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作曲支援AIは新しい音楽の歴史を生む:福山泰史氏インタビュー

2019.4.17音楽

作曲支援AIは新しい音楽の歴史を生む:福山泰史氏インタビュー

昨今さまざまな産業で実装化が進められているAIですが、音楽業界でも注目を集めています。楽曲制作からレコーディング、配信もふくめた流通まで、AIは今後の音楽産業に大きく貢献していくことが予想されています。 今回のインタビューでは、音楽業界のスタートアップ・コンサルティングを行い、過去350年間以上のヒット曲をAIが解析してメロディーを生成するアプリケーション「Amadeus Code」を2018年にローンチした福山泰史さんをお迎えしました。 複数のミュージシャンのグループが共同で楽曲を作る「Co-Writing」が一般化したいま、AIは音楽制作の現場をどのようにサポートしていくのでしょう? そして、AIは現在から未来に至る音楽史にどのような影響を与えるのでしょう?

——まず、福山さんが現在COOとして携わられている「Amadeus Code(アマデウス・コード)」について教えてください。

福山泰史(以下、福山):Amadeus Codeは、作曲支援を行うジェネラティブAIです。作曲のなかでも、メロディーのトップラインを制作支援に特化しています。トップラインというのは、曲の「歌える部分」のことですね。

Amper MusicやJukedeckのような他社のミュージックAIは、リズムやコード、アレンジといったものを得意としています。これらは、YouTuberが投稿のBGMとして使うオリジナルの音源のようなニーズを満たすところまで、十分進化してきていると思います。ただし、聴き手が「この音楽、何?」と言わせるようなクオリティの曲をAIが作れるのかについては、まだ誰も答えが出せていないのが現状です。Amadeus Codeでは、そこに取り組むことがミッションでした。

音楽プロデューサーとしての自分の経験を元に考えると、音楽を作曲するときには、今まで聞いてきた音楽からの影響が無視できません。そこには、自分が過去触れた音源にフィルターをかけて、新しい何かをつくり出すというプロセスがあるのです。

インターネットが普及した今、サブスクリプションなどのサービスによって、世界のあらゆる曲に誰もが平等にアクセスできます。だから、音源に触れるというプロセスを、よりスマートにできるようになるのではないかと思いました。

Amadeus Codeでは、経済的にも社会的にも影響力が強い過去350年以上の「ヒット曲」の集合をデータセットとすることで、ユーザーが望むメロディーをAIがつくることを目指しています。

——つくられたメロディーや「ヒット曲」の著作権は、どうなっているのでしょう。また、サービスのマネタイズについても教えてください。

福山:基本的に、メロディーの著作権は、Amadeus Codeの運営が持っています。課金に応じて、ユーザーが自身の楽曲制作に使えるライセンスを付与します。また、解析するデータについても、著作権の侵害はありません。2015年、米国では、本を大量にスキャンして検索を提供するGoogle n-gram viewerが新たな著作物であるという判決がでました。Amadeus Codeがやっていることも、この事例と極めて近いものと考えています。

マネタイズについて、現在は課金すればメロディーを書き出して使用できるようになっています。無制限に音源を使いたいときは、月額課金も可能です。もちろん、メロディーの著作権は弊社で保有しているので、そこからマネタイズすることも原理的には可能です。ただ、そこでお金儲けをしようとしている訳ではありません。

先日クリスティーズで5,000万円近い金額でAIが描いた絵画が落札され、話題となりました。その売上は、アルゴリズムをつくった人へも配分されるべきだという議論もあります。ただ今後、AIが著作権を保有できる世の中になるか、正直なところ分かりません。それは音楽家、企業、弁護士とマーケットが、今後定義されていくことだと思います。

——Amadeus Codeが作曲するときに使う、「ヒット曲」を集められたというデータベースの詳細について教えてください。

福山:現在は、北米を中心としたヒット曲を中心に、J-POPやクラシックもふくむ「トップヒット」のみをかき集めています。今後は、北米以外の楽曲も追加されていく予定です。

われわれはスタート地点として、「ヒット曲」というものを基準にしているに過ぎません。サッカーゲームの『ウィニングイレブン』(1995年〜、コナミ)では、FWにマラドーナのようなスター選手を配置したチームでプレイすることも可能ですよね。メジャーなヒット曲のデータを集めることができれば、第一線で活躍する音楽家と一緒に作曲をすることが可能になると考えています。

——AIに作曲をさせるとき、どのように楽曲の方向性を指定できるのでしょう。

福山:いまは、年代やリズムといったパラメーターを備えています。例えば、より80年代らしいメロディーをつくらせることが可能です。将来的には、「ロックらしく」というような指示に合わせて、メロディーを作曲させることもできるでしょう。

あと、生成されたメロディーのメタデータを見られるようにしています。解析データを使って、そのメロディーがどんなジャンルに属するか、幸福度や「攻撃性」がどれくらいなのかも分かるようにしています。

音楽を作るとき、「あのアーティストのこの曲に似ている」とか、「90年代の要素が入っている」といったお題があることは少なくありません。自分が作曲をしていたときには、特定の曲を指定すると似た楽曲をずっと流してくれる一番初期のPandora Radio(編註:2000年にローンチしたストリーミングラジオサービス)は、参考になる革命なツールでした。

今、人工知能は、音楽技術の習得を可能にしているのだと思います。誰でもソフトウェアを使うことで、プロが作るクオリティの音源を作りやすい時代が来ています。それが今やメロディーに対しても可能になっているのです。

——誰でも「プロが作るクオリティ」を生み出せるとき、音楽というマーケットでは何が重要視されるのでしょう。

福山:もちろん制作者によって各々の定義があると思いますが、過去のヒット曲からいかにズラすかが、重要だといえます。100%オリジナルのヒット曲というものは、ほぼ存在しません。いかに音楽の歴史的な文脈に価値をもたせて、アーティスト本人の興味を楽曲に吸収させるか。そのプロセスにこそ意味があると思います。アーティストの物語に、人は感情移入するといってもいいでしょう。

Amadeus Codeでは、生成したトラックの精度を追求して、そのまま世に出すことも可能でした。ただ、今はメロディーという抽象度の高いアウトプットのみでサービス化しています。それは、音楽において「物語」が重要だからです。

アーティスト自身が曲をつくり、それを世に出すというプロセスは、なくならないし、なくしてはならない。だから、テクノロジーを通じてメロディーを生み、そこから作曲家たちをインスパイアするサービスをつくっているつもりです。

——Amadeus CodeのようなジェネラティブAIによって、作曲家の仕事はどう変わるのでしょう。

福山:かつて音楽家は、たくさん曲を聞いて、インスピレーションを刺激し、作曲するしかありませんでした。そして、締切までの限られた時間内で生まれたアイデアを取捨選択して、音を作る必要がありました。もちろん、いいアイデアが生まれずに「ライターズブロック」といわれるような心理状態に陥って苦悩するアーティストも多かったわけです。

しかし、AIがあれば「アイデアの破片」のようなものを無数に作ることができます。そうやって生まれた、同じメロディーが決して存在しないほどの無数の選択肢のなかから、アーティストが何を選ぶのかに、面白さがあると思います。

「アイデアを生み出す」過程を、数を作ることが得意な人工知能に任せ、そこで使われていた人間の時間を、他のことに使えるようにすることにも大きな意味があると思います。もちろん、「限りがある人間の創造性」という問題を機械が解決するということに違和感がある人もいます。ただ、ジェネラティブAIは「人間のクリエィティビティの上限」を解決しているといっていいと思います。

そうなってくると「結局アーティストが何を作りたいか?」という文脈が、重要になっていくはずです。2014年にVULFPECKというバンドが、無音の楽曲をSpotifyで発表し、話題になったことがありました。わたしが関わっているQratesというレコード製造販売プラットフォームでは、そのレコードが1,000枚即完売しました。

どんな音楽でもアーティストのキャラが立っていたら売れる時代になりつつあります。今後はストーリーこそが、音楽の価値になるのかもしれません。原価が比較的明確なハードウェアとは違って、作られたものを人がどう聞くのかというプロセスに、お金が払われるようになるはずです。

——AIは作曲家の仕事のみならず、音楽業界でのコラボレーションにも影響を与えるような気がします。

福山:クリエイターには、それぞれ長所と短所があります。メロディーのトップラインを作るのがうまい人、トラックは作れないけどメロディーが作れる人…。そういう人たちが集まって、一緒に作品を作る「Co-Writing」するのが、これまでの音楽制作でした。Amadeus Codeは、トップラインの共同制作者が、スマホのなかに無限にいるという状況を作りだせるともいえます。

過去を振り返ると、新しいテクノロジーの登場により、これまでにないコラボレーションが生まれてきました。例えば、エレキギターが開発された結果、3ピースバンドというフォーマットができ、ロックというカルチャーが生まれました。サンプラーという技術は、トラックメーカー、DJ、ラッパーというクルーのあり方を可能にし、ヒップホップカルチャーを生みました。

世界のポップカルチャーで起きてきた革命の中心には、常にクリエィティブなテクノロジーがあるのです。近い例だと、初音ミクが生まれたことで、アニメーターや作曲家が共同で制作するようになり、新しいカルチャーが生まれました。それと、方程式は同じです。AIにより、新しいコミュニティが生まれ、世界に影響を与えるような聴いたことがない音楽が作られる可能性がある。そこに、一番やりがいを感じています。

福山泰史|TAISHI FUKUYAMA

1981年生まれ。音楽&テクノロジービジネスプロデューサー。日本で音楽プロデューサーとして活動後、サンフランシスコを拠点に海外企業の日本アジア進出のビジネスコンサルティングを行うPRTL(ポータル)を起業。The Echo Nest(現Spotify)を含む複数社の代理人として、また音楽とIT、メディアにかかわるスペシャリストとして、グローバルに活動を展開中。2018年にローンチされたAI作曲プラットフォーム「Amadeus Code」ではCOOを務める。

Writer:矢代真也

Photo by NeONBRAND on Unsplash

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