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ゲームAIのこれまでとこれから:三宅陽一郎氏×森川幸人氏 対談(前編)

2019.4.26ゲーム

ゲームAIのこれまでとこれから:三宅陽一郎氏×森川幸人氏 対談(前編)

第3次AIブームの熱狂は落ち着きを見せ、徐々にAIが社会に導入され始めています。AIによってゲームはどのように進化していくのでしょうか? ゲームで発展したAI技術が外の世界から注目されるのはなぜでしょうか? 日本のゲームAIを牽引してきた三宅陽一郎さんに森川幸人がお聞きしました。

AIの実験の場としてのゲーム環境

森川幸人(以下、森川):三宅さんにまずお聞きしたいんですが、大学で数学や物理を専攻されて、それから人工知能の分野に入った。その動機はなんだったんですか?

三宅陽一郎(以下、三宅):博士課程では超電導工学の研究をしていたんです。超電導を電気回路に組み込んだらどうなるかというテーマで。合わせて、システム理論や現象学という哲学も勉強していて、それらを合わせるとこういう人工知能が作れるんじゃないかとアイデアが浮かんで、自分でプログラムを書き始めたのが最初です。それを「Self-referenced consciousness」として人工知能学会(2003年)で発表しました。

森川:そのときはまだゲームという要素は入っていないんですね。

三宅:後から考えるとゲームっぽいんですが、イメージとしてはマルチエージェント・シミュレーションです。当時は第2次AIブームが終わった人工知能研究者にとっての冬の時代で、マルチエージェントが流行っていた時期でした。就職活動では、エージェント・コミュニケーションをテーマにデモを作って「こういう研究をしたいんです」と、いろいろなゲーム会社に持っていきました。自動生成の研究もしていたので、3DCGで植物などを生成するデモも作りました。どちらかというと、当時は自動生成のほうが企業からは受けがよかったですね。

森川:何かのゲームにハマったから開発者になったわけではなかったんですね。

三宅:『ファイナルファンタジー』シリーズ(1987年〜、スクウェア)はシリーズを通してプレイしていましたし、『ゼビウス』(1983年、ナムコ)は初めて自分から欲しいと思ったゲームでファミコンでプレイしました。もともとゲームは好きだったんですが、特定のゲームに思い入れがあってゲーム業界に進んだというよりは、この技術でゲームが変わるはずだという信念があったから入りました。でも当時の僕は、ゲームがどう実装されているか、実はよく分かっていませんでした。そういう情報自体、あまり表に出てきませんでしたし。

森川:「こういうAIを使えば、こういうふうにゲームの遊びが広がるはずだ」というのは、今まさにモリカトロンがやろうとしていることです。

三宅:ゲームAIに限らず、そういうのは必要だと思います。僕はゲームを買う前が一番楽しいんです。ゲームのパッケージを見て、「こんなゲームでこうなっているんだな」と想像するのが好きで。それが今は非常に役立っています。実装する前にこの技術をこう入れると、こうなって、こうなるはずだって、自分でイメージできますから。案外そういうことをやらない人が多いんですが、ゲームAIの分野はそういう想像力が重要だと思います。想像力というと意外かもしれませんが、そこから逆算してどんな技術がどう必要なのかがぱっと出てくる。そういう部分が非常に大事だと思います。実際に作ってみるとぜんぜん想像通りじゃなかったとか、落とし穴がいっぱいあるんですが。

森川:AIをキャラクターにはめてどういう挙動を示すか見るように、ゲームという環境はいろいろやりやすいですよね。

三宅:まさにそうです。世界があり、物理法則があり、ルールがあり、目標があり、独自の問題設定があるゲームはAIの実験場として優れています。実は、人工知能の研究では、人工知能のための環境を整える作業が本当に大変なんです。アカデミズムから見ると、ゲームの中で進化した人工知能の流れというのが確実にあって、特に自律型エージェントの技術は、2003年から2013年の10年をかけて、ゲームが一番加速的に進めてきました。

リアルタイムでインタラクティブかつ自律的に動くという点では、ゲーム開発の中で他の追随を許さない形で進化してきました。他のアルゴリズム系は非常に大きな計算パワーが必要で、どちらかというとあまりゲームには向いていません。

森川:アカデミズムとゲーム産業の関係はどうだったんですか?

三宅:海外、特に欧州ではアカデミズムの人もゲームの特性をよく分かっていますし、どちらかというとアカデミズムとゲーム産業が一緒にやってきたという歴史があります。サンフランシスコ周辺の南カリフォルニア大学、スタンフォード大学ではゲームの開発者をアカデミック・カンファレンスに呼んだり、逆に、ゲーム産業から、毎年春に開催されているGDC(Game Developers Conference)に大学の先生を呼ぶなど、10年くらいずっと交流をしながら進んできました。

僕もスクウェア・エニックスに入ってからいろいろな国際会議に行くようになりましたけど、GDCに行っても大学の先生がいたり、アカデミックなカンファレンスに行ってもGDCと同じゲーム開発者がいたり、あまり垣根がないのを実感します。

森川:日本ではどうですか?

三宅:日本はまずゲーム業界がゲームカンファレンスなどに大学の先生をお呼びすることは少ないです。CEDEC(日本のゲーム開発者会議)でも大学の先生の講演は増えてはいますが、密接な関係を築けているわけではまだありません。大学でゲーム産業内でやるようなリアルタイムでインタラクティブなゲームAIを研究する所が本当に1つか2つくらいしかありません。それはアカデミックの中でのゲームの地位が低いのも一因あると思います。ゲームを研究するというと、「サブカルでしょ?」とイロモノ扱いされてしまう。

ゲーム産業側にも問題があって、以前のゲーム産業は非常にクローズな体質でした。また、他の産業と違って省庁との付き合い方もよく分かっていません。他の産業は高度成長期の頃から一緒に戦ってきた連帯感みたいなものがあるんですが、ゲーム業界は80年代あたりにぽっと出てきて、90年代になって急成長しました。大学の研究室から見ても、たとえば情報系の人から見ても何をしているか分からないんですよね。アセンブラでなんかゴリゴリ動かしてなんなの? みたいな。

ようやくアカデミズムとの接点ができたのが2002年頃、ニンテンドーDSが出る前くらいですかね。ゲームも誕生してから40年くらい経って、文化的にゲームを研究しようという海外の動きも起きていました。また、3DCGの技術がゲームで進んでいるので一緒に研究開発しましょうというのが細々と5年くらい続いて、今は結構密接に連携している感じはあります。ゲームのスケールが大きくなったことで、CG、AI、インタフェースなど各ジャンルのサイズが研究のサイズに合ってきました。それと、今の大学教授クラスがようやくゲームで育った世代になったことも大きいと思います。

森川:それは感じますね。「ゲームをやっていました」と公言できるようになった。

三宅:ただ、ゲームエンジンが無料化しているとか、アセットがダウンロードで簡単に購入できるといった、ゲーム開発の現場では当たり前になったことが、まだ浸透していないのがもったいないと思います。あとは、「じゃあそれで何を研究したらいいんだ?」という所を我々ゲーム産業側がうまく明文化できていないという問題もあると思います。

森川:そこを橋渡しできる人は確かに少ない…。

三宅:僕とか僕のちょっと後の世代になると、ゲーム産業でも研究できるんじゃないかと気づく人が出てきます。その世代がゲーム業界に入ってきて、うまく会社を利用しつつ研究しています。セガの粉川貴至さんとかトライエースの五反田義治さんとか、研究も実装もするというロールモデルが何人かいて、それを見た世代でちょっとアカデミックな人たちが入ってきて、いろいろなところで発表するようになりました。

先に、そのブームが来たのはCG系ですね。CGの研究者が2005年、2006年頃からたくさんゲーム業界に入ったんです。一方で、AIはまだ少ない。大学で研究するAIと産業で応用しようというAIとの間にはちょっと距離があるので、アカデミックな人からすると、自分がやっている言語処理とゲームで声優が話すことに、どんな関係があるのか? みたいになってしまう。むしろシミュレーション系、CGで何かキャラを動かしていましたという人は親和性があるので、比較的すっと入ってきていますね。

自律型エージェントの導入からメタAIでの制御

三宅:昔からAIはゲームで使われてきましたが、その整理もまだきちんとされていません。中身の話は知りたくてもまったく知ることができなかった。2000年当時、インターネットにアクセスしてそういう情報があったかというと何もなかったですし。

森川:そうですね、論文しかなかった。

三宅:2003年、2004年くらいからようやくインターネットに情報が上がるようになって。その頃から米国の産学連携がAIにおいて加速してきました。アカデミックなところで『HALO』(2001年、マイクロソフト)とか『StarCraft』(1998年、ブリザード・エンターテイメント)といったタイトルに使われているAIの話が公開されるようになったんです。昔は海外の情報しかなくて、2010年くらいまでは森川さんの本を除けば、ほぼすべて海外の情報のみ。じゃあ日本はどうなっているんだというのは、今やっと掘り起こして公開し始めているところです。

参考資料:ゲームAI用語辞典

森川:ゲームAIの進化の流れについて、お話してもらえますか?

三宅:僕が東大の博士課程にいた2001年くらいには、まずエージェント技術が流行って、いろいろな知識がまとまりつつありました。エージェントとは「役割を持つ人工知能」のことで、ゲームキャラクターのことだと思ってください。ゲームキャラクターは必ずゲーム内で役割を持ちますから。マルチエージェントとは、キャラクターを出して彼らを連携させること。簡単にいうと『ピクミン』(2001年、任天堂)みたいなイメージです。 しかし、エージェント技術を土壌にそれを研究しようというときに、そのエージェントとゲームが、当時はまったく結びついていなかったんです。

ちょうどGDCで『HALO』の技術のセッションがあったのが2002年。この頃からエージェントとゲームキャラクターが同じだという文脈がGDCに来る開発者の間で形成されていきました。今の「自律型エージェントとしてゲームキャラクターを作る」というビジョンがまず開けたんです。そのビジョンがあるおかげで、アカデミックの人とゲーム産業の人が、キャラクターとは自律型エージェントなんだという方向で研究を進めていくようになります。それが2002年から2010年くらいに起こったことです。

その時にロボティクスで使われているAIの技術をゲームに導入しましょうという流れになりました。ロボットはゲームのキャラクターとほぼ同じで、「センシングして、意思決定して、行動する」のをリアルタイムでインタラクティブに処理します。その技術をそのままキャラクターに持ってきたのが、今のキャラクターAIの基礎です。ロボティクスを開発している人は身体となるハードウェアと環境との接地を真面目にやらないといけませんが、ゲームは現実ほど制限がありません。もちろん地面に接地して動かすなどの計算はしますが、嘘はいくらでもつける。そのように徐々に形成されて、自律型エージェントになっていきました。

森川:それまで外側から、「あれをやれ、これをやれ」と言われて動いていたエージェントが自分で考えて動くようになったということですね。

三宅:はい。それがブラッシュアップされて今に至ります。技術的には2010年くらいまでに大方が出尽くした感があります。自律型エージェントになると何が問題になるかというと、制御が効かないんですね。初期のFPS(First Person shooter)はそれでもよかったんです。プレイヤーの近くで兵士が賢く動けばいい。でも、だんだんゲームのスケールが大きくなっていくと、それではまとまりがないということになって、いかにエージェント同士を連携させるかという課題が生じました。

チームという概念、さらにはチームのさらに上位の概念も必要だということで、階層化が導入されました。ただ、それでもやはり自律型には変わりがないので、組織としては回るけどゲームとしてはどうなんだ、ということになります。ゲームなので、キャラクターが自律型で動きますというだけではダメで、ユーザーを楽しませないといけません。

そこで、FPSで自律型エージェントを作っていたValve Softwareというアメリカのゲーム会社がAIディレクターという概念を打ち出してきます。AIディレクターはキャラクターをコントロールすることに特化していますが、それを含むより大きなゲーム全般をコントロールする概念として「メタAI」があります。

Valve Softwareは2000年から2010年のゲームAIを牽引した会社で、2000年の段階で『カウンターストライク』(2000年、Valve Software)というゲームで、エージェントに地形を認識させるために張り巡らせるナビゲーションメッシュを導入しています。それまでナビゲーションメッシュがないわけではなかったんですが、大きなゲームとして大規模に実装したのは『カウンターストライク』が最初です。しかも自動生成だったんですね。

『カウンターストライク』は1000万本くらい売れて、当時としては大ヒットでした。これは偶然でしたが、ゲームとしての緩急が取れていて非常にテンポがよかった。彼ら自身も売れた後にそこに気づいて、今度はその緩急を人工的に作ろうとして、次のゲームタイトル『Left 4 Dead』((2008年、Valve Software)に導入したのが複数の自律型エージェントをエンタテインメント的にコントロールするメタAIです。生成からアタッキングのタイミングから種類から、ゲームデザイナーの知能をそこに入れようとしました。それが2008年くらいの話です。

具体的には、ユーザーの手の発汗量を取っていて、そのスキンコンダクタンスから緊張度を推定し、緊張しすぎたら敵を出さない、リラックスしたら再び敵を出すということをしています。それがだんだん有名になって他のタイトルにも入っていった、という流れです。今は、そのメタAIをどう発展させるかという段階です。でも、メタAIの登場からもう10年が経ってしまったわけですけど。

メタAI、キャラクターAI、ナビゲーションAIへの分化。それぞれが連携することでゲームシステムが成立する

森川:他の産業から見ると、ゲームで進化したAIはどういう感じに受け取られているんですか?

三宅:自律型エージェントは伝統的にロボティクスがあったから、それほど驚かれませんでした。「ゲームのキャラクターって自律型だったんだ、まあ当たり前だよね」という感じです。一方、メタAIのほうは、ロボットとか自動運転の分野で新鮮に映るようで、受けがいいんです。何もかも自律型エージェントでやろうとするとしんどいというのが彼らはよく分かっていますから。いくら家庭用ロボットを賢くしても、現実に適応させるには足りないんです。なぜかというと、自律型エージェントにはキャラクターの視点しかありません。もう少し上からの視点も必要なんです。

二重の仕組みというのが昔から人工知能にはあって、ロボカップサッカーなどではファシリテーションモードといって、上から調整するAIとロボットたちが一緒に動くというやり方をしていた時期もあります。調整するAIはファシリテーター(調整者)と呼ばれますが、それをゲームAIにおいてメタAIと呼び替え、ファシリテーションよりも深くユーザーを理解してゲームを展開させるものに発展させました。それが今の社会における人工知能の導入にも必要なんじゃないかという文脈もあり、メタAIがゲーム産業以外で注目されています。

>>後編に続く

三宅陽一郎|YOUICHIRO MIYAKE

株式会社スクウェア・エニックステクノロジー推進部リードAIリサーチャー。国際ゲーム開発者協会日本ゲームAI専門部会設立(チェア)、日本デジタルゲーム学会理事、芸術科学会理事、人工知能学会編集委員。共著『デジタルゲームの教科書』『デジタルゲームの技術』『絵でわかる人工知能』(SBCr) 『高校生のための ゲームで考える人工知能』(筑摩書房)『ゲーム情報学概論』(コロナ社) 、著書『人工知能のための哲学塾』 『人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇』(BNN新社)、『人工知能の作り方』(技術評論社)、『なぜ人工知能は人と会話ができるのか』(マイナビ出版)。翻訳監修『ゲームプログラマのためのC++』『C++のためのAPIデザイン』(SBCr)、監修『最強囲碁AI アルファ碁 解体新書』(翔泳社)、『眠れなくなるほど面白い 図解 AIとテクノロジーの話』(日本文芸社)。

Writer:大内孝子

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