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【JSAI2021】JRPG特有のお遣いクエストを自動生成できるAI技術への第一歩

2021.6.21ゲーム

【JSAI2021】JRPG特有のお遣いクエストを自動生成できるAI技術への第一歩

近年、ゲーム開発はもちろん、小説や漫画、作曲といった創作活動に人工知能技術を活用しようとする研究が活発化しています。創作におけるAIの役割というテーマは、6月8日から6月11日まで開催された第35回人工知能学会全国大会においても重大な議題のひとつでした。昨年に続き新型コロナウイルスの影響でオンライン開催となった同大会から「創作者と人工知能が創る創作の未来」というセッションを取材しました。

このセッションでは、ゲーム開発やシナリオ執筆、ファッションコーディネート、写真印刷の紙選び、星座画像の認識、手書き文字の再現など、創作活動をふくめたクリエイティブな活用方法を想定したさまざまなAI技術の研究成果が発表されました。

シナリオ、音楽、モブキャラを別々に自動生成

公立はこだて未来大学の研究チームは、ビデオゲームにおける没入感に焦点を当て、ロールプレイングゲームのクエストシナリオや音響効果、キャラクターグラフィックを総合的に自動生成するシステムの構築を目指しています。ビデオゲームを構成するクリエイティブな要素を自動生成する技術の発展によって、ゲームクリエイターの負担を少しでも軽減しようという試みです。

【論文】没入感に着目したクエストシナリオ・音響効果・キャラクターを総合的に自動生成するゲームシステムの構築

今回のセッションで同チームが発表したのは、登場人物に感情移入しやすいシナリオの自動生成、シーンごとの雰囲気に最適なBGMの自動選択、そしてゲーム中に登場するモブキャラクターの顔画像と口調の自動生成を担う4つのモジュールです。シナリオ自動生成モジュールが出力したテキストデータに音響効果モジュールがゲーム音楽情報を付与し、顔画像自動生成モジュールと口調自動生成モジュールで生み出されたキャラクターに役割を演じさせることで、繰り返し可能なクエストを大量に生成するという構図です。

シナリオ自動生成モジュールの開発に際しては、物語構造が存在する既存のゲーム、アニメ、小説、漫画作品から、インターネット上で多くのユーザーが感動したと評する297シーンを分析。それらを「絆」「葛藤」「自己犠牲」といった抽象的な12のカテゴリと、より具体的な「和解」「喜怒」「家族のため」といった32のサブカテゴリに分類しています。クエストの受注と完了の場面には前者に基づいたメインテキスト、依頼主にまつわる感動的なエピソードには後者をテーマとしたサブテキストを用意。それらの組み合わせによって、約960種類のクエストシナリオを自動生成できるということでした。

音響効果モジュールは、シーンに応じた自動選曲とコード進行の自動生成を担当します。既存作品のBGMから感情特徴量や音響特徴量、コード進行を抽出し、ニューラルネットワークに726種類のデータを学習させることで、あらかじめ用意された楽曲リストからシナリオの雰囲気にもっとも適したBGMを選択できるアルゴリズムを構築したとのこと。また、イントロやAメロ、サビといったパートごとに分類した学習データを用いて、オリジナルのBGMを制作することもできるようでした。

顔画像自動生成モジュールでは、既存の漫画作品に登場するキャラクターの顔を正面から捉えた画像を、髪・眉・目・鼻・口・輪郭の6種類のパーツに分類。それらをランダムもしくはモーフィング処理によって自動配置することで、新たな顔画像を生成しています。各パーツには、男性と女性の2属性に子ども・成人・老人の3属性を組み合わせた合計6種類の属性、精神年齢、性格の明るさが設定されており、求められるキャラクター像によって候補となるパーツが変化するような仕組みです。

自動配置のアルゴリズムでは、顔パーツのy座標の数値が輪郭、口、鼻、目、眉、髪の順に高くなるように条件を設定したうえで、性別と精神年齢に基づいて顔パーツがランダムに配置されます。一方、モーフィング処理を用いたアルゴリズムでは、6種類の属性と性格の明るさによる分類で顔パーツが決定されます。いずれのアルゴリズムを採用した場合も、最終的には自動生成されたラフ画像を人の手でリザインする必要があるようです。

口調自動生成モジュールは、前述した6種類のキャラクター属性に応じて、発話者の助詞と助動詞を自動的に変換する役割を担います。モジュールの開発に際しては、著名なロールプレイングゲームのシリーズから合計10作品を対象に、ゲーム序盤に収集範囲を絞ったうえでモブキャラクターの会話テキストを形態素解析したとのこと。そこから属性ごとに助詞と助動詞をカウントしてカイ二乗検定を行った結果、成人男性は断定の「だ」や確認・念押しの「な」が、成人女性は確認・念押しの「ね」が、男性老人は断定の「じゃ」「ぞ」が有意に多いことが示唆されたそうです。

ゲームクリエイターの負担軽減に向けた課題

同セッションでは、これらのモジュールを統合したシステムを、Unityで動作するアクションRPGに実装したサンプルゲームが披露されました。一定の実用性が証明された一方で、現実のビジネスシーンでゲームクリエイターの負担を減らすためには、まだまだ課題が山積しています。

今回のシナリオ自動生成では、感動的なシーンの特徴をカテゴライズすることで構造を再現することはできても、前後関係や重複カテゴリの実装にはいたっていないとのことでした。今後はデータ量の増加とアルゴリズムの改善にくわえて、自動生成されたシナリオが本当に感動的なのかどうかを評価する実験を検討中ということです。

音響効果モジュールについては、現在のところクロマベクトルとスペクトル重心、BPMのみを用いて音響特徴量を抽出していますが、将来的には楽譜に基づいた抽出方法をくわえるなど、分析過程の選択肢を増やすことで自動選曲の精度向上が期待できそうです。顔画像の自動生成はモノクロにしか対応できないほか、まだまだ精度に問題が残るようでした。

口調の自動生成については、子どもと老人に関するデータ不足が目立つようです。なお、キャラクターの口調を扱う際には、ジェンダーや人種に基づいたステレオタイプの助長も懸念されます。AIによる無知な偏見を防ぐために、学習データの選別にも注意が必要だという印象を受けました。

【関連記事】【JSAI2020】AIによるRPG自動生成技術はどこまで進歩したか?

Writer:Ritsuko Kawai / 河合律子

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