モリカトロン株式会社運営「エンターテインメント×AI」の最新情報をお届けするサイトです。

TAG LIST
CGCGへの扉機械学習安藤幸央ディープラーニング月刊エンタメAIニュースGAN河合律子OpenAI音楽ニューラルネットワークNVIDIA三宅陽一郎強化学習吉本幸記QAGoogleFacebook人工知能学会GPT-3自然言語処理DeepMind大内孝子森川幸人敵対的生成ネットワークグーグルキャラクターAIスクウェア・エニックスモリカトロンAIラボインタビュールールベースマイクロソフトシナリオAIと倫理映画デバッグアートDALL-E2StyleGAN倫理ゲームプレイAINFT自動生成SIGGRAPHメタAIテキスト画像生成ロボット深層学習CEDEC2019プロシージャル遺伝的アルゴリズムテストプレイモリカトロンStable DiffusionDALL-Eビヘイビア・ツリーディープフェイクCEDEC2021CEDEC2020ゲームAIVFXデジタルツインメタバース不完全情報ゲームVRナビゲーションAINPC畳み込みニューラルネットワークCLIP画像生成GDC 2021JSAI2022GDC 2019マルチエージェントCEDEC2022AIアート画像生成AIボードゲームファッション懐ゲーから辿るゲームAI技術史toioCNNAdobeUnity著作権小説アニメーション鴫原盛之HTN階層型タスクネットワーク汎用人工知能JSAI2020TensorFlowインタビューBERTMicrosoftイベントレポート対話型エージェントロボティクスMetaMinecraft水野勇太Genvid TechnologiesガイスターStyleGAN2GTC2022教育ソニーJSAI2021スポーツ研究シムピープルMCS-AI動的連携モデルマンガマーケティングGDC SummerバーチャルヒューマンブロックチェーンMidjourneyアストロノーカキャリアNVIDIA OmniverseeスポーツAmazoneSportsDQNBLUE PROTOCOLシーマンアバターOmniverseUbisoftメタAlphaZeroTransformerGPT-2AIりんなカメラ環世界中島秀之哲学ベリサーブPlayable!理化学研究所SIGGRAPH ASIADARPAドローンシムシティImagenZorkバイアスモーションキャプチャーTEZUKA2020AI美空ひばり手塚治虫バンダイナムコ研究所スパーシャルAIElectronic Arts3DメタデータLEFT 4 DEAD通しプレイOpenAI Five本間翔太CMピクサープラチナエッグイーサリアム作曲ボエダ・ゴティエビッグデータ中嶋謙互Amadeus Codeデータ分析Microsoft AzureMILE模倣学習ナラティブスタンフォード大学アーケードゲームOmniverse ReplicatorWCCFレコメンドシステムNVIDIA DRIVE SimWORLD CLUB Champion FootballNVIDIA Isaac Simセガ柏田知大軍事サイバーエージェント田邊雅彦トレーディングカードトレカ音声認識メディアアートPyTorch眞鍋和子バンダイナムコスタジオaibo合成音声齊藤陽介マインクラフトお知らせMagic Leap Oneチャットボットサルでもわかる人工知能VAE3DCGリップシンキングUbisoft La Forge自動運転車ワークショップ知識表現ウォッチドッグス レギオンIGDA秋期GTC2022どうぶつしょうぎEpic Gamesジェイ・コウガミ音楽ストリーミングMITAIロボ「迷キュー」に挑戦野々下裕子徳井直生マシンラーニング5GMuZeroRival Peakクラウド対話エンジン斎藤由多加リトル・コンピュータ・ピープルCodexコンピューティショナル・フォトグラフィーゴブレット・ゴブラーズ絵画rinnaイラストシミュレーションデジタルヒューマン完全情報ゲーム坂本洋典釜屋憲彦ウェイポイントパス検索対談藤澤仁生物学GTC 2022ChatGPT画像認識GPT-3.5SiemensStyleCLIPDeNA長谷洋平masumi toyota宮路洋一OpenSeaGDC 2022TextWorldEarth-2MagentaSFELYZA Pencil松尾豊GTC2021CycleGANデータマイニング東京大学NetHackはこだて未来大学キャラクターモーションフェイクニュースエージェントRPGSIGGRAPH 2022レベルデザインAIボイスアクターNVIDIA CanvasGPUALife人工生命オルタナティヴ・マシンサウンドスケープLaMDAAI DungeonASBS栗原聡ぱいどんテキスト生成不気味の谷ナビゲーションメッシュ松井俊浩ELYZAフルコトELYZA DIGEST音声合成西成活裕Apex LegendsELIZA群衆マネジメントNinjaコンピュータRPGライブビジネスアップルタウン物語新型コロナKELDIC周済涛メロディ言語清田陽司ゲームTENTUPLAYサイバネティックスMARVEL Future FightAstro人工知能史タイムラプスEgo4DAI哲学マップバスキア星新一日経イノベーション・ラボStyleGAN-XL敵対的強化学習StyleGAN3階層型強化学習GOSU Data LabGANimatorWANNGOSU Voice AssistantVoLux-GAN竹内将SenpAI.GGProjected GANMobalyticsSelf-Distilled StyleGAN馬淵浩希Cygamesニューラルレンダリング岡島学AWS SagemakerPLATO映像セリア・ホデント形態素解析frame.ioUXAWS LambdaFoodly誤字検出森山和道認知科学中川友紀子ゲームデザインSentencePieceアールティLUMINOUS ENGINELuminous ProductionsBlenderBot 3パターン・ランゲージ竹村也哉Meta AIちょまどマーク・ザッカーバーグGOAPWACULAdobe MAX 2021自動翻訳AIライティングOmniverse AvatarAIのべりすとFPSNVIDIA RivaQuillBotマルコフ決定過程NVIDIA MegatronCopysmithNVIDIA MerlinJasperNVIDIA Metropolisパラメータ設計テニスバランス調整協調フィルタリング人狼知能テキサス大学AlphaDogfight TrialsAI Messenger VoicebotエージェントシミュレーションOpenAI CodexStarCraft IIHyperStyleMax CooperFuture of Life InstituteRendering with StyleIntelDisney類家利直LAIKADisneyリサーチヴィトゲンシュタインRotomationGauGAN論理哲学論考GauGAN2京都芸術大学ドラゴンクエストライバルズ画像言語表現モデル不確定ゲームSIGGRAPH ASIA 2021PromptBaseDota 2モンテカルロ木探索ディズニーリサーチMitsuba2バンダイナムコネクサスソーシャルゲームEmbeddingワイツマン科学研究所ユーザーレビューGTC2020CG衣装mimicNVIDIA MAXINEVRファッションBaidu淡路滋ビデオ会議ArtflowERNIE-ViLGグリムノーツEponym古文書ゴティエ・ボエダ音声クローニング凸版印刷Gautier Boeda階層的クラスタリングGopherAI-OCR画像判定JuliusSIE鑑定ラベル付けTPRGOxia Palus大澤博隆バーチャル・ヒューマン・エージェントtoio SDK for UnityArt RecognitionSFプロトタイピングクーガー田中章愛実況パワフルサッカー石井敦銭起揚NHC 2021桃太郎電鉄茂谷保伯池田利夫桃鉄GDMC新刊案内パワサカマーベル・シネマティック・ユニバースコナミデジタルエンタテインメント成沢理恵MITメディアラボMCU岩倉宏介アベンジャーズPPOマジック・リープDigital DomainMachine Learning Project CanvasMagendaMasquerade2.0国立情報学研究所ノンファンジブルトークンDDSPフェイシャルキャプチャー石川冬樹サッカーモリカトロン開発者インタビュースパコン里井大輝Kaggle宮本茂則スーパーコンピュータバスケットボール山田暉松岡 聡Assassin’s Creed OriginsAI会話ジェネレーターTSUBAME 1.0Sea of ThievesTSUBAME 2.0GEMS COMPANYmonoAI technologyLSTMABCIモリカトロンAIソリューション富岳初音ミクOculusコード生成AISociety 5.0転移学習テストAlphaCode夏の電脳甲子園Baldur's Gate 3Codeforces座談会Candy Crush Saga自己増強型AItext-to-imageSIGGRAPH ASIA 2020COLMAPtext-to-3DADOPNVIDIA GET3DデバッギングBigGANGANverse3DDreamFusionMaterialGANRNNグランツーリスモSPORTAI絵師ReBeLグランツーリスモ・ソフィーUGCGTソフィーPGCVolvoFIAグランツーリスモチャンピオンシップStability AINovelAIRival PrakDGX A100NovelAI DiffusionVTuberユービーアイソフトWebcam VTuberモーションデータ星新一賞北尾まどかHALO市場分析ポーズ推定将棋メタルギアソリッドVフォートナイトメッシュ生成FSMメルセデス・ベンツRobloxMagic Leapナップサック問題Live NationEpyllion汎用言語モデルWeb3.0マシュー・ボールAIOpsムーアの法則SpotifyスマートコントラクトReplica StudioAWSamuseChitrakarQosmoAdobe MAX 2022巡回セールスマン問題Adobe MAXジョルダン曲線メディアAdobe Research政治Galacticaクラウドゲーミングがんばれ森川君2号pixiv和田洋一リアリティ番組映像解析Stadiaジョンソン裕子セキュリティMILEsNightCafe東芝デジタルソリューションズインタラクティブ・ストリーミングLuis RuizSATLYS 映像解析AIインタラクティブ・メディアポケモン3DスキャンPFN 3D Scanシーマン人工知能研究所東京工業大学Ludo博報堂Preferred NetworksラップPFN 4D ScanSIGGRAPH 2019ArtEmisZ世代DreamUpAIラッパーシステムDeviantArtARWaifu DiffusionGROVERプラスリンクス ~キミと繋がる想い~元素法典FAIRSTCNovel AIチート検出Style Transfer ConversationOpen AIオンラインカジノRCPMicrosoft DesignerアップルRealFlowRinna Character PlatformiPhoneCALADeep FluidsSoul Machines柿沼太一MeInGameAmeliaELSIAIGraphブレイン・コンピュータ・インタフェースバーチャルキャラクター大規模言語モデルBCIGateboxアフォーダンスLearning from VideoANIMAKPaLM-SayCan予期知能逢妻ヒカリPaLMセコムGitHub Copilotユクスキュルバーチャル警備システムCode as Policiesカント損保ジャパンCaP上原利之ドラゴンクエストエージェントアーキテクチャアッパーグラウンドコリジョンチェックPAIROCTOPATH TRAVELER西木康智OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者山口情報芸術センター[YCAM]アルスエレクトロニカ2019品質保証YCAMStyleRigAutodeskアンラーニング・ランゲージ逆転オセロニアBentley Systemsカイル・マクドナルドワールドシミュレーターローレン・リー・マッカーシー奥村エルネスト純いただきストリートH100鎖国[Walled Garden]​​プロジェクト齋藤精一大森田不可止COBOLSIGGRAPH ASIA 2022高橋智隆DGX H100VToonifyロボユニザナックDGX SuperPODControlVAE泉幸典仁井谷正充クラウドコンピューティング変分オートエンコーダーロボコレ2019Instant NeRFフォトグラメトリartonomous回帰型ニューラルネットワークbitGANsDeepJoinぎゅわんぶらあ自己中心派Azure Machine LearningAzure OpenAI Service意思決定モデル脱出ゲームDeepLHybrid Reward Architectureコミュニティ管理DeepL WriteウロチョロスSuper PhoenixSNSProject MalmoオンラインゲームGen-1気候変動ジェネレーティブAIProject PaidiaシンギュラリティProject Lookoutマックス・プランク気象研究所レイ・カーツワイルWatch Forビョルン・スティーブンスヴァーナー・ヴィンジBing気象モデルRunway ResearchLEFT ALIVE気象シミュレーションMake-A-Video長谷川誠ジミ・ヘンドリックス環境問題PhenakiBaby Xカート・コバーンエコロジーDreamixロバート・ダウニー・Jr.エイミー・ワインハウスSDGsText-to-Imageモデル音楽生成AIYouTubeダフト・パンクメモリスタ音声生成AIGlenn MarshallScenarioThe Age of A.I.Story2Hallucination音声変換LatitudeレコメンデーションJukeboxAIピカソVeap JapanAI素材.comEAPneoAIテンセントSIFT福井千春DreamIconDCGAN医療mignMOBADANNCEメンタルケアstudiffuse人事ハーバード大学Edgar HandyAndreessen Horowitz研修デューク大学NetflixAIQVE ONEQA Tech Nightmynet.aiローグライクゲーム松木晋祐東京理科大学下田純也人工音声NeurIPS 2021産業技術総合研究所桑野範久リザバーコンピューティングBardプレイ動画ヒップホップ対話型AIモデルソニーマーケティングControlNetサイレント映画もじぱnoteNBA環境音暗号通貨note AIアシスタント現代アートFUZZLEKetchupAlterationAI News粒子群最適化法Art Selfie進化差分法オープンワールドArt Transfer群知能下川大樹AIFAPet Portraitsウィル・ライト高津芳希P2EBlob Opera大石真史クリムトBEiTStyleGAN-NADA世界モデルDETRゲームエンジンDreamerV3SporeUnreal Engineクリティックネットワークデノイズ南カリフォルニア大学Unity for Industryアクターネットワーク画像処理DMLabSentropyGLIDEControl SuiteCPUDiscordAvatarCLIPAtari 100kSynthetic DataAtari 200MCALMYann LeCunプログラミングサム・アルトマン鈴木雅大ソースコード生成コンセプトアートGMAIシチズンデベロッパーSonanticColie WertzTRPGGitHubCohereリドリー・スコットウィザードリィMCN-AI連携モデルマジック:ザ・ギャザリング絵コンテUrzas.aiストーリーボード介護大阪大学西川善司並木幸介KikiBlenderサムライスピリッツ森寅嘉Zoetic AIプロンプトゼビウスSIGGRAPH 2021ペットストリートファイター半導体Digital Dream LabsTopaz Video Enhance AICozmoDLSSタカラトミー山野辺一記NetEaseLOVOT大里飛鳥DynamixyzMOFLINRomiU-Netミクシィ13フェイズ構造アドベンチャーゲームユニロボットADVユニボXLandGatoAGI手塚眞DEATH STRANDINGマルチモーダルEric Johnson汎用強化学習AIデザインOculus Questコジマプロダクションロンドン芸術大学生体情報デシマエンジンGoogle BrainインディーゲームSound Control写真高橋ミレイSYNTH SUPER照明Maxim PeterKarl SimsJoshua RomoffArtnomeハイパースケープICONATE山崎陽斗深層強化学習立木創太松原仁浜中雅俊ミライ小町武田英明テスラ福井健策GameGANパックマンTesla BotNEDOTesla AI DayWikipediaソサエティ5.0SphereSIGGRAPH 2020バズグラフXaver 1000ニュースタンテキ養蜂東芝BeewiseDIB-R倉田宜典フィンテック投資韻律射影MILIZE広告韻律転移三菱UFJ信託銀行

インディーゲーム開発の現場でこそAIは役立つ:森川幸人氏講演レポート

2021.9.14モリカトロン

インディーゲーム開発の現場でこそAIは役立つ:森川幸人氏講演レポート

9月2日〜3日にインディーゲームの祭典BitSummit THE 8th​​が開催されました。例年は京都市勧業館みやこめっせで開催され、会期中は多くの来場者で賑わいますが、今年は新型コロナウィルスの影響により、オンラインとオフラインのハイブリッド開催となりました。とはいえオフラインはビジネス目的の来場者のみ、一般の参加者はオンラインのみでの参加です。そのためオンラインでのインディーゲームの展示やDiscordサーバ会場​​での開発者との交流、YouTubeやTwitch、bilibili​​で配信される番組など、オンラインならではのさまざまな工夫が凝らされるイベントとなりました。

同イベントでは、モリカトロンAIラボ所長の森川幸人氏が9月3日の朝に開催された番組内のトーク「AIは貧者のツール」に登壇しました。本稿ではその内容をレポートします。

AIの概要とモリカトロンの役割

モリカトロン株式会社は、2017年8月に設立された日本初のゲームAI専門会社です。第3次AIブームの影響がゲーム業界にも波及し、ゲームに実装するAIへの需要が徐々に高まりつつあることを受け、「楽しい、賢い、見たことがないサービスの創出」をテーマにゲームとAIのシナジー効果で新しい遊びを創造することを目指しています。

森川氏自身もPlayStation発売と同時期にゲーム開発に携わるようになり、それ以降さまざまなゲームを発表してきました。iPhoneが発売されスマートフォンが普及するようになってからは森川氏が運営する株式会社ムームーでアプリを開発してパブリッシュできる環境になったため、自社アプリもリリースしています。発表したタイトルの多くがAIを組み込んだゲームであることと、複雑な設計にせずワンアイデアで作ったインディーゲームが多いのが森川氏のゲームの特徴であるため、目線は常にインディーゲーム開発者とともにあるとのこと。近年はAIに関する書籍も何冊か刊行しています。

人工知能(AI)という言葉は1956年に米国で開催されたダートマス会議の中で初めて生まれました。同会議は人工知能という学術研究分野を確立した会議として知られています。1956年の時代背景は、日本で言えば勤め人がテレビと冷蔵庫と洗濯機を持つことを夢見る時代であり、交通インフラもその翌年の1957年から国鉄(JR)の車両が動力近代化計画により蒸気機関車から電車に変わった頃です。同じく1957年に世界発の人工衛星スプートニク1号​​がソビエト連邦で打ち上げられ、東京タワー建設はその3年後1959年に着工されます。そう考えるとAIという言葉の誕生は思いのほか古いものだったと感じるのではないでしょうか。

次に森川氏は昨今世の中で活用されている多数のAIのアルゴリズムを紹介しました。上記に挙げた例はごく一部で、強化学習と呼ばれる分野内だけでも多種多様なアルゴリズムがあります。「車にも色んな車種がありそれぞれ用途が異なります。経済性を求めるのであればハイブリッドカーがいいでしょうし、荷物を運ぶならトラックがいいでしょう。デートに使うならスポーツカータイプがいいかもしれません。コンビニに行くくらいなら自動車ではなく自転車の方がいいかもしれません」と車にたとえて語るように、AIも種類によってそれぞれ異なる用途があります。つまり、何もかもがディープラーニングで処理すればいいというものではなく、実現したいことに応じてさまざまなAIの中からどのモデルが一番適切かを選ぶ時代になってきているということです。

森川氏はモリカトロンの役割を「AIのソムリエ」と呼んでいます。ワインのソムリエが顧客の好みや出された料理に合わせてワインを選ぶように、クライアントの持つ要望や課題に応じて最も適したAIのアルゴリズムを紹介します。ワインのソムリエと異なる点は、既存のAIモデルを案内するに留まらず、クライアントの事情に合わせた形にそれらのアルゴリズムをカスタマイズするサービスも提供しているということです。

改めてゲームAIとはどのようなものか?

次に森川氏は主なゲームAIの種類について解説しました。

キャラクターAI

キャラクターAIはその名の通りキャラクターを制御するエージェントに実装されるものです。例えばフィールド上で宿屋に泊まって体力を回復させるべきか、そのまま次の目的地に向かうべきか。あるいは敵の多いルートを避けるべきか、そのルートが最短ルートなので敢えてそこを通るべきかなど、その時の自分の状態や周りの環境に応じて取るべき行動を判断して実行するAIです。

キャラクターAIは戦闘シーンでの行動制御も行います。パーティーでモンスターと戦っている時に、敵や自分の強さや仲間の状態など考慮して、戦闘を継続させるか逃げるか、あるいは先に仲間の体力を回復させるのかといった戦略を立てて実行します。

キャラクターAIは強化学習によって自律的に学習して強くすることも可能です。同じAI同士で戦闘を繰り返して鍛錬することで、最初はぎこちない動きしかできないエージェントであってもやがては人間のプレイヤーと対等に遊べるくらいに強化させることが可能です。とはいえ、森川氏の考えとしては、人間を圧倒して打ち負かすAIよりは、人間と一緒に楽しく遊べるAIを作ることを目指したいとのことです。

関連記事:【CEDEC2020】テストプレイや接待プレイができるAI技術でモリカトロンが目指すこと

パラメーターの自動調整

パラメータ調整ができるAIもゲーム産業における需要の高い分野です。とりわけ月に何度もアップデートのかかる運営型のゲームは、敵や仲間のキャラクターの数が多く、それらに応じた武器や防具などのアイテムも多数登場します。従って、それらのステータスや攻撃力や防御力、特殊効果などの機能の組み合わせも膨大なものとなるため、バランスを取りながら追加していくことが大きな課題となります。

万が一、新たに実装されたキャラクターやアイテムによってバランスブレイカーとなる要素が生じてしまうと、ゲームの運営にも支障をきたしてしまいます。そのため過去のすべてのデータと照らし合わせて整合性を取っていく必要がありますが、その際にパラメーター調整を行うAIが重要な役割を果たします。

会話の自動生成

キャラクターの会話を生成するAIもあります。RPGなどストーリー進行型のゲームによくあるように、従来のゲームでは街にいる人々に話しかけても常に同じセリフを繰り返すだけでしたが、最近はNPCがより自然に振る舞うことができるようにキャラクターやシナリオの状況に応じたセリフを生成するための研究開発が進められています。

その一例として森川氏が紹介したのが、上記の動画にあるモリカトロンで開発した雑談のできるチャットボットです。これはどのような話題を投げかけても応じることのできるAIで、TwitterやLINEなどでユーザーと会話ができるようになっています。

背景の自動生成

プロシージャルと呼ばれる技術で背景などを生成することも海外のスタジオではよく行われています。というのも、オープンワールドと呼ばれる広大なフィールド内でプレイヤーが自由に行動することでプレイするゲームでは、フィールドのマップのみならず背景も膨大に制作する必要があるため、その一部をAIで自動生成することで作業負荷を減らすことができるからです。

NVIDIAは2021年6月に敵対的生成ネットワーク(GAN=Generative Adversarial Networks)を活用した「NVIDIA Canvas​​」というアプリケーションを発表しました。画像左側のように人間がラフな下書きを描くだけで画像右側のようなフォトリアルな絵を生成します。「今後は背景画を描くのも画力を必要としない時代になっていくのかもしれません」と森川氏は語ります。

AIパズルジェネレーター

プロシージャルでは背景やマップのみならず、ゲームのステージを丸ごと生成することも可能です。上の動画は2021年にモリカトロンが発表した3マッチパズルを生成するソリューション「AIパズルジェネレーターです。

パズルはステージの消費率が非常に高いものの、従来はすべて人力でステージを開発していたためコストがかかっていました。しかし、AIパズルジェネレーターを使用することで、プランナーがステージサイズや難易度、ピースの種類数などを事前に設定すれば、後はAIが試行錯誤を繰り返しながらプランナーの要求する条件のステージを1日24時間延々と作り続けるため、膨大な量のステージを低コストで開発することができます。

メタAI

メタAIはゲーム全体を俯瞰しながら難易度やゲームの進行を制御するAIです。従来のゲームはユーザーのレベルを開発側が想像した標準的なユーザー像を設定しながら制作していましたが、その想定が外れることも少なくありません。想定よりもユーザーのレベルが低ければ難易度が高すぎるという不満が生じますし、逆に高ければ物足りなく感じてしまいます。メタAIは、プレイヤーの状況をリアルタイムでモニタリングし、プレイヤーが行き詰まっていると判断すれば手加減をし、簡単すぎて飽きかけていると判断すれば敵を強くしたり数を増やすことで緊張感を演出します。

QAデバッグAI

デバッグを行うAIも開発され、徐々に導入が進められています。そのひとつが模倣学習をするAIで、人間のプレイヤーが見せる模範解答をAIが学習することで、AIで制御されたエージェントがそのプレイヤーと同じ動きを繰り返します。ゲームのテストプレイでは100回歩かないと常に正常に挙動するかの確認ができないことも多々ありますが模倣学習によってその作業をAIにさせることができます。また、同じ動きを繰り返す模倣学習とは異なり、自由にステージ内を延々とAIに歩き回らせることで、本来は通れないはずの壁などをすり抜けてしまうことがないか確認するコリジョンチェックをさせることもできます。このようにAIを導入することで、単調で根気のいるデバッグ作業を自動的に肩代わりさせることができます。

これらのAIの学習方法がスクリプトやルールベースと異なるのは、機械学習により自律的に学習ができる点です。出したアウトプットに対して人間側がOKを出せばそれを学習し、NGを出せばそれを反省して次に活かすなど、自分自身で勉強をしながら徐々に精度を上げていくことができます。

AIはなぜインディーゲーム開発に向いているのか?

いわゆるAAAと呼ばれる大規模なゲームは予算が潤沢で、制作する要素や制御すべきパラメータが多数あるため、ゲームAIもまたAAAタイトルを開発できる大手ゲーム会社で活用されるものと考えられがちです。しかしながら、森川氏はワンアイデアで開発されることの多いインディーゲームのようにシンプルなゲーム開発の現場こそゲームAIが役立つ可能性が高いと指摘します。インディーゲームは一人の開発者が何役も同時にこなしながら開発を進めていくため、その作業の一部をAIに肩代わりさせるだけでも負担の軽減の影響が大きいためです。作業負担が減ればそれだけ制作時間が短くなるためコストも削減も期待できます。その点でゲームAIを導入する効果はむしろインディーゲームの方が大きいと言えるはずです。

多くのインディーゲーム開発者の頭を悩ませるのは限られた予算の管理であり、その予算の多くを人件費が占めます。「開発に関わる人数を減らせばゲームの制作費が減るので、作業の一部をAIにやらせればいいという身も蓋もないと言えば身も蓋もない話です」と森川氏は語りますが、それこそがAIがインディーゲーム開発者を大きくサポートできる理由でもあります。

ここまでの講演で解説していたように、AIが得意とするのは自動化です。AIパズルジェネレーターやQAデバッグAIのように、工数が膨大で正確さが求められる単調な仕事をAIが代替することで、多くのコストを削減できるはずです。

このように、一般的にあまりクリエイティブではないとされる作業をAIに肩代わりしてもらうメリットがある一方で、森川氏はAIが新しい形のクリエイティブを生む可能性も示唆しました。

森川氏によればクリエイターには二種類のタイプがいるとのことです。ひとつは、何かしらのアイデアを急に思いついてしまう、いわゆる天才肌のクリエイターです。もうひとつのタイプは、制作すべき要素や条件を提示された場合に、関連するキーワードを検索などで調べたり過去に自分が楽しんだゲームのアイデアを組み合わせながらデザインするタイプのクリエイターです。森川氏は、AIの自動生成が進化した先にあるクリエイションは後者のタイプのクリエイターによるものとタイプが似ているとしつつ、時に思いもよらないアイデアを提示する可能性も指摘します。

実はAIが何かを急に思いつくことがあります。僕自身が25年間AIにどっぷりはまっていた理由がまさにこの点で、AIが我々の知らないことを教えてくれる、見つけてくれる、作ってくれる可能性があります。まだ可能性の段階ですが、僕はAIと一緒にゲームを作っていくことでゲーム制作自体の深みが増していくことに夢を感じています。(森川幸人氏)

ゲーム開発にAIを導入するメリットは、その利便性ばかりが強調されがちですが、このようにゲーム開発の未知の領域を開拓する可能性もあります。最後に森川氏は「これからぜひインディゲームの開発者の方にもAIを使っていただければと思います。モリカトロンで良ければ協力しますので、ぜひ一緒にAIを使ったゲームを作って行きましょう」と、モリカトロンとしてインディーゲーム開発に積極的に関わっていきたい旨を語り、講演の締めとしました。

関連記事:ゲーム制作現場ですぐに使える!モリカトロンのAIソリューション5種

Editor:高橋ミレイ

RELATED ARTICLE関連記事

AIの力でゲーム開発を強力にサポート、自動プレイテストAI 『Playable!』のサービス内容と未来像に迫る

2022.12.19モリカトロン

AIの力でゲーム開発を強力にサポート、自動プレイテストAI 『Playable!...

トイロボットが運ぶあそびと教育の器:田中章愛氏×森川幸人氏 対談

2020.1.20モリカトロン

トイロボットが運ぶあそびと教育の器:田中章愛氏×森川幸人氏 対談

【CEDEC2020】テストプレイや接待プレイができるAI技術でモリカトロンが目指すこと #CEDEC2020

2020.9.10モリカトロン

【CEDEC2020】テストプレイや接待プレイができるAI技術でモリカトロンが目...

RANKING注目の記事はこちら