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【GDCSummer】認知科学からみるゲームデザインにおける感情操作の歴史

2020.9.14ゲーム

【GDCSummer】認知科学からみるゲームデザインにおける感情操作の歴史

プレイヤーの感情をトラッキングしてゲームの展開や難易度を自動調整するメタAIや、検知した感情をアニメーションへ反映させるプロシージャル技術など、近年のゲーム開発において「感情」というキーワードがますます重要性を増してきています。

8月4日から8月6日までオンライン開催されたGDC Summerでは、ゲームUXコンサルタントのセリア・ホデント氏による「Emotion in Game Design(ゲームデザインにおける感情)」というセッションを取材しました。

ゲームUXとは、ユーザーによるゲーム体験を意味する「Game User Experience」の略称です。なお、一般的に「Emotion」という言葉は、脳科学や心理学における「情動」を指しても使われるので、この記事中では内容にあわせて一部「情動」と訳しています。

ゲームUXの概念は、ユーザビリティとエンゲージアビリティという2種類のフレームワークから構成されています。さらにエンゲージアビリティは、プレイヤーの目的や報酬から生じる「モチベーション」、ゲームがプレイヤーにおよぼす「感情」、そして難易度調整やラーニングカーブをつかさどる「ゲームフロー」の3要素に分けられます。今回のセッションでは、その中からプレイヤーの「感情」にフォーカスしています。

感情の科学とゲームデザイン

人間をふくめた高等脊椎動物は、大脳辺縁系にある扁桃体をとおして、情動的な記憶を形成すると言われています。もっとも分かりやすく解釈するならば、身の危険を感じる対象や事象を回避し、喜びや快楽を得られる物事を欲するように行動するということです。これは行動主義心理学における古典的条件づけや、オペラント条件づけに密接に関わっています。

すなわち情動は行動を促し、認知に影響を与えます。もっとも基本的なゲームデザインの一例として、ホデント氏は『スーパーマリオ』シリーズに登場する敵キャラクター「ワンワン」を挙げています。大きな口に鋭利な歯がぎっしり生えたワンワンを目の当たりにしたプレイヤーのほとんどは、実際に対象へ接触する前に危険であると判断できるでしょう。

別の例として、ステルスアクションゲーム『メタルギアソリッド』シリーズ(1998年〜、コナミ)では、潜伏状態のプレイヤーが敵に発見された際、キャラクターの頭上に表示されるエクスクラメーションマークと共に、驚愕を彷彿させる甲高い警告音が再生されます。これを聞いたプレイヤーは、条件反射的に敵の視界外へもう一度隠れるか、もしくは戦闘の口火を切るかの判断を迫られます。ゲームの物語や目的から、それが危険な状態だと条件づけられているからです。

人間がもっとも喜びを感じるもののひとつとして、ホデント氏は音楽の重要性にも触れています。音楽は食事や性交と同様に好子として脳の活動に作用し、感情を増幅させる働きがあると言われています。それゆえに無音のゲーム作品は稀有な存在で、多くのゲームクリエイターがプレイヤーの状況やストーリーの展開にあわせて異なるBGMを用意するのです。

一方で、認知もまた感情に影響をおよぼします。たとえば、同じシャンパンでも見た目が豪華なガラスボトルに入っている状態と、質素なデザインのプラスチックボトルに入っている状態では、多くの人が前者をより美味であると感じてしまいがちだといいます。この心理は専門用語で「Appraisal」(評価)と呼ばれています。オンライン対戦ゲーム『オーバーウォッチ』(2015年、ブリザード・エンターテイメント)を例に挙げると、試合に勝利した際の戦績画面に並ぶ豪華なバッジの数々と自己記録が、プレイヤーの達成感を増幅させていると解釈できます。

逆に試合に負けてしまった場合はどうでしょうか。同作では敗北した際の戦績画面にも、プレイヤーによる敵の撃破数や目標達成時間、与ダメージ量などが同様に表示されます。それぞれ記録に応じた色のバッジが付与され、過去の自己ベストを更新しているか否かが確認できるようにデザインされています。

こうした負の経験から得られる二次的な評価のことを「Re-appraisal」(再評価)といいます。このように、一方のプレイヤーが勝利という正の刺激を得て、もう一方のプレイヤーが敗北という負の刺激を得ることになる対戦ゲームでは、すべてのプレイヤーのモチベーションを維持し、スキル向上の手助けをするために、いかに「Re-appraisal」をゲームデザインに組み込むかが重要になってきます。

感情のプロセスとゲームデザイン

UXという用語は、1990年代に認知科学者のドナルド・ノーマンによって定義されました。2004年に出版されたノーマンの著書『Emotional Design』によると、何らかのオブジェクトやシステムに接した際、人間の感情は「Visceral」、「Behavioral」、「Reflective」という3段階のプロセスを経て生み出されます。

「Visceral」とは、直感的や本能的という言葉が示すとおり、外見や音など、感情を生み出す上でもっとも直感的なレベルです。次の「Behavioral」は、対象へ実際に接するレベル。ユーザビリティやアクセシビリティなど、システムの使い心地や利便性に関する感情がここで生まれます。最後の「Reflective」は、セルフイメージや満足感、思い出といった個人的な感情が反映されるレベルです。意味や物語といったナラティブな要素を感じ取ります。

ゲームデザインにおける感情は、大きく分けて「ゲームフィール」と「ノベルティ」という2つの要素によって生み出されます。ひとつめのゲームフィールは、カメラ・コントロール・キャラクター(3C)、プレイヤーがそこに存在するという感覚(Presence)、そして物理的な現実味(Physical Reality)によって構成されます。

3Cの中でも、カメラはゲームフィールに特に大きな影響をおよぼします。ストラテジーゲームに一般的な見下ろし視点のカメラでは、プレイヤーはすべてを支配する神のような気分を味わえます。また、ホラーゲームやシューターに一般的な一人称視点のカメラでは、制限された視界によってプレイヤーの緊張や恐怖といった感情が増幅されるでしょう。

コントロールは文字通り操作性です。ゲームジャンルによっては、ゲームフィールの大部分が操作性に依存するケースもあります。たとえば、スケートボードを題材にしたタイトル『Skate』(2007、エレクトロニック・アーツ)では、近年の一般的なゲームコントローラに搭載された左右のアナログスティックを同時に操作することで、スケートボードにおける両足の複雑な動作のコンビネーションを再現するというメカニクスが採用されています。

キャラクターの状態がそのままゲームフィールに影響することもあります。アクションアドベンチャーゲーム『Hellblade: Senua’s Sacrifice』(2017年、Ninja Theory)では、主人公が死亡するたびに腕の腐敗が進んでいき、頭部に到達すると主人公の魂が消滅したことになり、プレイヤーのセーブデータも消去されるように設定されています。ネタバレになるため、このメカニクスの真実には言及しませんが、プレイヤーに死の恐怖を感じさせるデザインの好例です。

ゲーム内の世界に自分が存在しているとプレイヤーに感じさせることも、ゲームフィールの構築において重要です。ステルスアクションゲーム『アサシン クリード』シリーズ(2008年、ユービーアイソフト)を例に挙げると、プレイヤーの暗殺行為が現場の群衆に目撃された際、彼らはプレイヤーに対して警戒や敵意といったリアクションを見せます。ゲーム世界の反応が、自己の認識を促しているのです。ほかにも、プレイヤーの選択によってストーリー展開が変化していくアドベンチャーゲームの多くで、「Presence」は重要な役割を果たしています。

最後の「Physical Reality」とは、必ずしも現実世界の物理法則を再現しているという意味ではありません。プレイヤーが風船を破壊した際に大きな音が生じたり、頑強な敵キャラクターが突進してきた際に画面が揺れたりと、それが現実的であるとプレイヤーに感じさせる演出全般を指しています。近年の3Dゲームでは至極自然な概念として浸透しています。

ゲームフィールと双璧をなしてプレイヤーの感情を生み出すのが、好奇心による発見や驚きをつかさどる「ノベルティ」という要素です。中でも未知との遭遇は生存の是非に関わることから、人間の脳はノベルティに対して敏感に反応するといわれています。このノベルティも、あらゆる場面に散りばめられています。

ゲームタイトルにおける一部の例として、ホデント氏は『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』(1991年、任天堂)におけるひび割れた壁や、『アンチャーテッド 砂漠に眠るアトランティス』(2011年、ソニー・コンピュータエンタテインメント)における沈みゆく船のステージを挙げています。前者では壁面のひびがプレイヤーの好奇心を刺激し、爆弾で破壊して先に進めるという発見を促しています。

後者の例では、船内が浸水するにつれて画面が傾き、キャラクターの進行方向に影響を与えます。同様の例として、重力の反転にともなってプレイヤー操作が上下逆になるゲームも数多くあります。なお、こうしたゲーム内のメカニクスのみならず、定期的に新しいコンテンツが追加されるシーズンパスやDLCといったビジネスモデルも、ノベルティの一部です。

感情の倫理とゲームデザイン

経済学者リチャード・セイラーと法学者キャス・サンスティーンの共著『Nudge: Improving Decisions about Health, Wealth, and Happiness』(邦訳:『実践 行動経済学』)に、「ニュートラルなデザインなど存在しない」という一節があります。これは行動経済学の概念で、人間によって生み出されたすべての創造物は、人間の期待や行動に影響をおよぼす性質を有しているという意味です。

人々の感情を巧みに操作する手法や現象は、日常生活のあらゆる場面で見られます。たとえば、トイレットペーパーのような物資が不足した際、必ず買いだめに走る人が現れます。行動経済学では、この状態を「Scarcity」(不足)と呼びます。また、期間限定や限定セールという言葉によって購買意欲を刺激されるのは、機会を見逃すことへの恐怖「Fear of missing out」からです。

ゲームの中には、ログインボーナスやキルストリークといった連続して得ることで報酬が増える仕組みもあります。この時プレイヤーを駆り立てるのが、「Loss aversion」(喪失の回避)です。このほか、Amazonで買い物をする際、定価から何パーセント安くなっているかを強調する割引表示を見たことがある人は多いでしょう。これにより人はついお買い得だと思いこんでしまいます。これを「Anchoring effect」(アンカリング効果)といいます。

このようなビジネスモデルにおける感情操作は、多くの業界で長きにわたって一般的に行われてきました。しかし、ビジネスファーストではなくヒューマンファーストなUXをデザインする上では、倫理的な観点から注意が必要であると、ホデント氏は警鐘を鳴らしています。特に若年層をターゲットにした商品やサービスは、倫理的な議論が求められます。

人間の大脳辺縁系は前頭前皮質よりも発達が早いといわれており、後者が未発達の子供は前述の感情操作に抗えない傾向にあるからです。ルートボックスやガチャといったギャンブル要素の強いビジネスモデルは、これまでにも複数の国や地域でたびたび問題視されてきました。収益を優先した過度な感情操作と、持続可能なビジネスモデルの構築。ニュートラルなデザインなど存在しないからこそ、その曖昧な境界線を見つめ直さなければいけません。

Writer: Ritsuko Kawai / 河合律子

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