モリカトロン株式会社運営「エンターテインメント×AI」の最新情報をお届けするサイトです。

TAG LIST
CGCGへの扉機械学習安藤幸央ディープラーニング月刊エンタメAIニュースGAN河合律子OpenAI音楽ニューラルネットワークNVIDIA三宅陽一郎強化学習吉本幸記QAGoogleFacebook人工知能学会GPT-3自然言語処理DeepMind大内孝子森川幸人敵対的生成ネットワークグーグルキャラクターAIスクウェア・エニックスモリカトロンAIラボインタビュールールベースマイクロソフトシナリオAIと倫理映画デバッグアートDALL-E2StyleGAN倫理ゲームプレイAINFT自動生成SIGGRAPHメタAIテキスト画像生成ロボット深層学習CEDEC2019プロシージャル遺伝的アルゴリズムテストプレイモリカトロンStable DiffusionDALL-Eビヘイビア・ツリーディープフェイクCEDEC2021CEDEC2020ゲームAIVFXデジタルツインメタバース不完全情報ゲームVRナビゲーションAINPC畳み込みニューラルネットワークCLIP画像生成GDC 2021JSAI2022GDC 2019マルチエージェントCEDEC2022AIアート画像生成AIボードゲームファッション懐ゲーから辿るゲームAI技術史toioCNNAdobeUnity著作権小説アニメーション鴫原盛之HTN階層型タスクネットワーク汎用人工知能JSAI2020TensorFlowインタビューBERTMicrosoftイベントレポート対話型エージェントロボティクスMetaMinecraft水野勇太Genvid TechnologiesガイスターStyleGAN2GTC2022教育ソニーJSAI2021スポーツ研究シムピープルMCS-AI動的連携モデルマンガマーケティングGDC SummerバーチャルヒューマンブロックチェーンMidjourneyアストロノーカキャリアNVIDIA OmniverseeスポーツAmazoneSportsDQNBLUE PROTOCOLシーマンアバターOmniverseUbisoftメタAlphaZeroTransformerGPT-2AIりんなカメラ環世界中島秀之哲学ベリサーブPlayable!理化学研究所SIGGRAPH ASIADARPAドローンシムシティImagenZorkバイアスモーションキャプチャーTEZUKA2020AI美空ひばり手塚治虫バンダイナムコ研究所スパーシャルAIElectronic Arts3DメタデータLEFT 4 DEAD通しプレイOpenAI Five本間翔太CMピクサープラチナエッグイーサリアム作曲ボエダ・ゴティエビッグデータ中嶋謙互Amadeus Codeデータ分析Microsoft AzureMILE模倣学習ナラティブスタンフォード大学アーケードゲームOmniverse ReplicatorWCCFレコメンドシステムNVIDIA DRIVE SimWORLD CLUB Champion FootballNVIDIA Isaac Simセガ柏田知大軍事サイバーエージェント田邊雅彦トレーディングカードトレカ音声認識メディアアートPyTorch眞鍋和子バンダイナムコスタジオaibo合成音声齊藤陽介マインクラフトお知らせMagic Leap Oneチャットボットサルでもわかる人工知能VAE3DCGリップシンキングUbisoft La Forge自動運転車ワークショップ知識表現ウォッチドッグス レギオンIGDA秋期GTC2022どうぶつしょうぎEpic Gamesジェイ・コウガミ音楽ストリーミングMITAIロボ「迷キュー」に挑戦野々下裕子徳井直生マシンラーニング5GMuZeroRival Peakクラウド対話エンジン斎藤由多加リトル・コンピュータ・ピープルCodexコンピューティショナル・フォトグラフィーゴブレット・ゴブラーズ絵画rinnaイラストシミュレーションデジタルヒューマン完全情報ゲーム坂本洋典釜屋憲彦ウェイポイントパス検索対談藤澤仁生物学GTC 2022ChatGPT画像認識GPT-3.5SiemensStyleCLIPDeNA長谷洋平masumi toyota宮路洋一OpenSeaGDC 2022TextWorldEarth-2MagentaSFELYZA Pencil松尾豊GTC2021CycleGANデータマイニング東京大学NetHackはこだて未来大学キャラクターモーションフェイクニュースエージェントRPGSIGGRAPH 2022レベルデザインAIボイスアクターNVIDIA CanvasGPUALife人工生命オルタナティヴ・マシンサウンドスケープLaMDAAI DungeonASBS栗原聡ぱいどんテキスト生成不気味の谷ナビゲーションメッシュ松井俊浩ELYZAフルコトELYZA DIGEST音声合成西成活裕Apex LegendsELIZA群衆マネジメントNinjaコンピュータRPGライブビジネスアップルタウン物語新型コロナKELDIC周済涛メロディ言語清田陽司ゲームTENTUPLAYサイバネティックスMARVEL Future FightAstro人工知能史タイムラプスEgo4DAI哲学マップバスキア星新一日経イノベーション・ラボStyleGAN-XL敵対的強化学習StyleGAN3階層型強化学習GOSU Data LabGANimatorWANNGOSU Voice AssistantVoLux-GAN竹内将SenpAI.GGProjected GANMobalyticsSelf-Distilled StyleGAN馬淵浩希Cygamesニューラルレンダリング岡島学AWS SagemakerPLATO映像セリア・ホデント形態素解析frame.ioUXAWS LambdaFoodly誤字検出森山和道認知科学中川友紀子ゲームデザインSentencePieceアールティLUMINOUS ENGINELuminous ProductionsBlenderBot 3パターン・ランゲージ竹村也哉Meta AIちょまどマーク・ザッカーバーグGOAPWACULAdobe MAX 2021自動翻訳AIライティングOmniverse AvatarAIのべりすとFPSNVIDIA RivaQuillBotマルコフ決定過程NVIDIA MegatronCopysmithNVIDIA MerlinJasperNVIDIA Metropolisパラメータ設計テニスバランス調整協調フィルタリング人狼知能テキサス大学AlphaDogfight TrialsAI Messenger VoicebotエージェントシミュレーションOpenAI CodexStarCraft IIHyperStyleMax CooperFuture of Life InstituteRendering with StyleIntelDisney類家利直LAIKADisneyリサーチヴィトゲンシュタインRotomationGauGAN論理哲学論考GauGAN2京都芸術大学ドラゴンクエストライバルズ画像言語表現モデル不確定ゲームSIGGRAPH ASIA 2021PromptBaseDota 2モンテカルロ木探索ディズニーリサーチMitsuba2バンダイナムコネクサスソーシャルゲームEmbeddingワイツマン科学研究所ユーザーレビューGTC2020CG衣装mimicNVIDIA MAXINEVRファッションBaidu淡路滋ビデオ会議ArtflowERNIE-ViLGグリムノーツEponym古文書ゴティエ・ボエダ音声クローニング凸版印刷Gautier Boeda階層的クラスタリングGopherAI-OCR画像判定JuliusSIE鑑定ラベル付けTPRGOxia Palus大澤博隆バーチャル・ヒューマン・エージェントtoio SDK for UnityArt RecognitionSFプロトタイピングクーガー田中章愛実況パワフルサッカー石井敦銭起揚NHC 2021桃太郎電鉄茂谷保伯池田利夫桃鉄GDMC新刊案内パワサカマーベル・シネマティック・ユニバースコナミデジタルエンタテインメント成沢理恵MITメディアラボMCU岩倉宏介アベンジャーズPPOマジック・リープDigital DomainMachine Learning Project CanvasMagendaMasquerade2.0国立情報学研究所ノンファンジブルトークンDDSPフェイシャルキャプチャー石川冬樹サッカーモリカトロン開発者インタビュースパコン里井大輝Kaggle宮本茂則スーパーコンピュータバスケットボール山田暉松岡 聡Assassin’s Creed OriginsAI会話ジェネレーターTSUBAME 1.0Sea of ThievesTSUBAME 2.0GEMS COMPANYmonoAI technologyLSTMABCIモリカトロンAIソリューション富岳初音ミクOculusコード生成AISociety 5.0転移学習テストAlphaCode夏の電脳甲子園Baldur's Gate 3Codeforces座談会Candy Crush Saga自己増強型AItext-to-imageSIGGRAPH ASIA 2020COLMAPtext-to-3DADOPNVIDIA GET3DデバッギングBigGANGANverse3DDreamFusionMaterialGANRNNグランツーリスモSPORTAI絵師ReBeLグランツーリスモ・ソフィーUGCGTソフィーPGCVolvoFIAグランツーリスモチャンピオンシップStability AINovelAIRival PrakDGX A100NovelAI DiffusionVTuberユービーアイソフトWebcam VTuberモーションデータ星新一賞北尾まどかHALO市場分析ポーズ推定将棋メタルギアソリッドVフォートナイトメッシュ生成FSMメルセデス・ベンツRobloxMagic Leapナップサック問題Live NationEpyllion汎用言語モデルWeb3.0マシュー・ボールAIOpsムーアの法則SpotifyスマートコントラクトReplica StudioAWSamuseChitrakarQosmoAdobe MAX 2022巡回セールスマン問題Adobe MAXジョルダン曲線メディアAdobe Research政治Galacticaクラウドゲーミングがんばれ森川君2号pixiv和田洋一リアリティ番組映像解析Stadiaジョンソン裕子セキュリティMILEsNightCafe東芝デジタルソリューションズインタラクティブ・ストリーミングLuis RuizSATLYS 映像解析AIインタラクティブ・メディアポケモン3DスキャンPFN 3D Scanシーマン人工知能研究所東京工業大学Ludo博報堂Preferred NetworksラップPFN 4D ScanSIGGRAPH 2019ArtEmisZ世代DreamUpAIラッパーシステムDeviantArtARWaifu DiffusionGROVERプラスリンクス ~キミと繋がる想い~元素法典FAIRSTCNovel AIチート検出Style Transfer ConversationOpen AIオンラインカジノRCPMicrosoft DesignerアップルRealFlowRinna Character PlatformiPhoneCALADeep FluidsSoul Machines柿沼太一MeInGameAmeliaELSIAIGraphブレイン・コンピュータ・インタフェースバーチャルキャラクター大規模言語モデルBCIGateboxアフォーダンスLearning from VideoANIMAKPaLM-SayCan予期知能逢妻ヒカリPaLMセコムGitHub Copilotユクスキュルバーチャル警備システムCode as Policiesカント損保ジャパンCaP上原利之ドラゴンクエストエージェントアーキテクチャアッパーグラウンドコリジョンチェックPAIROCTOPATH TRAVELER西木康智OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者山口情報芸術センター[YCAM]アルスエレクトロニカ2019品質保証YCAMStyleRigAutodeskアンラーニング・ランゲージ逆転オセロニアBentley Systemsカイル・マクドナルドワールドシミュレーターローレン・リー・マッカーシー奥村エルネスト純いただきストリートH100鎖国[Walled Garden]​​プロジェクト齋藤精一大森田不可止COBOLSIGGRAPH ASIA 2022高橋智隆DGX H100VToonifyロボユニザナックDGX SuperPODControlVAE泉幸典仁井谷正充クラウドコンピューティング変分オートエンコーダーロボコレ2019Instant NeRFフォトグラメトリartonomous回帰型ニューラルネットワークbitGANsDeepJoinぎゅわんぶらあ自己中心派Azure Machine LearningAzure OpenAI Service意思決定モデル脱出ゲームDeepLHybrid Reward Architectureコミュニティ管理DeepL WriteウロチョロスSuper PhoenixSNSProject MalmoオンラインゲームGen-1気候変動ジェネレーティブAIProject PaidiaシンギュラリティProject Lookoutマックス・プランク気象研究所レイ・カーツワイルWatch Forビョルン・スティーブンスヴァーナー・ヴィンジBing気象モデルRunway ResearchLEFT ALIVE気象シミュレーションMake-A-Video長谷川誠ジミ・ヘンドリックス環境問題PhenakiBaby Xカート・コバーンエコロジーDreamixロバート・ダウニー・Jr.エイミー・ワインハウスSDGsText-to-Imageモデル音楽生成AIYouTubeダフト・パンクメモリスタ音声生成AIGlenn MarshallScenarioThe Age of A.I.Story2Hallucination音声変換LatitudeレコメンデーションJukeboxAIピカソVeap JapanAI素材.comEAPneoAIテンセントSIFT福井千春DreamIconDCGAN医療mignMOBADANNCEメンタルケアstudiffuse人事ハーバード大学Edgar HandyAndreessen Horowitz研修デューク大学NetflixAIQVE ONEQA Tech Nightmynet.aiローグライクゲーム松木晋祐東京理科大学下田純也人工音声NeurIPS 2021産業技術総合研究所桑野範久リザバーコンピューティングBardプレイ動画ヒップホップ対話型AIモデルソニーマーケティングControlNetサイレント映画もじぱnoteNBA環境音暗号通貨note AIアシスタント現代アートFUZZLEKetchupAlterationAI News粒子群最適化法Art Selfie進化差分法オープンワールドArt Transfer群知能下川大樹AIFAPet Portraitsウィル・ライト高津芳希P2EBlob Opera大石真史クリムトBEiTStyleGAN-NADA世界モデルDETRゲームエンジンDreamerV3SporeUnreal Engineクリティックネットワークデノイズ南カリフォルニア大学Unity for Industryアクターネットワーク画像処理DMLabSentropyGLIDEControl SuiteCPUDiscordAvatarCLIPAtari 100kSynthetic DataAtari 200MCALMYann LeCunプログラミングサム・アルトマン鈴木雅大ソースコード生成コンセプトアートGMAIシチズンデベロッパーSonanticColie WertzTRPGGitHubCohereリドリー・スコットウィザードリィMCN-AI連携モデルマジック:ザ・ギャザリング絵コンテUrzas.aiストーリーボード介護大阪大学西川善司並木幸介KikiBlenderサムライスピリッツ森寅嘉Zoetic AIプロンプトゼビウスSIGGRAPH 2021ペットストリートファイター半導体Digital Dream LabsTopaz Video Enhance AICozmoDLSSタカラトミー山野辺一記NetEaseLOVOT大里飛鳥DynamixyzMOFLINRomiU-Netミクシィ13フェイズ構造アドベンチャーゲームユニロボットADVユニボXLandGatoAGI手塚眞DEATH STRANDINGマルチモーダルEric Johnson汎用強化学習AIデザインOculus Questコジマプロダクションロンドン芸術大学生体情報デシマエンジンGoogle BrainインディーゲームSound Control写真高橋ミレイSYNTH SUPER照明Maxim PeterKarl SimsJoshua RomoffArtnomeハイパースケープICONATE山崎陽斗深層強化学習立木創太松原仁浜中雅俊ミライ小町武田英明テスラ福井健策GameGANパックマンTesla BotNEDOTesla AI DayWikipediaソサエティ5.0SphereSIGGRAPH 2020バズグラフXaver 1000ニュースタンテキ養蜂東芝BeewiseDIB-R倉田宜典フィンテック投資韻律射影MILIZE広告韻律転移三菱UFJ信託銀行

AIと遊んで楽しいと感じられるゲームを考える:上原利之氏×森川幸人氏 対談

2022.3.31ゲーム

AIと遊んで楽しいと感じられるゲームを考える:上原利之氏×森川幸人氏 対談

近年、ゲーム開発の現場にもAIが積極的に取り入れられるようになり、ゲーム開発者に求められる資質や能力も多様化してきました。対戦相手としてのAIエージェントから、ゲームバランスを自動で調整してくれるメタAI、ゲーム開発者を単純作業から解放してくれるデバッグAIまで、AIの応用は多岐にわたります。今後、AI技術がさらに発展していくなかで、AIならではの「面白さ」をいかに定義し、ゲームという遊びに組み込んでいけるのでしょうか。

今回は、さまざまなゲームの企画をゼロから創造するプロフェッショナル集団、株式会社アッパーグラウンドの上原利之氏をゲストに迎え、対戦ゲームで手加減できるAIの可能性や、AIを使ったゲームの未来について話します。聞き手はモリカトロンAIラボ所長の森川幸人です。

AIに手加減はできるのか

森川幸人(以下、森川):読者の中にはゲーム制作に詳しくない方もいると思うので、ゲームができるまでの流れについて説明してもらえますか。

上原利之(以下、上原):ゲーム開発には4つのフェーズがあります。まず、「何をやるのか」「何が面白いのか」を立案します。つぎに、それを「どう実現するか」を決める仕様作成。そして、この設計図をもとにプログラマーやグラフィッカーが実際に形にします。しかし、その途中で設計図の内容がよく分からなかったり、設計図どおりに作ってみたものの面白くなかったりすることは起こりえます。それを調整しながらゲームは完成していきます。

近年ではゲームをひとつのサービスとして捉えて、ユーザーに長く遊んでもらえるように管理する運営というフェイズが加わりました。顧客は何を望んでいるのか、開発とは異なる角度で考えるフェーズです。

森川:アッパーグラウンドさんは主に「企画」と「設計」の部分を担当されている印象が強いのですが、「開発」や「運営」もやられているのでしょうか。

上原:以前は「企画」と「設計」だけに専念していたのですが、最近は開発を全部担当させていただいています。企画立案や仕様作成だけだと、どうしても実装物に対する責任が曖昧になってしまうことに気付いたからです。ゲームが完成するとそのまま運営が始まっちゃうので、必然的に「運営」にも携わるようになったという流れです。最近では運営に関するコンサルティングを依頼されることも増えました。

森川:スタッフの人数構成としては、どの部分がもっとも多いですか。

上原:現在は開発スタッフがほとんどです。企画立案に関しては全員がアイデアは出すんですけど、実際にプロジェクトの組成まで持っていける人は数人だと思います。企画はずっと人手不足の状態ですね。起業して2年目からは新卒採用もはじめましたが、人材育成は試行錯誤の連続です。

森川:うちもAIエンジニアとは別にAIプランナーという枠で毎年募集してはいるものの、過去6年間で応募があったのはたった2件でした。

上原:AIプランナーって具体的にどういうことをされるんですか。

森川:AIを使って過去に例をみない面白いゲームを企画できる人。AIのアルゴリズムに関する知識とゲーム開発のノウハウの両方が求められるので、悲惨な応募状況です。

上原:AIを使った面白さを定義するのは難しそうですね。正確さや強さだけを追求することとは違いますよね。

森川:完全情報ゲームで人間がAIに勝てないことは立証されてしまったので、プレイヤーを楽しませるにはAI側の手加減が欠かせません。アプリ版『ゴブレットゴブラーズ』(iOSGoogle Play)ではどんな仕組みでAIに手加減させているんですか。

上原:『ゴブレットゴブラーズ』は弊社でアプリ部分を開発させていただいたタイトルになります。一定の確率で分岐のチェックを無作為にスキップする仕組みを導入しました。

森川:思考をジャミングする感じですね。

上原:そのとおりです。AIを弱く作るというよりは、意図的にミスを誘発させるという感じです。手加減という行為はゲームを極めていることが前提なので、まず強いAIを作るのに時間を要しました。その上で、あからさまに不自然な負け方にならないように気を使いました。

森川:わざと手を抜いていると感じさせたら「接待」にはなりませんからね。

上原:それでも『ゴブレットゴブラーズ』はルールがシンプルなので、序盤では手加減なのかミスなのか判断しづらい部分はあるかもしれません。

森川:うちでも以前、AIを活用したボードゲームAIのプロジェクトの中で、『ゴブレットゴブラーズ』をAlpha Zeroで学習させたことがあるんです。AIはあっという間に人間より強くなってしまうので、どうやって手加減させるかが問題でした。最終的に保存してあった学習過程から、プレイヤーレベルに応じたAIの学習状態を選択する形で実装しました。たとえば、レベル1はルールを知っている人間なら勝てる状態、レベル8はよほどゲームに精通していないと勝てない状態という具合です。

関連記事:【CEDEC2019】汎用型ボードゲームAIの開発に向けたモリカトロンの挑戦

——『ゴブレットゴブラーズ』ではゲームの特性上、自分の駒を置いた場所を覚えておく必要があります。人間のように自分の行動を忘却するAIアルゴリズムを作ることは可能なのでしょうか。

森川:ニューラルネットワークを使ったAIモデルには人間の脳細胞に該当するノードがあるので、それらを意図的に欠落させることで回路を切るという手法があります。いわばAIの認知症です。

——それを上手く活用できたら、いい感じにミスしてくれるAIプレイヤーや、ボケて楽しませてくれるコミュニケーションAIが作れそうですね。

上原:人間にとって忘却とは必ずしも0か1ではなくて、固有名詞を思い出せずに「アレ」と表現するような曖昧な状態もありますよね。それをAIに模倣できるかどうか。人間だとポカに見えるけどAIだと変に見えるかもしれない。そういうところから面白さは生まれるのかもしれませんね。

AIにゲームは作れるのか

森川:AIによって生み出されたパズルゲームという実例はありますが、問題は人間にとってちっとも面白くないことなんですよね。AIは人間の生物的な限界を考慮していないので、ユーザーが心地よくプレイできる保証もありません。そもそも面白さの定義は人それぞれなので、何が面白いのかはAIに教えようがないんですよね。

上原:過去に『Lord of Vermilion』というアーケードゲームを開発していた時、同時に動かせるカードは何枚が最適かという議論がありました。3枚だと操作は容易だけど面白さに欠けるし、5枚だと忙しすぎて何をやっているのか分からなくなるということで、最終的に4枚という設定に落ち着きました。

森川:マジカルナンバーセブンという心理仮説があるように、そういう生理的に裏付けられた設計理念はあると思います。おそらくあえて言語化していないだけで、本当に優れたプランナーはそういうことを考慮しながらゲームを作っているんでしょうね。

上原:『LEFT 4 DEAD』に使われているAIディレクターのような技術も、ある意味ではAIがルールを作っていると解釈できそうですね。

森川:メタAIという概念ですね。神視線でゲームを俯瞰してプレイヤーの成績や進捗に応じて難易度を調整するという技術です。従来のゲーム開発ではプレイヤーのスキルやキャラクターの育成状況を予想しながらゲームバランスを調整していましたが、近年はプレイヤーに見合ったバランスに自動で調整してくれるAI技術が盛んに研究されています。

上原:技術の組み合わせ次第でAIを使ったもっと多様な遊びは生み出せるとは思うんですけど、どうしてもいま取り組んでいることに上手くリンクできないんですよ。

森川:たぶん世の中にまだAIを使ったゲームの成功体験が少な過ぎるからだと思います。映画『トイ・ストーリー』をきっかけにフルCGのアニメーションが受け入れられていったように、ゲームにおけるAI技術の活用にももっと大きなきっかけが必要なんでしょうね。

上原:いま森川さんのところではAI技術を主軸にしたゲームはいくつ作られているんですか。

森川:ゲームはひとつです。クライアントにとってAIの用途がもっとも分かりやすいデバッグやQAに関する案件が多いです。

上原:ゲーム制作において死ぬほど面倒くさいコリジョンチェックのような作業を自動でやってくれるって、みんながずっと夢見ていたけどできなかったことですもんね。

森川:AIは24時間無休で働かせても文句を言わないので、人類を単純労働から解放してくれるんです。

上原:少し話は変わりますが、スマートフォンには自分が記憶している以上に自分自身の記憶が写真や連絡先という形で残っていますよね。自分のことをいつまでも詳細に覚えていてくれるAIがあったら、話し相手として面白いと思うんです。そこには美化も風化もない過去の自分の集合体という人物像がある。

森川:自分が忘れてしまった過去の自分って、自分にとって一番興味あることですよね。そのときの自分とバーチャル空間で対面できたら楽しそうですね。

上原:人間が死んだ後も残り続けたら、それは倫理的な問題にも踏み込む話になってきそうですが。

森川:もし死後もAIとして延々と喋り続ける人がいたら、自分の中で故人との区切りをつけるために行われる葬式という儀式の意味がなくなって、うまいお別れができなくなります。

上原:権力者の死を永遠に隠蔽できる未来も考えられますね。そうなると死生観や世界のありようも変わってくるんでしょうね。面白いけど怖いな。どうやったらエンタメにつなげられるんだろう。

森川:そういう無茶振りなゲーム企画もアッパーグラウンドさんなら実現してくれると期待しています。

上原利之(TOSHIYUKI UEHARA)プロフィール

株式会社アッパーグラウンド代表取締役社長。1997年より6年ほどゲーム企画として会社に属していたが、その後フリーランスの企画・ディレクターとして独立をする。その後11年ほどフリーランスとして活動後、スタッフ2名と共に起業。現在は35名ほどのゲームの企画・ディレクション会社を運営中。代表作は『いただきストリート』シリーズ(ディレクター)、『LORD OF VERMILIONⅠ』『LORD OF VERMILIONⅡ』(ディレクター)など。

Writer:Ritsuko Kawai / 河合律子

RELATED ARTICLE関連記事

AIにも泣けるストーリーは書ける?:藤澤仁氏×森川幸人氏対談(前編)

2019.10.08ゲーム

AIにも泣けるストーリーは書ける?:藤澤仁氏×森川幸人氏対談(前編)

AIとバーチャルアイドルが出会う時:齊藤陽介氏×森川幸人氏 対談

2019.5.27ゲーム

AIとバーチャルアイドルが出会う時:齊藤陽介氏×森川幸人氏 対談

【GDC 2021】マルチエージェント強化学習における協調行動の5つの特徴

2021.8.12ゲーム

【GDC 2021】マルチエージェント強化学習における協調行動の5つの特徴

RANKING注目の記事はこちら