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AIが弱点の発見や戦術をアドバイスするeスポーツコーチングAIの台頭

2021.10.25ゲーム

AIが弱点の発見や戦術をアドバイスするeスポーツコーチングAIの台頭

プロ将棋棋士の藤井三冠は、指し手の研究にAIを活用していることはよく知られています。近年知名度が上がってきたeスポーツにおいても、AIを活用してプレイを上達させる試みが行われています。この記事では、特徴の異なるeスポーツコーチングAIを3つ紹介します。

プレイの特徴を8項目で指標化

アメリカ・カリフォルニア州に拠点を置くMobalyticsは、League of Legends、TeamFight Tactics、Legends of Runeterra、そしてVALORANTに対応したコーチングAI「Mobalytics」を開発・提供しています。同AIは、過去のプレイデータを学習データとして用いてゲームプレイの特徴を抽出できるように訓練されたものです。同AIを活用することで、プレイヤーは自身のプレイの長所と短所を特定できるようになります。

Mobalyticsが抽出するゲームプレイの特徴には、以下のような8種類があります。

  • 戦闘性(Fighting):攻撃力を指標化した特徴量。キル数や与ダメージ数が関係している。
  • ファーミング(Farming):ゲーム中にゴールドを獲得する能力を指標化した特徴量。
  • ビジョン(Vision):対戦マップ内で視界を適切に確保する能力を指標化した特徴量。
  • 侵略性(Aggression):攻撃行動を指標化した特徴量。ゲーム開始初期にキルしたりすると評価が上がる。
  • 耐久性(Toughness):生き残る能力を指標化した特徴量。多くのダメージを受けてもダウンしない場合に評価が上がる。
  • チームプレイ(Teamplay):他のプレイヤーと協調する能力を指標化した特徴量。キルをアシストした場合に評価が上がる。
  • 一貫性(Consistency):常に一定のパフォーマンスを発揮する能力を指標化した特徴量。
  • 多才性(Versatility):プレイスタイルの幅広さを指標化した特徴量。さまざまなアイテムを活用すると評価が上がる。

以上の8つの特徴量には0~100の値が割り振られます。100に近いほどトッププレイヤーと同等の能力があることを意味します。以上の特徴量はレーダーチャートで表示されるので、長所と短所が直感的に理解できるようになります。

MobalyticsがLeague of Legendsにおける同社製コーチングAI活用の効果を調査したブログ記事によると、110,426人のユーザと1,613,396人の非ユーザを比較したところ、ユーザが上達した人数は非ユーザに比べて27%多かったことがわかりました。また、プレイスキルが低いユーザほど上達しやすいことも判明しました。こうした調査結果は、同AIの有効性を証明していると言えるでしょう。

最適なタイミングでアドバイス

リトアニアに拠点を置くGOSU Data Labが開発・提供する「GOSU Voice Assistant」は、Dota 2、League of Legends、PUBGに対応した音声アシスタントです。同社はかつて、前述のMobalyticsのようにプレイヤーのプレイの特徴を機械学習によって抽出したうえで、アドバイスを提示していました。同社は、こうした従来のコーチングの限界を認識していました。

従来のAIコーチングは、ゲームプレイ後にプレイの特徴と改善点を提示していましたが、プレイ中にはアドバイスしていませんでした。しかし、プレイヤーがアドバイスを欲しいタイミングは、プレイ後ではなくむしろプレイ中です。真に有益なアドバイスとは、プレイしているキャラクターの適切な操作方向や、アイテムを使うべきタイミングなどのようなリアルタイムに進行するゲームの流れに則したものです。

GOSU Voice Assistantは、リアルタイムに進行するゲームに流れに則しながら勝利につながるヒントや戦術を人工音声でアドバイスします。その内容とタイミングは、個々のプレイヤーのプレイデータにもとづいてプレイヤーごとに決定されます。プレイ後には習得すべき能力を伝え、さらには何らかの実績を達成したら祝福してプレイヤーを鼓舞します。

同アシスタントは、プレイヤーに親しんでもらいたいと配慮から声の調子や口調をカスタマイズできるようになっています。具体的には、声の年齢、ユーモアの度合い、スタイルを変えられます。スタイルを変えることで口調がより友だちのようになったり、反対にコーチのようになったりします。

GOSU Data Labの創業者であるAlisa Chumachenko氏によると、GOSU Voice Assistantはeスポーツゲームを紹介してプレイ上達のためにアドバイスしてくれる人間の友だちのようなもの、とコメントしています。同アシスタントは、ヒューマンライクなコーチングをAIによって実現しようとしているのです。

ゲームごとにカスタマイズ

アメリカ・マサチューセッツ州に本社があるSenpAI.GG社も、League of Legends、VVALORANT、TeamFight Tacticsに対応したコーチングAI「SenpAI.GG」を開発・提供しています。同AIも機械学習によってプレイヤーのプレイの特徴を抽出したうえで、勝利につながるアドバイスを提示します。

SenpAI.GGのユニークなところは、ゲームごとにアドバイスを提示するUIを最適化している点です。具体的には、以下のようにゲームごとにアドバイスの内容と表示方法が異なります。

  1. Legue of Legendsでは、自チームと敵チームの統計情報、取得ゴールド数、敵チーム側からファームのトラッキング状況をオーバーレイ表示する。
  2. VARORANTでは、プレイ中に起こる重要イベントやマップごとの最適なチーム編成を人工音声で伝える。
  3. TeamFight Tacticsでは、アイテムの組み合わせ、チャンピオンごとのシナジー効果、シナジー効果を考慮したベストなチーム編成をゲーム進行に合わせてオーバーレイ表示する。

コーチングAIの利用に際して気になるのは、プレイヤーが提供するプレイデータのセキュリティです。こうしたセキュリティ上の懸念に関して、SenpAI.GGは各種ゲームの開発元が公開しているAPIを使うことで対処しています。プレイデータを公式APIによって収集するので収集時の安全性はゲーム開発元が保証しており、外部に漏えいするようなことはありません。

ちなみにSenpAI.GGは近日中にFortniteとCounter-Strike: Global Offensiveにも対応する予定です。対応した場合、UIはそれぞれのゲームごとにカスタマイズされたものとなるでしょう。

以上のようにeスポーツコーチングAIは、すでにさまざまなタイプのものが利用可能となっています。こうしたAIはeスポーツ市場の成長とともにさらに多様性を増し、ゲーム開発会社やプロゲーマーとの提携を通して同市場を形成する一部となっていくでしょう。

Writer:吉本幸記、Photo by Florian Olivo on Unsplash 

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