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リスナーの感情に合わせたレコメンドエンジン:月刊エンタメAIニュース vol.4

2020.4.29先端技術

リスナーの感情に合わせたレコメンドエンジン:月刊エンタメAIニュース vol.4

エンタメにおいてもAIは日進月歩で進歩しており、新しい研究成果や試みが次々と発表されています。こちらの連載では、過去1か月間、主に海外で公開された注目すべきゲームAIやエンタメAIに関連したニュース、論文などを紹介していきます。

アニメとシナリオの自動生成で大作ゲーム制作の刷新を目指す

ゲーム業界メディアThe Gaming Economyは4月7日、最新ゲームAIを開発するゲームスタジオrct stduioのCOOであるYuheng Chen氏にインタビューした記事を公開しました。インタビューでは、同スタジオが開発している「Morpheusエンジン」の解説と今後の展望が語られています。

Morpheusエンジンには、大作ゲーム開発を刷新する可能性があるふたつの機能が実装されています。ひとつめは、アニメーションの自動生成機能です。周知のように、今日の大作ゲームでは三次元的なゲーム空間内で3Dキャラクターが行動するアニメーションを大量に制作しなければなりません。こうしたなか、同エンジンは人間の運動パターンを予測するAIを活用することによって、アニメーションを自動生成します。その結果、アニメーション制作に要する工数を大幅に削減することが可能となります。

注目すべきもうひとつの機能が、NPCの言動の自動生成機能です。大作RPGにおいてはNPCが大量に登場して、それらはストーリーの展開やプレイヤーの行動に合わせて言動が変化するように設計されているのが常です。しかしながら、ゲーム開発に投入できるリソースの制約により、NPCの言動が多様性や柔軟性に欠くことがあります。こうした問題に対して、Morpheusエンジンはメインストーリーの進行とNPCの基本設定からNPCの言動を自動生成することによって解決します。

以上のようなMorpheusエンジンを使って、rct studioは2020年内にOculus Quest等に対応したVRゲームをリリースする予定です。

生体情報駆動型が音楽ビジネスを変える

インドのエンタメ系メディアRMbizは4月11日、未来の音楽ビジネスを考察した記事を公開しました。その記事では、未来の音楽ビジネスはリスナーの生体情報を中心に構築される、というビジョンが論じられています。

サブスク時代を迎えた音楽業界において重要なのが楽曲のレコメンドエンジンです。現在はリスナーの視聴履歴にもとづいてAIがおすすめの楽曲を決定しています。未来においては、視聴履歴に加えてリスナーが楽曲を視聴している時の脈拍やストレスレベルをスマートウォッチやイヤフォンから収集して、リスナーの体調に最適な楽曲をAIがおすすめするようになる、と考えることができます。

リスナーの生体情報が楽曲推奨アルゴリズムにおける決定的要因になった場合、楽曲の制作現場も変わるでしょう。具体的には、リスナーの脈拍やストレスレベルを考慮した楽曲を制作するようになるはずです。こうした変化が現実になった場合、アーティストは神経科学や心理学の専門家を制作チームに加えるようになると予想されます。

生体情報駆動型の音楽ビジネスがさらに発展すると、リスナーの生体情報に対して最適な楽曲をAIが自動生成するようになるでしょう。リスナーが望んでいる気分をAIに伝えれば、そのような気分になるようにカスタマイズされた楽曲が自動生成されるというわけです。

以上は荒唐無稽のように聞こえるかも知れません。しかしながら、生体情報駆動型音楽ビジネスを構成する個々の技術はすべて現実に存在しています。それゆえ、既存の技術を組み合わせた可能性のひとつとして、こうしたビジョンは無視できないのではないでしょうか。

AIによるスポーツ選手のパフォーマンス評価

ニューヨーク・タイムズ電子版は4月8日、AIによる選手のパフォーマンス評価をビジネス活用した事例に関する特集記事を公開しました。この記事では、AIの活用によって選手の身体能力を従来より緻密かつ正確に評価する事例が多数紹介されています。

Seattle Sports Sciencesは、機械学習を活用してスポーツ選手の身体能力を評価するサービス「ISOTechne」を提供してます。同サービスを使ってサッカー選手を分析すると、ゲームメイクや得点にはあまり貢献していないが、コーナーキックやフリーキックは優れている、というような評価を得られます。こうしたきめ細かな評価は、選手の育成に役立つのはもちろんのこと、選手の売却やスカウトにも有効活用できます。

Sparta Scienceは、機械学習を活用して選手のケガのリスクを算出するサービスを提供しています。このサービスは、選手の身体状態を測定するための施設と、測定結果を分析するAIから構成されています。同サービスを活用する選手は、測定施設において決められた運動をしたり、一定の姿勢を保ったりします。この様子はセンサーによって測定されており、得られた測定結果にもとづいてAIが選手のコンディションを評価します。こうした定期的なコンディション評価を継続していれば、選手自身も気づかない身体の異変を察知できるようになり、ケガを予防する対策を立てられるようになります。以上のサービスは、実際にMLBのTyson Ross選手をはじめとした多数の選手が活用しています。

AIによる選手のパフォーマンス評価は、選手やスポーツチームによる活用を超えて、スポーツ賭博にも使われようとしています。このように、AI活用の波はスポーツ業界においても着実に押し寄せているのです。

マイクロソフト、フェイクニュースの検出率向上に成功

テック系メディアVentureBeatは4月7日、マイクロソフトとアリゾナ州立大学の共同研究チームが従来よりフェイクニュースの検出率が高いAIシステムに関する論文を発表したことを報じました。

フェイクニュースを検出するAIシステムの開発にあたっては、どんなニュースがフェイクニュースと判定されるかをAIが学習するために、フェイクニュースをふくんだニュースを集めた学習データを用意します。この学習データにふくまれるフェイクニュースには、専門家が手作業によって収集したものが使われています。こうしたなか、研究チームは新たなフェイクニュース収集方法を採用しました。新たな収集方法では、以下のような3つの特徴のいずれかをもつニュースがフェイクニュースとして集められました。

  1. ニュースを読む読者の感情スコアを計測した時に、感情スコアが大きく変化したニュース
  2. 偏った考えや偏見を共有する読者たちが、共有する可能性が高いニュース
  3. 過度に大きな読者のネットワークを形成しているニュース。こうしたニュースはボットによって生成されている可能性が高い。

以上のように集めたフェイクニュースを既存の学習データに追加してAIを訓練したところ、検出率が向上したのでした。具体的には、GossipCopとPolitiFactというふたつのファクトチェックサイトを評価させたら、前者は80%、後者は82%の精度でフェイクニュースを検出しました。この結果は、ともに7%改善されています。

フェイクニュースは、新型コロナウイルスの流行やアメリカ大統領選挙のような重大な社会的イベントに対して、ネガティブな影響を与えかねない危険なものです。それゆえ、フェイクニュース検出AIの改善は急務であると同時に、継続的に取り組まれる必要があるでしょう。

Wreiter:吉本幸記/Photo by Elice Moore on Unsplash

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