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進化したチャットボットであるデジタルヒューマンの事例と未来

2022.3.25先端技術

進化したチャットボットであるデジタルヒューマンの事例と未来

人間と自然言語でやり取りするチャットボットは、数年前から各所で導入されるようになりました。インターフェースとしてはテキストによる相互作用が主流であるチャットボットが、最近になって「血肉を備えて」ヒューマンライクにやり取りできるように進化しようとしています。本稿では進化系チャットボットであるデジタルヒューマンの市場的可能性を確認したうえで、同市場に参画する国内外の企業を紹介します。

2030年には約5,300億ドル市場に成長

デジタルヒューマンとは、人間のようなビジュアルを備えた自然言語でユーザと会話するAIキャラクターのことを指します。デジタルヒューマンとそのいわば祖先にあたるチャットボットを比べると、デジタルヒューマンとのやり取りはより現実の人間とのそれに近くなります。

調査会社Emergen Researchは2022年1月24日、世界のデジタルヒューマン市場に関するレポートを発表しました。そのレポートによると、同市場の規模は2020年には100億3,000万ドルでしたが、2030年までに年平均成長率46.4%で成長して5,275億8,000万ドルになります。同市場の成長を推進する要因として指摘できるのは、教育業界におけるデジタルヒューマンの導入です。コロナ禍以降、急速に普及しつつあるリモート授業やバーチャル指導の現場にデジタルヒューマンが導入されると考えられるからです。人間のような表情を表出できるデジタルヒューマンは、生徒が共感を持てる存在になることが期待されています。

デジタルヒューマンを開発・提供する企業UneeQは、デジタルヒューマンのビジネス活用はメタバースにおいて最高の効果が得られる、という考察を2021年11月12日付の同社ブログ記事で展開しています。同ブログには、メタバースにおけるデジタルヒューマンの効果的なビジネス活用として以下のような3つのケースを挙げています。

  1. ブランドアンバサダー:現在活躍しているフィジカルなブランドアンバサダーの一部は、メタバースにおいてデジタルヒューマンに置き換わるだろう。
  2. 小売業のスタッフ:メタバースのなかでもVR化されたものにおいて、ユーザにショッピングを楽しんでもらうには、ユーザと会話できるデジタルヒューマンとしての小売スタッフが必要になるだろう。
  3. コンシェルジュ:メタバースの案内役は、チャットボットの進化系であるデジタルヒューマンこそが相応しい。

フォトリアルを重視する海外企業

デジタルヒューマンを開発する企業はすでに国内外に多数あります。海外では前述のUneeQが有名です。同社が提供するデジタルヒューマンは、カスタマーアシスタント、財務顧問といった用途ごとにカスタマイズされたものがあるほか、デジタルヒューマン制作ツール「UneeQ Creator」も提供しています。2021年には物理学者アルベルト・アインシュタインのノーベル物理学賞受賞100周年を記念して、デジタルヒューマンのアインシュタインを開発しました。

Soul Machinesが提供するデジタルヒューマンは、会話に合わせて表情がヒューマンライクに変化することを特徴としています。同社提供のデジタルヒューマン制作プラットフォーム「Human OSTM Platform」を使えば、髪、肌、瞳、そして顔の色や形をカスタマイズできます。こうしたデジタルヒューマンをタッチスクリーンに表示すれば、ユーザと触覚的な相互作用もできます。

Ameliaも以上の2社のようなデジタルヒューマンを提供しています。同社製品のなかでユニークなものは、デジタルヒューマンと企業向けIT運用システムを統合した「AIOps」です。同製品は企業向けサービスマネジメントSaaSであるServiceNowとの連携も可能であり、素早い導入を意識して開発されています。

海外企業のデジタルヒューマンに共通しているのは、そのビジュアルがフォトリアルに造形されているところです。

アニメの影響が大きい日本のバーチャルキャラクター

デジタルヒューマンを開発する日本企業も多数存在します。もっとも、日本においては「バーチャルキャラクター」と呼ばれることが多いです。例えば、セコム株式会社は2022年1月13日、AI駆動型の「バーチャル警備システム」の販売を開始しました。同システムは、周囲を写し込むディスプレイに警備員の姿をしたバーチャルキャラクターを表示するというものです。バーチャル警備員とは音声で会話でき、オプションで顔認証や体温測定に対応可能です。

ホログラフィックなキャラクター「逢妻ヒカリ」を表示する筒型デバイスを開発するGateboxは、同デバイスで表示するバーチャルキャラクターをカスタマイズするサービスを提供しています。このサービスの事例には、2021年11月から稼働した損保ジャパンのキャラクター「ジャパンダ」によるPR活動があります。羽田空港と中部国際空港で体験できる同キャラクターは、訪問者の共感を喚起しながら旅行保険の販売を促進します。

株式会社プラチナエッグは2021年12月27日、NFTで運営されるバーチャルキャラクターサービス「ANIMAK」を発表しました。同サービスは、NFTとして制作されたバーチャルキャラクターをユーザが育成するというもの。ユーザはバーチャルキャラクターを育成する方向性を決定する投票権を暗号通貨で購入し、その投票権を介してユーザコミュニティ全体でバーチャルキャラクターを育成していきます。バーチャルキャラクター間の連携も実装予定であり、育成型メタバースサービスとして成長することを目指しています。

日本企業が開発するバーチャルキャラクターは、海外企業のデジタルヒューマンと比べてそのビジュアルに日本アニメの影響を強く感じられます。こうした違いは技術水準に起因しているというよりは、日本における親しみやすい存在がアニメキャラクターであるという事情から生じていると考えられます。

デジタルヒューマンあるいはバーチャルキャラクターはビジネスとエンタメの両方に応用できるので、今後の普及が大きく期待できます。そして、これらはAIとグラフィック技術が融合した分野の製品でもあるので、現状よりさらに進化することでしょう。

Writer:吉本幸記、Image by Soul Machines

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