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【GDC Summer】AI分析ツールを活用したプレイヤーのペルソナ特定とゲーム離脱防止策

2020.8.17ゲーム

【GDC Summer】AI分析ツールを活用したプレイヤーのペルソナ特定とゲーム離脱防止策

2020年8月4日〜6日(現地時間)、ゲーム開発者の世界的会議GDC Summerがオンラインで開催されました。4日に行われたセッション「ゲームプレイヤーをモチベートするためのAIを開発する:MARVEL Future Fightの事例から」では、ゲームからの離脱を防止するAI分析ツールであるTENTUPLAYを活用事例が紹介されました。

ゲーム離脱のメカニズムとTENTUPLAYの役割

『MARVEL Future Fight』のように多彩な魅力を持ったゲームに対して、各プレイヤーはさまざまな期待を寄せています。MARVELのキャラクターを操作するのが好きなプレイヤーであれば、お気に入りのキャラクターを操作してプレイできることを期待し、アクションゲームをプレイすることが好きなプレイヤーは、ステージクリアやハイスコアを達成することから得られる充実感に期待を寄せています。このようにプレイヤーがゲームに抱く期待は多種多様ですが、期待がかなえられなくなった時、ゲームプレイから離脱するという点は共通しています。それゆえ、ゲームからの離脱を防止するには、プレイヤーの期待を適切にかなえる施策が重要となります。

韓国に本拠地をおくTentuPlayは、プレイヤーのゲームプレイの傾向からペルソナと呼ばれるプレイヤーのグループを抽出した上で、ペルソナごとにゲームからの離脱を防止する施策を提案するAI分析ツール「TENTUPLAY」を開発・提供しています。GDC Summerのセッションでは、同社のCOOであるHyeyon Kwon氏が、同ツールを使ってMARVEL Future Fightのプレイヤーがゲームから離脱するのを防止した事例を解説しました。

コレクターにはレベルアップ支援が有効

ゲームからの離脱を防止する施策を立案するためには、はじめにプレイヤーのペルソナを抽出する必要があります。TENTUPLAYを使うと、MARVEL Future Fightのプレイにおける「プレイしているキャラクターの多様性」「集めているキャラクターの多様性」「集めているキャラクターのレベル」という評価軸上に各プレイヤーをプロットすることができます。こうしたプロットの結果、ハイレベルなキャラクターを集めている「ハードコア・コレクター」と低レベルのキャラクターを集めている「カジュアル・コレクター」というふたつのペルソナを発見しました。

ゲームに対する忠誠度が高いペルソナは、プレイ時間が長いハードコア・コレクターです。このゲーム運営の上で重要なペルソナの離脱を防止するためには、このペルソナに属するプレイヤーの期待に応える施策を実行することが求められます。ハードコア・コレクターがゲームに期待しているのは、ハイレベルなキャラクターを数多く集めることです。MARVEL Future Fightのゲームシステムにおいては、ハイレベルなキャラクターを集めるためには、キャラクターのレベルを上げる必要があります。したがって、ハードコア・コレクターの離脱を防止する有効な施策は、このペルソナに属するプレイヤーがプレイするキャラクターのレベルを上がりやすくすることと考えられます。この施策を実行するために、TENTUPLAYを使ってハードコア・コレクターに「コレクションの進捗状況」「レベルアップしやすいキャラクター」「レベルアップに役立つアイテム」を表示する画面を追加するようにしました。

以上のような施策の結果、ハードコア・コレクターがプレイするキャラクターのレベルアップスピードが向上し、任意の日における登録プレイヤー数に対する実際にプレイしているプレイヤー数の割合を意味するリテンションも向上しました。

スマート&ビージーにはゲーム内通貨の供給を

ハードコア・コレクターのほかにMARVEL Future Fightにおける代表的なペルソナには、「スマート&ビージー」というものがあります。このペルソナに属するプレイヤーの特徴は、積極的かつ効率的にアイテムを活用して、ゲームプレイ時間をより少なくするプレイを好むところにあります。

こうした「効率的にゲームをプレイする」傾向から、スマート&ビージーなプレイヤーはゲームシステムを熟知しているハードコアなプレイヤーと推測できます。実際、このペルソナに分類されるプレイヤーのリテンションを調べたところ、平均より高いことがわかりました。リテンションが高いことからスマート&ビージーに属するプレイヤー層はゲームへの忠誠心が高いと言えるので、こうしたプレイヤーのゲームからの離脱を防止するのはゲーム運営の上で重要となります。

スマート&ビージーなプレイヤーがゲームに期待しているのは「効率的なプレイ」であり、そうしたプレイを実現するためには積極的にアイテムを消費する必要があります。アイテムを消費し続けるためにはゲーム内通貨が必要なので、スマート&ビージーなプレイヤーがゲームから離脱するのを防止するには、ゲーム内通貨をより多く獲得できるようにすること、と考えることができます。この想定にしたがって、スマート&ビージーなペルソナに対して、プレイの進捗状況、ゲーム内通貨をより多く獲得できるゲームコンテンツの紹介、そしてゲーム内通貨をすばやく購入できるように導線を改善するといった施策をTENTUPLAYを使って実行しました。その結果、このペルソナに属するプレイヤーのゲーム内通貨の購入とリテンションが向上しました。

ゲームジャンルとプラットフォームを超えて

Hyeyon Kwon氏のセッションでは、MARVEL Future Fightの事例の他に工場でヒーローを作ってモンスターを狩るモバイルゲーム『ヒーローファクトリー』の事例も紹介されました。このゲームのプレイ分析においては、ペルソナごとのリテンションに加えて、1日に視聴する広告動画数もペルソナごとに集計しました。この集計からは、例えばプロゲーマーは広告動画を多く視聴していることがわかります。それゆえ、プロゲーマーが好むような商品に関する広告を流したほうがより効果的なのではないか、という仮説を立てることもできます。

広告動画の視聴数をまとめたグラフには、「スマート&ビージー」というペルソナがふくまれています。TENTUPLAYが抽出するペルソナは、特定のゲームにだけ通用するものではなく、ゲームジャンルやプラットフォームを超えて運用できるものなのです。同ツールには28のペルソナが用意されており、さまざまなタイプのゲームに対応しています。実際、SteamにPCゲームを配信する予定のゲームスタジオが同ツールを導入した事例もあります。

TENTUPLAYのSDKは公式サイトからダウンロードできます。このSDKは、メジャーなゲームエンジンのひとつであるUnityに組み込んだら使用可能となります。Unityに組み込んだ後、ゲームデータを収集するポーズを挿入するだけでペルソナの分類ができるようになります。

以上のようにAIはゲーム開発だけではなく、ゲームの運営を改善する目的でも活用されています。ゲーム運営にAIを活用するメリットは、ペルソナの抽出のような分類作業を人間の主観に頼ることなく、素早く客観的に実行できるところにあります。今後はTENTUPLAYのようなAI分析ツールが数多く開発され、安価で利用できるようになるでしょう。

Writer:吉本幸記

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