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ゲームプレイAI が進化させる無人戦闘機群とAI軍拡競争の萌芽
2020年8月、AIを活用した航空技術が重要なマイルストーンに到達しました。戦闘機を制御するAIがドッグファイト(空中戦)において人間の熟練パイロットに圧勝したのです。この記事では、DARPAが開催したコンペ「AlphaDogfight Trials」の解説を起点として、軍事AIの現状とゲームプレイAIの軍事転用、さらにはAI兵器開発競争の動向を明らかにしていきます。
「人間が指揮する無人戦闘機群」を目指すDARPAが開催したコンペ
最先端技術の軍事利用を研究するアメリカ国防総省の機関DARPAは、近未来の空中戦闘体制を「ACE(Air Combat Evolution:空中戦闘の革命)」というプロジェクトの遂行を通して確立しようとしています。このプロジェクトで実現しようとしているのは、人間のパイロットに率いられた無人戦闘機群というハイブリッドな空戦体制です。具体的には、戦隊司令官にあたる人間パイロットが戦況を把握して攻撃目標の指定といった軍事命令をくだし、命令をうけた無人戦闘機群が自律的に作戦行動を遂行することが想定されています。
ACEプロジェクト実現の一環として、2019年10月、DARPAはAIが制御する戦闘機をシミュレーション環境で交戦させて最強のドッグファイトAIを決めるコンペ「AlphaDogfight Trials」の開催を呼びかけました。その呼びかけによって、最終的に8つのチームが参加することになりました。参加チームには、大手航空機メーカーのロッキード・マーティン、ジョージア工科大学研究所といった伝統ある組織だけではなく、小規模なIT企業も名を連ねていました。
AlphaDogfight Trialsで最強のドッグファイトAIとなったのは、軍事用システムを開発する小規模なIT企業Heron Systemsが開発したものでした。そして、2020年8月、同社のAIは人間の熟練パイロットとシミュレーション環境でドッグファイトを行い、5-0で圧勝したのでした。
AlphaDogfight Trialsの結果から、ふたつのことが結論できます。ひとつめは、ACEプロジェクトにおける重要な要素である命令を自律的に遂行する無人戦闘機開発の基盤が築けたことです。そして、もうひとつが無人戦闘機のドッグファイト遂行能力は、近い将来、有人戦闘機のそれを圧倒的に凌駕するであろうことです。というのも、無人戦闘機には有人戦闘機には不可能な高いGがかかる航行も可能となることから、人間パイロットでは実現不可能なドッグファイトを遂行できるからです。
ゲームプレイAIも開発するHeron Systems
熟練した人間パイロットに圧勝したドッグファイトAIを開発したHeron Systemsは、1993年に創業されました。IT企業のなかでは珍しい企業オーナーが女性の企業でもあります。同社は小規模ながら、DARPAが発注するさまざまな軍事プロジェクトを実現するAIシステム開発を多数手掛けています。
同社が取り組んでいるプロジェクトのひとつとして、「DARPA OFFSET(OFFENSIVE SWARM-ENABLED TACTICS:「攻撃的な群れが可能とする戦術」の略称)」があります。このプロジェクトは、250機以上の無人戦闘機で構成された戦隊による作戦行動の実現を目指したものです。多数の無人戦闘機を制御するコンセプトとして着目されているのが、蜂などに見られる組織的な群れの活動です。また、人間の指揮官が多数の無人戦闘機を制御するシステムを開発する「AFRL SKYBORG」プロジェクトにも取り組んでいます。このプロジェクトで重要となるのは、いかにして人間の認知的負荷を軽減したシステムを構築するか、という点です。
Heron Systemsは、ビデオゲームをテーマとしたDARPA提唱のプロジェクト「Gamebreaker」に参加しています。このプロジェクトの目的は、『StarCraft II』(2010年、ブリザード・エンターテイメント)と「Google Research Football」におけるゲームバランスを評価した上で、そのゲームバランスを最も不安定にする新機能、戦術、あるいはルールの変更を特定するAIを開発するというものです。DARPAがこうしたプロジェクトを立ち上げたのは、現実の軍事的投資では新兵器の開発のような軍事的均衡を破る案件が優先的に選択されるという事情があるからです。
Gamebreakerプロジェクトで開発されるAIはゲームの勝利を目指したものではありませんが、ゲームをテーマにしているという点でゲームプレイAIの一種と考えられます。『StarCraft II』のような多種多様なユニットとリソースの管理が求められる現代のビデオゲームをハイレベルにプレイするAIは、複雑な戦況に対応できるがゆえに現実の軍事的状況の考察にも流用され得るのです。
AI軍拡競争の予兆
以上でまとめてきたように、AIの応用は軍事においても進んでいます。もっとも、こうした動きを抑止する活動も同時に進行しています。例えば、未来に生じる可能性のある困難な問題に関する啓発活動を続ける組織Future of Life Instituteは、2015年、AI研究の優先事項に関する公開書簡を発表しています。この書簡に添付された資料には、AIを搭載した自律型致死性兵器の危険性に関する議論と認識が早急に必要であると訴えられています。この書簡には、AIの危険性に警鐘を鳴らし続ける実業家として知られるイーロン・マスク氏や、著名な物理学者である故スティーヴン・ホーキング氏が署名しています。
また、国際法の専門家が会員となっている国際法学会が2020年6月に公開した論評によると、自律型致死性兵器を特定通常兵器使用禁止制限条約の枠組みで規制する議論が国連で行われており、2021年に基本方針が示される見込みです。
以上のようなAI兵器を規制する動きがある一方で、各国でAI兵器開発が進んでいます。Future of Life Instituteが2019年5月に公開した記事では、世界各国のAI兵器開発の現状がまとめられています。その記事で注目すべきは、AI開発競争においてアメリカの強力なライバルである中国に関する記述です。中国政府は国連においてAI兵器開発反対の立場をとっているものも、民間企業と協力して「より複雑な戦闘活動を自律的に実行」する次世代ステルスドローンを開発していると見られています。このドローンは、DARPAが提唱するACEプロジェクトにおける自律型戦闘機に相当するものと推測されます。
軍事的行動遂行能力において人間を凌駕するAI兵器の開発は、AI兵器をめぐる軍拡競争を誘発する可能性が極めて高いと言えます。というのも、人間が太刀打ちできないAI兵器に対抗するには、人間を凌駕するAI兵器を開発せざるを得ないからです。
軍事AIの現状をまとめると、それを規制する国際的枠組みが整う前に、AI軍拡競争が始まり兼ねないことがわかります。こうしたなか、ゲームプレイAIは軍事AIに転用される可能性があるという認識は、ゲーム業界およびAI業界の良識ある関係者には必要なのでないでしょうか。
Writer:吉本幸記