じます。人間が考えつかない動きを自ら生み出していくような、そんなキャラクターこそが新しいと思うんですよ。
和田:まだまだ現在のAIの活用はもったいないと感じますよね。例えばすごいアーティストが、ものすごく恐ろしくてリアルなモンスターを描いたとしても、実際にゲームに登場したときに頭脳のない切られ役として扱われたりします(笑)。それってつまらないですよね。これからのモンスターの本当の怖さは、まさにこれまでのゲームにない知性を自ら獲得することから生まれるのだと思います。
例えば以前、ゲームのテック・デモで、カニのモンスターが岩の隙間に入っていく様を検証したことがありました。甲羅と足を器用に使って、凹凸のある岩の隙間でうまく自分を折りたたみながら入っていくんです。動きそのものに物理演算が組み込まれていて、とても知的なんです。クリエイターが書き込んだものを再現するのとはとは違う知性が宿っているように見える。物理演算を実装するだけでもこれだけ生き生きとしますから、本格的にAIにフィーチャーすれば、今までに感じた事のない経験を提供できると思います。
森川:単一の攻略法を見つける遊びはもう終わっていますよね。AIの可能性はすごく開かれているのに、意外と予定調和に終始しないゲームを作ろうという話はほとんどいただかない。ちょっとさびしいなと感じますね。
和田:でも逆にそれはチャンスですよ。
世界の概念を変える5Gという衝撃
和田:5Gについても話しておかないといけないことがあって、今のゲーム開発企業は、5Gの衝撃をイメージできないことが、そもそもの弱点なのだと思います。例えば、僕たちはパーソナルコンピュータやインターネットなど、この世界の概念が変わる衝撃的な経験を数多くしてきていますから、5Gもそうした衝撃になるだろうと予想できる。
しかし現在のゲーム開発の現場の人々の多くは、我々と違って若いですから(笑)、この「概念が変わるほどの衝撃」という発想がない。それゆえに、これからゲームがどう変わっていくかをイメージすることができず、時代に先回りすることができない。5Gは明らかに性能の向上だけではない。それを理解して、AIの活用も進めながらゲーム開発を進めているのは欧米と中国です。
森川:なるほど。みんなが今一度、同じスタートラインに立てる瞬間なんですね。パソコンやスマホ、インターネットの普及などのタイミングで起きたことと同じだと。和田さんは5Gもそれらと同じくらい大きなチャンスと考えられているということですね。
和田:そうだと思いますね。実際に4Gのときも、スマホのストリーマーなど、中国では兆単位のスタートアップが生まれた。あるいはその前の世代だと、それこそInstagramですよ。もうみんな忘れていますけど、あんな高解像度の写真をアップロードしてコミュニケーションすることができるようになってライフスタイルが変わりましたよね。その前の世代はテキストのやりとりですから。
5Gで注目しなければならないのは、動画のインタラクティビティの向上です。例えばデジタル世界の中にいる僕は、物理世界と違う風貌をしていてもいいわけです。これまでもデジタル世界で別の人格を持つ人はいたけれど、5Gになるとインタラクティブな動画でコミュニケーションができるようになる。ハリウッドスターのような風貌で生きていくこともできるし、デジタル世界で出会う人すべてが美女なんてこともあってもいいわけです(笑)
森川:ゲームの衝撃でいえば、プレステの登場で、家で3Dのゲームができる衝撃はとても大きかったです。また、ゲームがインターネットにつながったときも大きな衝撃でした。そのダイナミズムを経験しているからこれからまったく違う世界が広がることのワクワク感があります。
和田:5Gはインターネット程度の衝撃になる気がしています。パソコン通信とインターネットは同じ通信でも天地のごとく違うじゃないですか。こうした違いを5Gはもたらす可能性がある。
これからのゲームプランナーは、知の取扱業になる
森川:僕はAIの“向こう側”には我々と違った生き物たちの世界を感じてしまいます。
和田:先日も酒を飲みながらそんな話をしましたね(笑)、改めて聞きますが、それはなぜですか?
森川:例えば最近はミトコンドリアが気になっていて。ミトコンドリアは細胞の中にある、いわば発電所です。ATPを作るところですね。しかしミトコンドリアというのは変わったやつで、その生態を経営戦略として見ていくと面白い。最初からわれわれの細胞内にあった器官ではなく、独立したバクテリアでした。
社会に譬えるなら効率の良い発電技術を持ったベンチャー企業だったんですが、それがM&Aされて我が社、つまり、われわれの細胞に入ってきたわけです。しかも子会社化されても自社の独立性は保ったままです。DNAも独自のものを持っていて、自分で増える。彼らはいわば特殊技術を持つベンチャーでした。他の誰にもできてないんだから、そのまま生きていけばいいと思いますよね? しかし彼らはM&Aの道を選んだ。その意図は何なのか? その理由を是非、経営者和田さんのお聞きしたいなと。
和田:自分に有利な契約だったからでしょうね。宿主の側も、ミトコンドリアと機能を切り分けておいたほうがエネルギー効率がいい。支配するよりよい利害関係が生み出せるということで現在まで共生関係が続いてきたのだと思います。
森川: AIもゲームも、生物界の仕組みを利用すると面白いんじゃないかと思っています
和田:生命科学はネタの宝庫ですよね。遺伝子はまさにそうだし、生物って変なこといっぱいやってますからね(笑)
森川:ウィルスも面白いですよね。基本的には、異種の生物間では、DNAの交配はできないのに、ウイルスは媒体となれて、異種間のDNAの移動を可能にしてしまう。
和田:ルールである「セントラルドグマ」だけではなく、逃げ道がきちんとあるんですよね。交配だけでは迂遠に過ぎる。ランダムに変異を作るものだから、適応する変異を見いだせるまでにすごく時間がかかる。もうひとつはルールを決めているから、同じ種同士じゃないと交配できない。
森川:「DNAなんかゲームに関係ないよ」と言っているプランナーはダメだと思うんですね。「この振る舞いはバトルのルールに使える」とかイメージをふくらませてほしいです。
和田:そうですよね。『シヴィライゼーション』(1982年、シド・マイヤー)とかで、敵を殲滅させるときに生物のようなルールを使うなど、いろいろ使えると思います。
森川:でもなかなか、AIをゲーム内に使おうと思ってくれるプランナーの方は少ないですね。年齢的に自分がゲーム制作の現役としてやっていくのはちょっとしんどくなってきているので、そういう心意気のある人をどうやって育てていくかが自分たちの課題だと思ってます。
和田:こういう話をきいて「僕、やります!」みたいなことになるといいなと思います。インターフェース次第かもしれないですね。今、世界中の子どもがマインクラフトをやってます。ああいうインタフェースで出せたら、やる人も増えるんでしょうね。僕らの時代の「電子ブロック」が必要ですよ。
森川:ありましたねぇ…。
和田:コンデンサとか、抵抗とかがブロックになってて、組み合わせて回路を作る。アウトプットはつまらないですよ(笑)。電球がつくとか、凝ったものでもブザーがなるのがちょっと遅延するとかです。でもあの挙動を見る実感が、閃きを生むんですよね。
森川:実体験は大切ですね。そして、シンプルな現象からどうイメージを飛躍させるかというのが、プランナーの腕の見せ所だと思います。
ポスト・テレビゲーム時代の到来
森川:これまでゲーム業界というのは、ずっとスペシャリストによる分業体制でした。僕たちもそう思ってやってきた。しかしその座組は変えるべきタイミングかなと思っています。例えば物理学の世界も理論を扱う研究者と実験をする研究者が分かれています。互いの専門性が高度化してしまって、理論と実験をうまくジョイントすることが難しくなってきたので、両者を結びつけるジェネラリスト的な研究者が現れました。AIが加わったこともあって、ゲーム製作の場も、そろそろそんな時代になってきたのではと思います。
和田:もうゲーム自体が、ゲーム屋さんが1から10までデータをインプットして作るものではなくなってきていますからね。現在は、アナログとデジタルを分けて考えるのが難しくなってきています。この現実世界をフィジカルな世界と定義すると、これまではフィジカルな世界をデジタルに翻訳する術が、人間によるマニュアルのインプット以外はなかったんですよね。しかし今は、スマホをはじめとするデジタルデバイスによって、アナログからデジタルへのデータのインプットのチャネルが増え、データも非定形のものが多くなってきている。
こうした状況を見て、プランナーはクリエイターが作った世界以外の情報がゲームに入ってきたときのことを発想して仕事をしないといけないと思います。もっとも分かりやすい成功が『Pokémon GO』(2016年、ナイアンティック/ポケモン)ですよね。位置情報をゲームの信号としてつかったものですが、GPS情報がゲームと関わりを持つという発想があって成し得た成功だと思います。これからはこうしたゲームが数多く出てくるんでしょうね。
森川:睡眠をエンタメにするアプリ『ポケモン スリープ』(2020年(予定)、ポケモン)なんかも発表されていますよね。人間は3分の1くらいの時間を眠っているわけですから、これをエンタメにできるとすごいですよね。
和田:これまでゲームにインプットされてこなかったデータはネタだらけですよ。Apple WatchやFitbitなどのトラッカーの情報を見るだけで少し達成感ありますしね。これはそのままゲームになる。例えばドライビングゲームのプレイ履歴をクラウドに送ると自動運転の学習になるからお金が返ってくるとかね。開発者サイドはとてもいいデータが手に入るし、やれることはたくさんありますよ。
森川:デバイスも変わりますよね。今はVRゴーグルも外付けのデバイスですが、将来的には身体に埋め込まれていくようなものになるんでしょうね。そうするとVRそのものが「オーグメンテッド・インテリジェンス(拡張知能)」になる。
和田:もうゲームがテレビや液晶の画面を前提に成立する時代も終わっていくんでしょうね。近い将来、ゲームはホログラムでやるものになるかもしれないし、音声だけかもしれないし、あるいはまったく違うものかもしれない。デジタルと現実が同量のデータ量を持って、5Gでインタラクションすることを前提に考えると、今まで考えていなかったところにゲームが成立し得る。完全にポスト・テレビゲームの時代に突入していると感じますね。
Writer:森旭彦