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チートのパターンを学習するチート検出AIの活躍

2021.2.26ゲーム

チートのパターンを学習するチート検出AIの活躍

ゲームのルールやバランスを壊すチート(不正行為)の存在は、ゲームコミュニティを慢性的に悩ませています。こうしたチートの検出に、最近ではAI技術が活用されています。この記事ではチートの歴史を簡単に振り返ってから、AI技術を活用したFPSやオンラインカジノのチート検出事例を紹介します。

進化するチートと最新チート検出手法としてのAI

世界的なサイバーセキュリティ企業NCC Groupは昨年5月、「ゲームのセキュリティ」と題されたチートの歴史とその対策をまとめたブログ記事を公開しました。チートの歴史は古く、昔のチートのなかで特に有名なのがファミコン版『グラディウス』(1985年、コナミ)で発見された「コナミコマンド」です。もともとこのコマンドは、ゲーム開発者が効率よくデバッグするために実装したものを、発売時に削除し忘れたため「裏技」として残ることになったものでした。このように、チートは昔からゲーム開発と切っても切れない関係にあります。

チートの歴史は、オンラインゲームの普及により大きく変わりました。頻繁にアップデートが可能なオンラインゲームではバグを修正してチートを予防できるようになった一方で、チーターはゲームサーバに対して不正行為をしかけるハッカーのようになって、ゲーム運営元といたちごっこを繰り広げるようになりました。

現在行われているチート検出手法には、プレイヤーによる報告、プレイデータの分析によるチートの発見、そして手法としては比較的新しい信頼スコアの活用があります。信頼スコアはプレイデータにもとづいて算出され、過去にチートを犯したプレイヤーには低いスコアが付与されます。対戦型ゲームにおいては信頼スコアがマッチメイキング時に参照され、信頼スコアが低いプレイヤーは同じようなチートを犯す恐れのあるプレイヤーと対戦することになります。

チート検出における最新の手法は機械学習を応用するものです。この手法では、既知のチーターのプレイを学習したAIが、似たようなチート行為を検出します。この手法の利点は、チートの流行や進化に合わせてAIを再訓練できる所です。

そして今後のチートのトレンドとして予想されるのが、トッププレイヤーのプレイを精密に模倣するチートボットの登場です。こうしたボットのプレイがトッププレイヤーのそれと区別がつかなくなった場合、機械学習を活用してもチートを検出できなくなる恐れがあります。未来においては、チートAIとチート検出AIが熾烈な戦いを繰り広げることになるかも知れないのです。

チートツール使用時のデータ通信量に着目

現在のチート検出に関する研究については、2020年11月、アメリカ・テキサス州立大学ダラス校の学内メディアが同校の研究チームの試みを報じています。

従来のオンラインゲームにおけるチートの検出では、プレイヤーからサーバに対して送信された暗号化済みのプレイデータを復号化してから分析していたので、リアルタイムにチートを検出することは極めて困難でした。こうしたなか、研究チームはプレイデータの内容ではなく通信量の変化に着目してチートを検出する実験を行いました。

実験には人気FPSの『カウンターストライク』(1999年、Valve Corporation)が採用され、ダラス校の学生20人が参加しました。参加者には、3種類のチートツールを使用した状態でゲームをプレイしてもらいました。具体的には、自動的に対戦プレイヤーをエイム(狙撃)できるエイムボット、移動スピードが向上するスピードハック、そして壁を透明にできるウォールハックが使われました。

3つのチートツールを使ってプレイしてもらった結果、チートを実行している時に特徴的な通信量の変化が生じることを発見しました。研究チームは、発見した通信量の変化に関する特徴を機械学習モデルに学習させました。こうして開発された機械学習モデルは、チート実行によって生じる通信量の変化をリアルタイムに検出できるようになりました。

以上のような機械学習によるチート検出技術は、多くのオンラインゲームに応用できると考えられています。応用に際しては学習データとなるチート実行時の通信量に関するデータが必要になりますが、チートを続けているプレイヤーに対してリアルタイムにゲームからバンすることも可能となるでしょう。

チートのパターンを見逃さないオンラインカジノ

チートの実行が犯罪につながりかねないオンラインカジノにおいても、チート検出が取り組まれています。そうした取り組みについて、インドのデジタルソリューション企業Zensarが2020年12月に公開した記事でまとめています。

オンラインカジノにおけるチートは決して珍しいことではなく、リアルマネーを支払っている有料プレイヤーの19%(つまり約5人に1人)がチートの被害に遭い、金銭的な損失を被っていると報告されています。Zensarの記事では、オンラインカジノにおいて実行される代表的なチートとして、以下のような3種類が挙げられています。

  1. アカウントの乗っ取り:ゲームにおいて何らかの特典を有している有名プレイヤーのアカウントを乗っ取り、第三者に販売する。販売する相手は、チート実行を疑われにくくするために無名のアマチュアプレイヤーであることが多い。
  2. ボーナスの濫用:初回利用時に提供されるボーナスのような各種ボーナスを何度も取得する。アカウントを大量に作成することによって、このチートを実行する。
  3. チップダンピング:何人かのプレイヤーが共謀して、意図的に任意の1人のプレイヤーをギャンブルで勝たせる。マネーロンダリングの常套手段として知られている。

以上のような代表的なチートに対して、オンラインカジノではチート実行時におけるアカウントのログイン動作や賭け金の動きに認められるパターンを学習した機械学習モデルを使って検出しています。

オンラインゲームとオンラインカジノにおける機械学習モデルを活用したチート検出で共通しているのは、学習データとしてチート実行時のプレイデータを大量に必要とする点です。チート検出に機械学習モデルを導入するためには、プレイデータの管理体制を確立したデータファーストな企業になることが求められるのです。

Writer:吉本幸記、Photo by Alexey Savchenko on Unsplash

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