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歴史的絵画の鑑定や復元に活躍。美術界にも進出するアート実務系AI事例

2022.1.27アート

歴史的絵画の鑑定や復元に活躍。美術界にも進出するアート実務系AI事例

アート系AIという言葉で思い浮かべるのは、任意の画像をゴッホ風やピカソ風に変換する画像加工アプリのようなエンタメ系のものでしょう。こうしたなか、昨今では絵画の鑑定や復元といった用途で活用されるアート系AIも開発されています。本稿では、こうした実務的なアート系AIを3事例ほど紹介します。

「サムスンとデリラ」の偽物率は約92%

イギリス大手メディアのThe Guardian電子版は2021年9月、ロンドンにあるナショナル・ギャラリーが所蔵するバロック絵画の巨匠ルーベンスの作品「サムスンとデリラ」がAIによって偽物と鑑定されたことを報じました

1982年に当時としては高額の250万ポンド(現在の価値で660万ポンド)で購入された「サムスンとデリラ」を偽物と鑑定したAIは、同作品と真作と確定しているルーベンスの148枚の絵画を比較した結果、贋作率を91.78%と算出しました。もっとも、同作品はかつて存在していた真作のコピーではないか、という疑いがかけられていました。

以上の鑑定を行ったAIを開発しているのは、スイスに拠点を置くAIスタートアップのArt Recognitionです。同社はAIによる絵画鑑定を普及させることで、少数の専門家に頼らない「鑑定の民主化」を目指しています。そんな同社は、2019年にノルウェーのオスロ国立美術館からゴッホの自画像と思われる作品の鑑定を依頼されました。そこで同社開発のAIにゴッホの真作と贋作の両方の特徴を学習させたうえで依頼品を鑑定させたところ、真作という結果が得られました。依頼品は美術界からも真作と認定され、同社の鑑定後にオランダ・アムステルダムにあるゴッホ美術館で特別展示されました。

Art Recognitionの公式サイトには、絵画鑑定に関するFAQがまとめられています。そのFAQによると、学習データには人間の鑑定家も参照するカタログ・レゾネ(総作品目録)を使い、人間の専門家による監修も受けている、とのこと。また、学習データを用意できれば、どんな画家の作品であっても鑑定できる、と説明しています。

画家の意図しないスタイルを抽出

アメリカ・オハイオ州の地方ニュースを報道するcleveland.comは2021年12月、同州にあるCWRU(Case Western Reserve University、ケース・ウェスタン・リザーブ大学)の研究チームがAIを活用した新しい絵画鑑定技法を発表したと報じました。この新しい鑑定方法が画期的なのは、AIによって「意図しないスタイル情報」を抽出して絵画の作者を特定するところにあります。

意図しないスタイル情報は、作風との対比で理解できます。ある絵画がゴッホの作品だと鑑定されるのはその絵画にゴッホ特有のうねるような荒々しい作風が認められるからであり、ゴッホ自身も(おそらくは)作風に自覚的です。対して絵筆をキャンバスに置く角度や筆遣いは、ゴッホがあらかじめ設計した図面にしたがって描いたわけではなく、言わば無自覚的に描かれた結果として残された痕跡です。こうした無自覚的な画家特有の痕跡をAIによって抽出したものが意図しないスタイル情報なのです。

意図しないスタイル情報の抽出にあたっては、まず任意の絵画の表面を精密に3Dスキャンして表面のわずかな凹凸を数値情報として収集します。この絵画表面に関する数値情報をさらに0.5〜60 mmの正方形に分割したうえで、AIによって絵画表面の立体的な特徴を抽出しました。

以上のような鑑定技法を評価するために、クリーブランド美術大学所属の4人の画学生に同じ画材を使って3種類の絵画を描いてもらったうえで、それらの絵画から抜き出した小さい正方形を手がかりにして作者を特定する実験を行いました。その結果、96.1%の確率で正しく作者を特定できました。

CWRUの研究チームは、以上の鑑定技法をスペインの画家エル・グレコのキリストの磔刑を描いた絵画に応用する計画を進めています。複数のバージョンがある同作品は、エル・グレコ本人のほかに彼の息子や工房の弟子たちが制作に関与していると考えられています。新しい鑑定技法を使えば、1cm以下の精度で作者が特定できると期待されています。

参考論文:画家の筆跡の洞察:表面の地勢における機械学習

巨匠が塗りつぶしたものを復元

イギリス・ロンドンに拠点を置くAIスタートアップOxia Palusは、AIによってかつて塗りつぶされた絵画を復元することに取り組んでいます。有名絵画のなかには、現在見えている表面のほかに画家本人によって塗りつぶされた絵の具の層が存在していることがあります。こうした塗りつぶされた層は、絵画にX線を照射することで確認できます。ただし、X線を照射しても、かつて描かれていたものの輪郭を浮かび上がらせるに留まり、塗りつぶされる前の鮮やかさまでは再現できません。

Oxia Palusは絵画の塗りつぶされた層を示唆するX線照射画像から、かつて存在していいたと考えられる鮮やかな絵画を生成するGANモデルを開発しました。同社公式サイトのギャラリーには、このGANモデルを使って復元したモディリアーニの作品が紹介されています。1917年に発表されたモディリアーニの「少女の肖像」は、1916年に分かれた恋人ベアトリス・ヘイスティングスの肖像画を塗りつぶして制作されました。この塗りつぶされた元恋人の肖像画が、最新AI技術によってよみがえったのです。ちなみに、同作品はNFTアート作品として購入できます。

Oxia Palusの企業理念を記したウェブページによると、同社が復元する絵画は非常に限られた手がかりにもとづいて制作されているので、正確な復元と言うよりは塗りつぶされた絵画の「最良の解釈」であると位置づけています。また、同社の目標は「人間が人工知能と協力して作業できる、より創造的な仕事を開発する」ことにある、とも述べています。

以上のように絵画の鑑定や復元といったシリアスな目的においても、AIは活用されています。こうしたシリアスなアート系AIは人間の鑑定家や絵画修復士の仕事を奪うものではなく、彼らが活躍する領域を拡張するものとして進化することでしょう。

Writer:吉本幸記、Image by Pixabay

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