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「森川幸人の未公開ゲーム案」置き手紙としての仕様書:第1回 長い前置きと『ミーム』

2021.8.03ゲーム

「森川幸人の未公開ゲーム案」置き手紙としての仕様書:第1回 長い前置きと『ミーム』

はじめに

あるとき気がついた。作曲家は自分が死んでも楽譜さえ残っていれば、いつか誰かが演奏してくれる、編曲してくれる、公開してくれるチャンスがあると。もちろん、指揮者や演奏者や編曲者の解釈や作家性が加わるので、まったくオリジナルのままではない。しかし、根幹の部分は再現されるだろうと。

同じようにゲームもまた、ちゃんとした仕様書を残せば、自分が作れなくても、いつか誰かが作ってくれるかもしれない。その可能性は低くてもゼロではない。だったら、未発表のゲームについても、ちゃんとした仕様書までは作っておこう。

企画書ではダメだ。企画書なんてのはゲーム制作の現場では、基本アイデア、基本コンセプト程度のものだ。それだけではゲームは作れないというか、その後にゲームを作る人の意向が強く反映されすぎる。例えば、怖いモンスターが登場すると企画書にあったとする。ただし、どのくらい出るのか、どこに出るのか、どのくらいの頻度で出るのか、どういう効果があるのか、ゲームの他の遊び要素とどう絡むのか、などは企画書には書かれない。仕様書になって初めて決め込まれていく。だから企画書とまったく意図が違う怖いモンスターになってしまう可能性が高い。だから、自分の思ったとおりのゲームを「作ってもらう」ためには、なるべく細かいところまで決め込んだ仕様書でなくてはならない。

そんなわけで、今まで誰にも見せてない、あるいはプレゼンしていないゲーム企画も、時間を見つけてちゃんと仕様書まで作っておこう。最近、そう思うようになった。それでも作ってもらえるかどうかは企画のでき次第のところがあるので、いかにちゃんと仕様書を作ろうとも実際に作ってもらえるわけではない。ただ少なくとも可能性だけは残る、というだけの話だ。

自分のように特殊ゲーム作家(誰に言われたか忘れたけど、そう言われてた時期があった)の企画は、そう簡単には実際の制作までたどり着けない。わざわざ人に指摘してもらわなくても、自分でもそのあたりは十分に自覚しているので、忘れないように企画書までは書いておくけど、「これはどこも取り合ってくれないな」と思うと、誰にも見せないで保管してしまうことが多い。それらも、ちゃんとした仕様書まで作っておけば、いつか社会とまでは言わなくてもゲーム文化が変われば、ひょっとして日の目を見ることがあるかもしれない。

虎は死して皮を残すじゃないけど特殊ゲーム作家は死して仕様書を残す。

というわけで

どうせなら、特殊ゲーム作家は死して仕様書を残す。だけじゃつまらないので、特殊ゲーム作家は死して仕様書をさらす。までやったほうが面白いかなと思った。

この試みはゲーム関係者にはみんな止められる。ゲームはふつう秘密裏に作られる。情報の漏洩を大変嫌う。嫌うには理由がある。アイデアなんて見つかったら最後。よほど特殊な技術で作られるゲームでない限り、アイデアを見られたら誰だってゲームを作れてしまう。作れてしまうは言い過ぎかもしれないが、同じような世界観、ギミックを使ったゲームを作れる可能性は大きい。仮にアイデア主と違う意図のゲームであったにせよ、そのアイデアを元にしたゲームを最初に世にリリースしてした者勝ちのところはあるので、情報が漏れないように最善の注意を払う。

そんな業界において、進んでアイデアというか仕様書を公開してしまおうかなと思っているのだから、頭がおかしいと言われてもしょうがない。少しマジレス(誰に対してのレス?)すると、ゲーム企画をシェアして、それに対して興味を持ってくれた人がいろいろ知恵や手や口、できればお金を出してくれたらそれはそれでおもしろいのではとも思っている。著作権周りはどうする?など、めんどくさい問題はありそうだけど、どうせそのあたりのことについては暗いのだから、前もってあーだこーだ心配するのもあれだろう。

そんなわけで、これから何回になるかわからないけど、順に死蔵しているゲームの企画について、実際にゲームを作れるレベルまでの仕様までを自分の意図を交え、公開していきたいと思っている(途中で飽きませんように!)。結果、何にも反応がないかもしれないけど、インターネット上に公開されれば、一安心だ。アイデアが地球上から消えることがなくなる。それだけでも全然OKだ。

私は神になりたい

いきなり、何を言っているんだと言われそうだけど、最近、よーやく気がついたのは「ああ、おれは神様になりたかったんだ」ということである。あまりこのあたりくどくど書くと、あまりお知り合いになりたくないカテゴリーの方々からのアクセスがありそうで怖いのだが、誤解を恐れずいえば、その通りであり、そのことに気がつかなくて苦労してきた25年でもある。そうそう、ゲームを作り出して25年になるんですよ。早いですねー。怖いですねー。

最近気がついたことがもう1つある。「ああ、おれはAIがやりたいんじゃなかった」そして「おれのやりたかったことはAIじゃなくALだったんだ」ということだ。モリカトロンのメンバーが聞いたらひっくり返るんじゃないかなと思われるかもしれないが、このあたりの話はちゃんとしてある。会社としてはAIの研究開発、個人的にはALの研究? 探求?…そして隙あらば、AIにALを忍び込ませる。そのあたりで話はついている。

AIは今更説明するまでもなく、Artificial Intelligence(人工知能)の略である。これに対して、ALはArtificial Life(人工生命)の略である。つまり私は人工の生命を作りたい。生命を作るのは神様の仕事だから、結果、自分は神になりたいのだ。という理屈になるわけだ。

ゲームAIのうち、キャラクターAIは主にキャラクターの意思決定やルート探索などを担う技術だ。意思決定というのは、例えばフィールドでどこに向かうか、休むのか進むのか、モンスターとどういう戦術で戦うのか、はたまた逃げるのかなどの行動判断のことである(実際にはもっとたくさんある)。それらは主にキャラクターの脳を扱うのに対して、ALはキャラクターの体、つまり生理システムや生命原理を扱うものと勝手に解釈している。

自分はどちらも好きであるけど、どっちかを選べと言われたら(そんなこと言う人はいないと思うけど)、後者が好物である。元々科学の中でも特に生物学が好きなので、そのキャラクターは何を食べ、どこに住み、どんな習性があるのかなどを考えるのが好きで、そのために彼が住む環境はこんな感じで、天敵や捕食対象はどういのか、それを回避したり捕捉するための戦術はなにで、そのためにどんな身体的特性を持っているのか、などを考えるのが好きだ。地球の実存する生物をベースに空想の世界に住む生き物とその環境を想像するのが好きだ。

「けっこうな話だ、やればいいじゃん」と言われてはい終わり、となりそうだが、これをゲーム企画に落とし込もうとすると途端に難易度が上がってしまう。ゲームというのは、プレイヤーが主体である。プレイヤーがあれこれ考え、いじってコントロールするのが楽しい遊びだ。それに対してモンスターをはじめとするキャラクターはプレイヤーのそれらの遊びを実現させるための慰め者、環境は世界の雰囲気出しにすぎない。一般的なゲームではそうなる。

キャラクターが自身の生理システムに則って自立的に生きている、しかも他のキャラクターや環境と密接に関係している、となるとこれはプレイヤーにとってはゲームでなく観察ってことになってしまう。自分のような者には観察しているだけで十分楽しいのだが、さすがに商品として考えると、それでは窓口が狭すぎる。生理システムと環境をまるっと作ることのコストと想定される売り上げは、どう考えても帳尻が合いそうにない。商品の企画としてはあまりうまくないものである。

そんなことに気がつくのに25年もかかってしまった。おまけに最初気がついたと思ったときは、それがAIだと思っていた。二重に間違っていたわけだ。そのことにようやく気がついた。遅い! 遅すぎる! しかも、周りの人からは「前からそうだと思っていた」と言われる次第だ。「分かってたら、早く言ってよー」だ。

『ミーム』

「ミーム」(meme)という言葉は、動物行動学者、進化生物学者であるリチャード・ドーキンスが、1976年に『利己的な遺伝子』という本の中で使った造語である。「ミーム」を脳から脳へと伝わる文化の単位という意味であり、ドーキンスは進化の主体を複製され、伝達される情報である「ミーム」とした(wikipediaより抜粋 適当に改編)。

『利己的な遺伝子』は当時学生だった自分には衝撃的な本で、目からうろこをボロボロ落としながら「おれが中学高校で習っていた生物の授業は何だったのか」と思ったものだ。それ以来、「ミーム」という言葉がお気に入りで、ゲームの企画を考えるときもしょっちゅう拝借している(『利己的な遺伝子』は何冊も買って、手当たり次第に知人に無理プレゼントしているので、その分の印税と相殺してください>ドーキンス)。

今回、このレポートを書くために過去の資料をあさっていて「ミーム」で検索してたら、いくつも「ミーム」を使った企画が引っかかった。AL的ネタはすべて「ミーム」にしてた感じだ。おかげで、これから公開させてもらうおうと思っている「ミーム」がどの「ミーム」なのか特定するのに結構時間がかかってしまった。さてこのゲームは、アリの巣を観察するようなイメージだ。アリの巣は小さな世界をのぞき見るのに対して、「ミーム」では神様視点で世界を俯瞰するイメージとなる。

『ミーム』の世界観

世界観はこうだ。30xx年、人類はすっかり絶滅していて、地球上には、「ミーム」と呼ばれる人工生命と彼らの生存装置である「タワー」だけが存在していた。

これだけ…。

人類がいなくなった世界でミームを乗せたタワーがウロウロしている

それはゲームか? つまりプレイヤーが積極的に介入するインタラクティブな遊びか? と言われると、答えは「分からない」となる。『シムシティ』のように1から世界を構築したりはできないし、『ポピュラス』をはじめとするいわゆるゴッドゲームのように天変地異などで積極的に世界にちょっかいを出すこともできない。ただ、あまりそこのところに興味がないので、仕様を考えてないだけで、そうした介入機能を組み込むことはできる設計になっている…(はず)と思う。ただし、この介入のバランスはとても注意が必要だ。介入できる要素を増やせば増やすほど、この世界にする住民たちはただのコマになってしまう。回りくどいアクションゲームやシミュレーションゲームになってしまうのが落ちだ。

ゴッドゲームですら、昨今はあまりユーザー受けが良くなくセールスがうまくいかないと言われている。それをさらに希釈するわけだから、商品として成り立つかは甚だ怪しい。でも25年前『がんばれ###』を作ったとき、「これはやらなくていいゲーム(放置ゲー)だ。忙しい大人にはやらないゲームが必要だ」的なことを言ってたときには、誰にも相手にされなかったけど、今ではスマホゲームでは「放置ゲー」は一分野として成り立っている。だから、いつかは世の中が近寄ってきてくれて、商品的価値が生まれるかもしれない。

いわゆるゲーム的な要素については、まさに放置しているが、世界の仕組みや歴史的背景などについては、けっこう真面目に考えた。なぜ人類がミームを開発したのか? 人類の死滅の後、彼らは何を目的に生きているのか? どういう生態なのか、ミームの生存装置であるタワーの仕組みや機能は? などについて、そこそこの粒度で考えた。

背景ストーリー

2000年:昆虫のセンサー感度の良さを利用して、昆虫の運動神経とマシンをつないだバイオロボットの研究を開始。
2020年:昆虫の運動神経の信号で動くドローンの開発に成功


2030年:微細MRIセンサーの発明により、非接触型の制御システムが完成。同時に、コンピュータ側から昆虫の行動制御に成功。双方向の制御が可能になる。


2050年:微細 MRI センサーとの感応性が高い、メチル化シリコンの外殻を持つ人工生命「ミーム」が作られる。ベースとなる昆虫が何であるかは明かされていない。


2065年:ミームの運動神経の信号で動くバイオロボットが作られる。ミームのさまざまな欲求に対応した、たくさんの「モジュール」が開発される。また、ミーム専用の高機能食料「ミーム・フルーツ」が開発される。


2085年:ミームの食事から生殖まで満たした完全自立型のバイオロボット、通称「タワー」初号機が完成。


2090年頃:ライバル国の「タワー」の機能調査用の偵察ロボ、通称「バイラス」が暴走。開発者の制御を逃れ「野生化」する。
3000年頃:突如、人類他全ての動物が死滅(原因不明)。
3000年〜:世界は、ミームとタワーだけの世界となる。

※この企画書を書いたのは2015年。残念ながら2021年現在、昆虫の運動神経の信号で動くドローンは存在しない
※人類の死滅の原因も考えてたつもりでいたが、何も考えていなかった!

ミーム

バイオテクノロジーによって生み出された人工生命体(ベースとなる生物は不明)で、30xx年、地球上に唯一生存する「動物」。知能は虫類程度、集団で生活し、簡単な社会性を持つ。ミーム用に開発された「ミームフルーツ」のみを食べる。体長は20cm程度。研究室からの脱出などで外環境を汚染しないように、生殖能力はノックアウトされている(遺伝子改良された農業用昆虫のようなもの)。寿命は不明。

ミームフルーツ

ミームの食料として開発された ハイブリッド植物。糖質がミームの食料になる以外に、脂質は、「タワー」の燃料、アルカロイドは、攻撃用毒素として利用される。また各株毎に、対応するミームが DNA レベルで定義され、コアラとユーカリの関係のように、それを食用としないミームには毒物となる(=他のミームへの攻撃に使われる)。

タワー

ミームの生息環境として開発されたバイオロボット。居住、ミームフルーツ栽培、発電、採取、貯蔵、移動、攻撃など単一の機能を持つモジュール型装置の組み合わせからできている。モジュールの数、組み合わせは任意で、ミームの意志(後述)によって、構成される。

世界に登場するのは、ミーム、ミームフルーツ、タワーの3つだけである。自分たちの「コロニー」が生き延びるため、成長するために、タワーを増改築し、自ら遺伝的進化をし、他のミームと生存競争を行う。アリの世界と同じようなものだ。巣が動くというところだけが違う。各要素の設定だけじゃなく、上のエコシステム(?)が自律的に稼働できるように、生態、戦略などもちゃんと考えてある。

≫≫次回に続く

Text&Gamedesign&Allustration:森川幸人

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