モリカトロン株式会社運営「エンターテインメント×AI」の最新情報をお届けするサイトです。

TAG LIST
CGCGへの扉機械学習安藤幸央ディープラーニング月刊エンタメAIニュースGAN河合律子OpenAI吉本幸記NVIDIA音楽ニューラルネットワーク三宅陽一郎強化学習GoogleQAグーグルGPT-3Facebook自然言語処理DeepMind人工知能学会大内孝子森川幸人敵対的生成ネットワークシナリオキャラクターAIスクウェア・エニックスモリカトロンAIラボインタビューマイクロソフトルールベースStable DiffusionAIと倫理アート映画デバッグNFTDALL-E2StyleGAN倫理ゲームプレイAI自動生成SIGGRAPHモリカトロンメタAIテキスト画像生成ロボット深層学習ファッションCEDEC2019プロシージャルVFXデジタルツイン遺伝的アルゴリズムテストプレイNPCDALL-E画像生成ChatGPTビヘイビア・ツリーディープフェイクCEDEC2021CEDEC2020ゲームAIメタバース不完全情報ゲームVRナビゲーションAI画像生成AIボードゲーム畳み込みニューラルネットワークCLIP大規模言語モデルGDC 2021JSAI2022AdobeGDC 2019マルチエージェントCEDEC2022AIアート懐ゲーから辿るゲームAI技術史toioジェネレーティブAICNN生成系AIMicrosoftNVIDIA OmniverseUnity著作権小説アニメーション鴫原盛之HTN階層型タスクネットワークマンガ汎用人工知能JSAI2020TensorFlowインタビューバーチャルヒューマンBERTMidjourneyイベントレポート対話型エージェントAmazonロボティクスMetaMinecraft水野勇太アバターOmniverseUbisoftGenvid TechnologiesガイスターStyleGAN2GTC2022教育ソニーJSAI2021スポーツ研究シムピープルMCS-AI動的連携モデルGTC2023マーケティングGDC SummerLLMブロックチェーンアストロノーカキャリアeスポーツスタンフォード大学サイバーエージェント音声認識eSportsDQNBLUE PROTOCOLシーマン3DCGStability AIメタAlphaZeroTransformerGPT-2rinnaAIりんなデジタルヒューマンカメラ環世界中島秀之PaLM哲学ベリサーブPlayable!理化学研究所SIGGRAPH ASIANetflix東京大学DARPAドローンシムシティImagenZorkバイアスモーションキャプチャーTEZUKA2020AI美空ひばり手塚治虫テキスト生成バンダイナムコ研究所スパーシャルAIElectronic Arts3DメタデータLEFT 4 DEAD通しプレイOpenAI Five本間翔太CMAudio2Faceピクサープラチナエッグイーサリアム作曲ボエダ・ゴティエビッグデータ中嶋謙互Amadeus Codeデータ分析Microsoft AzureMILE模倣学習ナラティブNVIDIA RivaアーケードゲームOmniverse ReplicatorWCCFレコメンドシステムNVIDIA DRIVE SimWORLD CLUB Champion FootballNVIDIA Isaac Simセガ柏田知大軍事田邊雅彦トレーディングカードトレカメディアアートGPTPyTorch眞鍋和子バンダイナムコスタジオaibo合成音声齊藤陽介マインクラフトお知らせMagic Leap Oneチャットボットサルでもわかる人工知能VAEDreamFusionリップシンキングUbisoft La Forge自動運転車ワークショップ知識表現ウォッチドッグス レギオンIGDA秋期GTC2022どうぶつしょうぎEpic Gamesジェイ・コウガミ音楽ストリーミングMITAIロボ「迷キュー」に挑戦AWS野々下裕子徳井直生マシンラーニング5GMuZeroRival Peakpixivクラウド対話エンジン斎藤由多加リトル・コンピュータ・ピープルCodexコンピューティショナル・フォトグラフィーゴブレット・ゴブラーズ絵画ARMicrosoft Designerイラストシミュレーション完全情報ゲーム坂本洋典釜屋憲彦ウェイポイントパス検索対談藤澤仁生物学GTC 2022画像認識GPT-3.5SiemensStyleCLIPDeNA長谷洋平masumi toyota宮路洋一OpenSeaGDC 2022Gen-1TextWorldEarth-2BingMagentaSFELYZA Pencil松尾豊GTC2021CycleGANデータマイニングNetHackはこだて未来大学Bardキャラクターモーションフェイクニュース現代アートエージェントRPGSIGGRAPH 2022レベルデザインAIボイスアクターNVIDIA CanvasGPUALife人工生命オルタナティヴ・マシンサウンドスケープLaMDATRPGAI DungeonプロンプトASBS栗原聡ぱいどんアドベンチャーゲーム不気味の谷ナビゲーションメッシュ松井俊浩ELYZAフルコトELYZA DIGEST建築音声合成西成活裕Apex LegendsELIZA群衆マネジメントライブポートレイトNinjaコンピュータRPGライブビジネスWonder Studioアップルタウン物語新型コロナ土木KELDIC周済涛BIMメロディ言語清田陽司インフラゲームTENTUPLAYサイバネティックスMARVEL Future FightAstro人工知能史Amazon BedrockタイムラプスEgo4DAI哲学マップイーロン・マスクバスキア星新一X.AI日経イノベーション・ラボStyleGAN-XLX Corp.敵対的強化学習StyleGAN3Twitter階層型強化学習GOSU Data LabGANimatorXホールディングスWANNGOSU Voice AssistantVoLux-GANMagi竹内将SenpAI.GGProjected GANStable Diffusion XLMobalyticsSelf-Distilled StyleGANSDXL馬淵浩希CygamesニューラルレンダリングRTFKT岡島学AWS SagemakerPLATONIKE映像セリア・ホデント形態素解析frame.ioClone XUXAWS LambdaFoodly村上隆誤字検出森山和道認知科学中川友紀子Digital MarkゲームデザインSentencePieceアールティSnapchatLUMINOUS ENGINEクリエイターコミュニティLuminous ProductionsBlenderBot 3バーチャルペットパターン・ランゲージ竹村也哉Meta AINVIDIA NeMo Serviceちょまどマーク・ザッカーバーグヴァネッサ・ローザGOAPWACULVanessa A RosaAdobe MAX 2021陶芸自動翻訳Play.ht音声AIAIライティングLiDAROmniverse AvatarAIのべりすとPolycamFPSQuillBotdeforumマルコフ決定過程NVIDIA MegatronCopysmith動画生成AINVIDIA MerlinJasperハーベストNVIDIA MetropolisForGamesパラメータ設計テニスゲームマーケットバランス調整岡野翔太協調フィルタリング郡山喜彦人狼知能テキサス大学ジェフリー・ヒントンGoogle I/O 2023AlphaDogfight TrialsAI Messenger VoicebotGoogle I/OエージェントシミュレーションOpenAI Codex武蔵野美術大学StarCraft IIHyperStyleMax CooperBingAIFuture of Life InstituteRendering with StyleIntelDisney類家利直FireflyLAIKADisneyリサーチヴィトゲンシュタインPhotoshopRotomationGauGAN論理哲学論考LightroomGauGAN2京都芸術大学Canvaドラゴンクエストライバルズ画像言語表現モデルChatGPT4不確定ゲームSIGGRAPH ASIA 2021PromptBaseBOOTHDota 2モンテカルロ木探索ディズニーリサーチpixivFANBOXMitsuba2バンダイナムコネクサス虎の穴ソーシャルゲームEmbeddingワイツマン科学研究所ユーザーレビューFantiaGTC2020CG衣装mimicとらのあなNVIDIA MAXINEVRファッションBaidu集英社淡路滋ビデオ会議ArtflowERNIE-ViLG少年ジャンプ+グリムノーツEponym古文書ComicCopilotゴティエ・ボエダ音声クローニング凸版印刷コミコパGautier Boeda階層的クラスタリングGopherAI-OCRゲームマスター画像判定Inowrld AIJuliusSIE鑑定ラベル付けMODTPRGOxia Palus大澤博隆Ghostwriterバーチャル・ヒューマン・エージェントtoio SDK for UnityArt RecognitionSFプロトタイピングSkyrimクーガー田中章愛実況パワフルサッカースカイリム石井敦銭起揚NHC 2021桃太郎電鉄RPGツクールMZ茂谷保伯池田利夫桃鉄ChatGPT_APIMZGDMC新刊案内パワサカダンジョンズ&ドラゴンズマーベル・シネマティック・ユニバースコナミデジタルエンタテインメントOracle RPG成沢理恵MITメディアラボMCU岩倉宏介深津貴之アベンジャーズPPOxVASynthマジック・リープDigital DomainMachine Learning Project CanvasMagendaMasquerade2.0国立情報学研究所ノンファンジブルトークンDDSPフェイシャルキャプチャー石川冬樹サッカーモリカトロン開発者インタビュースパコン里井大輝Kaggle宮本茂則スーパーコンピュータバスケットボール山田暉松岡 聡Assassin’s Creed OriginsAI会話ジェネレーターTSUBAME 1.0Sea of ThievesTSUBAME 2.0GEMS COMPANYmonoAI technologyLSTMABCIモリカトロンAIソリューション富岳初音ミクOculusコード生成AISociety 5.0転移学習テストAlphaCode夏の電脳甲子園Baldur's Gate 3Codeforces座談会Candy Crush Saga自己増強型AItext-to-imageSIGGRAPH ASIA 2020COLMAPtext-to-3DADOPNVIDIA GET3DデバッギングBigGANGANverse3DMaterialGANRNNグランツーリスモSPORTAI絵師ReBeLグランツーリスモ・ソフィーUGCGTソフィーPGCVolvoFIAグランツーリスモチャンピオンシップNovelAIRival PrakDGX A100NovelAI DiffusionVTuberユービーアイソフトWebcam VTuberモーションデータ星新一賞北尾まどかHALO市場分析ポーズ推定将棋メタルギアソリッドVフォートナイトメッシュ生成FSMメルセデス・ベンツRobloxMagic Leapナップサック問題Live NationEpyllion汎用言語モデルWeb3.0マシュー・ボールAIOpsムーアの法則SpotifyスマートコントラクトReplica StudioamuseChitrakarQosmoAdobe MAX 2022巡回セールスマン問題Adobe MAXジョルダン曲線メディアAdobe Research政治Galacticaクラウドゲーミングがんばれ森川君2号和田洋一リアリティ番組映像解析Stadiaジョンソン裕子セキュリティMILEsNightCafe東芝デジタルソリューションズインタラクティブ・ストリーミングLuis RuizSATLYS 映像解析AIインタラクティブ・メディアポケモン3DスキャンPFN 3D Scanシーマン人工知能研究所東京工業大学Ludo博報堂Preferred NetworksラップPFN 4D ScanSIGGRAPH 2019ArtEmisZ世代DreamUpAIラッパーシステムDeviantArtWaifu DiffusionGROVERプラスリンクス ~キミと繋がる想い~元素法典FAIRSTCNovel AIチート検出Style Transfer ConversationOpen AIオンラインカジノRCPアップルRealFlowRinna Character PlatformiPhoneCALADeep FluidsSoul Machines柿沼太一MeInGameAmeliaELSIAIGraphブレイン・コンピュータ・インタフェースバーチャルキャラクターBCIGateboxアフォーダンスLearning from VideoANIMAKPaLM-SayCan予期知能逢妻ヒカリセコムGitHub Copilotユクスキュルバーチャル警備システムCode as Policiesカント損保ジャパンCaP上原利之ドラゴンクエストエージェントアーキテクチャアッパーグラウンドコリジョンチェックPAIROCTOPATH TRAVELER西木康智OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者山口情報芸術センター[YCAM]アルスエレクトロニカ2019品質保証YCAMStyleRigAutodeskアンラーニング・ランゲージ逆転オセロニアBentley Systemsカイル・マクドナルドワールドシミュレーターローレン・リー・マッカーシー奥村エルネスト純いただきストリートH100鎖国[Walled Garden]​​プロジェクト齋藤精一大森田不可止COBOLSIGGRAPH ASIA 2022高橋智隆DGX H100VToonifyロボユニザナックDGX SuperPODControlVAE泉幸典仁井谷正充クラウドコンピューティング変分オートエンコーダーロボコレ2019Instant NeRFフォトグラメトリartonomous回帰型ニューラルネットワークbitGANsDeepJoinぎゅわんぶらあ自己中心派Azure Machine LearningAzure OpenAI Service意思決定モデル脱出ゲームDeepLHybrid Reward Architectureコミュニティ管理DeepL WriteウロチョロスSuper PhoenixSNSProject Malmoオンラインゲーム気候変動Project PaidiaシンギュラリティProject Lookoutマックス・プランク気象研究所レイ・カーツワイルWatch Forビョルン・スティーブンスヴァーナー・ヴィンジ気象モデルRunway ResearchLEFT ALIVE気象シミュレーションMake-A-Video長谷川誠ジミ・ヘンドリックス環境問題PhenakiBaby Xカート・コバーンエコロジーDreamixロバート・ダウニー・Jr.エイミー・ワインハウスSDGsText-to-Imageモデル音楽生成AIYouTubeダフト・パンクメモリスタ音声生成AIGlenn MarshallScenarioThe Age of A.I.Story2Hallucination音声変換LatitudeレコメンデーションJukeboxAIピカソVeap JapanAI素材.comEAPneoAIテンセントSIFT福井千春DreamIconDCGAN医療mignMOBADANNCEメンタルケアstudiffuse人事ハーバード大学Edgar HandyAndreessen Horowitz研修デューク大学AIQVE ONEQA Tech Nightmynet.aiローグライクゲーム松木晋祐東京理科大学下田純也人工音声NeurIPS 2021産業技術総合研究所桑野範久リザバーコンピューティングプレイ動画ヒップホップ対話型AIモデルソニーマーケティングControlNetサイレント映画もじぱnoteNBA環境音暗号通貨note AIアシスタントFUZZLEKetchupAlterationAI News粒子群最適化法Art Selfie進化差分法オープンワールドArt Transfer群知能下川大樹AIFAPet Portraitsウィル・ライト高津芳希P2EBlob Opera大石真史クリムトBEiTStyleGAN-NADA世界モデルDETRゲームエンジンDreamerV3SporeUnreal Engineクリティックネットワークデノイズ南カリフォルニア大学Unity for Industryアクターネットワーク画像処理DMLabSentropyGLIDEControl SuiteCPUDiscordAvatarCLIPAtari 100kSynthetic DataAtari 200MCALMYann LeCunプログラミングサム・アルトマン鈴木雅大ソースコード生成コンセプトアートGMAIシチズンデベロッパーSonanticColie WertzGitHubCohereリドリー・スコットウィザードリィMCN-AI連携モデルマジック:ザ・ギャザリング絵コンテUrzas.aiストーリーボード介護大阪大学西川善司並木幸介KikiBlenderサムライスピリッツ森寅嘉Zoetic AIゼビウスSIGGRAPH 2021ペットGPT-4ストリートファイター半導体Digital Dream LabsPaLM APITopaz Video Enhance AICozmoMakerSuiteDLSSタカラトミーSkeb山野辺一記NetEaseLOVOTDreambooth-Stable-Diffusion大里飛鳥DynamixyzMOFLINゲーム背景RomiGoogle EarthU-NetミクシィGEPPETTO AI13フェイズ構造ユニロボットStable Diffusion web UIADVユニボPoint-EXLandGatoアパレルAGIAI model手塚眞DEATH STRANDINGマルチモーダルAI ModelsEric Johnson汎用強化学習AIZMO.AIデザインMOBBY’SOculus Questコジマプロダクションロンドン芸術大学モビーディック生体情報デシマエンジンGoogle BrainダイビングインディーゲームSound Controlアウトドア写真高橋ミレイSYNTH SUPERAIスキャニング照明Maxim PeterKarl Sims自動採寸Joshua RomoffArtnome3DLOOKハイパースケープICONATESizer山崎陽斗深層強化学習ワコール立木創太松原仁スニーカー浜中雅俊UNSTREETミライ小町武田英明Newelseテスラ福井健策CheckGoodsGameGAN二次流通パックマンTesla BotNEDO中古市場Tesla AI DayWikipediaDupe Killerソサエティ5.0Sphere偽ブランドSIGGRAPH 2020バズグラフXaver 1000配信ニュースタンテキ養蜂東芝Beewiseソニー・ピクチャーズ アニメーションDIB-R倉田宜典フィンテック投資Fosters+Partners韻律射影MILIZEZaha Hadid Architects広告韻律転移三菱UFJ信託銀行NeRF

ゲーム開発コスト削減の鍵となるのは「外のAI」である:三宅陽一郎氏×森川幸人氏 対談(後編)

2019.5.07ゲーム

ゲーム開発コスト削減の鍵となるのは「外のAI」である:三宅陽一郎氏×森川幸人氏 対談(後編)

モリカトロンAIラボの所長、森川幸人がホストとなり、さまざまなゲストの方からエンターテインメントとAIの最新情報についてお話を伺うモリカトロンAIラボインタビュー。4月26日に公開した「ゲームAIのこれまでとこれから:三宅陽一郎氏×森川幸人氏 対談(前編)」では、三宅さんがゲームAI開発者になったバックグラウンドから、特にゲームの中で使われているゲームAIの構造と歴史について解説していただきました。後編となる本稿では、QA(品質保証)やデバックといったゲームの外のAIが持つ可能性と課題についてお話いただきます。

今、伸びしろがあるのは「外のAI」

森川幸人氏(以下、森川):ここまでお話していたのは、三宅さんが言うところの「(ゲームの)中のAI」の話ですよね。モリカトロンに来る仕事の7〜8割がゲーム開発を効率化するためのAI、「外のAI」なんです。今の三宅さんとして関心があるのは、やはり「中のAI」ですか?

ゲームの中のAI、ゲームの外(周辺)のAI

三宅陽一郎氏(以下、三宅):今はゲームの外のAIのほうが伸び代はあるかなと思っています。僕がゲーム業界に入った頃からAIで開発工程を何とかできないかという話はあったんです。当時はAI技術そのものが高度でゲームの中に入れるだけでも精一杯だったんですが、今はAIブームのおかげでAI技術が使いやすくなっています。

データ解析やディープラーニングも動かしやすくなって、開発工程に導入できるようになったのが2017年くらいからですね。その動きが加速的にどんどん大きくなっています。CEDECのセッション数を見ると顕著ですが、AIの発表が10件になり、20件になりと増えていき、そのほとんどは開発工程におけるAIについてです。

両者が決定的に違うのは、外のAIはふんだんにメモリやCPUパワーを使えるということです。リアルタイムである必要もインタラクティブである必要もありません。つまり制限がほぼないんです。カスタマイズすることなく、AI技術をすぐに適応できます。いわゆる流行の画像処理、ディープラーニング、データマイニングと地続きのところにあるんです。

それに対して、中のAIがしていることは他の産業から見るとちょっと特殊すぎる。なぜ1/60秒のフレームレートで動かしつつ、インタラクティブかつ省メモリなAIという極限のところで曲芸をやっているんだ?という話になるわけです。

とはいえ、外のAIにしても1/60秒で動いているゲームを対象にしているので、これまでのQA(品質保証)技術が通用しないという課題があります。たとえば、通常のアプリは0.1~0.5秒に1回の頻度で画面を描き換えても問題がない。経路探索アプリがリアルタイムである必要はないわけです。

しかし、モバイルゲームとなるとすごいスピードで画面が切り替わります。デバッグで画面の差分を取るとき、通常のアプリなら最大でも0.1秒程度なのに、ゲームの画面の差分を取ろうとすると、0.1秒では全然違う画面になってしまうので、まず差分なんて取れません。1/60秒の画像処理が必要なのはそのためです。そこまで高速に画面を認識する必要があるのはゲーム以外だと自動運転くらいしかありません。

あと画面の状態ですね。状態が目まぐるしく遷移するので何をやっているかのログを取れない。ゲームの場合、ユーザーログをリプレイに使おうとしても、0.01秒ズレただけでボタンが消えて押せないということが起きてしまう。たまたま、そのときCPU処理がちょっと遅くなっただけでリプレイできないことになる。全然、使い物にならないわけです。そうなると結局、QAに対してAI技術を持ってくるまではいいけれど、そこからゲーム産業側がゲーム用にカスタマイズする必要が出てきます。それがなかなか難しいというのがだんだん分かってきたというところなんだと思います。

森川:モリカトロンでも今そこで本当に苦労しています。たとえばOCR技術。ゲーム画面を読み取れるかというと、ボタンだろうがバンバン動くし、エフェクトがかかっているので、外の世界のOCR技術がまったく役に立たないんです。一般の画像認識技術がすぐにゲームのQAでデバッグに使えるかというと、まったくそういうことはなくて、いちいちゲーム用に加工しなければならない。その大変さがようやく見えてきました。

三宅:2016年から2018年くらいで、ようやく、ゲームの自動デバッグというのは、世間的には特殊な問題が多く、ゲーム固有の問題がほとんどだ、ということが分かってきました。3D空間のカメラもそうで、こんなにガンガン動かすのはゲーム以外ほとんどありません。自動運転でさえカメラは固定されています。カメラを動かし放題にすると何が起こるかというと、学習データが取れないんです。同じ角度から映していないから。さらに「夕方になりました」といってシェーダーが変わってしまったりします。そういう課題がたくさんあるんですよね。

ディープラーニング、画像処理、データ解析といった、QAにかかわる要素技術としては第3次ブームで育まれたAI技術と同じなんですが、ゲーム特有の問題があって壁が結構高いというのが分かって。そこが今、ゲーム業界全体でやらないといけないところなのだと考えています。

組織を超えた研究開発を進めるためには?

森川:三宅さんがよく言われるように、外のAIのほうが産学協同でやりやすいし、他の会社との協業もしやすいですよね。

三宅:環境の特殊性がないのとテーマがアカデミックの流れの中に位置づけやすい。しかも、QAはゲームの守秘義務のない部分です。中のAIのデメリットが逆転してメリットになっているという構図ですね。

森川:ゲームの中のAIというのは、その会社のゲームの特性、内部情報がもろに入ってしまっているので、おいそれと共有するわけにはいかないですよね。でも、デバッグや開発工程の問題はみんなが同じように抱えている。しかも、学術的なテーマにもなり得るという。

三宅:そうですね。僕も大学にそういう研究テーマがありますと案内したり、会社に大学の先生を呼んだりしました。また、最近はゲームAIのコミュニティのSlackを作ったり、Mediumを作ったりもしています。ただ、研究のスピードがなかなか上がらないですね。成果が上がりにくくて。やはり、結局はみんな同じところでつまずいている。もちろん、海外の大手ゲーム会社、エレクトロニック・アーツなども外のAIに取り組んでいます。でも日本より進んでいるかというと、50歩100歩なのかなと思います。

ゲームAI開発者コミュニティ(Slack)

今、研究のフェーズとしてはおもしろいですね。2004年からこの業界にいますけど、まったく新しいフェーズなので。いうなれば、ゲームの外の話では日本もほぼ横並びで研究しているといっていい。モバイルゲームは日本のほうが進化しているので、モバイルゲームのQAに関してはその分アドバンテージがあります。

森川:日本以外もふくめて、みんな色んなところで同じ問題を抱えている。そこは共同研究で進めて、最終的にうまく利益を分散できればいいのかもしれない。

三宅:これは誰かが突破しないと。ゲームが大規模になるにつれ、どんどん人件費も釣り上がるわけで、開発費の何割かがQA費になってしまう。将来を考えたら絶対に必要なんです。

森川:モリカトロンでは今、自社用ですが、バグのあるゲームを作っています。1つはデバッガーのトレーニング用、もう1つはAIの学習用に。三宅さんが言ったようにQAには人員が必要だけど、人がたくさんいると当然質は下がる。要は、トップのデバッガーたちを育てる必要があるんですが、職人芸のようなものをどう教えるのか。そこをもうちょっと機械化しないといけないというところで。主観でテストしていてはダメなんですよね。

今後、デバッグをAI化していくにあたってのノウハウ、気付きを広くシェアしていきたいと考えています。みんなが利権がらみで様子見で、動きが取りにくいところをうちが突破口になることで現状を打破したいというのはありますね。

三宅陽一郎|YOUICHIRO MIYAKE

株式会社スクウェア・エニックステクノロジー推進部リードAIリサーチャー。国際ゲーム開発者協会日本ゲームAI専門部会設立(チェア)、日本デジタルゲーム学会理事、芸術科学会理事、人工知能学会編集委員。共著『デジタルゲームの教科書』『デジタルゲームの技術』『絵でわかる人工知能』(SBCr) 『高校生のための ゲームで考える人工知能』(筑摩書房)『ゲーム情報学概論』(コロナ社) 、著書『人工知能のための哲学塾』 『人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇』(BNN新社)、『人工知能の作り方』(技術評論社)、『なぜ人工知能は人と会話ができるのか』(マイナビ出版)。翻訳監修『ゲームプログラマのためのC++』『C++のためのAPIデザイン』(SBCr)、監修『最強囲碁AI アルファ碁 解体新書』(翔泳社)、『眠れなくなるほど面白い 図解 AIとテクノロジーの話』(日本文芸社)。

Writer:大内孝子

RELATED ARTICLE関連記事

AIが弱点の発見や戦術をアドバイスするeスポーツコーチングAIの台頭

2021.10.25ゲーム

AIが弱点の発見や戦術をアドバイスするeスポーツコーチングAIの台頭

【CEDEC2021】ディープラーニングとルールベースによるヒロインの「冴える」セリフ生成

2021.9.22ゲーム

【CEDEC2021】ディープラーニングとルールベースによるヒロインの「冴える」...

【CEDEC2020】オンラインゲーム『BLUE PROTOCOL』で敵AIにパーティを組ませる方法

2020.10.19ゲーム

【CEDEC2020】オンラインゲーム『BLUE PROTOCOL』で敵AIにパ...

RANKING注目の記事はこちら