モリカトロン株式会社運営「エンターテインメント×AI」の最新情報をお届けするサイトです。

TAG LIST
CG機械学習CGへの扉ディープラーニング安藤幸央GAN月刊エンタメAIニュース河合律子OpenAI音楽NVIDIAニューラルネットワーク強化学習三宅陽一郎吉本幸記Facebook人工知能学会自然言語処理大内孝子QA敵対的生成ネットワークGoogleGPT-3キャラクターAIスクウェア・エニックス森川幸人モリカトロンAIラボインタビュールールベースDeepMindシナリオAIと倫理グーグル映画倫理NFTDALL-E2StyleGAN自動生成デバッグゲームプレイAIメタAIロボット深層学習マイクロソフトCEDEC2019アートプロシージャルSIGGRAPH遺伝的アルゴリズムDALL-Eテキスト画像生成ビヘイビア・ツリーディープフェイクCEDEC2021CEDEC2020ゲームAIデジタルツインメタバース不完全情報ゲームVRナビゲーションAINPC畳み込みニューラルネットワークCLIPGDC 2021JSAI2022VFXGDC 2019マルチエージェントCEDEC2022ボードゲーム画像生成ファッション懐ゲーから辿るゲームAI技術史toioCNNAdobeテストプレイモリカトロンStable DiffusionUnity著作権AIアート小説鴫原盛之HTN階層型タスクネットワークJSAI2020TensorFlowBERTMicrosoftイベントレポート対話型エージェントロボティクス水野勇太アニメーションGenvid Technologiesガイスター画像生成AIStyleGAN2GTC2022教育ソニーJSAI2021スポーツ研究シムピープルマンガ汎用人工知能マーケティングGDC SummerインタビューバーチャルヒューマンブロックチェーンMidjourneyアストロノーカキャリアNVIDIA OmniverseeスポーツAmazoneSportsDQNBLUE PROTOCOLシーマンMinecraftアバターOmniverseUbisoftメタAlphaZeroTransformerGPT-2AIりんなカメラ環世界中島秀之哲学理化学研究所DARPAドローンシムシティImagenバイアスMCS-AI動的連携モデルモーションキャプチャーTEZUKA2020AI美空ひばり手塚治虫バンダイナムコ研究所スパーシャルAIElectronic ArtsメタデータLEFT 4 DEAD通しプレイOpenAI Five本間翔太CMピクサープラチナエッグイーサリアム作曲ボエダ・ゴティエビッグデータ中嶋謙互Amadeus Codeデータ分析Microsoft AzureMILEナラティブアーケードゲームOmniverse ReplicatorWCCFレコメンドシステムNVIDIA DRIVE SimWORLD CLUB Champion FootballNVIDIA Isaac Simセガ柏田知大軍事サイバーエージェント田邊雅彦トレーディングカードトレカ音声認識PyTorch眞鍋和子バンダイナムコスタジオaibo合成音声Meta齊藤陽介マインクラフトお知らせMagic Leap Oneチャットボットサルでもわかる人工知能VAE3DCGリップシンキングUbisoft La Forge自動運転車ワークショップ知識表現ウォッチドッグス レギオンIGDA秋期GTC2022どうぶつしょうぎEpic Gamesジェイ・コウガミ音楽ストリーミングMITAIロボ「迷キュー」に挑戦野々下裕子徳井直生マシンラーニング5GRival Peakクラウド対話エンジン斎藤由多加リトル・コンピュータ・ピープルコンピューティショナル・フォトグラフィーゴブレット・ゴブラーズ絵画rinnaシミュレーションデジタルヒューマン完全情報ゲーム坂本洋典釜屋憲彦ウェイポイントパス検索対談藤澤仁生物学GTC 2022画像認識SiemensStyleCLIPDeNA長谷洋平masumi toyota宮路洋一OpenSeaGDC 2022TextWorldSIGGRAPH ASIAEarth-2MagentaSFELYZA PencilGTC2021CycleGANデータマイニングNetHackはこだて未来大学キャラクターモーションフェイクニュースエージェントRPGSIGGRAPH 2022AIボイスアクターNVIDIA CanvasGPUALifeZork人工生命オルタナティヴ・マシンサウンドスケープASBS栗原聡ぱいどんテキスト生成不気味の谷ナビゲーションメッシュ松井俊浩ELYZAフルコトELYZA DIGEST3D音声合成西成活裕Apex LegendsELIZA群衆マネジメントNinjaコンピュータRPGライブビジネスアップルタウン物語新型コロナKELDIC周済涛メロディ言語清田陽司ゲームTENTUPLAYサイバネティックスMARVEL Future FightAstro人工知能史タイムラプスEgo4DAI哲学マップバスキア星新一日経イノベーション・ラボStyleGAN-XL敵対的強化学習StyleGAN3階層型強化学習GOSU Data LabGANimatorWANNGOSU Voice AssistantVoLux-GAN竹内将SenpAI.GGProjected GANMobalyticsSelf-Distilled StyleGAN馬淵浩希Cygamesニューラルレンダリング岡島学AWS SagemakerPLATO映像セリア・ホデント形態素解析frame.ioUXAWS LambdaFoodly誤字検出森山和道認知科学中川友紀子ゲームデザインSentencePieceアールティLUMINOUS ENGINELuminous ProductionsBlenderBot 3パターン・ランゲージ竹村也哉Meta AIちょまどマーク・ザッカーバーグGOAPWACULAdobe MAX 2021自動翻訳模倣学習AIライティングOmniverse AvatarAIのべりすとFPSNVIDIA RivaQuillBotマルコフ決定過程NVIDIA MegatronCopysmithNVIDIA MerlinJasperスタンフォード大学NVIDIA Metropolisパラメータ設計テニスバランス調整協調フィルタリング人狼知能テキサス大学AlphaDogfight TrialsAI Messenger VoicebotエージェントシミュレーションOpenAI CodexStarCraft IIHyperStyleMax CooperFuture of Life InstituteRendering with StyleメディアアートIntelDisney類家利直LAIKADisneyリサーチヴィトゲンシュタインRotomationGauGAN論理哲学論考GauGAN2京都芸術大学ドラゴンクエストライバルズ画像言語表現モデル不確定ゲームSIGGRAPH ASIA 2021PromptBaseDota 2モンテカルロ木探索ディズニーリサーチMitsuba2バンダイナムコネクサスソーシャルゲームEmbeddingワイツマン科学研究所ユーザーレビューGTC2020CG衣装mimicNVIDIA MAXINEVRファッションBaidu淡路滋ビデオ会議ArtflowERNIE-ViLGグリムノーツEponym古文書ゴティエ・ボエダ音声クローニング凸版印刷Gautier Boeda階層的クラスタリングGopherAI-OCR画像判定JuliusSIE鑑定ラベル付けTPRGOxia Palus大澤博隆バーチャル・ヒューマン・エージェントtoio SDK for UnityArt RecognitionSFプロトタイピングクーガー田中章愛実況パワフルサッカー石井敦銭起揚NHC 2021桃太郎電鉄茂谷保伯池田利夫桃鉄GDMC新刊案内パワサカマーベル・シネマティック・ユニバースコナミデジタルエンタテインメント成沢理恵MITメディアラボMCU岩倉宏介アベンジャーズPPOマジック・リープDigital DomainMachine Learning Project CanvasMagendaMasquerade2.0国立情報学研究所ノンファンジブルトークンDDSPフェイシャルキャプチャー石川冬樹サッカーモリカトロン開発者インタビュースパコン里井大輝Kaggle宮本茂則スーパーコンピュータバスケットボール山田暉松岡 聡Assassin’s Creed OriginsAI会話ジェネレーターTSUBAME 1.0Sea of ThievesTSUBAME 2.0GEMS COMPANYmonoAI technologyLSTMABCIモリカトロンAIソリューション富岳初音ミクOculusコード生成AISociety 5.0転移学習テストAlphaCode夏の電脳甲子園Baldur's Gate 3Codeforces座談会Candy Crush Saga自己増強型AItext-to-imageSIGGRAPH ASIA 2020COLMAPtext-to-3DADOPNVIDIA GET3DデバッギングBigGANGANverse3DDreamFusionMaterialGANRNNグランツーリスモSPORTAI絵師ReBeLグランツーリスモ・ソフィーUGCGTソフィーPGCVolvoFIAグランツーリスモチャンピオンシップStability AINovelAIRival PrakDGX A100NovelAI DiffusionVTuberユービーアイソフトWebcam VTuberモーションデータ星新一賞北尾まどかHALO市場分析ポーズ推定将棋メタルギアソリッドVフォートナイトメッシュ生成FSMメルセデス・ベンツRobloxMagic Leapナップサック問題Live NationEpyllion汎用言語モデルWeb3.0マシュー・ボールAIOpsムーアの法則SpotifyスマートコントラクトReplica StudioAWSamuseChitrakarQosmoAdobe MAX 2022巡回セールスマン問題Adobe MAXジョルダン曲線メディアAdobe ResearchMuZero政治Galacticaクラウドゲーミングがんばれ森川君2号pixiv和田洋一リアリティ番組映像解析Stadiaジョンソン裕子セキュリティMILEsNightCafe東芝デジタルソリューションズインタラクティブ・ストリーミングLuis RuizSATLYS 映像解析AIインタラクティブ・メディアポケモン3DスキャンCodexPFN 3D Scanシーマン人工知能研究所東京工業大学Ludo博報堂Preferred NetworksラップPFN 4D ScanSIGGRAPH 2019ArtEmisZ世代DreamUpAIラッパーシステムDeviantArtARWaifu DiffusionGROVERプラスリンクス ~キミと繋がる想い~元素法典FAIRSTCNovel AIチート検出Style Transfer ConversationOpen AIオンラインカジノRCPMicrosoft DesignerアップルRealFlowRinna Character PlatformイラストiPhoneCALADeep FluidsSoul Machines柿沼太一MeInGameAmeliaELSIAIGraphブレイン・コンピュータ・インタフェースバーチャルキャラクター大規模言語モデルBCIGateboxアフォーダンスLearning from VideoANIMAKPaLM-SayCan予期知能逢妻ヒカリPaLMセコムGitHub Copilotユクスキュルバーチャル警備システムCode as Policiesカント損保ジャパンCaP上原利之ドラゴンクエストエージェントアーキテクチャアッパーグラウンドPAIROCTOPATH TRAVELER西木康智OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者アルスエレクトロニカ2019品質保証StyleRigAutodesk逆転オセロニアBentley Systemsワールドシミュレーター奥村エルネスト純いただきストリートH100齋藤精一大森田不可止COBOL高橋智隆DGX H100ロボユニザナックDGX SuperPOD泉幸典仁井谷正充クラウドコンピューティングロボコレ2019Instant NeRFartonomousbitGANsぎゅわんぶらあ自己中心派Azure Machine Learning意思決定モデル脱出ゲームHybrid Reward Architectureコミュニティ管理ウロチョロスSuper PhoenixSNSProject Malmoオンラインゲーム気候変動Project PaidiaProject Lookoutマックス・プランク気象研究所Watch Forビョルン・スティーブンスBing気象モデルLEFT ALIVE気象シミュレーション長谷川誠ジミ・ヘンドリックス環境問題Baby Xカート・コバーンエコロジーロバート・ダウニー・Jr.エイミー・ワインハウスSDGsYouTubeダフト・パンクメモリスタGlenn MarshallThe Age of A.I.Story2Hallucination音声変換レコメンデーションJukebox松尾豊Veap JapanEAPテンセントSIFT福井千春DCGAN医療MOBADANNCEメンタルケア人事ハーバード大学Edgar Handy研修デューク大学Netflixmynet.aiローグライクゲーム東京大学東京理科大学人工音声NeurIPS 2021産業技術総合研究所リザバーコンピューティングプレイ動画ヒップホップソニーマーケティングサイレント映画もじぱNBA環境音暗号通貨現代アートFUZZLEAlteration粒子群最適化法進化差分法オープンワールド群知能下川大樹AIFAウィル・ライト高津芳希P2E大石真史BEiTStyleGAN-NADAレベルデザインDETRゲームエンジンSporeUnreal Engineデノイズ南カリフォルニア大学Unity for Industry画像処理SentropyGLIDECPUDiscordAvatarCLIPSynthetic DataCALMプログラミングサム・アルトマンソースコード生成LaMDAGMAIシチズンデベロッパーSonanticTRPGGitHubCohereウィザードリィMCN-AI連携モデルマジック:ザ・ギャザリングAI DungeonUrzas.ai介護西川善司並木幸介Kikiサムライスピリッツ森寅嘉Zoetic AIゼビウスSIGGRAPH 2021ペットストリートファイター半導体Digital Dream LabsTopaz Video Enhance AICozmoDLSSタカラトミー山野辺一記NetEaseLOVOT大里飛鳥DynamixyzMOFLINRomiU-Netミクシィ13フェイズ構造アドベンチャーゲームユニロボットADVユニボXLandGatoAGI手塚眞DEATH STRANDINGマルチモーダルEric Johnson汎用強化学習AIデザインOculus Questコジマプロダクションロンドン芸術大学生体情報デシマエンジンGoogle BrainインディーゲームSound Control写真高橋ミレイSYNTH SUPER照明Maxim PeterKarl SimsJoshua RomoffArtnomeハイパースケープICONATE山崎陽斗深層強化学習立木創太松原仁浜中雅俊ミライ小町武田英明テスラ福井健策GameGANパックマンTesla BotNEDOTesla AI DayWikipediaソサエティ5.0SphereSIGGRAPH 2020バズグラフXaver 1000ニュースタンテキ養蜂東芝BeewiseDIB-R倉田宜典フィンテック投資韻律射影MILIZE広告韻律転移三菱UFJ信託銀行

【CEDEC2020】オンラインゲーム『BLUE PROTOCOL』で敵AIにパーティを組ませる方法

2020.10.19ゲーム

【CEDEC2020】オンラインゲーム『BLUE PROTOCOL』で敵AIにパーティを組ませる方法

オンラインゲームをプレイしたことがある人なら、誰しもパーティ内で役割分担しながら強大な敵キャラクターに立ち向かったことがあるでしょう。それではプレイヤーと同様にパーティを組んで、それぞれの役割を全うしながら戦術的に行動する敵キャラクターはどうでしょう。人工知能技術によって自律性を得たキャラクターAIが次に目指すのは、AI同士で集団を形成して意思疎通しながら合理的に行動する協調性です。

9月2日から9月4日までオンライン開催された国内最大のコンピュータエンターテインメント業界向け技術交流会「CEDEC 2020」にて、バンダイナムコスタジオの長谷洋平氏による「BLUE PROTOCOLのパーティバトルを支える集団制御AI」というセッションを取材しました。同セッションでは、広大なゲーム空間に分散する複数のキャラクターを集団として制御するためのAI技術を紹介しています。

『BLUE PROTOCOL』は、バンダイナムコスタジオが開発中のオンラインアクションRPGです。「プレイヤーパーティvsエネミーパーティ」による集団戦闘が最大の特徴で、すべての敵キャラクターがプレイヤー同様にパーティを組んでいるように振る舞います。これによりプレイヤーに敵キャラクターの意図を感じさせ、対人戦のような戦術的なバトルを演出しています。また、戦闘への途中参戦や途中離脱も自由で、その場に居合わせたプレイヤー同士のゆるい共闘も可能だということです。

このようなゲームデザインを実現するには、いかなる状況下でもパーティとして破綻しないように敵キャラクターを動かさなければいけません。また、複数のプレイヤーが同じ空間を共有するオンラインゲームでは、多人数でのプレイに対応できるだけの敵キャラクターの数が必要です。そのため、フィールド全体におけるマネジメント処理の負荷軽減という課題は避けられません。

どこからどこまでをパーティと捉えるか

『BLUE PROTOCOL』のAIは階層構造を成しています。最上部の「AI Director」がフィールドの状況分析やスポーニング制御といったコンテンツ全体の統括を担い、その下で「Faction Coordinator」が各勢力を管理します。ここではサブグループの作成やメンバーのアサインなどが行われます。次に「Combat Coordinator」が攻撃権管理やロールアサインといった役割を果たし、最後に「Character」が挙動を制御するという仕組みです。

広大な空間に分散しているプレイヤーたちはパーティを組んでいることもあれば、それぞれ野良で共闘している可能性もあります。つまり、それぞれの戦闘単位を表す明確な基準は存在しません。そのため「AI Director」は動的にプレイヤー集団を見つけて、同じ集団を狙っている敵同士でひとつのパーティを構成しようとします。

プレイヤー集団の分析には、階層的クラスタリングという手法が使われています。これはデータの類似度をもとにグルーピングする方法で、事前にクラスター数を決定する必要がないのが利点です。ほかの手法にくらべて計算量が増すのが欠点ですが、『BLUE PROTOCOL』では各フレームにおけるステップ数に上限を設けることで負荷を分散しているということでした。

敵キャラクターが感知したプレイヤーはターゲットリストに格納され、それぞれにクラスター情報が割り振られます。この時、基本的にプレイヤー側のクラスターひとつにつき、エネミー側のパーティがひとつ生成されます。ターゲット候補となるクラスターが複数ある場合は、距離や敵意といった変数から最適なアサイン先が決定されます。

パーティ形成の流れをまとめると、「AI Director」がフィールドの状況を分析して敵キャラクターをスポーンさせます。それぞれの敵キャラクターは所属勢力に応じた「Faction Coordinator」にアサインされ、ここで各々のコンテキスト情報をもとに「Combat Coordinator」が作成されます。なお、偵察行動といった戦闘以外のシチュエーションを想定したグループも、この段階で同様に作られるということです。

ログイン中のプレイヤー数やフィールドの状況によって、クラスター情報は常に更新されます。その都度、「Faction Coordinator」はすべての敵キャラクターを対象に再アサインをリクエストするため、クラスターの増減に応じて各グループの構成も変化していきます。例えば、戦闘中のプレイヤーが敵パーティの現在位置から離れるにつれて敵パーティが2つに分割されることもあれば、移動中にプレイヤーが攻撃した個別の敵キャラクターが現在交戦中の敵パーティに組み込まれることもあるというわけです。

キャラクターの思考をどう制御するか

「Character」のエージェントアーキテクチャは、センサーやクエリーで周囲の空間の情報を集める「Perception」、それらの情報をもとに次の行動を決定する「Brain」、進行方向の計算やアニメーションの制御を担う「Action」で構成されています。このうち「Brain」は、さらに「Utility System」「HTN Planning」「Behavior Tree」で構成され、それぞれが「何をすべきか」「どのようにすべきか」「具体的な方法」を決定しています。

HTNは階層型タスクネットワークの略で、「HTN Planning」は行動による状態の変化を考慮した上で、一連の行動を事前に計画する技術です。抽象的なタスクをより具体的なタスクへ分割することで、必要な行動とその順序を見つけるために使われます。たとえば、「朝支度」というタスクは、まず「起きる」「着替える」「朝食」「家を出る」というサブタスクへ分解され、さらに「朝食」は「準備」「食べる」といった具合に細分化されます。それ以上分割できない最下層のタスクには、実行による状態変化が設定されています。

これら階層型の思考ルーチンは「ドメイン」と呼ばれ、ドメインの外側から計画に制約を課すのが「プリファレンス」です。これには必ず満たすべき条件を意味する「ハード制約」と、可能な限り満たしてほしい条件を意味する「ソフト制約」があり、それぞれの計画はプリファレンスが満たされた数によって評価されます。このように、好みに基づいた計画を立てる技術を「Preference-based Planning」といいます。同一のドメインを再利用しつつ、好みに応じて異なるプランを作成できるのが特徴です。

プリファレンスにも、「プリコンディションプリファレンス」「ゴールプリファレンス」「トラジェクトリープリファレンス」といった複数の種類があります。「プリコンディションプリファレンス」は、タスク実行前の状態に対する制約を指します。たとえば、朝食の「準備」というタスクが「ご飯を炊く」と「パンを焼く」という2通りのタスクに分割された場合、お米とパンの所持数によって実行タスクを決定するようなケースで使われます。

「ゴールプリファレンス」は、プラン形成時の最終状態に対する制約です。朝食の準備を例に挙げると、ご飯もしくはパンを食べた後に生じる洗い物の数によって「ご飯を炊く」か「パンを焼く」か決定するような状況で用いられます。「トラジェクトリープリファレンス」は、プラン全体における条件の時間的な変化に対する制約を意味します。たとえば、「起きる」というタスクの次に「着替える」と「朝食」のどちらを優先するかを指定したい時に有効です。

『BLUE PROTOCOL』では、「HTN Planning」のサブドメインとプリファレンスのセットを「タクティカルスキル」と定義しています。ここには攻撃や移動、待機といったあらゆる行動がスキルとして実装されています。これらのサブドメインを組み合わせることで、キャラクターの思考ルーチンが形成されているというわけです。例えば攻撃アクションなら、「近接攻撃」や「間接攻撃」といった詳細な攻撃方法をサブドメインのテンプレートとして定義しておき、それらをどういう状況で使ってほしいかという条件をプリファレンスで指定するという仕組みです。

最適な戦略と戦術はいかに導き出されるか

「パーティvsパーティ」の戦術的なバトルを実現するためには、キャラクターの役割分担が欠かせません。『BLUE PROTOCOL』では、すべてのキャラクターにアタッカーやヒーラー、ディフェンダーといったロールがアサインされており、ロールに応じたタクティカルスキルによって行動の優先度が変化します。しかし、これだけでは常にパーティとして理にかなった行動を取ってくれるとは限りません。

各キャラクターがバラバラに動いてしまうとパーティとしてまとまりがないばかりか、複数のヒーラーが同じ対象を回復したり、複数のディフェンダーが1体のヒーラーを守ったりと、行動が重複してしまう可能性もあります。また、ロールが偏った場合、ヒーラー同士が互いを回復し続けるようなループに陥ってしまったり、1体だけ生き残ったヒーラーがひたすら逃げ続けたりと、何の面白みもない戦闘になってしまうかもしれません。

こうした状況を回避するために一翼を担っているのが「Combat Coordinator」です。前述した「Character」と同様に、「Combat Coordinator」も「Perception」「Brain」「Action」のエージェントアーキテクチャによって構成されています。一方、物理的な身体があるわけではないのでセンサーはなく、クエリーのみを用いて戦略立案に必要な情報や、パーティメンバーの共有情報を収集します。なお、戦闘における大局的な判断には、マップ全体のナビゲーションメッシュから行動の影響度を計算する「Influence Map」が使用されています。

「Combat Coordinator」における「Brain」の部分では、「Utility System」が戦略を立案し、「HTN Planning」が戦術を決定、そして「Behavior Tree」が命令を下します。「Utility System」は環境やメンバーの情報から算出したスコアを比較することで、変化していく状況に応じた最善の戦略を決定します。

たとえば、「牽制する」という戦略はプレイヤー集団とエネミーパーティの距離によってスコアが決定されます。また、「取り囲む」という戦略は、エネミーパーティのサイズがプレイヤー集団を上回っていることを条件に、プレイヤー集団に対するクラスタリングの内包率によってスコアが算出されます。このスコアが更新されるたび、パーティはより効果的な戦略へ切り替えて行動できるというわけです。

戦略の決定時には、戦略ごとに設定されているタスクが「Utility System」から「HTN Planning」へ渡されます。ここでメンバーへのロールアサインやプランニングに必要な変数の計算をとおして、パーティメンバーの戦術が構築されます。ロールアサインでは、ヒーラーしかいないような極端に偏ったパーティ編成を避けるために、コーディネーターが必要としているロールが優先的に割り当てられます。なお、キャラクターにはあらかじめ希望ロールが設定されており、必要ロールと希望ロールがマッチするようにアサインされます。

ここでの戦術とは、メンバーや攻撃権といった限られたリソースの運用効率を最大化するための割り当て方を指しています。「HTN Planning」を使うことでリソースの変化をシミュレートできるほか、プリファレンスを用いたアルゴリズムによって最善の選択肢を効率的に探索できるという利点もあります。この時、「攻撃」「防衛」「範囲バフ」といった各戦術はタクティカルスキルとして実装されており、そこから各メンバーが戦術の候補をあげます。これをもとに「Combat Coordinator」がプランニングして命令を下すという流れです。

どうやってAI同士で効率的に意思疎通するか

このように集団行動を前提に複数のキャラクターを動かすには、キャラクターとコーディネーターの間、あるいはキャラクター同士の間におけるコミュニケーション手段が重要になってきます。前者ならターゲットリストの伝達、後者ならヒーラーへの救援要請などが例に挙げられます。こうした伝達情報やリクエストのパラメータは複数の値を持つことが多く、その内容しだいでは複雑になりがちです。

『BLUE PROTOCOL』では、キャラクターからコーディネーターへの情報伝達に用いる「ブラックボード」と、双方向のコミュニケーションに使用される「メッセージング」に加えて、新たに「タプルスペース」を導入しているそうです。タプルスペースとは、 主に分散コンピューティングのプロセス間通信に使われる処理方式で、タプルという値の組を格納したブラックボードの一種です。データストアと通信を兼ねており、複数の値の組を扱えるという利点があります。タプル取得時には、条件を指定したフィルタリングも可能です。

ピンチに陥ったキャラクターがヒーラーに助けを求める際は、まず「Combat Coordinator」内のタプルスペースに救援要請のタプルを追加します。するとタプルスペースから通知を受け取ったヒーラーは、救援要請を出したキャラクターとの距離などをもとに算出した評価値をタプルスペースへ返します。これらの情報をもとにコーディネーターがプランニングし、救援要請に向かうキャラクターに命令を実行するという仕組みです。

バンダイナムコスタジオは「CEDEC 2019 」にて、「BLUE PROTOCOLの個性豊かなキャラクターを動かす意思決定システム」というセッションを発表しており、その際はキャラクターAIのエージェントアーキテクチャにフォーカスしていました。今回のセッションは、階層的クラスタリングとコーディネーターによる戦闘管理によって、それらキャラクターAIにパーティとして意図を持った振る舞いを追求するものでした。『BLUE PROTOCOL』は2020年4月にクローズドベータテストが実施されており、集団制御AIの実用例としてすでに一定の成功を収めているといえるでしょう。

Writer:Ritsuko Kawai / 河合律子

RELATED ARTICLE関連記事

【CEDEC2021】ゲームキャラクターの声を音声合成に置き換えるのは可能か

2021.10.15ゲーム

【CEDEC2021】ゲームキャラクターの声を音声合成に置き換えるのは可能か

【CEDEC2019】人工知能が敵キャラを育てる! ディープラーニングを使った次世代のゲームAI開発

2019.9.19ゲーム

【CEDEC2019】人工知能が敵キャラを育てる! ディープラーニングを使った次...

「今日のメシどうする?」問題から学ぶ、階層型タスクネットワーク

2019.12.20ゲーム

「今日のメシどうする?」問題から学ぶ、階層型タスクネットワーク

RANKING注目の記事はこちら