デザイン支援に日本アニメ画生成も。画像生成アプリの展開まとめ

2022年4月にDALL-E2が発表されて以降、今年は画像生成AIが大きな盛り上がりを見せています。画像生成AIは当初「テキストを入力して画像を生成する」というコア機能のみが利用されていましたが、現在ではこうしたコア機能をユーザに合わせて調整したり、コア機能を組み込んだビジネス向けアプリが開発されたりしています。そこで本稿では、画像生成AIを実践的なコンテクストで活用することを志向した画像生成アプリを紹介します。

アーティストの保護を重視した「DreamUp」

英語圏のイラスト投稿コミュニティサービスを提供するDeviantArtは2022年11月11日、同サービスのユーザが利用可能な画像生成アプリ「DreamUp」を発表しました。同アプリは、多くの画像生成AIと同様にテキストボックスにテキストを入力すると、その内容に則した画像を生成します。

DreamUpの特徴は、その運営方法にあります。まずDeviantArtは、同社運営のイラスト投稿コミュニティに投稿された画像を同アプリの学習データとして使わず、さらにはほかの画像生成アプリの学習データとして提供することもしない、と宣言します。この宣言により同コミュニティに投稿されたイラストは、いかなる画像生成アプリの学習データにならないことが保証されます。

またDeviantArt利用アーティストは、運営元に申請すれば自身のユーザ名がDreamUpに入力できないようにすることが可能です。もっとも、こうした申請は運営元スタッフによる審査に合格したアーティストのみに適用されます。

DreamUpに入力可能なDeviantArt利用アーティストの名前をテキスト入力して画像を生成して場合、アーティスト名を明示したタグを付与することが義務付けられます。この規則により、アーティストの知らないあいだに同アプリで画風が模倣されることを抑止できます。

さらにDeviantArtで閲覧できるAIアートの表示量をユーザが調整できるようになりました。この機能により、AIアートを表示から除外できるようになりました。

以上のようなDreamUpの運営方法の実効性が果たしてどのくらいのものなのかは定かではありませんが、DeviantArtが人間のアーティストと画像生成アプリの共存を目指している点は大いに評価すべきでしょう。

日本アニメ画生成に特化した「Waifu Diffusion」

近年の日本アニメの世界的流行に影響されて、日本アニメの絵柄をした画像を生成するAIが登場しています。そうしたAIのひとつには、AIモデル共有サービスHugging Faceで公開されているWaifu Diffusionがあります。このAIの名称に含まれる「Waifu」は日本語における「俺の嫁」に相当する英語圏のネットスラングです。

Waifu Diffusionの概要ページによると、同モデルはその名称からわかるようにStable Diffusion v1.4をベースにして開発されました。学習データには英語圏における日本アニメ風イラスト共有サイトのDanbooruから収集された68万枚の画像が使われています。

Danbooruから学習データを収集したため、Waifu Diffusionによる画像生成には同サイトのイラストに付与されているタグを入力テキストとして流用できます。高品質な画像を生成したい場合には、ゲーム『原神』のようなグラフィックに定評のある日本的コンテンツにまつわるテキストを入力することが推奨されています。以下の画像はゲーム名『アークナイツ』を含んだテキストを入力して生成された画像です。

Waifu Diffusionのほかに日本アニメ風画像を生成するAIには、Novel AIがあります。同AIはもともと文章を生成するものだったのですが、2022年10月3日から画像生成機能が追加されました。同AIは世界中から幅広い支持を得ており、中国にもユーザコミュニティがあります。そうした中国語圏ユーザコミュニティの有志がまとめた同AIの入力テキスト集として、元素法典があります。この文書に記載されたテキストを入力すると高品質な画像が生成できる一方で、入力しないことを推奨するテキストも併記されています。同文書の一部は、有志によって日本語に翻訳されています。

デザイン支援にファッションブランド立ち上げも

前述のように今日の画像生成AI隆盛の嚆矢となったDALL-E2は2022年9月28日に利用登録に制限がなくなり、11月3日にはAPIとしても提供されるようになりました。こうしたなか同AIを開発するOpen AIは、同APIを活用したアプリを紹介するブログ記事を公開しました。

以上のブログ記事で紹介されているアプリのひとつには、OpenAIと技術提携を締結しているMicrosoftが開発したMicrosoft Designerがあります。同アプリは、ブログ記事のアイキャッチ画像等の制作を支援できるように設計されています。具体的には、制作したい画像に関するテキストを入力すると、入力内容に沿った画像が生成されます。Microsoftが2022年10月12日に公開したブログ記事によると、同アプリはプレビュー版として公開された後、準備が整い次第、正式版が無料アプリとして、あるいはMicrosoft 365 PersonalおよびFamilyのユーザにはよりプレミアムな機能を追加したうえで提供される予定です。

ファッションブランド運営アプリであるCALAには、ファッションアイテムをデザインするツールとしてDALL-E2 APIが利用されています。具体的には、デザインしたいファッションアイテムに関するテンプレートを選択後、アイテムの色や「フード付き」といったデザインのディテールをテキスト入力すると、その内容に沿ったデザイン案が出力されます。サプライチェーンやレビューを管理する機能も実装しており、同アプリを使えば新規のファッションブランドを迅速に立ち上げられるでしょう。

以上のように画像生成AIは、画像生成というコア機能を超えてビジネス目的で活用され始めています。ビジネス目的の画像生成には本稿で紹介した事例以外にも、ゲームやSNSにおけるアバターの生成、各種ショッピングサイトにおける検索アイテムの画像生成といったことが考えられます。画像生成のビジネスへの応用が広がれば、画像生成が検索と同じくらい当たり前なものになるのではないでしょうか。

Writer：吉本幸記、Image by Shutterstock