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生活にとけこむAIとの生き方を考える:学校関係者×AI体験コンテンツ開発者による座談会 後編

2022.11.08先端技術

生活にとけこむAIとの生き方を考える:学校関係者×AI体験コンテンツ開発者による座談会 後編

私たちの身の回りで利用が進むAIについて、学校教育の現場では何を教え、学び、気づいてもらうことができるのでしょうか。前編に引き続きAI体験コンテンツ『AIロボ「迷キュー」に挑戦』を取り入れた新しい授業に挑戦する教育関係者の方たちと開発者による座談会の後編では、AI教育の在り方から未来の人材育成へと話が拡がりました。

シンプルにすることで学びの可能性が広がる

高橋ミレイ(以下、高橋):ともすれば知らないがゆえに過剰にAIに期待したり、怖くなることは大人でもあります。自分の周りを見ても、小学生の親世代の方でITやゲームにアレルギーがある人がいたり、逆に積極的に教育に取り入れる人がいて、その温度差が子どもたちの学びやリテラシーに影響するかもしれないと感じることがあります。

加納史子(以下、加納):私は、そうした影響をあまり感じていないのですが、ご家庭や地域によって違いはあるのかもしれません。学校では1人1台タブレットが配布され、約束はありつつもある程度は自由に使わせているので、興味を持って色々作ったり試したりする子もいます。もちろん、あまり興味がない子もやっぱりいます。そのため、授業は得意な子と経験が少ない子を2人1組にして、お互いに教え合ったり、聞き合ったりして、共に学べるようにしています。

赤羽進亮(以下、赤羽):toioは電源を入れてパソコンやタブレットにつなぐだけですぐ動かせるロボットなので、コンピューターが苦手な子どももすぐ始められるのが特徴です。学校の授業時間内にやりたいことができるようにするためにも、シンプルな構成で手軽に幅広く楽しめるようになっています。

銭起揚(以下、銭):toioの上にレゴを積んだりカスタマイズができるので、プログラムが得意な子も色々楽しめるようになってます。

加納:迷キューはシンプルなので無限の可能性を秘めていて、それぞれのレベルにあわせて取り組みやすく、苦手な子もそれなりにやればゴールできるので達成感を感じられると思います。ソニーの赤羽さんに、AI によって実現される新たな未来について、 AI の良さ、そして人間のすばらしさを教えていただき、お互いの得意なことを認め、苦手なことを補い合うと、もっと安全で楽しい未来を作っていくことができることをお話いただいたことで、考えを深めることもできました。授業をきっかけにAIに興味を持つようになり、将来はAIを作ったり、使ったりできる人間になりたいという感想を持った子どももいました。

高橋:高校生ぐらいの年齢の子どもたちはAIに対して具体的にどういうイメージを持っているのでしょうか。

吉田:おそらく自動運転ですとか、SiriやAlexaといった人工知能系をイメージしてると思います。そんな彼らにAIについて説明する時に、内閣府が作成した「Society 5.0の社会」というYouTubeでも公開されている動画を紹介すると、意外と身近なところにあるんだと気づいてもらえることがあります。

森川:スマートスピーカーやロボットは生き物感というか、実存がありますし、会話ができるので、会話の中で理解や共感をしてもらえるので、よき友だちになれると思います。個人的にもそういう方向に興味を持ってほしいと思うところもあります。

赤羽: 当初、AIのコンテンツを作りたいとモリカトロンさんに相談した時に、最初に出てきたコンセプトが「AIと友達になろう」でした。toioでリアルに手を使ってAIに触れ合うことで、吉田先生が指摘するITやAIの難しいというイメージに対するハードルを下げられ、誰でもAIが身近に感じられるようになっています。また加納先生の授業では、先生と迷キューが対戦する時に子どもたちが歓声をあげて「迷キュー、がんばれ!」と応援するほど感情移入してくれて、まさにAIが子どもたちの身近な友達として認められていました。私にとって最初のコンセプトが実現された非常に印象深いシーンでした。

森川:我々から見すると今のAIは実用面に走りすぎて、AIが持つポテンシャルが過小評価されていると感じるところもあります。そういう意味では、小学生から高校生ぐらいまでの若い感性を持つ人たちの方が、AIの未来に対して本質をつかんでいる可能性があるかもしれないので、杓子定規にAIはこういうものだという教育ではなく、自由に使い方を発見してもらえると嬉しいですね。

技術とあわせて探求心や倫理観を育むことも必要

森川:加納先生は以前からプログラミングに詳しいのでしょうか?

加納:私は、プログラミングに詳しくありません。授業も1から作りました。私自身も勉強しながら、子どもたちにどう学ばせていくか試行錯誤をしながら、ゼロから始めたという感じです。授業を作るにあたって、文部科学省の学習指導要領は目を通して基本的な方向性を確認し、他の先生からお知恵もいただきました。その上で、今回は”AIと共に生きるために、今大切なことは何か”を考えられるように展開を考えました。

赤羽:加納先生がAIの概念を理解するスピードには驚かされました。知識がゼロの状態から始めた上で子どもたちに勉強したことをきちんと伝えていたので、とても分かりやすく、私自身も勉強になりました。

吉田:教育として考えると、初等中等教育までは倫理感や探求心を育むことはすごく大事だと思います。AIの可能性や楽しさをもっともっと広げていくには、子どもたちが探求心を持って色んなものにアクティブに取り組むことが必要ではないかなと強く感じています。

森川:toioという実体があるものを使えたのが多分大きくて、実際目の前で動いて、触れる体験と紐付けてAIを学べるというのは大きかったような気がします。

吉田:私たちの学校は以前はpythonを使ったプログラミング体験授業をしていましたが、圧倒的にそれよりもtoioを使った体験の方が盛り上がりますし、結構のめり込んでくれます。

森川:迷キューもそうですが、最初のハードルが非常に低く設定されているので、学校教育以外にもお年寄りの認知症予防など、物を触りながらAIを体感していくことは今後は大きなポイントになりそうです。もうロボットとAIを区別して考える時代ではないですね。

吉田:AIで暮らし自体はすごく便利になると思いますが、心も一緒に豊かになるには、幸福とはどういうことなのかといったことや、生命や哲学的な面についても色々問いながら考えていかなければならないと感じています。

視野を広げ、経験を積み重ね、自分で考える

高橋:倫理感といえば、先日静岡県で水害があった際に、AIを使った画像生成ツールで作られた偽の災害現場の画像がSNS上で拡散されて大騒ぎになりました。身近に使える技術のレベルが高くなると、必ずしも悪意ではなくともウケ狙いの軽い気持ちで間違った使われ方をされることもあり、何をしてはいけないかも同時に教えなければいけないと思いました。

加納:今の子どもたちはタブレットに触る時間が私たちの子どもの頃と比べてすごく長いですし、学習形態もガラッと変わっています。情報機器を使いながら学習するので、情報教育も同時に進めています。例えば、正しい情報かを確認することや、インターネットトラブルにならないために気をつけなければならないこと、です。

高橋:今後はもしかするとAIという名前すら意識されなくなるぐらい技術が世の中に普及していくかもしれません。そうした時代に活躍できる人たちを育成するにはどんな教育が必要だと思われますでしょうか。

吉田:専門学校は、ITプログラミングの専門技術を身につけることがカリキュラムになってはいますが、同時に社会で活躍できる人材を育成する使命があると個人的には思っています。世の中にITやAIに関する技術にどういったものがあるのか、視野を広げる授業も本校では用意していますし、そこを踏まえつつ自分の頭で考える力を身につけて、問題解決できる人材を輩出するよう目指したい。それもAIを使って活躍できるような人間になってもらえるよう、育成に力を注いでいきます。

加納:AIがこれから普及していく中で、論理的思考力を鍛えていくことが、AIと共に生きていくときに大切な要素だと感じています。学校は失敗してもそこからどうするかを考える場所ですし、小さい頃から色んなものに触れたり遊んだりして、友達と接しながら人間関係のルールやマナーを身に付けたり、経験を積んでいくことで論理的思考力が鍛えられていきます。それを積み重ねていくことで、将来はAIと共に生きていくことができるようになるのではないかと考えています。

授業ではプログラミングを学ばせるだけではなく、その背景にどのようなことがあるのか、生活にどのように関わっているのかというところを大切にし、楽しみながら、実はこれはここに繋がっていてこういうことに関わっているのだということを感じてもらえると嬉しいですね。私は、自分の未来を自分で切り拓いていける子どもたちになってほしいので、明るく、前向きに、そして強さ(信念)をもって進んでいくことができるように、一つひとつの関わりを大切にしていきたいと思っています。

赤羽:AIと人間はどちらが上かみたいな話になりがちですが、これからは人間が生んだAIから人間自身が刺激をもらって新たな発想を得るようになり、そこからまた人間が迷キューのような新たなAIを生むといった、新しい関係性が生まれていくと感じています。そういう意味で、子どもたちがAIを「怖いもの」ではなく、「仲良くすることで新しい未来を生み出せるパートナー」として捉えてくれたらありがたいですね。

Writer:野々下裕子​​、写真提供:杉並区立高井戸第四小学校

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