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蜂蜜を使って脳に匹敵するコンピュータは作れるか?:月刊エンタメAIニュース vol.28

2022.4.26先端技術

蜂蜜を使って脳に匹敵するコンピュータは作れるか?:月刊エンタメAIニュース vol.28

エンタメにおいても人工知能は日進月歩で発展しており、新しい研究成果や試みが次々と発表されています。こちらの連載では、過去1か月間、主に海外で公開された注目すべきゲームAIやエンタメAIに関連したニュース、論文などを紹介していきます。

蜂蜜で作ったコンピュータチップ

人間の脳は1000億以上のニューロンと1000兆以上のシナプスがつながった膨大な数の神経回路で構成されており、すべてのニューロンがプロセッサとストレージの両方として機能するといわれています。データのインプットからアウトプットまでのプロセスに要するエネルギー効率は極めて高く、計算に要する電力は電子回路のわずか1000分の1に過ぎません。

そのメカニズムを再現しようと、これまでインテルやIBMといった大手半導体メーカーが神経模倣工学にもとづいたニューロモーフィックチップの開発に着手してきましたが、人間の脳が誇るニューロンの規模には到底およびません。なにより、地球環境に無害かつ分解可能な有機素材で構成されているという点において、人間の脳に匹敵するコンピュータは今のところ存在しません。

ワシントン州立大学の研究チームは今年3月、有機素材として蜂蜜を用いて脳のシナプスの構造を模したメモリスタを発表しました。メモリスタとは、記憶した電荷に応じて抵抗を変化させる受動素子のことです。抵抗器、キャパシタ、インダクタに次ぐ第4の回路素子として、2008年ごろから実用に向けた開発が進められています。

今回、同研究チームが開発したメモリスタは人間の髪の毛の太さほどのサイズで、固形化させた蜂蜜を金属の電極で挟み込む形で構成されています。実験の結果、人間の脳が情報を学習する際の「Spike-Timing-Dependent Plasticity(STDP、ニューロン同士の接続の強度を調整する生理的なプロセスのこと)」を忠実に再現できたとのことです。今後、さらに1000分の1のナノスケールへの小型化を目指し、それらを数十億個組み合わせることで完全なニューロモーフィックチップの完成を計画しているということです。

文章から絵画を生み出すAIモデル

人工知能の研究を目的とした非営利団体OpenAIは4月6日、入力した文章の情報を正確に反映した画像を生成できるAIモデル「DALL-E 2」を発表しました。2021年1月に発表された「DALL-E」の後継モデルで、4倍の解像度でより正確で写実的な画像の生成が可能になりました。

DALL-E 2は、入力テキストと出力イメージの関係性を「Diffusion(拡散という意味)」と呼ばれるプロセスで学習しています。これは無作為なドットのパターンを、目標とする画像の特徴と認識できる状態に向けて徐々に変化させていくという仕組みのプロセスです。

“An astronaut riding a horse in a photorealistic style”(出典:OpenAI)
“A bowl of soup that is a portal to another dimension as digital art”(出典:OpenAI)

デモサイトでは、「An astronaut riding a horse in a photorealistic style(写実的に描いた乗馬する宇宙飛行士)」や、「A bowl of soup that is a portal to another dimension as digital art(別次元への入口となるスープボウルのデジタルアート)」といった説明文に基づいて生成された美術作品のような画像が多数閲覧できます。

オリジナル画像の生成だけでなく、既存のイメージを指定の内容で自然に編集することも可能です。たとえば、美術館内を写した画像の中で、男性と犬が描かれた絵画から犬だけを取り除いて別の絵画へ移植したり、本物の犬として美術館のソファに座らせたりと、画像内のオブジェクトの定義を保持したまま描写の位置とスタイルだけを変更できるというものです。また、元の画像を別のアーティストが描いたかのように生成し直すこともできます。

左の絵画に描かれていた犬を消して実物の犬として手前のソファに描写し直した画像(出典:OpenAI)

今回の発表にあわせて、OpenAIはDALL-E専用のInstagramアカウントも公開しており、AIモデルによって生成された美術作品を数多く展示しています。

ニュース記事を自動生成してくれるAI

東京大学松尾研究室発の株式会社ELYZAは3月28日、複数のキーワードを入力するだけでニュース記事やメール文、職務経歴書といった用途にあわせた文章を自動で生成してくれるAIモデル「ELYZA Pencil」のデモサイトを公開しました。誰でも無料で利用できます。

筆者が試しに「モリカトロン」「AI」「エンタメ」「ゲーム」「論文」という5つのキーワードを入力してみると、「AIでゲームはこう変わる!モリカトロンの論文がエンタメに与える影響とは」というタイトルで、次の画像のような架空のニュース記事が生成されました。

同社は昨年8月にも生成型文章要約モデル「ELYZA DIGEST」を一般公開しており、国内での成功例が極めて少なかった生成型の要約AIで、人間と同等の正確性を示して話題になりました。

【関連記事】AIがホワイトカラーから仕事を奪う時代:月刊エンタメAIニュース vol.21

アニメ声に変換できるAIボイスチェンジャー

音声合成エンジンを開発する株式会社エーアイと、株式会社ドワンゴは3月25日、両社が共同開発した音声変換ソフトウェアシリーズ「Seiren Voice 結月ゆかり」と「Seiren Voice 琴葉 茜・葵」を発表しました。2022年4月下旬の発売予定です。

「Seiren Voice」(セイレンボイス)は、ドワンゴの機械学習技術部門「Dwango Media Village」が独自開発した声変換技術です。リアルタイム性ではなく自然で高品質な声変換に主眼を置いて開発された技術で、音声を「音素」「音高」「発音タイミング」に分解することで、それらのデータを基に目標とする人物の声をディープラーニングで再構築しています。これにより、テキスト入力からの音声合成方式では難しかった間の取り方や抑揚など、制作者の意図に沿った細かい表現が可能になったということです。

「Seiren Voice琴葉 茜・葵」と「Seiren Voice 結月ゆかり」は、この「Seiren Voice」とエーアイのキャラクター「琴葉 茜・葵」、およびVOCALOMAKETSのキャラクター「結月ゆかり」をそれぞれ組み合わせたもので、ユーザーの声を音声読み上げソフト「A.I.VOICE 琴葉 茜・葵」 と「A.I.VOICE 結月ゆかり」の声に変換できるとのことです。

Writer:Ritsuko Kawai / 河合律子

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