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AIとアートが提案するヴィトゲンシュタインへの新しい解釈

2022.9.08音楽

AIとアートが提案するヴィトゲンシュタインへの新しい解釈

Max Cooperと言えば世界各地のメディア・アート系のイベントに出演している常連アーティストで、その方面に興味のある人には覚えのある名前でしょう。かく言う私も、ここ数年の間、日本やヨーロッパの大小のイベントで彼のオーディオヴィジュアル・ショーを何度見たか分かりません。Maxは科学とアートを横断するアーティストとして、エレクトロニック・ミュージックとヴィジュアル・アートを組み合わせたライブショーやライトアートや4D音響などを駆使したインスタレーションといった形で、音楽とテクノロジーを組み合わせる形でこの数年活躍してきました。

そのMaxが新作「Unspoken Words」でAIを活用したと聞いた時、違和感がありませんでした。ただし、そこには一捻りあって、20世紀の哲学者ヴィトゲンシュタインの著書『論理哲学論考』の言葉をAIでヴィジュアル化したということです。

最近、言葉の入力でAIに絵を描かせることが流行となっていますが、それより数か月早い2022年2月に、AIがヴィトゲンシュタインの言葉を描画するミュージックビデオ「Exotic Contents」は発表されました。意味のある像を結びそうになりながら、最終的に何になっているか分からない悪夢的で奇妙な映像と音楽。それらが絶妙な呼吸で組み合わされて、単なるケレン味に留まらない傑作となっています。

AIが20世紀前半期に書かれた哲学の言葉を認識して描き出した画は、人間が言葉を解釈した場合の意味内容への重み付けとはかなり違うもののように思えます。このミュージックビデオは音楽家と機械学習の専門知識を持った映像作家、そして”AI”という存在があって成立したコラボレーション作品でしょう。アーティストとして専門家の協力を仰ぎながらAIをふくむ諸技術とどのように関わって作品を制作しているのか、最新作「Unspoken Words」を携え開催されたオーディオヴィジュアル・ショーの前に、7月下旬のバルセロナでアーティスト本人から話を聞きました。

新作は言葉になっていないことを伝えている

——あなたが今まで映像作家たちと盛んにコラボレーションして熟れていった成果だと思いますが、今回のアルバム「Unspoken Words」のために制作された一連のミュージックビデオは映像と音楽の協調関係がとても面白く感じられました。過去の作品ではそこまで感じなかったのですが、何というか…“新しい段階に到達した”と個人的には感じました。

Max Cooper(以下、Max): ありがとう(何だか嬉しそうに)。自分が感じていることが言葉にまとまらないこともあるよね。題名が「Unspoken Words」だから、もちろん言葉になっていないことを伝えている。だから、それでいいんだと思うよ。

——内容をより良く理解してもらうために「Unspoken Words」の楽曲のビデオでは一つひとつに丁寧な解説をつけていますよね。すでに何曲かビデオクリップが公開されていますが、他の楽曲でもビデオを制作される予定ですか?

Max:「Unspoken Words」の全部の楽曲がミュージックビデオとしてドルビーアトモス形式でマスタリングされて、Blu-rayでリリースされる予定だよ。すべての楽曲がナラティブな背景を持っているので、詳しく解説しているんだ。

——ミュージシャンがいて、ビジュアルアーティストがいて、そしてAIがいる。あなたがその共同作業のリーダーで、まるでジャズバンドのトリオによる即興のように感じられたんです。音楽はほぼ一人で作って、ミュージシャンとのコラボレーションはあまりしていないようですが、映像のアーティストとは沢山行っていますよね。

Max: そうなんだ。たまにシンガーをフィーチャーしたり、音楽家ともコラボレーションしているけれど、ずっと建築家とか数学者といった音楽の外の人たちばかりと付き合ってきたね。もともと計算生物学の研究者だったし。

——数学の研究者とはどんな風に仕事をしているんですか?

Max:長年一緒に仕事をしている数学者には2人いる。Andy Lomasは「Seething」のビデオやZaha Hadidの建築を使ったライティングショー「Behaviour  Morphe」、VR作品「Chromas」のプロジェクトをそれぞれ行った。そして最近組んでいるMartin Krzywinski、彼の場合は数理生物学(Biomathematics)の研究者だけど、データ・ビジュアライゼーションの専門家と言った方がいいかもしれない。

サイエンスジャーナルでデータの視覚化を行う仕事をしていて、画面を円周率の数字で区切っていくアニメーション作品「Transcendental Tree Map」を手掛けたり「Transcendence」で大聖堂の内部に超越数を使った映像のプロジェクトマッピングをおこなった。 伝統的なビジュアルアーティストとももちろん仕事はしているけれど、数学的なコーディングのために専門的な数学者と仕事をしているんだ。

現在は建築家集団Architecture Social Clubとイルミネーションによるインスタレーションに取り組んでいて、今夏のMUTEKモントリオールに出展するんだ。壁からケーブルを張って、そこに映像を3次元的にライブ投影している。

 

 
 
 
 
 
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難解な部分や美しい部分はすでに自然の構造の中にある

——例えば数学者と仕事をするときは、何をゴールとして設定するのでしょうか。もちろん彼らは数学が得意ですが、その良し悪しはプロジェクトの中でどのように決められるのでしょうか。

Max:プロジェクトに際して、僕は何をしたいか事前に明確なアイデアを持ってコラボレーターに提案している。僕の多くの作品は自然の中にある美しさを芸術として取り出すもので、それを技術的に数量的にどう扱う必要があるかを伝える。難解な部分や美しい部分はすでに自然の構造の中にあって、それを抽出しようとしたり、誰も今まで見たことがないことを見つけ出したりしようとする。それが挑戦なんだ。

本物の自然のモデルを使ってどうしたら美しくなるか考え、その本質を観察していると、僕もビジュアルアーティストたちも知らなかった多く学びがある。そして、いつもうまく機能するわけではなくて、変更があり、コミュニケーションが必要になることもある。そして、もちろん楽しんだりもするんだ。アートがまさにそうであるように。特に数学者たちとの作品では、そういうことが多い。

——ヴィトゲンシュタインの言葉をAIで視覚化することと数学を視覚化することの間に共通する点はありますか? 哲学や言葉そのものはイメージを持たないので、彼の本を読んで私たちは頭の中で言葉の意味は考えても、視覚化するわけではありません。

Max:メカニカルな手順を踏んでイメージを生成することに挑戦したという点では共通していると思う。円周率の数字を読み込む代わりにヴィトゲンシュタインの言葉を機械学習の仕組みに取り込んだ、ということだと思う。そのプロセスは違うけれど、メカニカルな手順を通過しているというところは共通している。

「Unspoken Words」のプロジェクトでは、言葉の限界の中でどのようにコミュニケーションが行えるか、また言葉の外で音楽や芸術や振る舞いによってコミュニケーションがどのように行えるか、ということを考えた。僕は哲学が数学と同じぐらい好きで、それらは同じコインの表裏のようなものとして不可分な存在だと思っている。言葉の限界は哲学の限界でもあり、その問題について考える時にヴィトゲンシュタインの著書を使うことを思い付いたんだ。音楽や芸術は言葉で制限されているわけではない、ということは「Unspoken Words」のテーマなんだ。

各シーケンスで使われているヴィトゲンシュタインの言葉は
YouTube画面内の赤いタイムラインの下に表示されている。

「機械学習」「ヴィトゲンシュタイン」映像作家に最初に伝えたのはこの2語だけ

——プロジェクトを開始するときはどのようにコラボレーターに打診するのですか?楽曲のステムを送ったりするんでしょうか。

Max:通常は、最初はただプロジェクトが何かを伝える。例えば「ヴィトゲンシュタインと機械学習」とか。

——え、ヴィトゲンシュタインと機械学習のたった2語?(笑)

Max:そう、それからもう少しディテールも伝えるけれど。とりあえず核になるアイデアの概要とそこから逆に何をしたいのかを相手に伝えていくんだ。僕が何をしたくて、それであなたに個人的に連絡した理由はこれで、あなたは以前にこれをしていたから、僕がプロジェクトをやり遂げるためにこれをしてほしくて、あなたにとっても興味深いものになると思うな、タイムラインはこうで、予算はこのくらいで…と言う感じで話を詰めていくんだ。

——シンプルじゃないですか。

Max:そう、シンプルなんだ。そんな風にプロジェクトは始まるんだ。何組かのアーティストはシンプルだからという理由で、自分と仕事をしてくれている。自分のアルバムはすべて、科学や哲学に関して読んでは時折メモに書き溜めているアイデアがあるので、そこから取り出して制作されている。そこに一貫性があり、筋が通っていると思ったら、映像作家たちに連絡を取る。

アーティストによるけれど、自分のアイデアをいくつか伝えて、どれがいいか選んでもらったり、相手からも興味のあるアイデアを出してもらったり、柔軟なプロセスを経ているよ。彼らの中には大企業との商業的なプロジェクトも経験しているけれど、僕には大企業のような予算はもちろんないから、彼らに商業的なプロジェクトとは違ったことでやりたいことがあれば、それを取り入れてもらうこともある。自分も特定のシーンや進行について、こうしたいというこだわりがあったりすることもあるし、彼ら自身が幅広いアイデアを持っていることもあったり…。

——状況に応じて、即興的に決めていくということですね

Max:そう、即興だね。アーティストによってやり方も違うし、決まったひとつのやり方というのはないんだ。

——クリエイターたちにアドバイスするとしたら、あなたの経験からプロジェクトを実行するために何が最も大切で難しいか、どんなことを言えますか?

Max:大切なことと難しいことはそれぞれ違うことだけど、最も大切なことは明瞭さ(Clarity)。タイムラインや予算、進捗管理、連絡、何をするのかをはっきりさせること。我々は下書きやスケッチを持っているから、それでどんな音楽になるかどんな映像になるかお互いに理解しておくこと。言葉は使い方が違っているかもしれないし、はっきりお互いが理解できていることを確認することが重要だ。

難しいところは、何かうまくいっていない時、プロジェクトをうまく仕切り直すこと。自分が好ましいと思う方向に物事が動いていない時に、僕は人々を慌てさせるのは好きではないので、そうならないようにうまく軌道修正することかな。いつも問題があったとしても、最終的にはうまく修正できているけど、そこには人とのコミュニケーションがいつも欠かせないと思う。

作曲アシスタントとして提案をするAIが欲しいんだ

——アーティストとしてご多忙だと思いますが、AIや何かしら新しい技術を取り入れる上で、あらかじめどのくらいのリサーチをそれぞれの技術に対して行っているのでしょうか。例えば私の場合は、AIに関してはGoogleの研究グループの情報を定期的に見る程度はしていますが、ジャーナリストとして音楽とテクノロジーに関することすべてをフォローできてはいないんです。

Max:毎日科学に関する情報には目を通して、新旧のテクノロジーやテクニックやアイデアについて学ぼうとしているけれど、僕の知っていることも氷山の一角である、ということは意識している。

AIに関しては、計算生物学をPhDで研究していた時に遺伝的ネットワークの進化に関するシミュレーションをしていたんだけど、細胞の中で何十億年の間に行われていた遺伝情報の転写は機能的・論理的にコンピューターがやっていることと同じようなもので、生物学にも機械学習と同等としてとらえられるシステムがある。まあそもそも機械学習は生物学の神経ネットワークの仕組みからインスパイアされている部分もあるよね。

そんなわけでこれまで学んだ生物学も役に立つから、AIについて基礎の部分から理解するための学習は特に必要はないけれど、GANの種類がどうとか、AIのテクニカルな専門家ではない。何が重要かを考えながら、今回コラボレートしたXander SteenbruggeのようなAIの専門家に頼み、僕はクリエイティブ・ディレクションを芸術の側から行っているという訳なんだ。

——AIはあなたにとって、頼り甲斐のあるツールになると思います?

Max:うん。AIMIというモバイルアプリケーションは知ってる? アーティストから提供された楽曲をいくつか聴いて、好きな部分やそうでない部分をAIに伝えると、その情報をもとに音楽が生成される無料のソフトウェアなんだ。僕もステム(楽曲の素材データ)をいくつか提供していて、聴くと自分そのものではないけれど、自分らしさがいくらか感じられる。こういうツールはすでに出されているね。

あとAIというか、自分は楽器を演奏しないので、その代わりに自分で作ってジェネラティブ・ツールを音楽制作で使ってるね。シンセサイザーがあって、コンピューターがあって、ジェネラティブ・ツールがあるという感じ。もう10年間音楽制作を続けて、自分にとって好ましい制作環境になるように整え続けているから、もうそれはAIみたいなものなんだよ。

——つまりアルゴリズムやジェネラティブ・ツールにあなたの音楽的な嗜好を反映させようとしているということですね?

Max:そういうこと!ずっと背後で動いていて、作曲アシスタントとして自分に対して提案をしてくれる、そういうツールが欲しいんだ。

——AIはスタジオの音楽制作だけでなく、ライブでも使いたいですか?

Max:混沌とした小さな断片として、ある程度予測が付く部分でライブ用AIを使ってみたいとは思うけれど、ショーのすべてで使いたいとは思わないかな。もちろん機械学習を自分のプロジェクトの音楽面に取り入れることはこれから必須だと思うけど、自分のショーの場合は、正確に注意深くキュレーションされている部分があるから。しかし、すでにライブでAIを使っているミュージシャンはいるよね。前のSonarに出てた人…。

——僕も注目してました。2019年の、ええと、Hostess?英国人の男の人。

Max:ホステスではないよ、でもなんかそんな名前。同じ人のこと言ってるよね(注:後から確認したところ、正解は英国人アーティストのActress。自身の音楽制作を学習させたAIをライブで活用していた)

——友人が彼のショーに来ていて、あまりに難解で「ごめん、流石にこれは分からへん!」と言われた記憶があります。あなたの音楽もそういう意味で技術が分かっている人は楽しめるけれど、一般の人に理解しづらい部分もあるのではないかと思いますが。

Max:そうかなあ。僕は自分の音楽はみんなにアクセスしてもらえるものだと思ってるけれど。僕の音楽はシンプルなハーモニーやコード進行に基づいているし、分かりやすいと思う。細部に凝って独特な部分もあるけれど、そんなに分かりにくいものだと思ったことはない。

——学術的な作曲活動のような感じではないですものね(笑)

Max:そうそれ(笑)科学的なアイデアは取り入れてるけれど、僕の音楽は人間の感覚を入れることをいつも重視している。世の中にはもっと難解な音楽がすでに存在しているし、自分のはもっと分かりやすいよ。人間と同じ仕事をするAIを目の当たりにするような昨今のテクノロジーの時代で、人と機械をどのように関係を持たせるかという意識は僕の音楽のエッセンスに入っていると思う。

ヴィトゲンシュタインが見てたら、怒ると思う

——あなたはヴィトゲンシュタインの言葉の全部ではなく一部を材料として使ってそれを調理したわけですが、 彼がこの作品を見たらどう感じると思います?

Max:彼がこの作品を見てたら、怒ると思う。

——ちょっと、そこまで言わなくても!(笑)『論理哲学論考』は100年も前に出版された本ですよ。

Max:だけど、非常に難解で濃密な内容で、彼は全部それを伝えたかったと思う。その濃密さをそのまますべて僕の作品に入れていたら、彼は幸せだったろうけれど。もちろん彼は自分の考えが再びプロモートされて嬉しいだろうとは思う。僕の作品が見せるちょっとした芸術表現が、もとの情報源である原書や論文に興味を持つきっかけになることだってあるだろうし。

——あなたが取り上げなかったら、彼のことを知らなかった人もいるでしょうしね。私も彼の名前や本の要約ぐらいは知っていたという程度でした。

Max:僕も本のすべてを読み込むことはできなかったよ。その定義や本格的に哲学的な研究をしようと思ったら、それだけで数年かかると思うし。AIにしろヴィトゲンシュタインの言葉にしろ、それぞれの専門分野について本気で学んでいたらとても時間的に追いつかない。だから学びたいことばかりあって人生の時間が足りてないことに苛立ちを感じているんだ。

——少なくとも、言葉はあなたをインスパイアしたということですよね。

Max:その通りなんだ。僕にしてみたら、彼の言葉はほぼ芸術作品として立ち現れるように書かれていた、という風に見える。そこで「Symphony in Acid」では彼の言葉そのものを見せる演出を行った。

ヴィトゲンシュタインの言葉がタイポグラフィのハイライトで表現されている。

僕たち人間はどこかしらマシンのようでもあると感じている

——それにしても、またなんで題名は「Symphony in Acid」なんですか?

Max:弦楽器パートをシミュレートするソフトウェアを利用したんだけど、アシッドハウスの定番シンセサイザーTB-303のオーケストラの音色を連想させたから、というだけの話なんだ。他のビジュアル・プロジェクトに付けた題名と違って、これは音楽と機材のことなんだ。

——変な題名ですが、同時にユーモアも感じました。作品制作においてユーモアは重視しますか?

Max:うん!もちろん。僕はアイルランド人なんだ。ユーモアはアイルランド文化で大きな役割を持っていて、自分にとってもとても大切なんだ。それは人生の困難な時期を乗り越えるために必要なものだからだと思う。

ユーモアは狂気から自分を遠ざける遊び心(playfulness)と結びついてる。楽曲を書いたり試行錯誤する過程で自分自身をシリアスにとらえすぎず、多くの間違いを許容しなければ、新しいことを何も見つけられないと思う。僕は自分の作品をあまりシリアスにとらえることがない、もし間違いがあったとしても自分自身を笑い飛ばすことができる、それで僕は幸せなんだ。ユーモアの効用にはそういう側面もあるかな。

——コンピューターを扱っていたら、多くのエラーを受け入れないといけないですしね、永遠に。

Max:そう、作品はかなり技術を真剣に取り入れ、大切なアイデアをふくんでいるけれど、僕は人間なんだ。僕のアイデンティティや人となりについて語る時に、人間であるということは外せない。

よく人々は僕に「あなたは何に当てはまるのか」と尋ねたり、決まった枠の中に僕を入れようとするけれど、人間はそんな枠に入り切るようなものではないと思う。沢山のアイデアや感覚があったり、はっきりとどこかで線引きして分けられない、不可算な存在がそもそも人間だから。

——数学的に正確なコンピューテーションと常に同質ではない気まぐれな人間とのコミュニケーションの間で、あなた自身は社会生活の中でどのようにバランスを取っていますか?

Max:例えを出すなら、社会はカオス系(Chaotic System)としてとらえられるし、確定系(Deterministic System)としてもとらえられると思う。その初期条件を決定できないから、十分な確度の予測結果を得られないだけなんだ。僕は社会も人間も決定論的なマシンとしてとらえられると考えている。確率的に、社会の振る舞いを予測することは可能で、何かしら実験をすれば人々がどのように行動を決定するかは予測できる。1,000人が行なった意志決定の結果から、1人が行う振る舞いをより高い精度で予測できる。そういう点で、僕たち人間はどこかしらマシンのようでもあると感じている。

それから僕も時々ストレスを感じたり、心配しすぎたりしてすることがあるけれど、マシンのように修正パッチを当てて、自分で解決することはできない。自分に対して何かをしたいと思っても、自分の脳の状態を自分だけですべて決めることはできないんだ。例えばアルコールを飲んだら、どんなに運転したくてもまともに運転できないし、自分の意思ではどうにもならない。辛い時期をうまくやり過ごすために、瞑想したり、カウンセリングを受けたり、自分をより良い状態にしようとすることも、マシンとしての自分をプログラムし直しているようなものだと思う。こういう自分の経験からも、人間はマシンの性質を持っていると思える。

そして先に話したように、機械学習についても同じことが言えるよ。どんどん有機的になり、生物学的に見ても人間に近くなって、我々の間にある障壁を取り除いているんだ。

1時間半ほどのインタビューを終え、Max Cooperは会場のライブハウスRazzmatazzへサウンドチェックに向かって行きました。Max本人は非常に話しやすい人で、(私も多少煽ったのですが)限られた時間で随分内容を詰め込んで話してくれました。これまで露出したメディアの多くでは、彼はテクノロジーを理路整然と語る科学者然としたクールなイメージが付けられていたこともあって、学者のようなレクチャー然としたインタビューになるのではないかと私は予想していましたが、どちらかと言うと、話好きのエンジニアの友人とバーで延々と話し込んでいるような雰囲気のインタビューでした。

インタビューでも「人とのコミュニケーションが欠かせない」「人と機械をどのように関係を持たせるか」といったことを意識していると語っていたように、単に機械に向かってコツコツと働いているだけでなく、人との交流をうまく楽しみながらライブ会場でもやり手DJのように仕事を進めている様子が窺えました。そういった現場での人当たりの良さも彼のアーティストとしての成功に寄与しているのかもしれません。

オーディオヴィジュアル・ショーはステージの前後に設置した2枚のスクリーンに映写され、またバルセロナを代表するライヴハウスの音響効果もあり、自宅で動画を見ていたのとは違うレベルの映像・音響体験でした。会場に来ていたVFXアーティストの友人も、目を見開きながら、「これだよ、この音だよ」と感心していましたが、MaxはクラブDJ出身なので、確かにクラブのような会場が似合い、音の味わいが増すようです。Maxのことをメディア・アーティストという括りでずっと観ていましたが、クラブカルチャーのバックグラウンドを持っていることにも意味があり、そのサウンドデザインにも影響があるようです。個室のコンパクトなサウンドシステムやミュージアムのような場所で見るだけでなく、クラブやライブハウスのような音楽を楽しむために設えられた大きすぎず小さすぎない規模の場所でも彼のパフォーマンスを楽しんでほしいです。

Writer:類家利直

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