モリカトロン株式会社運営「エンターテインメント×AI」の最新情報をお届けするサイトです。

TAG LIST
CGCGへの扉機械学習安藤幸央ディープラーニング月刊エンタメAIニュースGAN河合律子OpenAINVIDIA音楽吉本幸記ニューラルネットワーク三宅陽一郎強化学習GoogleQAグーグルDeepMindGPT-3Facebook自然言語処理人工知能学会大内孝子森川幸人敵対的生成ネットワークシナリオキャラクターAIスクウェア・エニックスモリカトロンAIラボインタビューマイクロソフトルールベースStable DiffusionAIと倫理アート映画デバッグNFTDALL-E2StyleGAN倫理ゲームプレイAI自動生成SIGGRAPHモリカトロンメタAIテキスト画像生成ロボット深層学習ファッションCEDEC2019プロシージャルVFXデジタルツイン遺伝的アルゴリズムテストプレイNPCDALL-ECLIP画像生成大規模言語モデルChatGPTビヘイビア・ツリーディープフェイクCEDEC2021CEDEC2020ゲームAIメタバース不完全情報ゲームVRナビゲーションAI画像生成AIボードゲーム畳み込みニューラルネットワークGDC 2021JSAI2022生成系AIAdobeGDC 2019マルチエージェントCEDEC2022著作権AIアート懐ゲーから辿るゲームAI技術史toioジェネレーティブAICNNMicrosoftNVIDIA OmniverseUnity小説アニメーション鴫原盛之HTN階層型タスクネットワークマンガ汎用人工知能JSAI2020GTC2023TensorFlowインタビューバーチャルヒューマンBERTMidjourneyイベントレポート対話型エージェントAmazonロボティクスMetaMinecraft水野勇太アバターOmniverse3DCGUbisoftGenvid TechnologiesガイスターStyleGAN2GTC2022教育ソニーJSAI2021スポーツ研究シムピープルMCS-AI動的連携モデルマーケティングGDC SummerLLMブロックチェーン作曲アストロノーカキャリアeスポーツスタンフォード大学サイバーエージェント音声認識eSportsDQNBLUE PROTOCOLシーマンStability AIメタAlphaZeroTransformerGPT-2rinnaAIりんなデジタルヒューマンカメラ環世界中島秀之PaLM哲学ベリサーブPlayable!理化学研究所SIGGRAPH ASIANetflix東京大学DARPAドローンシムシティImagenZorkバイアスモーションキャプチャーTEZUKA2020AI美空ひばり手塚治虫テキスト生成バンダイナムコ研究所スパーシャルAIElectronic Arts3DメタデータLEFT 4 DEAD通しプレイOpenAI Five本間翔太CMAudio2Faceピクサープラチナエッグイーサリアムボエダ・ゴティエビッグデータ中嶋謙互Amadeus Codeデータ分析Microsoft AzureMILE模倣学習ナラティブNVIDIA RivaアーケードゲームOmniverse ReplicatorWCCFレコメンドシステムNVIDIA DRIVE SimWORLD CLUB Champion FootballNVIDIA Isaac Simセガ柏田知大軍事田邊雅彦トレーディングカードトレカメディアアートGPTPyTorch眞鍋和子バンダイナムコスタジオaibo合成音声齊藤陽介マインクラフトお知らせMagic Leap Oneチャットボットサルでもわかる人工知能VAEDreamFusionリップシンキングUbisoft La Forge自動運転車ワークショップ知識表現ウォッチドッグス レギオンIGDA秋期GTC2022市場分析どうぶつしょうぎEpic Gamesジェイ・コウガミ音楽ストリーミングMITAIロボ「迷キュー」に挑戦AWS野々下裕子徳井直生マシンラーニング5GMuZeroRival Peakpixivクラウド対話エンジン斎藤由多加リトル・コンピュータ・ピープルCodexコンピューティショナル・フォトグラフィーゴブレット・ゴブラーズ絵画ARMicrosoft Designerイラストシミュレーション完全情報ゲーム坂本洋典釜屋憲彦ウェイポイントパス検索対談藤澤仁生物学GTC 2022画像認識GPT-3.5SiemensStyleCLIPDeNA長谷洋平masumi toyota宮路洋一OpenSeaGDC 2022Gen-1TextWorldEarth-2BingMagenta音楽生成AISFELYZA Pencil松尾豊GTC2021CycleGANテンセントデータマイニングNetHackはこだて未来大学Bardキャラクターモーションフェイクニュース現代アートエージェントRPGSIGGRAPH 2022レベルデザインAIボイスアクターNVIDIA CanvasGPUALife人工生命オルタナティヴ・マシンサウンドスケープLaMDATRPGAI DungeonプロンプトASBS栗原聡ぱいどんアドベンチャーゲーム不気味の谷ナビゲーションメッシュ松井俊浩ELYZAフルコトELYZA DIGEST建築音声合成NeRF西成活裕Apex LegendsELIZA群衆マネジメントライブポートレイトNinjaコンピュータRPGライブビジネスWonder Studioアップルタウン物語新型コロナ土木KELDIC周済涛BIMメロディ言語清田陽司インフラゲームTENTUPLAYサイバネティックスMARVEL Future FightAstro人工知能史Amazon BedrockタイムラプスEgo4DAI哲学マップイーロン・マスクバスキア星新一X.AI日経イノベーション・ラボStyleGAN-XLX Corp.敵対的強化学習StyleGAN3Twitter階層型強化学習GOSU Data LabGANimatorXホールディングスWANNGOSU Voice AssistantVoLux-GANMagi竹内将SenpAI.GGProjected GANStable Diffusion XLMobalyticsSelf-Distilled StyleGANSDXL馬淵浩希CygamesニューラルレンダリングRTFKT岡島学AWS SagemakerPLATONIKE映像セリア・ホデント形態素解析frame.ioClone XUXAWS LambdaFoodly村上隆誤字検出森山和道認知科学中川友紀子Digital MarkゲームデザインSentencePieceアールティSnapchatLUMINOUS ENGINEクリエイターコミュニティLuminous ProductionsBlenderBot 3バーチャルペットパターン・ランゲージ竹村也哉Meta AINVIDIA NeMo Serviceちょまどマーク・ザッカーバーグヴァネッサ・ローザGOAPWACULVanessa A RosaAdobe MAX 2021陶芸自動翻訳Play.ht音声AIAIライティングLiDAROmniverse AvatarAIのべりすとPolycamFPSQuillBotdeforumマルコフ決定過程NVIDIA MegatronCopysmith動画生成AINVIDIA MerlinJasperハーベストNVIDIA MetropolisForGamesパラメータ設計テニスゲームマーケットバランス調整岡野翔太協調フィルタリング郡山喜彦人狼知能テキサス大学ジェフリー・ヒントンGoogle I/O 2023AlphaDogfight TrialsAI Messenger VoicebotGoogle I/OエージェントシミュレーションOpenAI Codex武蔵野美術大学StarCraft IIHyperStyleMax CooperBingAIFuture of Life InstituteRendering with StyleIntelDisney類家利直FireflyLAIKADisneyリサーチヴィトゲンシュタインPhotoshopRotomationGauGAN論理哲学論考LightroomGauGAN2京都芸術大学Canvaドラゴンクエストライバルズ画像言語表現モデルChatGPT4不確定ゲームSIGGRAPH ASIA 2021PromptBaseBOOTHDota 2モンテカルロ木探索ディズニーリサーチpixivFANBOXMitsuba2バンダイナムコネクサス虎の穴ソーシャルゲームEmbeddingワイツマン科学研究所ユーザーレビューFantiaGTC2020CG衣装mimicとらのあなNVIDIA MAXINEVRファッションBaidu集英社淡路滋ビデオ会議ArtflowERNIE-ViLG少年ジャンプ+グリムノーツEponym古文書ComicCopilotゴティエ・ボエダ音声クローニング凸版印刷コミコパGautier Boeda階層的クラスタリングGopherAI-OCRゲームマスター画像判定Inowrld AIJuliusSIE鑑定ラベル付けMODTPRGOxia Palus大澤博隆Ghostwriterバーチャル・ヒューマン・エージェントtoio SDK for UnityArt RecognitionSFプロトタイピングSkyrimクーガー田中章愛実況パワフルサッカースカイリム石井敦銭起揚NHC 2021桃太郎電鉄RPGツクールMZ茂谷保伯池田利夫桃鉄ChatGPT_APIMZGDMC新刊案内パワサカダンジョンズ&ドラゴンズマーベル・シネマティック・ユニバースコナミデジタルエンタテインメントOracle RPG成沢理恵MITメディアラボMCU岩倉宏介深津貴之アベンジャーズPPOxVASynthマジック・リープDigital DomainMachine Learning Project CanvasLaser-NVMagendaMasquerade2.0国立情報学研究所TencentノンファンジブルトークンDDSPフェイシャルキャプチャー石川冬樹MERFサッカーモリカトロン開発者インタビュースパコンAlibaba里井大輝Kaggle宮本茂則スーパーコンピュータVQRFバスケットボール山田暉松岡 聡nvdiffrecAssassin’s Creed OriginsAI会話ジェネレーターTSUBAME 1.0NeRFMeshingSea of ThievesTSUBAME 2.0LERFGEMS COMPANYmonoAI technologyLSTMABCIマスタリングモリカトロンAIソリューション富岳TikTok初音ミクOculusコード生成AISociety 5.0リアム・ギャラガー転移学習テストAlphaCode夏の電脳甲子園グライムスBaldur's Gate 3Codeforces座談会BoomyCandy Crush Saga自己増強型AItext-to-imageジョン・レジェンドSIGGRAPH ASIA 2020COLMAPtext-to-3Dザ・ウィークエンドADOPNVIDIA GET3DドレイクデバッギングBigGANGANverse3DMaterialGANRNNグランツーリスモSPORTAI絵師ReBeLグランツーリスモ・ソフィーUGCGTソフィーPGCVolvoFIAグランツーリスモチャンピオンシップNovelAIRival PrakDGX A100NovelAI DiffusionVTuberユービーアイソフトWebcam VTuberモーションデータ星新一賞北尾まどかHALOポーズ推定将棋メタルギアソリッドVフォートナイトメッシュ生成FSMメルセデス・ベンツRobloxMagic Leapナップサック問題Live NationEpyllion汎用言語モデルWeb3.0マシュー・ボールAIOpsムーアの法則SpotifyスマートコントラクトReplica StudioamuseChitrakarQosmoAdobe MAX 2022巡回セールスマン問題Adobe MAXジョルダン曲線メディアAdobe Research政治Galacticaクラウドゲーミングがんばれ森川君2号和田洋一リアリティ番組映像解析Stadiaジョンソン裕子セキュリティMILEsNightCafe東芝デジタルソリューションズインタラクティブ・ストリーミングLuis RuizSATLYS 映像解析AIインタラクティブ・メディアポケモン3DスキャンPFN 3D Scanシーマン人工知能研究所東京工業大学Ludo博報堂Preferred NetworksラップPFN 4D ScanSIGGRAPH 2019ArtEmisZ世代DreamUpAIラッパーシステムDeviantArtWaifu DiffusionGROVERプラスリンクス ~キミと繋がる想い~元素法典FAIRSTCNovel AIチート検出Style Transfer ConversationOpen AIオンラインカジノRCPアップルRealFlowRinna Character PlatformiPhoneCALADeep FluidsSoul Machines柿沼太一MeInGameAmeliaELSIAIGraphブレイン・コンピュータ・インタフェースバーチャルキャラクターBCIGateboxアフォーダンスLearning from VideoANIMAKPaLM-SayCan予期知能逢妻ヒカリセコムGitHub Copilotユクスキュルバーチャル警備システムCode as Policiesカント損保ジャパンCaP上原利之ドラゴンクエストエージェントアーキテクチャアッパーグラウンドコリジョンチェックPAIROCTOPATH TRAVELER西木康智OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者山口情報芸術センター[YCAM]アルスエレクトロニカ2019品質保証YCAMStyleRigAutodeskアンラーニング・ランゲージ逆転オセロニアBentley Systemsカイル・マクドナルドワールドシミュレーターローレン・リー・マッカーシー奥村エルネスト純いただきストリートH100鎖国[Walled Garden]​​プロジェクト齋藤精一大森田不可止COBOLSIGGRAPH ASIA 2022高橋智隆DGX H100VToonifyロボユニザナックDGX SuperPODControlVAE泉幸典仁井谷正充クラウドコンピューティング変分オートエンコーダーロボコレ2019Instant NeRFフォトグラメトリartonomous回帰型ニューラルネットワークbitGANsDeepJoinぎゅわんぶらあ自己中心派Azure Machine LearningAzure OpenAI Service意思決定モデル脱出ゲームDeepLHybrid Reward Architectureコミュニティ管理DeepL WriteウロチョロスSuper PhoenixSNSProject Malmoオンラインゲーム気候変動Project PaidiaシンギュラリティProject Lookoutマックス・プランク気象研究所レイ・カーツワイルWatch Forビョルン・スティーブンスヴァーナー・ヴィンジ気象モデルRunway ResearchLEFT ALIVE気象シミュレーションMake-A-Video長谷川誠ジミ・ヘンドリックス環境問題PhenakiBaby Xカート・コバーンエコロジーDreamixロバート・ダウニー・Jr.エイミー・ワインハウスSDGsText-to-ImageモデルYouTubeダフト・パンクメモリスタ音声生成AIGlenn MarshallScenarioThe Age of A.I.Story2Hallucination音声変換LatitudeレコメンデーションJukeboxAIピカソVeap JapanAI素材.comEAPneoAISIFT福井千春DreamIconDCGAN医療mignMOBADANNCEメンタルケアstudiffuse人事ハーバード大学Edgar HandyAndreessen Horowitz研修デューク大学AIQVE ONEQA Tech Nightmynet.aiローグライクゲーム松木晋祐東京理科大学下田純也人工音声NeurIPS 2021産業技術総合研究所桑野範久リザバーコンピューティングプレイ動画ヒップホップ対話型AIモデルソニーマーケティングControlNetサイレント映画もじぱnoteNBA環境音暗号通貨note AIアシスタントFUZZLEKetchupAlterationAI News粒子群最適化法Art Selfie進化差分法オープンワールドArt Transfer群知能下川大樹AIFAPet Portraitsウィル・ライト高津芳希P2EBlob Opera大石真史クリムトBEiTStyleGAN-NADA世界モデルDETRゲームエンジンDreamerV3SporeUnreal Engineクリティックネットワークデノイズ南カリフォルニア大学Unity for Industryアクターネットワーク画像処理DMLabSentropyGLIDEControl SuiteCPUDiscordAvatarCLIPAtari 100kSynthetic DataAtari 200MCALMYann LeCunプログラミングサム・アルトマン鈴木雅大ソースコード生成コンセプトアートGMAIシチズンデベロッパーSonanticColie WertzGitHubCohereリドリー・スコットウィザードリィMCN-AI連携モデルマジック:ザ・ギャザリング絵コンテUrzas.aiストーリーボード介護大阪大学西川善司並木幸介KikiBlenderサムライスピリッツ森寅嘉Zoetic AIゼビウスSIGGRAPH 2021ペットGPT-4ストリートファイター半導体Digital Dream LabsPaLM APITopaz Video Enhance AICozmoMakerSuiteDLSSタカラトミーSkeb山野辺一記NetEaseLOVOTDreambooth-Stable-Diffusion大里飛鳥DynamixyzMOFLINゲーム背景RomiGoogle EarthU-NetミクシィGEPPETTO AI13フェイズ構造ユニロボットStable Diffusion web UIADVユニボPoint-EXLandGatoアパレルAGIAI model手塚眞DEATH STRANDINGマルチモーダルAI ModelsEric Johnson汎用強化学習AIZMO.AIデザインMOBBY’SOculus Questコジマプロダクションロンドン芸術大学モビーディック生体情報デシマエンジンGoogle BrainダイビングインディーゲームSound Controlアウトドア写真高橋ミレイSYNTH SUPERAIスキャニング照明Maxim PeterKarl Sims自動採寸Joshua RomoffArtnome3DLOOKハイパースケープICONATESizer山崎陽斗深層強化学習ワコール立木創太松原仁スニーカー浜中雅俊UNSTREETミライ小町武田英明Newelseテスラ福井健策CheckGoodsGameGAN二次流通パックマンTesla BotNEDO中古市場Tesla AI DayWikipediaDupe Killerソサエティ5.0Sphere偽ブランドSIGGRAPH 2020バズグラフXaver 1000配信ニュースタンテキ養蜂東芝Beewiseソニー・ピクチャーズ アニメーションDIB-R倉田宜典フィンテック投資Fosters+Partners韻律射影MILIZEZaha Hadid Architects広告韻律転移三菱UFJ信託銀行

AIに不可欠な知識表現とは? IGDAボードゲームAIワークショップをレポート

2019.6.19ゲーム

AIに不可欠な知識表現とは? IGDAボードゲームAIワークショップをレポート

2019年5月22日から、IGDA日本主催のボードゲームAIワークショップが始まりました。毎回ひとつのボードゲームを取り上げ、AIプログラムに落とし込むことでゲームAIのテクニックを学ぶ全6回のシリーズです。モリカトロンも全面協力しているこのワークショップ、第1回目のテーマは「知識表現」。使用するボードゲームは『ガイスター』です。

ボードゲームAIワークショップ

考えるおもしろさ、動かすおもしろさを体験する

ゲームAIに限らず、「AIを作るプロセス」を知る機会はあまり多くありませんし、身近なシステムとして、その仕組みまで具体的に思い浮かぶ人は少ないでしょう。そのため、AIをテーマにしたセミナーなどを受講しても、「なんとなく分かったかも…?」といったふわっとした着地になりがちです。そこから先、AIを作ろうと踏み出すには何かとっかかりが必要です。モデレーターの三宅陽一郎さんがこだわったのは、そのとっかかりを作ることでした。

このワークショップでは、

  1. 人工知能を作る臨場感を感じる
  2. ゲームAIを作って動かす楽しさ(手ごたえ)を持ち帰る

をゴールに、実際に参加者が手を動かしてゲームプレイヤーとなるAIを作り、作ったAI同士を対戦させてみることに主眼が置かれています。とはいえ、すぐにRPGのメタAIやキャラクターAIを作ってみましょうというのはさすがに難しすぎます。その点、ボードゲームの情報は扱いやすく、題材としても身近です。何しろ、多くのボードゲームは誰でも楽しめますから。

今回はその1回目としてボードゲームのガイスターを使って、AIの中でも基本的かつ重要な「知識表現」を学びました。

ゲームAIを作るには何が必要なのか?

三宅陽一郎(IGDA日本 SIG-AIチェア)。「ゲームというのは人間を理解することでもあります。相手を理解して、人間のために手を打つということがゲームAIの一番の特徴」と語る

「ゲームAIを作る」といっても何をどうするのか? ということで、まずは三宅さんからAIの解説です。三宅さんによれば「人工知能は、ごくシンプルな構造」とのこと。

エージェントアーキテクチャの全体像

まず「世界」からセンサーを通して情報を得て認識を形成します。そこから意思決定を行い、最後に身体を動かす「運動」を構成します。基本は、認識、意思決定、運動構成、この3つです。「ボードゲームの盤上にある『世界』は、ノイズだらけで混沌としている現実世界と比べたら極めてシンプルでエレガントです。その世界を認識して意思決定させるのが趣旨です」と三宅さんは語ります。今回は人工知能にガイスターの戦略を考えさせ、その意思決定に従って人間がボード上のコマを手で動かすという形をとります。

GUIの部分を作り込むのは大変なのでコマを動かすのは人間

今回のテーマ「知識表現(Knowledge Representation)」は、簡単に言うと「ものごとの見方」を表したものです。人間はものごとの見方を自分で学習しますが、残念ながら、人工知能はものごとの見方を自分で獲得することができません。どうやって見るかは人間が誘導してあげる必要があります。つまり、ボードゲームの「盤の上の状況」を何らかの表現で表し、知識表現としてあげた上で、それをもとにAIが思考して結論を出します。

「いくらすごい思考関数を作っても、きちんと知識表現が作られていなければ、良いAIを作ることはできません」と三宅陽一郎さんは言います。たとえばトランプゲームの「七並べ」で、場のカードの情報を取らずに思考関数を作って次の手を考えるのは大変ですが、場のカードを解析し、色々な情報を抜き出して整理することで効率よく結論を導くことができます。ゲームの状態から、いかに抽象的な情報を抜き出すかということが人工知能の性能そのものと言えます。

ガイスターのプレイを知識表現に

三宅さんの解説が終わった後、まずは参加者同士がガイスターをプレイしながら、「こうやって表現すればいいんじゃないか」「自分は今この盤上をどうやって見ているか」という知識表現の種を抽出していく所からワークショップを開始しました。

ガイスターは二人で対戦するゲームで、6×6の盤上でプレイします。お化けを模した2種類のコマ8つ(青:良いお化け4つ/赤:悪いお化け4つ)を使って、1ターンにコマを1つ動かして戦います。移動は上下左右、斜めはNGです。隣接する相手のコマを取ることができますが、取ったコマの種類で状況が変わります。「勝ち」の条件は次の3つ。

  1. 自コマの悪いお化け(赤)を相手に4つ全部取らせる
  2. 相手のコマのうち良いお化け(青)を4つ全部取る
  3. 自コマの良いお化け(青)を相手の出口から出す

コマが青であるか赤であるかは相手に隠されるので、取ったコマ/取られたコマ、盤上のコマの動きから相手方のコマがどちらであるかを推測するしかありません。いわゆる「不完全情報ゲーム」です。

集まった約20名は4〜5人ずつテーブルに分かれ、ガイスターをプレイ
およそ30分のゲームプレイ後、プログラムに加える知識表現を意見を交換しながら考えていく
各テーブルごとにどういうディスカッションがされたかなどを発表

次のステップで、事前に用意されたサンプルプログラムを使って知識表現を組み込むなど、各テーブルごとにカスタマイズしていきました。サンプルプログラムは三宅さん作のC++、モリカトロンの松原さん作のPythonの2種類で、どちらを使ってもOKです。

例えば「相手の赤コマを3つ取ってしまった後は、コマは取らないようにする」には、相手の赤コマを3つ取ったという状況を知る必要があります。「敵の陣地を、青コマを取られないようにしながら出口に向かって進む」には、敵コマと自コマの距離で脅威を数値化すると意思決定に役立ちそうです。このように、自分たちで実際に対戦することで、コマを動かすときの思考や戦術をAIに移すには何が必要かを理解していきます。

黙々とプログラミングに集中

30分〜40分の実装時間の後は、いよいよ、このワークショップのメインイベント。自分たちがカスタマイズしたプログラムを使っての対戦です。「なぜそこに進むのか」と思わざるを得ないシーンもあったりしましたが、自分の意図が反映されたプログラムをプレイさせてみることで、想像以上に盛り上がりました。

成果物で実際にガイスターをプレイ

さまざまなボードゲームの戦略をAIに学習させる

実は、モリカトロンでもボードゲーム×AIの研究を進めています。森川幸人さんの解説によれば、これはAIにボードゲームの戦略を学習させようというもの。特に今回のワークショップに合わせてわけではなく、まったくの偶然ですが、最初に作ったボードゲームAIはガイスターでした。それを選んだ理由は、囲碁や将棋といった完全情報ゲームはもうすでに決着がついている一方で、不完全情報ゲームのAIはまだまだ開発の余地がある分野だからです。ルールがシンプルなガイスターは、最初の研究対象として開発がしやすかったとのことです。

森川幸人さん(モリカトロンAIラボ 所長)

「ルールを人間が書くと、書いている人の能力が上限になってしまいますが、AIが自分で学習してくれたら人間が思いつかないような戦略を思いついてくれるかもしれない。それに適したAIのモデルがAlphaZeroでした」と森川さんは語ります。AlphaZeroはAlphaGOの後継モデルで、チェスやオセロのような完全情報ゲームであれば、囲碁に限らず学習することができます。モリカトロンでは、それをベースに開発してガイスターのような不完全情報ゲームもプレイできるようにしようと研究を進めています。

AlphaZero方式はボードゲーム系AIプレイヤーの第一の選択肢
AIに向いていそうなボードゲーム
今後さまざまなボードゲームのAIの試作を作っていくとのこと

プレイが盛り上がり過ぎて時間が足りないシーンもありましたが、ボードゲームAIワークショップ第1回は盛況のうちに終了しました。ワークショップの参加者は、学生やエンジニア(ゲーム系/非ゲーム系)、ボードゲーム愛好家など実にさまざまな層に及びました。それぞれ、達成感やAI開発への興味を持ち帰っていったようです。実際に自分がコードを書く立場ではなくとも、AI開発のプロセスを理解しておくことはAIのプロジェクトに携わることになったとき非常に大きなアドバンテージになります。IGDA日本では、以降もボードゲームに特化して1つずつゲームAIの技術を紹介していく予定です。

Writer:大内孝子

RELATED ARTICLE関連記事

20年前に遺伝的アルゴリズムを初めて組み込んだ農業ゲーム『アストロノーカ』が蒔いた種

2019.4.17ゲーム

20年前に遺伝的アルゴリズムを初めて組み込んだ農業ゲーム『アストロノーカ』が蒔い...

ディープフェイクの発展と検出のいたちごっこ:月刊エンタメAIニュース vol.29

2022.5.20ゲーム

ディープフェイクの発展と検出のいたちごっこ:月刊エンタメAIニュース vol.2...

ゲーム業界はいかにして5Gという衝撃に対峙すべきか?:和田洋一氏インタビュー

2019.7.26ゲーム

ゲーム業界はいかにして5Gという衝撃に対峙すべきか?:和田洋一氏インタビュー

RANKING注目の記事はこちら