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Ubisoft La Forgeの研究成果が示すゲームにおける機械学習の未来
ゲーム開発においてもディープラーニングの応用技術は日進月歩で進歩しています。本稿では、2019年3月に米国サンフランシスコで開催されたゲーム開発者会議GDC2019で行われた、Ubisoftのイヴ・ジャキエ氏の講演「The Alchemy and Science of Machine Learning for Games」での発表をご紹介します。
ジャキエ氏は、モントリオールのUbisoftの研究開発部門「Ubisoft La Forge」のエグゼクティ・ディレクターとしてプロダクションサービスに携わっています。冒頭でジャキエ氏は、同講演で言及するAIについて、自律的に学習をし自律的に動くもの、大量のデータからパターンを見つけ出し、それらを使って新しいデータを予測するプログラムであると定義づけました。
第三次AIブームの火付け役となったディープラーニングは、機械学習と呼ばれるAIの手法のひとつですが、その影響の大きさゆえに、AIそのものと誤解されがちです。そして過度な期待の対象ともなっています。講演の中でジャキエ氏は、製品として実装されていないプロトタイプをふくんだ事例を挙げながら、今日のゲーム開発において機械学習で実際に何ができるのか(あるいはできないのか)ということについて、具体的な知見を示しました。
ゲーム開発を劇的に変える機械学習、3つの事例
機械学習のアルゴリズムはデータから特徴量を抽出し、ニューロンの異なる層を計算します。例えば2012年にグーグルが発表した猫の画像を識別するアルゴリズムは、入力データから特徴量を抽出することによってその画像が猫であるかどうかを判断します。単純なデータセットには、単純な機械学習のモデルを必要とし、複雑なデータセットは、これから抽出する隠れ層を計算するために、より複雑なアルゴリズムを必要とします。機械学習によるアプローチがデータドリブンになるのはそのためです。
ゲーム開発においては、例えば戦闘に勝つなど、特定の結果に向けた行動をエージェントにさせたい場合、エージェントが特定の結果に到達したとき、あるいは失敗したときの測定値を設定します。エージェントは得られる報酬を最大にするために、シミュレーションやゲーム内での試行錯誤によって正しい戦略を見つけます。講演の中でゲーム開発における機械学習の活用について、ジャキエ氏は3つの事例を挙げました。それはリップシンキング、デバッギング、アニメーションです。
リップシンキング
唇や表情の動きに関する視覚的な情報は音声の認識に重大な影響をもたらしますが、日本人と比較して英語のネイティブスピーカーはその影響をより大きく受けることが熊本大学の研究で明らかになっています。いわゆるマガーク効果の影響を受けやすいということでもあり、ビデオゲームにおいても、英語圏では異なる言語のゲームをローカライズする際に、セリフの音声と唇の動きが一致していることが重視されます。
La Forgeのチームが開発したリップシンキングアルゴリズム「SoundMatching AI System」は、音声に基づいて唇の動きをアニメートする機械学習ベースの新しい技術で、どんな言語にも対応することができます。格言語圏でローカライズをするたびに声優の声に合わせて唇や表情のモーションを手作業で作ると膨大なコストがかかりますが、SoundMatching AI Systemを導入することで品質の向上とコスト削減を両立させることができるというわけです。
デバッギング
La Forgeデバッギングアルゴリズム「SmartBot」は脆弱性やバグを見つけるに留まらない役割を持っています。ジャキエ氏は定期的にゲームに追加されるキャラクターと対戦する格闘ゲーム『フォーオナー』(2017年、ユービーアイソフト)に実装されたSmartBotのデモを披露しました。
これは脆弱性やバグを見つけるための自動テスト機能でもありますが、ゲームデザイナーがゲーム内のバランス調整をすることも助けます。Smart botが操作するキャラクターは、強化学習によって自分で戦略を練り、対戦相手を倒すまで戦闘の腕前を上げていきます。『フォーオナー』では相手にダメージを与えれば報酬を与え、相手の攻撃を受ければペナルティを与える設定にしたところ、最終的にはノーダメージで勝利できる程に強化できたとのことです。
また、同じくQAに関わる技術として、ジャキエ氏は2018年2月に発表した「Commit Assistant」についても言及しました。従来のプログラミングパイプラインは、コードをテストしてバグを見つけるまで多くの段階を踏むため、大規模なゲームを開発している際に素早く対応できないことがあります。
Commit Assistantは過去10年分のバグや修正のデータを活用し、現在開発している新しいコードにバグがふくまれる可能性を見積もり、バグを誘発しそうなコードに対してフラグを立てるアルゴリズムです。2018年2月の時点でジャキエ氏は、このアルゴリズムを実装することにより、プログラマーの作業時間を20%削減できると発表しました。現在Commit Assistantは世界中のゲームスタジオで活用されています。氏によれば、まだ精度が不十分な所があるものの、システムが学習し続けるにつれて精度が向上するとのことです。
アニメーション
『アサシン クリード』シリーズのように、高品質なオープンワールドゲームでは多様性が重視されます。従来であれば、ゲーム世界の規模と豊かさは、いくつかの技術的なトレードオフをもたらしました。ジャキエ氏は、制作プロセスをシンプルにしながら、より多様で有機的なアニメーションを作るために機械学習を応用した技術データドライブアニメーションを紹介しました。
これによりアニメーションデータをオフラインで作成することなく、ゲーム内の文脈に基づき、その場でモーションを生成することができます。人の手でアニメーションクリップやルールを作成する代わりに、AIがすべてのデータの中で何を再生するかを決定します。それにより制作にかかる労力を軽減できるだけでなく、プレイヤーにとってより魅力的な体験を提供できるのです。
見習い錬金術師が機械学習の進歩のためにできること
3DCG、オンラインゲーム、そしてAIと、ゲームは革新的な技術の研究におけるテストと実装の場として使用されてきました。現在AIにおいても多くの飛躍的な技術の進歩がありますが、それらは革新的ではあるものの生産段階に到達するにはまだ不十分です。例えば、AIはサンドボックス内ではうまく動くアニメーションを作ることができますが、リアルタイムのインタラクションでは実装の段階には至っていません。
とはいえ、ディープラーニングは専門家が予想していたよりもずっと速い速度で進歩しています。2016年の段階では、囲碁で人間に勝つAIを実現させるのに必要な期間は10年と言われていました。しかし実際には2017年にDeepMind のコンピュータプログラムAlphaGoが中国の柯潔九段に3連勝を果たし、同年にAlphaZeroが発表されました。機械学習の進歩の速度は指数関数的です。
「破壊的な技術とは確立された規則を揺るがす力を意味します。私たちが使う携帯電話がノキアからiPhoneに変わった時のように、機械学習は新たなステージのチャンスも生み出します。技術的な観点からだけでなく、より広いレベルでも議論することが重要なのはこのためです」とジャキエ氏は述べています。
すべての技術やプロセスにはライフサイクルがあり、最初に納得のいく結果を提供するまでにある程度の時間がかかります。そして時間とともにほとんどの課題が克服あるいは改善され、それによって社会実装に耐えうる新しい技術が出現します。もちろん機械学習もそのプロセスを辿るはずです。
最後にジャキエ氏は次のような言葉で講演を締めくくりました。「私が挙げた例は魔法のように見えたかもしれません、しかし機械学習という科学の進歩に向けて我々はさらに錬金術を加える必要があるでしょう。皆さんが何を出力できるかは、入力するデータセットに依存しますし、それらを作り上げるには、多くの直感とさまざまな専門家の関与が必要なのです」。
Editor:高橋ミレイ