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モデルの性格を見抜いて肖像画を生成するAI画家:月刊エンタメAIニュース vol.7

2020.7.28先端技術

モデルの性格を見抜いて肖像画を生成するAI画家:月刊エンタメAIニュース vol.7

エンタメにおいてもAIは日進月歩で進歩しており、新しい研究成果や試みが次々と発表されています。こちらの連載では、過去1か月間、主に海外で公開された注目すべきゲームAIやエンタメAIに関連したニュース、論文などを紹介していきます。 

DeepMind、ゲームプレイAIの新たなテーマにディプロマシーを選定

テック系メディア『TechRepublic』は6月22日、DeepMindがボードゲーム『ディプロマシー』をテーマにしたゲームプレイAIに関する論文を発表したことを報じました。同ゲームは、7人のプレイヤーが参加する一種の戦略ゲームです。各プレイヤーは第一次世界大戦前のヨーロッパ列強のうちの一国を担当し、陸軍と海軍を意味する駒を動かして、ボード上にある34の補給地のうち18ヶ所を占領したプレイヤーが勝利します。各プレイヤーの駒は同時に動かす上に勝利者は1人なので、相手の動きを読んで協調したり裏切ったりする心理的駆け引きが重要となります。

DeepMindが発表した論文によると、ディプロマシーをプレイするゲームプレイAIのアルゴリズムには、強化学習のなかでもポリシー反復(Policy Iteration:略してPI)を基礎としたものが採用されました。このアルゴリズムの基本コンセプトは、常に前回の選択から得られる結果を上回るような選択を探索するというものです。実際には、PIを発展させた仮想的プレイポリシー反復のバージョン2(Fictitious Play Policy Iteration-2:略してFPPI-2)が使われました。このアルゴリズムは、対戦相手の動きを過去の対戦から推測した上でベストな選択を探索し続けるものです。FPPI-2を使った結果、先行研究より優れた成績を上げることに成功しました。

以上のようなディプロマシーをプレイするAIの研究は、現実の世界で頻繁に起こる競争と協調をめぐる駆け引きをAIで実現することにつながると考えられます。

なお、今回の研究ではディプロマシー最大の特徴である「駒を動かす前にプレイヤーは対戦相手と口頭で外交交渉できる」というルールを省略した「No-Press」の条件で行われました。しかしながら、今回発表した論文の結論では、長期的な目標として外交交渉できるAIの実現が掲げられています。

人間の性格を反映した肖像画を生成するAI画家

テック系メディア『Tech Xplore』は7月1日、描く対象となる人間の性格を反映した肖像画を生成するAI画家に関する研究について報じました。このAI画家を発表したカナダ・バンクーバーにあるサイモンフレーザー大学のiVizラボは、詩や絵画のような芸術作品をAIによって生成することを研究しています。

優れた肖像画家は写実的に肖像画を描くのではなく、描く人間の性格上の特徴が見てわかるように描くものです。彼らには性格を見抜く能力と、見抜いた性格を肖像画として視覚化する能力が備わっているのです。こうした肖像画家をAIで再現するにあたり、iVizラボは人間の感情を認識するAIと、認識した感情を顔の特徴として表出するAIを統合するというアプローチを採用しました。

完成したAI画家は、ディスプレイに表示された中年男性として描かれる人に現れます。描かれる人は、この男性が発する質問に答えていきます。この質問の内容と質問に答える時の声の調子や顔の表情から、描かれる人の性格を推測します。性格の推測にあたっては、性格を5つの要素から説明するビックファイブが使われています。推測された性格は、Googleが発表した画像生成AI「Deep Dream」を改良したものを使って肖像画に反映させます。

以上のような感情認識AIと画像生成AIの統合技術は、RPGにおけるキャラクターメイキングやNPCの感情に即したグラフィック表現などに応用可能だと考えられます。

参考論文:Empathic AI Painter: A Computational Creativity System with Embodied Conversational Interaction

インフルエンサーを評価するAIによってマーケティング効果を最大化

ビジネス系メディア『tubefilter』は7月6日、広告戦略にAIを活用する企業であるBENを紹介する記事を公開しました。広告なしのストリーミングサービスや広告ブロックソフトの普及により、従来のデジタル広告の効果は弱体化しています。デジタル広告に代わって注目されているのが、広告自体をひとつのコンテンツとして提供できるインフルエンサーを起用した広告です。こうしたインフルエンサー広告を制作するにあたっては、インフルエンサーの価値を査定し広告効果を予測する客観的な評価方法が重要となります。

広告制作会社のBENは、インフルエンサーの評価と広告効果の予測を算出するにあたってAIを活用しています。具体的には、広告案件ごとに評価アルゴリズムを開発して、案件に最適なインフルエンサー候補を選定しています。このアルゴリズムにはフォロワー数、視聴回数、「いいね」の数といったデータが活用されています。

BENの最近の成功事例には、バトルロイヤルゲーム『Apex Legends』の広告キャンペーンがあります。同ゲームのリリースされた昨年2月には同社が選定したプロゲーマーNinjaを起用したプロモーションが展開され、リリース1ヶ月以内に5,000万人のプレイヤーを獲得する成果を上げました。また、同ゲームを実況するYouTuber数を22,000と予測したところ、99.58%の精度(つまり予測誤差が1%未満)で的中させました。

BENのインフルエンサー評価AIに関して、同社幹部のAaron Frank氏は現在の市場は非常に早く変化しており、そうした変化に対応できるのはAIだけである、と語ってAIによる広告戦略の有効性を力説しています。

ヘイトスピーチ識別AIのバイアス緩和に成功

テック系メディア『Tech Xplore』は7月7日、ヘイトスピーチ識別AIのバイアス緩和に成功した研究について報じました。差別的表現を検出してブロックするはずのヘイトスピーチ識別AI自体にバイアスがあったという事例は、以前から報告されています。例えば、ワシントン大学の研究チームは、ツイートのヘイト的特性を検出するAIは黒人が使う英語に対して通常の英語より1.5倍「攻撃的」と評価することを発表しました。こうしたバイアスが生じてしまうのは、白人至上主義者のオンラインフォーラムから抽出した表現のような強いバイアスが認められるデータをAIの学習データとして採用しているからだと考えられています。

南カリフォルニア大学の研究チームは、よりバイアスの少ないヘイトスピーチ検出AIを発表しました。このAIには「black」「gay」「transgender」のような差別的に使われる可能性がある単語が用いられるコンテキストの特定機能、および侮辱的な言葉遣いを特定する機能が追加されました。こうした機能を追加したことによって、「black」のような単語をヘイト的表現と過剰に検出するのを回避したのです。

研究チームは差別的な内容のウェブサイトから集めた表現とニューヨークタイムズ紙の非差別的な記事から構成されたテストデータを用意して、従来のヘイトスピーチ検出AIと今回開発したAIの性能比較テストを実施しました。その結果、前者は77%の精度でヘイトスピーチを正しく識別できたのに対して、後者は90%でした。

以上のような高精度のヘイトスピーチ検出AIの研究はヘイトスピーチを減らすだけではなく、不当な検閲の予防にも役立つ、研究チームはコメントしています。

Writer:吉本幸記

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