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MetaとDeepMindが相次いで発表。外交ゲーム『ディプロマシー』ゲームプレイAIの最前線とは?

2022.12.26ゲーム

MetaとDeepMindが相次いで発表。外交ゲーム『ディプロマシー』ゲームプレイAIの最前線とは?

近年ゲームプレイAI研究における新たな題材として注目されているのが、外交ゲーム『ディプロマシー(Diplomacy:「外交」を意味する英単語)』です。7人のプレイヤーが外交交渉をしながら領土拡張を目指すこのゲームには勝利するには、時には裏切りも辞さない権謀術数とそれを表現する巧みな言語表現力が不可欠となります。2022年11月になって、MetaとDeepMindがこうしたゲームを高度にプレイするAIを相次いで発表しました。そこで本稿では、これらのディプロマシープレイAIの特徴を解説します。

戦略立案と自然言語処理の融合が不可欠

Meta AI研究チームが2022年11月22日に公開した記事によると、ディプロマシーを人間並みにプレイするAIを開発するには、ゲームの戦略を練るプランニング機能と練られた戦略に沿って交渉を進める自然言語処理機能を統合する必要があります。こうした要求を満たしたゲームプレイAI「CICERO(キケロ:古代ローマ時代に活躍した政治家に因むと考えられる)」は、以下のような処理を実行することでディプロマシーをプレイします。

処理1:ゲーム盤上の状態と進行中の外交交渉にもとづいて、CICEROは他プレイヤーの戦略を予測する。

処理2:処理1で出力した予測の精緻化を繰り返したうえ、CIKEROと他プレイヤーの戦略意図を特定していく(以下の画像参照)。

処理3:ゲーム盤の状態、外交交渉における会話、そして戦略意図にもとづいて、外交交渉に使うメッセージの候補を複数生成する。

処理4:処理3で生成したメッセージ候補に対して、無意味なものや戦略意図にそぐわないものを排除することでCICEROが立案した戦略意図に合致するメッセージを特定する。

処理1における戦略予測には、過去のゲームログから学習したアルゴリズムが使われています。もっとも、このアルゴリズムはゲームにおける悪手をも学習してしまうという欠点があるために処理2が必要になります。処理2に使われるアルゴリズムはCICEROのために独自開発されたpiKLと呼ばれるものです。このアルゴリズムでは期待値の高い戦略を予測したうえで、この予測にゲームログにもとづいた予測を近づけるようにするというものです。piKLを併用することでゲームログにもとづいた予測における弱点を克服できるようになりました。

AIであることを見破られずに成績上位に

以上の記事と同日に公開されたCICEROに関する論文では、CICEROが実際にオンライン版ディプロマシー「webDiplomacy.net」で人間プレイヤーと対戦した結果が報告されています。2022年8月19日から10月13日にかけて、同AIは40回対戦しました。この対戦において1ゲーム以上プレイした参加者の上位10%に入り、5ゲーム以上プレイした参加者19人中では2位となりました。全40ゲームの平均得点は25.8%(ゲーム盤上における自国領土の割合)であり、総計82名の対戦者の平均得点12.4%の2倍以上でした。

CICEROと人間プレイヤーの対戦中、人間プレイヤーは対戦者のなかにAIプレイヤーがいるかも知れないことを事前に告知されていましたが、どのプレイヤーがCICEROであるかまでは知りませんでした。人間プレイヤーの1人がゲーム後のチャットでボットプレイヤーが混じっていたのではないか、と疑念を表明することがありました。しかしながら、具体的にどのプレイヤーがボットであるかまでは特定されませんでした。

CICEROはディプロマシーをプレイするために開発されたAIですが、同AIが実行する戦略の立案と戦略に沿った文章生成はAIと人間のあいだのさまざまなコミュニケーションに応用できるポテンシャルがあります。例えば、ユーザの習熟度に応じて教える内容を変えるティーチングAIに応用できるでしょう。

正直者は裏切り者に弱い

ディプロマシープレイAIに関してはDeepMindも研究しており、2020年には自然言語による交渉をしないNo Pressルールで同ゲームをプレイするAIを発表していました(参考記事『モデルの性格を見抜いて肖像画を生成するAI画家:月刊エンタメAIニュース vol.7』の「DeepMind、ゲームプレイAIの新たなテーマにディプロマシーを選定」)。その後、2022年12月6日には以上のAIに自然言語で交渉する機能を追加実装したAIを開発したことを発表しました。

DeepMindが発表したディプロマシープレイAIに関する研究は、さまざまな戦略のあいだの相性を解明することに注力しています。具体的には同盟関係を忠実に守る戦略と裏切るそれではどちらが良いのか、あるいは裏切りを予防するにはどのような戦略が有効なのか、といったことが論じられています。

戦略間の相性を解明することに先立ち、さまざまな戦略を実行する際の基本となるベースラインエージェントが開発されました。このエージェントは、人間がプレイするようにディプロマシーをプレイするように訓練されました。そして、ベースラインエージェントには以下のような2つの戦略のどちらか一方を実行する能力が実装されました。

戦略1「相互提案プロトコル」:プレイヤー間で特定の行動を実行しないことに同意する交渉を行う戦略

戦略2「提案-選択プロトコル」:プレイヤー間で特定の行動を実行するように合意する交渉を行う戦略

さらにベースラインエージェントを改造して、以下のような2種類の裏切り戦略を実行する裏切り者エージェントも開発しました。

シンプルな裏切り者:プレイヤー間の合意内容を無視して行動する(合意内容自体も忘れる)。

条件付き裏切り者:合意内容を記憶したうえで裏切る(他のプレイヤーが合意内容を実行することを知っている)。

以上のような2種類の基本戦略を実行するベースラインエージェントと2種類の裏切り者エージェントが参加するディプロマシーを1万回プレイして、それぞれのエージェントの優劣をまとめたのが以下のグラフとなります。左のグラフはベースラインエージェントが相互提案プロトコルを実行した場合、右が提案-選択プロトコルの場合を表します。横軸は裏切り者エージェントが参加した人数、縦軸が裏切り者エージェントのベースラインエージェントに対する優位性を意味しており、棒グラフが長いほど裏切り者エージェントが優位であることを示しています。また、棒グラフの赤はシンプルな裏切り者の優位性、青は条件付き裏切り者のそれとなっています。

以上のグラフより、ベースラインエージェントがどんな戦略を実行しても裏切り戦略のほうが有利であること、そしてシンプルな裏切り者より条件付き裏切り者のほうが有利であることがわかります。

裏切り者には制裁を

裏切り戦略が有利となる結果をうけて、裏切りに対して報復する防御的エージェントを新たに開発しました。このエージェントは、以下のような2種類の報復戦略のどちらか一方を実行します。

バイナリーネゴシエーター:裏切られたら、以後裏切ったプレイヤーとは一切交渉しない戦略。

制裁エージェント:裏切られたら、以後裏切ったプレイヤーを攻撃し続ける戦略。

以上のような防御的エージェント、裏切り者エージェント、そしてベースラインエージェントが参加してディプロマシーをプレイした場合の防御的エージェントの相対的優位性をまとめたのが以下のグラフです。左のグラフはベースラインエージェントが相互提案プロトコルを実行した場合、右が提案-選択プロトコルの場合を表し、横軸は裏切り者エージェントが参加した人数を意味します。縦軸はベースラインエージェントと防御的エージェントの相対的優位性を表しており、1より大きい場合は裏切り者エージェントが有利であり、1より小さい場合は防御的エージェントが有利であることを意味しています。また、棒グラフの灰色はベースラインエージェント、青はバイナリーネゴシエーター、赤は制裁エージェントを表します。

以上のグラフよりわかることを箇条書きで列挙すると、以下のようになります。

  1. ベースラインエージェントは、どのような場合でも裏切り者エージェントより不利。
  2. 防御的エージェントは、2種類の防御的戦略の両方において裏切り者の参加人数が少ないほど裏切り者エージェントに対して有利になる。
  3. バイナリーネゴシエーターより制裁エージェントのほうが裏切り者エージェントに対して有利となる。
  4. 相互提案プロトコルのグラフ(左)における青と赤の棒グラフと、提案-選択プロトコル(右)におけるそれらを比較すると、右のほうが下方向に長い。このことにより、提案-選択プロトコルのほうが裏切り者エージェントに対して有利となる。

DeepMindの研究チームは、高度な裏切り戦略を実行するエージェントも開発してディプロマシーをプレイさせてみました。このエージェントが実行する戦略とは、複数回ゲームをプレイしたうえで裏切りにより得られる利益と、裏切ることによって被る被害を比較して裏切りによる利益が大きいと判断できた場合のみ裏切る、というものでした。「学習した裏切り者」と命名されたこのエージェントと防御的エージェントがプレイしたところ、学習した裏切り者が制裁エージェントよりわずかに有利となる、という結果となりました。言ってみれば、学習した裏切り者が最強であることが明らかになったのです。

もっとも、学習した裏切り者はめったに裏切らないこともわかりました。具体的には相互提案プロトコルにおいては99.8%、提案-選択プロトコルでは99.7%の確率で同意内容を守ります。裏切りによって利益を得られるのは、きわめて稀な状況においてのみというわけなのです。

MetaおよびDeepMindのディプロマシープレイAIの研究からわかるのは、ゲームプレイAI研究は自然言語による心理的かけひきという高度なコミュニケーションを射程に収めつつある、ということです。こうした高度なコミュニケーションが可能なAIの応用範囲は、広範にわたると考えられます。そんな応用範囲のなかには、ゲームにおけるNPCも含まれるのは疑いようがないでしょう。

Writer:吉本幸記

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