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eスポーツとフィジカルスポーツの選手を強化するAI:月刊エンタメAIニュース vol.9

2020.9.24先端技術

eスポーツとフィジカルスポーツの選手を強化するAI:月刊エンタメAIニュース vol.9

エンタメにおいてもAIは日進月歩で進歩しており、新しい研究成果や試みが次々と発表されています。こちらの連載では、過去1か月間、主に海外で公開された注目すべきゲームAIやエンタメAIに関連したニュース、論文などを紹介していきます。

最適なプレイを推奨するeスポーツコーチングAI

トルコのメディアDaily Sabahは8月31日、トルコ出身のOlcay Yılmazçoban氏らが創業したAIスタートアップFalconAIが開発するeスポーツコーチングAI「SenpAI.gg」を紹介する記事を公開しました。

『League of Legends』のように世界的な人気のあるeスポーツゲームのプレイスキルを上達させようとする場合、対戦を数多く経験するか、プロゲーマーのプレイ動画を見て学習することになります。こうした従来の学習方法では、スキルアップにつながるプレイスタイルの改善箇所を見つけるのに苦労します。SenpAI.ggは、こうした改善箇所を効率的に見つけてくれます。

SenpAI.ggはプレイヤーの過去の対戦データを分析して、プレイスタイルの特徴を抽出します。抽出した特徴にもとづいて、プレイヤーのプレイスタイルにあったキャラクターの推奨、優先的に倒すべき敵キャラクターの特定といったアドバイスを行います。さらには、プレイスタイルをプロゲーマーのそれと比較した上で、プレイスタイルが類似しているプロゲーマーを特定します。そして、そうしたプロゲーマーのプレイ動画を視聴することもおすすめします。

SenpAI.ggのようなAIを活用したeスポーツのコーチングシステムはNVIDIAのような大企業も注目しており、同社はこうしたシステムに関する特許を取得しています。FalconAIやNVIDIAの動向は、eスポーツゲームのプレイスキルを効率的に上達させたいというニーズが急速に高まっていることが背景になっていると考えられます。

スタンフォード大学、トップテニスプレイヤーのプレイを再現するAIを開発

テック系メディアSyncedは8月13日、スタンフォード大学の研究チームがトッププロテニスプレイヤーのプレイを再現するAIを開発したことを報じました。「Vid2Player」と名づけらたこのAIは、例えばジョコビッチ選手とフェデラー選手の対戦動画を生成することができるのです。

Vid2Playerの開発にあたっては、トップテニスプレイヤーのプレイ動画を大量に集めて学習データを構築しました。収集したプレイ動画には、AIがショットの種類やポジションニングを学習できるようにラベル付けをしました。こうした学習データにもとづいて、各テニスプレイヤーのプレイを予測する行動モデルを構築したのです。

Vid2Playerは、任意の初期状態(例えばフェデラー選手のサーブ)が与えられると、その初期状態にリアクションするテニスプレイヤーの行動を予測し、その予測内容に合致したプレイ動画を学習データから抽出して再生します。こうしたプレイの予測と抽出した動画の再生を繰り返せば、トップテニスプレイヤーのプレイを再現できるというわけなのです。

Vid2Playerを開発したスタンフォード大学の研究チームは、このAIをスポーツのコーチングに応用できると考えています。

【参考論文】Vid2Player: Controllable Video Sprites that Behave and Appear like Professional Tennis Players

withコロナ時代に役立つマーカーレスなモーションキャプチャー

映画やゲームの制作においてリアルに動くCGキャラクターを作成するためには、多数のマーカーがついたボディシーツを装着した人の動きをキャプチャー作業工程が発生し、専用の撮影スタジオに多数のスタッフが集まる必要があります。しかし、現状のようなコロナ禍にあっては密集を避けなければならないので、キャプチャー技術を使うのが困難になってしまいました。

ビジネス系メディアVenture Beatは8月27日、コロナ禍でも利用可能なキャプチャー技術を紹介する記事を公開しました。イギリスに拠点をおくAIスタートアップMove.aiが開発したキャプチャー技術は、iPhoneあるいはGalaxyといったハイエンドなスマホで動く人を撮影するだけで、撮影した人の動きを反映した3Dアバターを生成できるというものです。この技術で画期的なのは、撮影される人がマーカーのついたボディスーツを着る必要がない所です。

以上のキャプチャー技術を実現するのに使われているのが、AIによるデータポイントの生成です。具体的には、動く人を撮影することによって10~15ヶ所のデータポイントの動きを収集します。収集したデータポイントの情報にもとづいて、AIが10万か所の動きを生成するのです。撮影時に収集するデータポイント数が少ないのでボディスーツが不要となり、大がかりな撮影スタジオを用意する必要がありません。

Move.aiのCEOであるMark Endemano氏は、同社のマーカーレスなキャプチャー技術を個人でコンテンツを作成するようなインフルエンサーに使ってもらうことによって、モーションキャプチャー技術を民主化したいと述べています。

「私よりも私を知る」AIがはらむデジタル全体主義誕生の危険性

オーストラリアのTHE CONVERSATION紙は8月12日、AIによる全体主義実現の可能性を論じた記事を公開しました。

AmazonやFacebookなどで使われているレコメンドシステムとは、大量のデータを学習した協調フィルタリングと呼ばれるAIが、各ユーザが好みそうなコンテンツをおすすめするシステムのことを指します。こうしたレコメンドシステムをさらに発達させると、ユーザ自身より精確にユーザの嗜好を理解するAIシステムが開発できる可能性が生じます。このような全知的AIが実現してしまうと、「自らの自由意思にしたがって生きる」という人間の根本的なあり方が脅かされることになるかも知れません。というのも、自分の選択にしたがうより全知的AIの決定にしたがうほうが合理的となるからです。

以上のような全知的AIが一部の権力者のみに管理されるようになった時、管理者以外の自由が無価値となるデジタル全体主義が誕生します。デジタル全体主義体制の統治下では、人間は全知的AIに従う以外の選択肢が奪われてしまいます。

デジタル全体主義は、AIを活用することによって「多くを知る権力者」と「知ることが制限された被支配者」という情報格差をともなう社会階層が形成された時に誕生します。この支配体制の誕生を阻止するには、安易に個人情報を提供しないことが重要となります。なぜならば、全知的AIの構築には大量の個人情報が必要であり、言わば動力源である個人情報の供給を制限してしまえば全知的AIの誕生を未然に防ぐことができるからです。

しかしながら、現代社会においては個人情報をシステムに提供することによって、さまざまなメリットを得ていることも事実です。個人情報の提供を完全に絶ってしまうことは不可能だとしても、提供した個人情報が使われる目的について注意を払うことがデジタル全体主義誕生への対抗手段となるのです。

Writer:吉本幸記

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